宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 最近の作者の脳内

 魔虚羅の適応の範囲が思いの外デカくて混乱中。


番外編 IF編 『死別/鬼ごっこ』

 

 

 無慈悲な魔王の言の葉、耳に届いた所で最早どうしようもないその現状の中で、しかし伏黒恵は未だに諦めていなかった。

 

 どうする、どうすれば良い、どう動けばこの状況を打開出来る。

 

 片手を失ったことで掌印を結べなくなった、片手でも印を組めた大蛇は既に破壊され、肝心の切り札も両手が無ければ呼び出すこともままならない。

 

 詰み…そんな言葉が頭の中を満たしていく、頭が良かろうと悪かろうと関係無い、奥底に眠る人間としての本能が目の前の現実がどうにもならない絶望そのものであるという事実を無情に突きつけてくる。

 

 可能性があるとすれば宿儺の言っていた式神を召喚すること…恐らく口ぶり的に円鹿のことを言っているのだろうが、残念ながら伏黒恵は円鹿の調伏を済ませていない…いや、よしんば済ませていたとしても片手で呼び出す為の方法を用意していない。

 

 どうにもならない…そう、最早どうにもならないのだ、何をどうしようとも結局の所は無駄、徒労に終わると伏黒の頭に結論を出してしまっていた、例え本人が諦めるという選択肢を除外していてもその事実だけは変わらない。

 

 時間にしてどれほどであったのだろうか…きっと、ほんの僅かであったのであろうその思考の時間、心底失望したと言わんばかりの瞳で伏黒を見据える呪いの王が術式を放つ…その瞬間に至る僅かな時間であったのかもしれない。

 

 

───あっ…死んだ

 

 

 伏黒恵の全てがその瞬間、死を直感した……そんな時だった。

 

 血飛沫が舞う、ダラダラと流れ落ちる血液と口元から垂れる赤がその現実を認識させる。

 

 伏黒恵の肉体が斬り裂かれ、その命を散らした…違う、そうじゃない。

 

 

 

 

 血液の主は…呪いの王だった。

 

 

 

 

 

 

 驚愕…心底から驚いた言わんばかりの瞳で自身の身体へと目を向ける宿儺、そしてその光景を呆然と見つめる伏黒恵…この場にいる全てがその予想外の出来事に心底から驚いていた。

 

 貫いていた…両面宿儺、その片腕が真っ直ぐと自分自身の肉体へと手を突っ込んでいた。

 

 何故、どうして…何故にそんな自傷行為に走ったのか、何故にそんな自分の命を削るような真似をしてみせたのか…その意図をまるで読み切れなかった伏黒は知らずの内に息を呑み…ふと、呟いた。

 

 

「───虎…杖?」

 

 

 ほぼ無意識化での言葉だった…どうして、よりにもよってその男の名前が出てくるのかと、どうしてよりにもよって呪いの王の内側に居るだろう仲間の名前が出てくるのかと…そうであって欲しくはないという伏黒の内心とは裏腹にその片腕は更に動きを見せる。

 

 引き抜いた…大量の血液を撒き散らしながら力にモノを言わせたやり方で片腕は大きく引き抜かれた…その手の中に、未だドクドクと脈打つ心臓を納めながら。

 

 

 伏黒の予感は当たっていた…肉体の主導権を取り戻すことに苦戦していた虎杖は嬲られ足蹴にされる伏黒の姿を間近で見ていた…当然、後一歩の所で伏黒が殺されるであろう現場も。

 

 

───お前は強いから人を助けろ。

 

 

 頭に過る呪いの言葉、祖父から与えられた最後の言葉…それが、虎杖悠仁という人間にその選択をさせた。

 

 このまま行けば自身が主導権を取り戻す前に伏黒が死んでしまう…そう直感した虎杖は主導権を完全に取り戻すことを諦め、片腕の主導権を取り戻すことだけに専心した。

 

 結果、肉体全てを取り戻すよりも遥かに楽に事を終えた虎杖は未だ蹂躙を続ける呪いの王、その心の臓へと手を伸ばし…自身の死をも厭わず、ソレを抉り取った。

 

 心臓を失ってしまえばどんな生物も生きてはいけない、それはきっと両面宿儺も例外ではない…そう考えた末の行動だった。

 

 残念なことに両面宿儺は心臓無しでの生存を可能とする、虎杖の行動は無駄に終わったかのように思えた…だが、しかし───

 

 

「───チッ」

 

 

 心臓の損傷という無視出来ないダメージ、それに加えて伏黒恵との戦闘とも呼べない蹂躙による多少なりの時間の経過…その二つの要素が、肉体の主導を虎杖側へと傾けた。

 

 結果…その瞬間は訪れた。

 

 ため息を一つ吐き出す…訪れた時間切れ、虎杖悠仁の想定外により始まった一連の事柄、その終息…それら全てに対してようやく終わったと言わんばかりに重く息を吐き出した呪いの王は…最後の最後にその口を開いた。

 

 

「───小僧に感謝しておけ、出来損ない(伏黒恵)

 

 

 込められた侮蔑、心底からの失望と路上の石ころでも見るかのような冷たさを露骨に捻出したそんな言葉と共に、呪いの王の気配は消失した…べチャリと地面へと落ちる心臓の音が、ただ静かな空間に一石を投じた。

 

 雨の音だけが響く、言葉一つ出てこない…否、何を言えば良いのか分からないとでも言えば良いのか…そんな中で、虎杖は気の抜けたような笑顔を浮かべて、何も変わらないように口を開いた。

 

 

「───悪い伏黒、迷惑掛けた…長生きしろよ」

 

 

 それが、最後の言葉だった。

 

 ドチャリと倒れ込んだ虎杖の身体、ダクダクと流れる血が徐々にそこへと血溜まりを作っていく…それを、伏黒はただ呆然と見つめていることしか出来なかった。

 

 何を言えば良い、何と声をかければ良い…否、全てが無駄だ、何故なら虎杖悠仁はもう死んでいるのだから、もう伏黒恵の言葉は届かないのだから。

 

 最悪だった…よりにもよって最後に謝らせてしまった、助けられたのは此方側だと言うのに、それを言わなければならないの自分の方だったのに。

 

 どうしてこうなった、なんでこうなった…決まっている。

 

 特級どうこうではない、宿儺どうこうではない…いや、寧ろチャンスという意味では宿儺の時の方がまだ可能性があった…それを摘み取れなかったのは自分自身の怠慢が原因だ。

 

 簡単な話だ…(伏黒恵)が弱いからこうなった…(伏黒恵)が弱いから虎杖悠仁は自らその命を投げ捨てねばならなくなった…混乱と絶望の中で、伏黒はそう結論を下した、下さざるを得なかった。

 

 

 雨が降る、足元にまで届いた血の跡がまるで呪いのように伏黒の足元へとこびり付く、まるでお前のせいだと…そう言わんばかりに。

 

 

 雨は、止んではくれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 足音が響いた…人が駆ける音、素早く規則良く響く疾走の音がその空間に響き渡る。

 

 そこは暗かった…僅かな明かり、小さな電灯とでも呼ぶべきモノが少なくあるその空間、赤錆びた地面と硬質に響くその音がそこを室内であると認識させる。

 

 ギィギぃッと鳴り響く錆びついた音、暗闇の中にあるが故なのか妙に音が響くような感覚がするその場所で疾走の音と共に響き渡る…異形の音。

 

 幾つも存在する手のように思える白い触手、それに引き摺らせるように存在する黒い身体に顔らしき部分に存在する一本線の入った白い仮面、背負った袋をそのままに猛スピードで迫ってくるソレに対して、少年は全力で駆け出していた。

 

 そう、葛城廻である…さびれた町に迷い込み、お遊び気分のまま探索を繰り返し工場らしき場所に入った廻は現在、絶賛謎のお化けらしき存在に追いかけ回されていた。

 

 町中で拾った懐中電灯片手に暗闇の中を進んでいる中でばったりと出会ったお化け、今まで出会ってきたモノとあからさまに毛色の違うその存在を前に廻は真っ先に逃走を選択した。

 

 勝てる勝てないじゃない、何となく殴っちゃいけない感じがした…というのは当時を振り返った葛城廻本人の言葉である。

 

 タンタンタンタンっと錆びつく床を踏みしめながら軽やかに足を動かす廻とそれを全力で追いかけ回す謎のお化け、階段の手すりを滑り降り、遠く離れた場所へと手すりを踏みしめ跳び移る…そのように動き回り跳び回りを繰り返す廻の逃げっぷりに、お化けも若干疲れているかのように感じられた。

 

 

───あともうちょいで撒けるかな?

 

 

 逃げ回りながら廻はそんなこと考える…なんてことない、なんとなくそう思っただけだった…ただ、なんか疲れてそうだからそろそろ諦めてくれるかなと、なんとなくそう思っただけのことだった。

 

 床を踏みしめブレーキを掛ける、キキィッと甲高い音を立てながら速度を落とした廻はそのまま曲がり角目掛けてまるでドリフトのような旋回を行いながらその奥目掛けて加速を始めた…そんな時だった。

 

 踏み締めた足、広がる通路…無数に枝分かれした分かれ道の一つ、その奥の暗闇にて…一つの影が、ゆらりとその身体が起こした。

 

 それは、なんと言うべきであったのだろう…シルエットだけ見るならタツノオトシゴのように思える…否、羽根があるから虫なのだろうか、しかし上半身が若干人のように思えた。

 

 分かっているのはそれが巨体であること、それが異形であろうこと…ふとしたようにその方向へと目を向けた廻はその存在がぐらりと此方へと視線を向けたことを直感した。

 

 

───あっ…やっべっ

 

 

 そう思考した瞬間、影は真っ直ぐと廻目掛けて突進を開始した。

 

 凄まじい速度、純粋な直線勝負であるのならばあの黒いお化けよりもずっと速い、廻に接敵するのにそこまで時間は掛からず、そしてその存在を前に若干動きを止めていた廻はその接近を容易く許してしまう。

 

 間近に迫ったその存在、それが故に廻はその容貌をハッキリと認識してしまう。

 

 人のように思える上半身に色んなモノを混ぜ込んだような下半身、手や指を思わせる器官が下半身前部に存在し、後側には虫を思わせるような器官があった。

 

 顔は…なんと言えば良いのか、人かハニワかそれとも別のものなのか…なんと言えば良いのか分からないというのが廻の感想だった。

 

 それが目と鼻の先に存在していた、ソレが目と鼻の先まで突っ込んできていた、あと少しソレは自分の身体へと激突する…その事実を前に、廻は───

 

 

 

「───えっ、キモ」

 

 

 そんな軽い言葉と共に、その横面へと全力の蹴りを叩き込んでいた。

 

 叩き込まれた横面への蹴り、恐らく全く予期していなかっただろう一撃に異形は悲鳴を上げながら壁に突っ込み瓦礫の中へとその姿を消していった…なんとも言えない空気がそこにはあった。

 

 

「…なんだったんだろ、今の」

 

 

 そんななんとも言えないような声色にて呟かれたその言葉の後、思い出しように廻はお化けからの逃走を再開した。

 

 

 なお、その後…今こうして繰り広げられている鬼ごっこに、この異形の姿が追加されたことは、言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





虎杖について

 やるかやらないかで言うなら多分やるだろうと思って書いた、というかそうじゃなきゃ原作であんなことしないと作者は思ってる。



さびれた町について

 一応廻以外にも迷い込んだ人間が居るが、大半は初手に出会った奴で死ぬ、生き残った奴等もその次ので粗方死ぬ、それでも生き残った奴は大概日車クラスに強くないとこれまた死ぬ…そんな魔境です。

 なお、偶に死印ばりのギミックボスがポップする。




黒いお化けについて

『あの子供、無茶苦茶足速ぇ!?』
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