宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 同日二つ投稿…ミゲルさんの戦闘難しい、何やり殺したくない…というわけで雑なミゲル戦(仮)はじまるよぉ…!




可哀想なミゲルさん

 

 

──なんだ、こいつは?

 

 

 目の前に迫る男の姿に、俺は冷や汗を流しながらそう思った。

 

 

 

 俺がここにいるのは、菫に仕事を依頼されたからだ、菫に足止めして欲しい人間が居ると言われてそれを承諾したからだ。

 

 無理に足止めはしなくていい、とにかく一分でも長く時間を稼いでくれれば良いと、多額の金と一級以上の呪具複数個を報酬にして俺はこの仕事を引き受けた。

 

 報酬が良いと言うのも確かにあったが、それ以上に俺には菫に対して多大な恩があった、だから別に報酬が少なくても俺はこの仕事を受けていただろう。

 

 何故かしきりに足止めだけでいいからなとここに来る前にも何度も何度も念入りに言ってくることに嫌な予感を感じこそしたが、それでも俺としてはようやく恩を返せるということもあって、やる気満々で仕事に臨んだ。

 

 ハッキリと言おう…俺はあの時の菫の様子に気がつくべきだったと。

 

 

 拳が眼前に迫る、いや迫る等とそんな生温いものではない、既に拳は俺に直撃している。

 

 頬に突き抜ける痛み、歯が何本か折れたと錯覚してしまいそうな衝撃と威力に首が捻じ曲がりそうになる。

 

 咄嗟に身体ごと回転してなんとかソレを回避するが、その直後にがら空きの腹に左拳が突き刺さる。

  

 バキィッとなってはいけない音が腹から響き、それと並行して俺の意識があらぬ方向に飛びかける。

 

 カハッと息を吐き出し、痛みに悶絶しそうになるのをなんとか堪えて這い這いになってその場から飛び退く。

 

 黒縄を伸ばして木へと引っ掛け、それに引き寄せられるようにして高速で移動し、木々から木々へと飛び移る。

 

 そうして逃げながらも考える、なんだアイツは? と。

 

 術式を弾く黒縄が効かない、何度ぶつけてもその度に素手で弾かれる、呪力で強化しているのも見た…つまりヤツは術式を使用していない。

 

 菫から聞かされた情報では奴の術式は十種影法術と呼ばれる式神を扱う術式を扱う、それはつまり先程の奴の体術には一切の術式が使われていないという証明だ。

 

 ふざけている、純粋な呪力強化と体術であのレベル、そこに術式が加われば一体どうなってしまうのか…考えたくもない。

 

 …それでも自分で言ったのだ、十分程度なら任せろと自信満々に恩人に言ってしまったのだ、今更後に引くわけにはいかない。

 

 ノルマまであと八分程度、それまで凌ぎ切る───

 

 

「よぉ、どこ行くんだ?」

 

 そんな思考の最中、決して聞こえてはいけない方向から居てはいけない男の声が聞こえてくる、その声は冷たく鋭く自分の真横から耳元へと響いてくる。

 

 半ば直感的な行動だった、背筋が凍りついたような感覚と心臓を握られたかのような圧迫感が、俺にソレをさせた。

 

 黒縄を反射的に声の聞こえてきた方向へと振るう、例え弾く術式が無かろうと呪具は呪具、しかも特級相当の代物なのだから当然物理的な性能も折り紙付き、呪力を流せばそれだけで質量を伴った立派な凶器の出来上がりだ。

 

 そう…立派な凶器、特級相当の呪具…並みの術師どころか一級相当の術師でも当たればダメージは免れない、当然並大抵のことでは簡単には壊れないし千切れない。

 

 しかし───

 

 

 

 

「悪いけどさ───」

 

 

───今回はこっちも『本気』だから。

 

 

 

 その言葉が耳に届いた瞬間、振るわれた黒縄が細切れに切り刻まれた。

 

 黒縄が、特級相当の呪具が、さも当たり前のように宙を舞うその光景を前に、俺の思考はほんの一瞬だけ止まった。

 

 何故、どうやって…そう考える俺の思考の片隅で、月の光に照らされた銀色が視界を掠める。

 

 咄嗟に上体を反らす…反らした視線の上を、銀色の刃が無造作に通り過ぎる、鋭く光るその刃は命を幾度も奪ってきた物だけが発する危険な光を宿しているように感じた。

 

 バク宙しながら地面へと着地し、直ぐ様視線を上へと向ける。

 

 男は立っていた、太い木の枝を足場にしてこちらを冷たく見下ろしている、刀を手に切っ先を無造作に下げているその姿に、一瞬ではあるが気圧されかける。

 

 月を背にして佇み、まるで御伽噺で描かれる黄金の月のような色をした瞳を持った存在が、こちらを一方的に見下ろしてくるその姿に、俺は途方もない恐怖を覚えた。

 

 

 

 今一度考える、なんだコイツは…と。

 

 五条悟とは違う、監視もとい尾行の際に感じた圧倒的、絶対的な強者のソレではない、そんなものは感じない。

 

 相対しなくても分かる、そんな次元の違う場所にいると嫌でも感じさせられる五条悟のソレとはまるで違う、コイツの『ソレ』は相対しなくては決して分からない類の別種のモノであると本能的に理解した。

 

 口元が笑みの形に歪む、喜びからではない、若干の諦めと自分の馬鹿さ加減に対してどうしようもなくおかしくなったのだ。

 

 あれだけ恩人に忠告されていたというのに、俺は一体何をしていたというのか、黒縄があれば十分程度は行けるだろうと高を括っていた数時間前の自分を全力で殴りたい。

 

 腰元からナイフを抜いて逆手に構える…黒縄が紛失した時の為の武器だ、当然そんじょそこらの代物ではない歴とした業物だ、どれだけ持つか分からないが無いよりかはマシだろう。

 

 

 改めて情報を確認する…対象は禪院廻、術式は十種影法術だが今のところは使用する形跡は無し、恐らく対人戦闘における格闘戦及び武器を使用した近接戦を得意とする。

  

 何故かは知らないが、先程までの行動から推測するに恐らくあまり術式を使用しない、理由は不明だがそれこそ今俺が生きているということが最も説得力のある理由だろう。

 

 つまり…黒縄は最初から有っても無くても関係無かったということ、そこから導き出された答えは一つだけ。

 

 禪院廻を相手に接近戦を仕掛け、ヒット&アウェイで時間を稼ぐ…これしかない。

 

 

「全ク…コレダカラ───」

 

───オ前トノ仕事ハ楽シインダ、菫

 

 

 笑みを浮かべる、今度は諦めの笑みではない、心底楽しくて仕方がないと笑みを浮かべる。

 

 恐ろしい、怖い、きっとトラウマになるのだろうことは間違いないだろう、きっと後悔もするだろう。

 

 それでも、自分で選び自分で決めたことを決めた通りにするというのは、どうしようもなく楽しいものなのだと理解している。

 

 さて、この化物をどう切り抜けるか。

 

 

 

 

 

「……ん? 菫?」

 

 ふと、間の抜けた声が耳に届いた。

 

 それが目に前の男から響いてきたということに気づくのにそこまでの時間はかからず、ましてやそれ以外の答えも無し。

 

 そして男から発せられていた殺意は、それを境にして急速に萎んでいく、まるで空気を抜かれた風船のように。

 

 思わず構えを解きかける、疑問が頭の中を巡る。

 

 

「えっ、なに? お前菫の知り合いなの?」

 

 そんな俺のことなど意にも介さず、男は世間話でもするような気軽さで俺には話しかけてくる…その気配には、最早敵意のての字も無い。

 

 なんだこいつと、先程とは別の意味でふと考える…訳が分からなくなってくる、本当になんなんだコイツは…?

 

 先程とは気配がまるで違う…先程までの奴を狼と例えるなら、今のコイツはまるで───

 

「なぁ、目的は? 菫の知り合いってことは頼まれてここにいるんだろ?」

 

「───ッ……!?」

 

 気づけばすぐそこにいた…確かに考え事はしていたが視線は決して外さなかった、油断もしなければ気配を捉えることも忘れなかった……それなのに、何時の間にか奴は音も無く俺の目の前に居た。

 

 矢継ぎ早に質問を投げかけてくるこの男の目には敵意も殺意も無い、ただ聞きたいことを聞きたいから聞いているだけという至って普通の目をしている…それが何処となく恐ろしい。

 

 冷や汗が流れる、心臓が大きく鼓動する、喉が乾いて仕方がない、命の危機を…感じる。

 

 コイツの手にはまだ刀が握られている、この距離ならば何時この首を斬り飛ばされてもおかしくない、返答を間違えれば死ぬと本能が囁いていた。

 

 ゴクリッと唾を飲み込む、そして俺は眼前でおーい…と呆けた顔で俺の眼の前で手をヒラヒラと振るう男へと視線を合わせる。

 

「アァ、ソウダ…俺ハ菫ニ頼マレテココニ来タ」

 

 そして、血を吐き出すような声で、俺は男へと言葉を吐き出した。

 

 そんな俺の言葉にそっかーと一言呟く男の姿を視界に収めながら、俺はふとした折に思いつく…このまま会話で時間を稼ごうと。

 

 コイツは俺と菫の関係性を知りたがっている、ならばそれを素直に話せる箇所まで話して時間を稼ごう、少なくとも六分程度は時間を稼げるはずだ。

 

 視界を菫の居るであろう方角へと向ける、そこでは恐らくではあるが菫が五条悟を相手に戦っているはずだ、あちらは下手をすれば俺以上のリスクを背負っている、それは分かっている。

 

 しかし、だからこそ…早くしてくれよ菫、こちらもそう長くは持たんぞ。

 

 俺は…こういう会話で時間を延ばすのが苦手なんだ…!!

 

 

 

 




 なお、実は菫の名前を出していなければここで最低でも腕一つは持っていかれていたことをミゲルさんは知らない。
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