宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 なんか、伏黒をボコボコにしたかった。


番外編 IF編 『蹂躙』

 

 降り注ぐ雨が道路を叩く音が耳に届く、空を覆う曇天は今現在の状況を指しているかのようで心中の不安を掻き立てる。

 

 生得領域が閉じたことを伏黒恵は確認出来ていた…生得領域が閉じたということはその主であった特級呪霊が死んだということだ…目論見は、上手く行ったと言って良かった。

 

 後は仲間が…虎杖悠仁が今この場に帰って来れればそれで事態は満遍なく終わる、例え無傷でなかったのだとしても無事に帰ってきさえすれば、傷は最悪後でも治せるのだから。

 

 

「───小僧は戻らんぞ…遺憾なことにな」

 

 そんな伏黒の淡い期待は、背後から響いたその声によって簡単に踏み潰された。

 

 無気力、無感動、無関心…感情の乗らない声と共にそう囁いた呪いの王の存在に伏黒の全身に脂汗が噴き出る、正に今死と隣り合わせの状況に直面しているという現実に伏黒の身体は無意識の内に動き出していた。

 

 印を組む…何でもいい、せめて距離を離せるような式神を呼び出そうとした…そんな伏黒の横腹に徐に宿儺の足が突き刺さる。

 

 息が止まる、身体が痺れて意識が停止する…思考が動きが取り戻したのは地面を転がる感覚を自覚した時だった。

 

 

「カッ…」

 

 口から漏れ出たのは呼吸を忘れていた人間特有の音、吐き出すだけの空気も無い身体が急速に酸素の補充を欲し始める、忘れていた生命維持の為の行動を伏黒の身体はようやく行い始めた。

 

 

「───ツケだ…何の縛りも無く俺を利用したことへの」

 

 伏黒の耳に呪いの王の言葉が届く、視線を上げた先で宿儺は至極どうでもよさそうな顔と声色の中で心底つまらなそうにトントンッと自身の心臓付近を指で叩いた。

 

「手こずっておるのだ、俺と変わるのにな…当然だ、身の程を弁えないからこうなる」

 

 表情も変えず淡々と事態の成り行きと原因を語る宿儺、それに伏黒は痛みに呻きながらも両足で立ち上がる、ゴホゴホっと口の中に混じる鉄の味に不快に思いながらもその瞳は呪いの王から逸らされない。

 

 何をしてくるか分からない、そもそも背後に立たれていたことにすら気がつけなかったのに、その気になった呪いの王相手に何が出来るのか…恐らく何も出来ないだろうと伏黒は考える。

 

 そんな伏黒の心境を他所に、宿儺は降りしきる雨へと手を伸ばし、掴み取るようにその掌を閉じた。

 

 

「……あぁ…そういえばこんな日だったな、お前と会ったのも」

 

 囁くように、呟くように…もしかしたら、宿儺本人すらも無意識的に口にしていたのかもしれないその言葉…懐かしむように、遠い何時かを想起するように発せられたその言葉は、到底呪いの王と呼ばれた存在から出たとは思えない程に、哀愁に満ちたものだった。

 

 伏黒のことなぞ眼中に無い、ここには居ない誰かを見ているようなその瞳に伏黒は思わず疑問符を頭の中に浮かべた…そして、そんな伏黒へと宿儺は徐に視線を向ける。

 

 

「…まぁ、特段やることもやりたいこともなかったのでな…このまま大人しく引っ込んでやろうとも思っていたのだが…あぁ───」

 

 

───気が変わった。

 

 

 瞬間、両面宿儺の瞳に色が灯る…殺意と言う名の色が。

 

 

「お前だ、伏黒恵…そういえばお前がいたなと思い出した、()と同じ術式を持つお前が居たのだったなと、ついさっき思い出した」

 

 身体が伏黒の方向へと向く、無造作に歩を進めた宿儺の動きに伏黒の身体は過剰なまでの反応を見せる。

 

 飛び退く、足が濡れた地面を滑る感覚、姿勢を低くし今度こそはと印を結び自身の術式を発動させる。

 

 

───『鵺』

 

 

 呼び出されたのは紫電を纏う怪鳥の式神、髑髏のような仮面を備え付けた橙色の毛並みを震わせる獣の姿…それに対して宿儺はその瞳を不機嫌そうに細め、呟いた。

 

 

「───鈍い」

 

 

 瞬間、伏黒の目の前に掌が迫る。

 

 埒外の速度、伏黒恵という人間が捉えられる許容限界をいとも容易く踏み越えたその速さに伏黒は反応することすら出来なかった。

 

 目の前に掌が迫った…そう認識したその次の瞬間には既に痛みが後頭部から発生している。

 

 

「───ガッ!?」

 

 遅れて聞こえてくる破砕音、地面に叩きつけられたことで発生した衝撃とそれによって生じた余波、亀裂を走らせ破片を撒き散らしたその一撃は伏黒の思考を止めるには十分過ぎる一撃だった。

 

「───鈍いなぁ、あぁ〜あぁ〜実に鈍い」

 

 上から届く宿儺の声、伏黒の耳には届いていないそれを呪いの王は構わず吐き出していく。

 

 

「呼び出しが遅い、反応も遅い、判断も遅ければ呪力の巡りも甚だ遅い…採点しようにも、これでは採点のしようが無い」

 

 色の乗らない声、熱の籠もらない音、淡々と伏黒の上から響いてくるその言葉の端々から伝わってくる確かな落胆…覗き込む形で伏黒の真上に位置する呪いの王は構わず言葉を続けようとする…その真横から突っ込んできた鵺の頭を、宿儺は唐突に鷲掴みにした。

 

 

「…弱いな、やはり」

 

 ジタバタと暴れる怪鳥、至極冷めた表情でそれを見つめた宿儺はふとそう呟いた。

 

 弱い、あまりに弱いのだ…かつての宿敵であれば、今の突撃で最悪腕の一本は持っていかれていた可能性があった…勿論、万全の状態の上で…だ。

 

 当然のことながら、現状であれば即死していても可笑しくない…そんな怪物と比較して見てみれば、なんだこの弱さはと…呪いの王がそう思ってしまうのも仕方のないことことなのかもしれない。

 

 比較対象が、あまりにも悪すぎる。

 

 

───『大蛇』

 

 両面宿儺という存在が、自分を誰と比較しているのかも知らないまま、伏黒は現状の打開の為に動き出す。

 

 ひとまず距離をと、そう思ったのだろう…巨体による質量、それによる押し出し、突如として目の前に現れた巨大な牙と大きな口が眼前いっぱいに迫りくる。

 

 噛みつかれて上へ上へと昇っていく、空高く真っ直ぐと昇った大蛇の身体、その最先端に位置する呪いの王は特に焦りの表情を浮かべることも無ければ何かを思うこともなく…ただ一つ、ため息を吐き出す。

 

 

───真面目にやれ。

 

 

 そんな言葉が、遠く離れたはずの伏黒の耳に届いた気がした。

 

 

 瞬間、大蛇の肉体がバラバラに斬り刻まれる…まるで飴細工のように、まるでミキサーに掛けられた肉か野菜かのように、頭部から端へと至るまで徹底的に粉微塵に寸断される。

 

 パラパラと落ちてくる大蛇であったはずの肉塊、雨に紛れて落ちてくるその白いナニかを唖然と目を見開きながら、伏黒は絶句していた。

 

 分かっていた、分かっていた…力の差など分かっていたのだ…だが、こうも圧倒的なものなのか。

 

 心中を過る圧倒的なまでの力量差への絶望に近い感情、天高くから己を冷たく見下ろす絶対者の姿に伏黒の中に欠片でもあったその迷いは確かに消えた。

 

 

───布瑠部由良由良

 

 

 切り札の行使、自爆技の解禁…使えば自身の死が確定しているであろうその手を切ることに、最早伏黒恵は何の躊躇も抱いていなかった。

 

 だが…しかし───

 

 

───キンッ…!

 

 

 その直後に鳴り響いたように錯覚する斬撃の音、天から見下ろす魔王の包丁が、情けも容赦も慈悲も無くただただ無慈悲に振るわれた。

 

 吹き出す鮮血、血を濡らす原初の赤、ぼとりと落ちたその音と感触が伏黒恵に現状を明確に認識させるに至る。

 

 斬り落とされていた…伏黒恵の片手が、掌印を組んでいた伏黒恵の片腕が綺麗の断面と共に斬り落とされていた。

 

 事実を認識するのに時間を要した…あまりに速い、あまりに鋭い…故に、伏黒恵がそれを実感するのに…その痛みを認識するのに僅かなりとも時間を要した。

 

 吹き出す冷や汗と脂汗、肉体が出血による倦怠感を覚えると共にやってくる激痛、痛くて痛くて仕方がないという感じたことのない感覚…そして、切り札という手段を今ここに失ったという現実が纏めて伏黒恵へと降り注ぐ。

 

 

「───治せ」

 

 そこへ、魔王の言葉が無慈悲に響く。

 

 

「治せ、治せるはずだ…例え片腕だけでもあの『鹿』を呼び出せることは知っている…治せ、待ってやる」

 

 続けて響く魔王の言葉、淡々と紡がれるそれに困惑したのは伏黒だ、何のことを言っているのかがまるきり分からないからだ。

 

 何の話だ、鹿とは何だ、片手を斬り落とされた状態で呼べるわけがないだろう…そんな言葉の羅列が思考を巡る中で、そんな伏黒の様子に気が付いた宿儺は、冗談めかしたように口を開いた。

 

 

「おい、早くしろ…まさか呼べないというわけでもないだろう?」

 

 

 淡々と…しかし明確に冗談めかして紡がれたその言葉、まさかそんなことはないだろうと言うニュアンスを明瞭に含んだその言葉にしかし伏黒は何も返さなかった。

 

 この時点でまさか円鹿のことを言っているのかと、ようやくその結論へと辿り着いていた伏黒には当然その言葉に返事をするような余裕は無く、そしてそんな伏黒にまさかまさかと宿儺は僅かに瞳を見開いた。

 

 

「───呼べないのか?」

 

 静寂が世界を支配する、雨音だけが響くその場に音を鳴らす人間は誰もいない、滴り落ちる血と赤の吹き出す片手の音だけがそこにはある。

 

 そうか…と宿儺が重たく一言呟く、大きな大きなため息を吐き出した呪いの王はそうかそうかと言わんばかりに頭に手をやった。

 

 

「───もういい、死ね」

 

 

 王は、待つのを止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 





呪いの王

 現在の気分:満漢全席をゼンゼロのリナの料理に改造されたような心境…なんでお前その術式でそこまで弱いの?(意訳)



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