宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

178 / 187
 戦闘を書かなさ過ぎて書きたくなって書いた…どれくらいぶりだ主人公の戦闘書くの?


番外編 IF編 『怪物』

 

 

 轟音が、響く。

 

 月明かりの照らす夜闇の奥底、光の届かない暗い森の奥の奥、そこに不自然までに存在する整えられたかのような広い立地…そこで繰り広げられていたのはこの世の常識を覆す程の死闘。

 

 振り上げられる腕、下から上へと振り上げるような形で振るわれたその腕から放たれる無数の刃…腕そのものが蛇腹剣のような形となって音を引き裂きながら葛城廻へと迫る。

 

 目と鼻の先、ほんの数秒でも経てば直撃は免れないであろうその斬撃、並の術師であればそれで終わっているだろう一撃を廻は僅かに足を下げて回避する。

 

 とんだ馬鹿度胸、齢14とは思えぬような胆力…普通なら大きく後ろに下がって躱しているだろう攻撃を葛城廻はさも当然のように紙一重の領域で躱す。

 

 ならばと続けて横薙ぎの一撃、後方に存在する森の木々をバリバリと引き裂きながら迫る命を刈り取るような攻撃をトンッと軽い音と共に宙返りで躱す。

 

 棒高跳び…その光景を幻視してしまう程の紙一重、触れるか触れないかのギリギリの領域を行ったり来たりするその少年の瞳は、何処までも冷たく無感動だった。

 

 着地と同時に加速、宙返りから地面に接地し踏み込むまでの時間は一秒にも満たない、ツギハギ…『真人』からしてみれば着地したと思ってみたら次の瞬間には猛スピードで突っ込んできているのだから、これが笑うしかない。

 

 あまりに高い瞬発能力に攻撃の間合いを正確に見切る眼、そしてそれら全てを正確無比に操ってみせる肉体操作能力…どれを取っても初見、基本的な動きという意味ではきっと理想に近いその存在に真人はニヒリッと笑みを浮かべた。

 

 実戦経験という意味では真人の積んできた経験は著しく低い…仲間の一人が実戦形式で練習に付き合ってくれていたこともあって使い方には多少慣れが存在するが…それでも、正真正銘の実戦というのは実質的に初めてに近い。

 

 接近してくる小さな人影、近接の間合いに入るまできっとそんなに掛からない、やってくる速度からして恐らく迎撃は間に合わず間合いに入れることを許してしまうだろう…ならば、どうするか。

 

 突っ込んでくる廻に対して真人は防戦の構えを取った、呪力を纏い相手の攻撃を受けることを前提の構え、避けようなんて気配は微塵も見せない。

 

 誘われているのか、それとも本当に単に防御しようとしているだけなのか…真人と同じく明確な敵との戦闘経験の浅い葛城廻には相手が何をしようとしているのか、何を狙っているのかを看破することが出来ない。

 

 だが、しかし───

 

 

───()()()()()()

 

 

 思考の海、無意識化で出てきた言葉はそんな言葉だった。

 

 殴り殺す、蹴り殺す…どうせそれしか出来ないのだ、どうせそれしか知らないのだ…相手の手札が分からない以上は此方から攻め入って相手に手札を晒させるしかない…葛城廻は、そう判断した。

 

 踏み締める…接敵まで残り僅かと言った瞬間に廻は大きく地面を踏み締め、急速に前方へと跳んだ。

 

 唐突な前方への跳躍、近接の間合いに入る僅か一歩二歩の前に行われたその行動により葛城廻への真人の予測が僅かにズレた…つまり、防御が一コンマ分間に合わない。

 

 足を前に突き出しての跳び蹴り、ヤクザキックか何かのような雑さと荒っぽさで放たれたその一撃が真人の防御をすり抜け、その顔面へと直撃する。

 

 突き刺さる靴底、ドグシャァッと生々しい音を立てて皮膚へとめり込んだ廻の蹴りは傍から見れば良い一撃を浴びせたと、見事な一撃を喰らってしまったと周囲の人間に思わせるのかもしれない…だが───

 

 

───なんだ、この感じ…蹴った気がしない。

 

 

 肉体を通じて脳へと届く確かな違和感…手応えもある、蹴った感触もそこから伝わる衝撃が届いた感覚も確かにある…だがしかし、それでも葛城廻は目の前の存在にダメージを与えたという実感を抱けないでいた。

 

 何かが可笑しい…そんな確信にも似た疑問を抱いた廻のソレに応えるように、クハッと気色の悪い声と共に真人が嗤う。

 

 瞬間、真人の両手が廻を狙う…一撃を与えると言うより触れることを目的としているようにその掌を大きく開けたその動きに、廻は肉体に悪寒が奔った。

 

 触れたら不味い、触れれば死ぬ…直感的に、本能的にそう悟ったのだろうその小さな身体は真人自身の頭を踏み台としてその後方へと大きく飛び退く、頬を伝う冷や汗は先程のソレが尋常ならざるモノの証であるように思えた。

 

 

「あ〜あ…逃げられちゃった」

 

 あたかも残念そうに、捕まえようとした虫に逃げられた子供のような声を上げる真人、顔面に大きく残った靴底の跡がみるみる消えていくのを悠然と見せつけながら『人の呪霊』はこれみよがしに嗤ってみせる。

 

 お前の攻撃は効かない、無駄なんだと突き付けるように…お前の攻撃は俺の核にはまるで届いていないのだと、そう宣言するように。

 

 軽薄に嗤うこの世なるざる呪いの塊、いずれは人を欺き騙し殺すことを悦楽とする、呪いの本能のままに生きるであろう魔性の怪物…そんな存在に葛城廻は───

 

 

「───…ふぃ〜」

 

 一つ、軽く息を吐き出した。

 

 まるで一仕事終えた大人のように、まるで一段落を付けた誰かのように、今正に命を刈り取られる刈り取られないかの領域に立っているはずの少年は…なんてことないようにただ息を吐き出した。

 

 足が動く、脅威であるはずの真人から視線を外して何処かへと散歩でもするように歩き出していく。

 

 明確な隙、手を出すには絶好の機会…しかし、真人はそこへと手を出す気にはなれなかった。

 

 手を出せばとんでもないしっぺ返しが待っている気がする…そんな確信が真人の中にはあった。

 

 元来真人はお喋りな性格だ…仲間には勿論として敵対している術師相手でも遠慮無しに会話を実行しようとする、敵相手に行うそれの大半は煽りに近しいかもしれないが、それでも本来であれば真人は喋りたがりの存在だ。

 

 それがことこの場に於いてはまるで喋らない、空気ガン無視克つおちゃらけた様子で喋り始めるだろうその口を開かない…それほどまでの警戒を、真人は眼前の存在に抱いているということだった。

 

 ジャリジャリと足音が響き、止まる…ころりっと唐突に身体を沈ませ拾い上げられたソレは、つい先程真人が薙ぎ払った木々の残骸だった。

 

 綺麗とは言い難い凸凹の形状、手を擦らせればきっとすいばりでも刺さってしまいそうな…そんな荒い形状の木片、真人が薙いだ木々の破片なのだからそれも当然のことではあるが。

 

 くるりくるりと手元で弄びながらまるで感触を確かめるようにぐっぐっと木片を握り締める廻、無感動に無表情にそれを行う姿に真人は無造作にその腕を刃へと変化させる。

 

 何かしてくるな…確信にも近いその予測を信じて、真人はまずは小手調べと言わんばかりに改造人間を吐き出し、それを廻目掛けて射出した………その瞬間だった。

 

 葛城廻の瞳が…満月が、真人を捉えた。

 

 

 

 

 

 

 瞬間、葛城廻の姿が掻き消える。

 

 黒い残光、弾けた黒い火花をその場に残して爆音と共に地面を抉ってその場から消える…一瞬にして視界の中から消えた廻に真人の瞳は見開かれ…その背後に、葛城廻は出現する。

 

 

「───えっ…?」

 

 

 間の抜けた真人の声…あまりにも速すぎる、埒外にも等しいその速度に理解を超えたモノを見るような目を廻へと向けた真人は、次の瞬間にはその鳩尾に何かを突き刺されていた。

 

 グチャッと響く肉々しい音、鋭くなく何方かと言うと粗雑な素材で以て突き刺されたようなその感覚に真人はその正体へと視線を向ける。

 

 突き刺さっていたのは先程の木片…粗雑で凸凹とした単なる木片が呪力と共に己の鳩尾へと突き刺さっていた…だがしかし、それに対してだから何だと言えるのが真人である。

 

 真人の術式は魂に触れ、その形を変幻自在に操り変える『無為転変』…そしてその対象には真人自身も含まれ、そこに対するリスクは0に等しい。

 

 その術式の性質上、どれだけ肉体を破壊されようが呪力さえあれば、魂に直接干渉されない限り即座に再生できる事実上の不死身の存在…それこそが真人である。

 

 呪力が尽きるまでダメージを与え続ける、一撃で真人自身の肉体を粉々に破壊ないし消滅させる等の方法であればまだ有効ではあるかもしれないが…前者はともかく後者に於ける手段を葛城廻は持ち合わせない…他にも魂の輪郭を知覚するというものもあるが、先の一撃でそれが出来ないことを真人は既に認識している。

 

 手詰まり、詰み手前…こうして破片を突き刺した所で何の意味も無い、ただ悪戯にカウンターの機会を与えるだけなのだ。

 

 馬鹿、愚か、間抜け…そんな思考と罵倒を思い浮かべながら真人は凄惨に嗤い、今度は最も確実な方法で廻を仕留めようと呪力を回した…その直後、異変は引き起こされる。

 

 

 真人の身体が膨らみ…弾けた。

 

 

 

「───………はっ?」

 

 

 またもや、間の抜けた声…明確な驚愕と共に血反吐を吐き出した真人はそのまま前のめりに地面に倒れ込む。

 

 意味が分からない、何をされた…そんな焦りと驚愕の思考が真人の思考を巡る、魂ごと肉体を破壊されたという事実に真人は半ばパニック状態に陥っていた。

 

 …それも当然だろう、知るはずがないだろう…何故ならこの技術は本来起こり得る未来から逆輸入する形で行われたものなのだから。

 

 本来の時間軸…与幸吉が対真人に対して練り上げた対策、真人自身とそこから繰り出される領域、そしてその後に待ち受ける黒幕相手にと限定的な手法で実現させた…()()()()()

 

 大凡千年前…かつて最強と謳われた術師が同じことを出来ないかと思案し、苦悩し、その果てに生み出し結局ついぞ使うことの無かった物体を通した対『人の呪霊』用の特攻作。

 

 

 

───シン・陰流『簡易領域』

 

 

 

 本来であれば覚えていないはずのその技術、千年前に置いてきたはずのその力は、しかし当たり前のように馴染んでしまっていた死の淵へと再び立ったことによりその面を上げる。

 

 

 かつて最強と謳われた平安の術師…その魂に染み付いた戦いの本能が、今ここにて産声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 





 どうしてもやりたかったあの簡易領域みたいなことをやってみたかった…反省はしている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。