なんか…色々耐えきれなくてこういう風に書いてしまった…やっぱりバトル書いてるのがすごく楽しいのよね、私。
ガタンゴトンッと、視界の端へと電車が走っていく…古い町並みを通り過ぎて、その車内に灯る小さな明かりが夜の闇へと消えていく光景を、廻は見届けていた。
あの後のことを話そう…貰ったおにぎりを食い終えた廻はその後、特に何もなく目的の駅へと降りることに成功していた。
おにぎりをくれた親切な誰か、そういえば名前を聞いていなかったとなんとなしに思い出すその男と短い上に他愛もない会話を何度か繰り返し、目的の駅で降りる際にも特に何かしらの事柄も無くただご飯をくれてありがとうごさいました…と言ったありきたりなお礼と共に普通に降りた。
時間は既に深夜だった…先も見えない暗闇の中、雲が月を覆い隠しているせいで余計に深く感じる暗い闇、駅の電灯だけがポツリとあって虫の鳴き声が嫌に大きく聞こえてくるような…そんな静かで見慣れた場所がそこにはあった。
それを感じると廻はふと、酷く安心したような心地になった…本音を言うならこうして帰って来れたのは本当に意外だったのだ、もしかしたら日を跨ぐかもしれないとちょっとした覚悟すらしていたと言うのに…運の良いことに帰ってこれてしまった。
今日は良い人にばかり会うなぁ…と、そんな風に思うのも仕方なのないことなのではなかろうか。
例え、その中身が片や呪いの王で、片やこの国に災厄を齎そうとしている特級の呪いなのだとしても…それを知らない廻にしてみれば自分を助けてくれた単なる良い人にしかならないのだから、そう思ってしまうのも、仕方のないことなのではなかろうか…事実、助けられているのだから。
「…母さん、怒ってるんだろうなぁ」
そんなことをボヤきながら、家に帰ろうとする…あの村に入ってからの廻の時間感覚は酷く曖昧だった…長くて一日だろうと思いながら外に出てみれば、三日以上も経っていた上に場所も入ってきた所とは全く別の場所だったのだ…お陰で、こうして苦労してしまっている。
今頃母さんは何をしているだろうか…フライパン片手に怒り心頭で待っているのだろうか、包丁を研ぎながら怒り心頭で待っているのだろうか、それとも父の胸ぐらを掴んで怒り心頭な様子でブンブンと振り回しているのだろうか…何を考えても、怒り心頭な母のことしか思い浮かばない辺り、廻が母親をどう認識しているのかが良く分かる。
家での母の怒り様に憂鬱になりながら、ふと痒みを感じた頭皮をガリガリと掻きながら、覚えのある暗い帰り道を行こうとした……そんな時だった。
ふと、視界が明るくなった。
オレンジ色の色彩、直視すれば眩しくて目を閉じてしまいたくなるような鮮烈な輝きと共に視界一杯にその
「───…えっ…?」
間の抜けた声が漏れ出た、あまりに唐突な出来ごとに対して葛城廻の口から漏れ出てきてしまった声だった…まるで漫画かアニメのような光景、おばけを倒していた時もこんなものは見たことがなかった…それ故の、間の抜けたこの反応だった。
爆ぜ飛ぶ…着弾と共に爆裂、強大な破裂音のような音を響かせながら黒煙が上がる…余波で周囲の地面に炎が奔り、溶け合わせた標識がガラガラと音を立てて地面へと落ちる…ガラガラと道を転がっていき、最後には一人の足元の側でガラリと倒れた。
向けた掌から熱線の跡を残した一つ目の怪物、頭が富士山のような形状をしたその頭部は火山のようにマグマを内包し、その一つ目の赤い瞳は至極油断ならないモノを見るかのように鋭く灯っていた。
その一つ目の側に在る二つの人影…一つは白い巨体の怪物、筋肉隆々の肉体に枝葉のように黒い紋様が奔り、本来目があるだろう場所からは植物の枝が生えていた。
もう一人は五条袈裟の男…頭部に縫い目を残した胡散臭い顔立ちをした男、その頬には冷や汗が流れ、今正に直撃したように見える炎の向こう側を目を離すこともなく直視していた。
パチリパチリと火の粉が散る、吹いた風がさらりと頬を撫でて通り過ぎてゆく…熱線を放ったその向こう側、直撃したであろう子供の存在を前に三者は一切の警戒を解くことなく、その神経を尖らさていた。
「───…いっったいなぁ…」
ふと、炎の向こう側からそんな言葉が聞こえた。
パンパンと肌を叩く音、何かを払うような動作をする影と共に足音が響く…靴の音ではない、裸足の音だった、先の熱線で壊れたか溶けたかは知らないが…どうにも靴を脱いでいるらしかった。
「───痛ったいなぁぁっ……!!」
苛立ちを隠しきれない…そんな様子で痛みを吐き出す子供の声、ペチペチと僅かに聞こえてくる裸足が地面を踏んで歩く音…その間に攻撃でもすれば良い、一撃を加えてしまえば良い…そう思ってはいても三者の身体は動かなかった。
下手に動けばそれが死の合図になる…そんな確信があった……まるで、野生動物に遭遇した一般人のように。
てちてち、ペチペチ…足音が響く、炎の向こう側から悠然と淡々と、なんてことない当たり前のようにその影を映し出しながら。
「───あぁ、そうか……お前か」
始まりは、唐突だった。
小さく呟いたような言葉、温度の抜け落ちたようなその言葉…それが発せられるとほぼ同時に、それが三者の耳に届くのとほぼ同時に…富士山……漏瑚の懐に、葛城廻は入り込んでいた。
───速っ…!?
何時の間に、術式の効果か? …そんな思考を重ねるよりも早く、廻は漏瑚の腹部へと打撃を打ち込んだ。
ズガンッと鳴り響く打撃の音、他二名の反応が追いつかないほどの速度による懐への侵入とその加速を乗せた踏み込みからの一撃…その結果は言わずもがな。
重く重く響く打撃の感触、打たれた先から内臓が逆流するような感覚が喉元までやってくる、思わず吐き出した紫色の血液が宙を舞った。
「…何だ、あんたもお化けなのか…なら───」
───殺しても、一応は大丈夫か。
冷たく無感動に響く殺害宣言、拳に打たれたことで背面へと飛んだ漏瑚の肉体へ更なる追撃を仕掛けようと廻が拳を鳴らし、振り被る。
『───漏瑚ッ!!』
しかし、それを許す白い巨体こと『花御』ではない…即座に大量の樹木を廻目掛けて射出、物量によるゴリ押しで廻の身体を後方へと押し出そうとする。
放たれた樹木、視界一杯に広がる木の色…迎撃出来るような数と物量ではない、普通ならば防ぐか躱すかの二択が堅実…だが、しかし───
「───邪魔…!!」
葛城廻は、その真逆を行く。
拳を樹木へと思い切り叩きつける…真正面から堂々と、一切背中を向けることなく真っ向からその一撃を叩きつける…そして、そんな廻に応えるように黒い火花は飛び散った。
粉砕される樹木達、放たれたその全てを踏み越えるように弾けた黒い火花は葛城廻の拳を花御へと届けさせる、打ち放たれ突き抜けた2.5乗の一撃は花御の右腕部へと直撃し、それを根本から吹き飛ばすに至る。
根本から吹き飛んだ右腕、先程まで存在したその箇所から確かな激痛が迸る、術式による攻撃ごと身体を欠損させられた事実に花御は戦慄を覚えた。
───真人から聞いていた話よりも、数段強いッ…!!?
怯えながら目の前の子供について語った真人、自身の魂を直接打ち抜いた、手も足も出なかったとして真人は怯えていたが…花御や漏瑚達からしてみればその実力の程は問題無い程度のモノに思えた。
真人は実戦の経験が自分よりも少ないという前提があったのもあるが、何よりそうした天敵に遭遇した経験が無いというのもあったのだ…もしも経験を積んだ真人であれば恐らく負けることは無かっただろう…少なくとも花御はそう認識していた。
だが、蓋を開けてみればこれだ。
吹き飛んだ右腕が地面に落ちる、砕かれた樹木の先で暗く輝く満月が如き瞳が自身を見据える…まるで次の獲物を見つけた獣のように。
───黒閃
振り抜かれる左からのフルスイング、踏み込みからの加速と横から振り抜いたことによる遠心力、それら全てを乗せて放たれた鞭を思わせるような一撃が花御の顔面を捉える…それと共に飛び散る火花、食らってはいけない一撃がモロに急所へと叩き込まれた。
身体が浮いて突き抜ける感覚、何処ぞの建物を突き抜けて壁へと激突すると共に反射的に口から夥しい量の紫が飛び出してくる…パラパラと頭の上に落ちてくる破片が身体を転がって地面へと落ちた。
深いダメージ、真面目に首が捻じれ飛ぶのではないかと本気で思わせられるほどの一撃だった…壁に埋まった身体を無理矢理引きずり出し、その視線をこれ以上無いほどの強敵へと向けた。
放たれる熱線を漏瑚の腕そのものをへし折ることでその行き先を変え、加勢に入った五条袈裟…夏油から放たれた呪霊を振り抜いた一撃にて粉砕する。
弾ける身体、雨のように振り注ぐ紫色の血液と肉片…振り注ぐそれらを浴びながら廻は更に踏み込み、夏油の顎目掛けて肘を利用した打撃を叩きつける。
ズガンッと響く重々しい打撃の音、足を僅かに折った夏油が舌打ちと共に後ろへと下がり射程から逃れようとする…それを見逃す訳がないと踏み込もうとする廻に対して、漏瑚が火口を無数に生やし、噴火による熱線を廻へと浴びせかけようとすることでそれを阻止する。
繰り広げられる激闘死闘、それら光景を見て花御は確信に至る…ここで殺さねば駄目であると。
駄目だ、これは駄目だ…直感的な感覚だった、実際に戦ったのもあるがそれ以上に呪霊としての生存本能が花御へと叫んだのが全ての要因だった。
この少年はここで殺さねば駄目だ、ここで殺さねば近い未来、自分達では手に負えないほどの怪物にこの少年は変貌してしまう。
直感的な確信、生存本能的な確信…それら全てにあまりに信憑性と説得力が存在してしまっているが故に、花御はここにてその全てを懸けることを決断するに至る。
───私の全てを捧げてでも、あの少年を討つ!!
特級相当複数人によるたった一人への攻略戦線…それが今、ここに幕を開こうとしていた。
今回の一件の裏話
メロンパンが真人から話を聞く→それ禪院廻じゃね? 戦い方とかやってること似てるし→少し偵察に行ってみて、名前違うだけでこいつそうなのでは? という思考が募っていく。
→ 一回変装して話してみる、記憶無さそうだし言動結構違うし隠してる気配も無さそうだし…ほな別人かな?→とりあえず残しておいたら損になりそうだから消しておいと方が良いかな?
→こいつ禪院廻じゃねぇかよぉぉっっ!?(今ここ)
なお、現代に於いて既に菫によるトラウマ爆撃を二回ほど食らっているものとする。
葛城廻について
禪院廻インストール:50%…大概の原因は町のせい。