宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 久しぶりの呪術、書けてるかなぁっと思いながら書きます。


番外編 IF編 ここからが本当の───

 

 

 不機嫌…そう不機嫌、紛れもない負の感情を前面に押し出しながら男は…宮城薫は眼前の男に向き合っていた。

 

 あの後のことを話そう…なんてことない、眼前の…五条悟と名乗った男が薫や宿儺の前に現れた約二秒後のこと、両面宿儺は何の躊躇も無く五条悟へと殴りかかった。

 

 邪魔だ、退けろ、今直ぐにそいつを俺の手で殺させろ…そう如実に語る気配に五条は二カッと笑みを浮かべて応戦の構えを取った…そんな時のことだった。

 

 突如として宿儺の気配が消失した、入れ墨が奥へと引っ込み代わりに現れたのはその肉体の本来の主である虎杖悠仁その人、何が起きたのか分からず呆然としているような雰囲気でその場に立ち尽くしていた虎杖に、五条は思わずと言ったように笑った。

 

 その後は本来の道筋と何ら変わりない…五条によって制限時間を言い渡された虎杖は宿儺へと切り替わり、そうして襲い掛かってきた宿儺を五条が迎撃した…違いがあるとすれば宿儺の標的が五条ではなく薫であったことと、それと同時に薫もまた宿儺を殺そうと動き出していたことだろうか。

 

 それら全てを纏めて迎撃し、改めて元の状態へと戻った虎杖を五条は気絶させて回収し…そして今、互いに向き合うという現在の状況に至っている。

 

 

「…不機嫌そうだねぇ?」

 

 椅子へとやる気の無さそうにもたれ掛かりながら、悪戯小僧のような声色でそう告げる五条、何処かムスッとしたような表情を浮かべる薫を心底面白がっているような様子だった。

 

 

「…何故、彼を生かしているのですか?」

 

 口から出たのはそんな言葉だった。

 

 ムスッとした表情の向こう側からやってきたその言葉に五条はキョトンとする、睨みつけるように五条を見やった薫は心底から理解出来ないと言いたげな表情を浮かべながら更に言葉を続けた。

 

「何故虎杖くんを…両面宿儺を生かしているのかと聞いているのです…アレを生かしておくことに、何のメリットも無いはずでしょう」

 

 心底から理解出来ないというように、心底から憎しみを吐き出すようにそう言葉を紡ぐ薫に五条はうーんと何処かおちゃらけたように悩む素振りを見せる、顎に手をやり如何にも私は悩んでいまーすとでも言うようなその仕草に薫の心はささくれた。

 

 両面宿儺は化物だ…例えば指一本による受肉であったのだとしてもそれによる被害は馬鹿にならない、きっと町一つは容易に滅びる…それを生かすと言うのだ、苛つきもするのが当たり前の話というものであろう。

 

 露骨に苛ついている薫の姿に、五条は顎にやっていた手を下ろして言葉を発する。

 

 

「…じゃあ逆に聞くけど、なんで僕達が彼を生かしてると思う?」

 

 膝に手をやりながらずいっと此方に顔を寄せながらそう問いかける五条、近づいた目隠し姿の不審者を前に薫はほんの少し思考に時間を割き、答えた。

 

「一般人だからですか?」

 

「ぶっぶー、残念外れでーす」

 

 ピキリッと額から音が鳴った気がした、おちゃらけた様子をかくさず薫の言葉を否定した五条の姿に薫は思わず殴り掛かりそうになる…菫に似ているという言葉を心底から否定したい、薫はそう思い始めていた。

 

 ぷるぷると震える拳をなんとか抑え込みながらじゃあ何なんですかと苛立ち気味に言葉を返す、真面目な話をしているんだから真面目に返せと暗に態度で示しながらの言葉に五条はその笑みを崩さずその両手を広げて…告げた。

 

「正解は…宿儺の指を全て食わせてから殺す為だよ」

 

 

 息を呑んだ、告げられた言葉の意味を明確に理解出来てしまったが故に薫は露骨にその言葉に動揺を露わにしてしまった、だってそれは前代未聞の計画だったから。

 

 動揺を隠しきれない薫の姿に笑みを深めた五条はさながら逃げ道を封じるが如く言葉を続ける。

 

 

「本当なら即刻死刑なんだけどね、お上の爺さん方もさっさと殺せと言ってきている…けどね、それだと勿体無いんだよ」

 

「…勿体無い?」

 

 オウム返しで疑問を返す薫にうん…っと言葉を返した五条は懐からそれを取り出す。

 

 

「分かるよね、これ…宿儺の指」

 

 確かめるようにそう問いかける五条に薫は言葉を発さずただ頷く、言葉を弄することすら時間の無駄と言わんばかりにただ続きを早くと五条を促し、それに対して五条はニッカリと笑顔で言葉を続けた。

 

「今ここにある物と同じものを、僕はさっき件の彼に食べさせた」

 

「…………はぁっ!?」

 

 驚愕の声が部屋に響く、ガタリっと椅子が倒れるのも厭わず立ち上がり、心底から理解してはいけないモノを見るかのような視線を五条悟という男へと向ける。

 

 だって自殺行為なのだ、普通なら呪物の負荷に耐えきれず死ぬし、よしんば耐えられたのだとしてもそのまま宿儺が表に出てくることだってあり得る…まともな人間ならばまずそんなことをやらせない…と、そこまで考えて薫は気が付いた。

 

 

「…耐えられたんですね、肉体的にも…精神的にも」

 

「正解♪」

 

 楽しげに肯定の言葉を乗せた五条に薫は椅子を戻してドカリッと座り込んだ後に頭を抱える…そして、大きな大きなため息を吐き出した。

 

 全ての指を食わせてから虎杖悠仁を殺す…その言葉の意味が今になってようやく線になって繋がった…なるほど、確かに宿儺の指を食ってそこまで大丈夫ならばこうした計画を思いつくのも仕方のない話だろうと納得した。

 

 両面宿儺は階級で表すなら特級という言葉が付けられるレベルの代物だ、そしてそんな名前が付けられている呪物が内蔵している呪力の量も質も当然のように凄まじく、それ故に食えば死ぬのが当たり前の化物器物とも言える。

 

 そんなヤバい代物を食べて無事だったのだ、しかも宿儺相手に自我まで保てていると来た…ならばやるだろう、ならばやるしかないだろう、特級の呪物を屠れるのであればこれほどまでに良いことはないだろう。

 

 だが…だが…限りなく確率の高いもしもが存在するのも、また事実なのである。

 

 

「…もしも、宿儺が起きてきたのだとしたらその時はどうする気なんですか…もしも、彼が全ての宿儺の指に食い切る前に許容の限界を超えてしまったら───」

 

「───その時は僕が宿儺を倒す」

 

 

 有無を言わせない言葉の圧があった…薫の尤もな疑問に五条悟はおちゃらけた気配を潜ませ、真剣な様子でそう言葉を返す、唐突な気配の切り替えに瞳を見開く薫に五条は言葉を続けた。

 

「言い出しっぺは僕だ、その時が来たのなら僕が責任を持って確実に宿儺を殺す、例えそこに至る時に彼に対して情を抱えていようが何があろうが関係無い…何が何でも確実に殺す」

 

 有無を言わさぬ決意の音、言葉の節々から感じ取れるその決心の固さに最早薫は何も言えなかった…こんなことを言われしまえば最早彼には何も出来ない、例えここで薫が何を言い出そうが五条悟は必ず計画を実行する…それを理解出来てしまった。

 

 だったらもう、やることは一つなのだ。

 

 

「…僕は、何をすれば良いんですか?」

 

 こうしてこんな場所に呼び寄せた挙句に機密事項間違い無しの話題をぶち込んできたというその時点で、五条悟は最初からこの事案に自分を関わらせる気満々なのは確定事項だったのだ…ならば、巻き込まれるよりも先に此方から突っ込んでやるのが薫なりの五条への意趣返しであった。

 

 そんな意味も持たせた薫の言葉に五条の口元に笑みが戻る、漏れ出た笑い声に思わず口元を隠しながら五条は薫を指差し、その言葉を告げた。

 

 

「───君には、呪術師をやってもらう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 綺麗な夕焼けだった…空が暗がり始めていたから何方かと言うと夕焼け夜空という感じなのかもしれないが、それでも綺麗な夕焼けだなぁっと、彼はそう感じていた。

 

 小鳥と鴉が飛び交う夕焼け時、言葉にするなら黄昏時なのだろうか、それとも逢魔が時なのだろうか…何方かは忘れたが、良くもまぁこんな言葉を思いつくと何となしにそう思った。

 

 ここは工事現場…実際には封鎖された工事現場と言う方が正しいのだろう、散らばる鉄骨と加工された木材、その上に散らばる紫色の液体を男は何となしに眺めていた。

 

 消え去りこの世から姿を消す紫色…はてさてどういう仕組みなのだろうと消え去るソレをジッと眺めていた…そんな時だった。

 

 横から何かが飛び出してくる、不定形にピカピカっと光りながら金槌のようなものを振り被る異形の存在、頭と思われる部位に赤と黄色のランプを取り付け身体全体は何処となく工事現場の車両を思わせるような…そんな異形が、眼前の少年の命を吹き消そうと金槌を振り被った───

 

 

「───…なんだ、まだ居たんだ」

 

 

 瞬間、黒い火花が飛び散った。

 

 突き刺さる拳が肉を打つ、まるで抉り出すように突き刺さった拳がやってきた異形を粉々に吹き飛ばす、肉片をばら撒きながら爆散した異形に特に目を向けることもなく、男は床に落としていたカバンを拾い上げながらその場を後にした。

 

 自分でも分からない、子供の頃から良く見る変な化物達、人に襲い掛かっては迷惑を掛けるお化けのような存在を気紛れで殺したのは何時だったか…覚えてもいないが、それはきっと良いことなのだろうと、なんとなしにそう思った。

 

 夕日が沈む何時かの何処か、今日も今日とて、呪いは廻る。

 

 





 誰も廻ってないなんて言ってない。


 参考

 五条菫は既に五条悟と接触済み。
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