ちょっとした主人公の境遇説明、呪術廻戦は難しいから不安になる定期。
まず大前提から話そう、俺は転生者だ。
ごく普通の家庭に生まれて、ごく普通の学生生活を送って、ごく普通の趣味を持ったそれはもう普通の人間だった。
趣味はゲームにアニメに漫画に映画、とにかく娯楽が好きでそれ以外は特にと言った軽いオタクみたいな人間、それが俺だった。
そんな俺なのだが…ある日の帰り道、コンビニでジャンプ買って自転車をきこきこと漕いで、気になっている漫画の続きはどうやろな〜と間抜け面晒している最中に、唐突に突っ込んできた車にお身体ミンチにされて死んだ。
痛みとか特に無い、即死だったのが唯一の救いというかなんというか、お陰で自分が死ぬ瞬間とか全く覚えてない。
ただ車のライトが目の前に急に突っ込んできたから、車に轢かれて死んだと思っただけだ。
そんなこんなで死んだ俺は…目が覚めたら子供になっていた。
女の人に抱きかかえられて、周りに着物姿の男達がいて、俺のことをジッと覗き込んでいた。
分かるだろうか? 見知らぬ男複数人が俺をジッと覗き込んでいるのだ、見知らぬ女性が俺のことを抱きかかえているのだ…正直無茶苦茶怖かった、恐怖でしかなかった。
そんなわけで、俺は泣いた、大口開けて泣いた。
今にして思ってみれば、あそこで泣けたのは本当に良かったと思う、お陰で余計に疑われずに済んだのだから。
まぁ、そうして俺は、『
そう、禪院なのだ、
その名前を聞かされた時、その名前を知った時、俺はストンと理解した…あ、これ『呪術廻戦』の世界やと。
そこからはもうとにかく必死の思いだった。
まずは時代を調べた、今が何時でどの時代で、どんな状況なのかをとにかく調べた。
ガキンチョの頃はそんな本を捲るどころか辺りを彷徨くなんてことも出来なかったから、とにかく周りの大人達に話しかけまくって情報を仕入れた。
結果として分かったのは天皇の名前が桓武天皇である…ということだった。
その時俺は思った、いや平安時代やんけ、宿儺おるやんけと。
当時、死ぬ前の俺は呪術廻戦を通して平安時代の妖怪とかに興味を持って、そこから偶発的に天皇の名前を知っていたのが幸いした…まぁお陰で絶望もしたけど。
そこからはもう必死通り越して死に物狂いだ。
禪院ということもあって訓練を始める時期が早かったのには正直助かった、お陰で俺はそれなりに良いスタートを切れたんじゃないかなと思う。
まずは呪霊が見えるかどうかを確認され、その後に術式の有無を確認された。
この時、俺に発現した術式が十種影法術だったわけだ。
まぁそこから色々と一悶着あったが、それは置いておこう、問題はこの後だ。
とにかく、俺は宿儺に出くわす可能性が非常に高いこの平安の世の中でとにかく力を求めた、だってそうしなきゃ死ぬわけだから。
その甲斐…いやせい? もあって俺は10歳ぐらいの頃にはもう呪霊討伐に駆り出されていた、死ぬかと思った。
十種があったからどうにかなったって時が何度もあった、逆に十種が無ければ俺はとっくに死んでたってことだ、毎日が毎日死んでもおかしくない地獄のような日常だった。
三級の報告があったら二級だったり、二級の報告があったら一級通り越して特級相当だったり、とにかく情報が正確じゃなかったって言うのも地獄に拍車を掛けていたと思う。
本当に、領域使ってくる奴と出会った時は終わったって思った、落花とシン・陰流使えなかったら冗談抜きで死んでたと思う。
強いて救いがあったとするなら、俺の家族は禪院家の中では割とまともな部類に入る人間であったことだろうか。
時代が時代だったから、女卑な部分は普通にあったけど、少なくとも父は母や従者みたいな人達には何もしなかったし、俺の弟はなんか気づいたら煉獄さんみたいな性格してた。
まぁ、そんな感じで足を引っ張ってくるとか家族による暗殺の心配が無かったこともあって、俺は更に自分を鍛えた。
途中で親父に嫁さん作れとグチグチ言われたり、親友の六眼持ちに子供を作らないのか? とか聞かれたけど、どうせロクでもないことになるか早死にして未亡人にしちゃうだけだからと言って毎回毎回濁した。
まぁ、結果としてその判断は正しかったと言わざるを得ない、実際俺はこうして宿儺にぶっ殺されたわけなんだから。
魔虚羅を死に物狂いで調伏した辺りだろうか、宿儺が現れて俺達は…というか平安の術師が総力を上げて宿儺に挑もうとしていた。
だから…まずは俺一人で挑むことにした。
未来で五条悟達がしようとしたことと同じだ、勝てば良し、よしんば負けたとしても弱った宿儺を相手に次から次へとぶつけていく…それくらいしか思いつかなかったとも言うけど。
当然と言うべきか、家族と親友には猛反対された。
死ぬ気か、命を無駄にする気か、一斉に殺しにいくべきだと…そう説得された。
だけど俺はそれを受け入れられなかった、だって俺は宿儺の領域がどういうものなのかを知っている。
閉じない領域、神業とも言うべきそれを相手に周りを気にしながら戦うなんてことは俺には出来なかった。
何より、俺の最終手段が半ば自爆技だったこともあって、俺は一人で戦うことを頑なに譲らなかった。
説得の甲斐もあって家族達は折れてくれた、涙を流しながら勝ってこいと、生きて帰ってこいと、そう言ってくれた。
最後の最後まで俺を許さなかった親友は、何も言わずに家を後にした、その日から俺は親友に会えていない、けどきっと見ていてくれていただろうとは思う。
そんなこんなで、家族に見送られながら、俺は宿儺に戦いを挑んで…普通にボロ負けした。
負ける気は無かったし、勝つ気もあったけど、それはそれとして普通に負けた、悔しさも感じないくらいに。
でも、目的は達成出来た、宿儺の情報を引き出すという点に於いて。
そう、俺の目的は端から勝つことじゃない、勝つ気はあったけど勝てないことは最初から分かっていた、その気はあってもあの五条悟が勝てなかった相手に勝てると思うほど驕ってなかったのだ。
俺の目的はあくまで周りの人間に宿儺の情報を後世まで残させること、宿儺の領域の詳細と術式の詳細を後に生まれる五条悟へと届けることだった。
家の奴等には宿儺の情報を文献に残して御三家に配れと命じておいた、誰か一人でも生き残りさえすれば宿儺への恐れがそれを実行させるだろうと俺は考えた。
俺個人は宿儺の切り札どころか炎さえも引き出せなかったが、きっと召喚した強化魔虚羅…仮名真・魔虚羅がそれを引き出してくれることだろう。
まぁ、そういうこともあって、俺は安心して死ねたわけなんだが……これは流石に予想外というかなんというか。
周りをきょろりきょろりと見渡して、ここが和の匂いを漂わせる屋敷であることはすぐに分かった、景色的に日本だろう。
次に自分の姿を見る、小さな掌に小さな身体に短い手足…年齢的に言えば5歳か6歳くらいだろうと当たりをつける。
試しに十種の影を出せるか試してみる…出せなかった。
つまり、俺の術式はちゃんと使えなくなっていて、今でも縛りは動いているということになる。
「…どうしよう」
口から漏れ出た、いや本当にどうしようか。
俺はあれで終わりだと思ったから文字通り全てを出し尽くしたのだ、次なんて一切想定していなかった、というか二回も生まれ変わるとか誰だって想像出来んやろ。
しかも真・魔虚羅(仮)を呼び出す為に大分無茶苦茶な縛りを結んだから、もう絶対に術式は使えないという絶望感よ。
いやはや本当にどうしよう…というかまずここは何処なんだと言う話になってくるんだが───
「…廻?」
ふと、声が聞こえた。
声の先を見つめてみれば、そこには俺の良く知ってる人がいた。
あぁ、知っているとも、知らないわけがない、何せ俺が体術の参考にした男なのだから。
黒い髪に口元に付いた傷、鍛え抜かれた身体に絶対的な強者のみが放つオーラ…あぁ、間違いない、間違いないとも。
過去編の五条悟を、情報が流れていたのと不意打ちで重症を負わせていたのだとしても、一時的に圧倒した俺の憧れの一人。
『天与の暴君』伏黒甚爾…俺の憧れが今、そこにいた。
そんな憧れに、俺の身体は考えるよりも速く動いた。
起き上がり、とてとてと憧れへと走って近づき、そして───
「兄ちゃん!」
思い切り抱きついた……ん? 兄ちゃん?
スリスリと禪院甚爾…兄ちゃんの鍛えられた腹筋に頬擦りする俺に対して、兄ちゃんは何処か優しげに俺の頭を撫でた。
瞬間、俺の中に流れ込む存在しないはずの記憶。
やれ甚爾に肩車してだのおんぶしてだの駄々を捏ね、ある日は体術を教えてと鍛錬の師匠的なのを頼んで鍛えてもらって(ボコボコにされた)、またある時は一緒にラーメンを食べた。
血は繋がっていない、それでも兄ちゃんは俺の兄ちゃんだと、俺の記憶が訴えかけていた…いや何してんの俺?
いや、それよりも待って、ちょっと待って。
兄ちゃん…じゃなくてパパ黒が居るってことはさ……もしかしてここって禪院家?
…えっ、また? また禪院? しかもドブカスとか汚い煉獄さんがいるだろう時代? さしす組が後になって入ってくんの?
……やべぇ、どうしよう。
パパぐろ は うれしそうだ !!