俺は魔虚羅の戦闘を書いていた、全部書いた、決着まで書いた。
全部書いて、たまには予約投稿なるものをやってみようかと思って拙いながらやっていた…その後すぐに寝落ちしたんだ。
そして朝起きたら…魔虚羅の戦闘シーンは投稿されておらず、その代わりと言わんばかりに戦闘シーン全てが消えていた。
何を言っているのか分からねぇと思うが、俺も何を言っているのか分からなかった、無下限とか御厨子とかそんなのチャチなもんじゃねぇ、もっと深く暗い絶望を味わったぜ。
というわけで、魔虚羅戦闘シーンが一度全部吹っ飛んでしまった為、とりあえず急いで書き直しました、申し訳ありません。
…それはそれとして挿入すると同じことが起こりそうだから回想と言う形でぶち込んだ……ドォジデダヨォォォォ!!!
俺はずっと疑問だった。
何故、廻は術式を使おうとしないんだろう…と。
交流戦の時はまだ分かる、多分廻はあの時まで自分が呼び出せることを知らなかった、来るなんて思ってなかった。
だから、あの時まではまだ分かる…けど、それ以降もアイツは絶対にあの式神を使おうとはしなかった。
何故だと思った、確かに俺は一度として廻に勝ったことはない…それでも危ない場面は結構あったはずだ。
それなのになんで、あの式神を…魔虚羅を呼び出そうとしないのか、俺には分からなかった。
だけど…あぁ、その理由が今分かった。
虚式の発動の直前、今正に発動しようとしている『茈』を前にして、俺はそいつから目を離せなかった。
何も変わらない、白い身体に様々な生物が合成されたような見た目…手脚の鋭い爪に目の部分から生えた鹿の角、背後から生えた白い翼にその背にある法陣…全部あの日見たものとまるで変わらない。
だけど…その身に纏う気配だけは、あの日のモノとは一線を画していた。
あの日のコイツが飼い主を見つけた大型犬なら、今のコイツは───
───ガコンッ…!!
外敵を完膚無きまでに滅さんとする龍だ。
「……………」
式神が動いた。
式神が腕を大きく振りかぶる、その凶悪に輝く爪を立て、そしてそのまま振り下ろさんとする。
その瞬間、俺は自分が死んだかのように感じた。
悪寒、恐怖、自分の背筋が凍るほどの死の気配が身体を駆け巡る。
なんとなく分かる、狙われているのは自分じゃない、狙われているのは眼の前のクソ女の方で俺を狙っているわけじゃない、なんとなくではあるがそれは分かる。
それでも、背筋が凍りついたような感覚が消えない、ここから離れなければ死ぬと、そう直感した。
「ッッッ!!」
即座に発動直前の『茈』を放棄し、その場から離脱する。
印を組んで、場所をある程度離れた場所で固定し、そこまで一気に瞬間移動染みた高速移動でこの場から離脱した。
そして、それはあのクソ女も同じだったらしい。
視線の先、破裂寸前の虚式の更に向こう側にクソ女は居た、その顔は冷や汗でびっしょりとしていた。
そして───
───ザンッ…!!
式神の腕は、空気を裂くような音と共に、振るわれた。
瞬間、破裂する瞬間と言わんばかりの虚式が、発動寸前の『茈』が、真っ二つに両断…いや、三枚下ろしにされていた。
「…あっ?」
間の抜けた声が周囲に響く…斬った? 虚式を?
あり得るのか? 発動してないとはいえ虚式だぞ? 仮想の質量なんだぞ? それを斬った?
混乱が頭を支配する、本来ならあり得ない絶対のソレだ、あの廻ですらそれは出来なかった、それを簡単にやってのけた存在が眼の前にいるという事実が、俺の頭を更に混乱させる。
虚式は発動しない…しかしそれに何故かと問うだけの余裕は俺には無かった。
何せ、俺の目の前には───
「…ハハハッ…!!」
あの廻を超える理不尽が、廻の『本気』がそこに居るのだから。
──なんでお前がそこにいる…!?
少なくとも、その時の私が抱いた感情はソレだった。
なんでいる…そう問わずにはいられない。
確かに廻は生きていた…いや、正確には生まれ変わっていたというのが適切だろう…しかし、それはそれとして何故お前がそこにいるのかと、私は叫び散らしたい気分だった。
お前は居なくなったはずだ、廻の死体を宿儺の前から持ち去り、宿儺の前から逃げ去った。
やろうと思えば勝てたはずだ、やろうと思えばお前は宿儺を殺せたはずだ。
なのにしなかった…お前はそれをしなかった、式神のお前がそれをしなかったのだ、よりにもよって廻が死んだ後にお前はそれをしなかった。
気に入らない、気に入らない、宿儺から逃げたことにしてもそうだが…それ以上に気に入らないのは…お前が廻に託され、そして許されているということだ。
裏切ることを許された、自分の為に生きることを許された、殺すことを許された…お前だけだ、お前だけが廻に全てを許されて産まれてきた。
私は知っている、何故なら廻はお前に課した…いや、己に課す為の縛りについてのことを私に多少話している。
どれもこれも、こんなんしたらどうなると思う? とかこれってやったら死ぬと思う? とかそんなのばっかりだったが、今のお前を見れば分かるよ…アイツは恐らく、あの時に言っていたこと全部やったんだろうと。
だから…だからこそ許せない…!!
アイツに許されたお前が! アイツに己を殺すことを許されたお前が!! 最高と呼ばれ愛されているお前がぁ!!!
「魔虚羅ァァァァァァァァァッッッ!!!!!」
咆哮する、獣のように式神の名を叫び、殺してやると地面を蹴った。
無下限は効くかどうかは分からない、どれだけ撃ち込んだかなんて覚えていない…しかしそれでも、多少は効くはずだ。
お前のその…
無下限の赫を拳へと送り込み、一気に魔虚羅へと肉薄する。
そしてそのまま一気に拳を腹部へと突き入れ───
……その時……ふと気づいた。
遠目からでは分からなかった魔虚羅の腕が、足が…
瞬間、突き入れようとしていた腕が、白い残光に食い千切られた。
腕の先が乱雑に抉り千切られる、痛みが身体に突き抜ける、余りにも唐突なソレに思わず大きく痛みの声を上げたくなる。
しかし出来ない、そんな隙を晒せば死ぬと分かっていた。
視線を送る、右から左と流れていった残光を追って、その姿を視界に収める。
そして…その正体が明らかになった。
白い毛並みに鋭い牙、四足歩行で日本人ならば誰もが知るであろう動物と言えるであろうその姿。
鋭い眼光を放つ金色の瞳、足元で光る鋭い爪…あぁ、知ってるさ、何度お前の上に乗せてもらったことか。
十種影法術、その術師が一番最初に召喚する式神、全式神の中でも唯一調伏を必要としない唯一の式神。
「
思わず恨めしそうに睨んでしまう、何度も救われ、何度も助けられたその式神が、今度は敵に回るというのだから世の中やはり何が起こるか分からない。
玉犬…正確には玉犬・白か、そいつはこちらの視線を感じ取ったのか、噛み千切った腕をペッと吐き捨て、そのまま低く唸り声を上げながら私を睨みつける。
状況が膠着した、魔虚羅は何故か動く気配が無いし私は腕を一本無くした、反転が必要だが眼の前の白がそれを許すかどうか…。
「…ハッ」
まぁいい、やってみよう…!!
反転術式を回し、千切られた腕を修復しようとする。
それと同時に飛び出すようにして白が襲い来る、ならば不可侵で防ごう……なんてことにはならんのだ!!
白の爪が私に迫り、不可侵と激突する…が、それも一秒と持たずに破られる。
紙一重のように白の爪を躱し、振るわれて隙だらけになった白へと蹴りを見舞おうとするが、それは唐突に振るわれた白の尻尾によって防がれた。
呪力を纏った白の尻尾、知らない人間からしてみればただ振っているだけのソレだが…私は知っている。
アイツ…廻の玉犬の尻尾は、そこいらの刃物よりも良く斬れるということを、軽く一級相当の呪霊なら真っ二つにしてしまうということを。
というか、軽く流したがやはり私の不可侵が効かないなぁ、姿も若干変わってるしやはり魔虚羅の適応を一部引き継いでいると思っても良いなこれは。
魔虚羅によって激昂していた頭を冷やして考える、さてどうしようかと。
有利不利で言うなら向こうが有利だ、間違いなく向こうの方が有利だ、だって多分『不可侵』適応してるもの。
ただ問題は…魔虚羅が一体どれだけ
アイツの変質したその能力にもある程度の予測は付いている、しかしそれでも確信には至れない、何せ術式の開示なんてことをされたわけでもないからな。
何より、何故魔虚羅自身が殺しに来ないのかも不明だ、何せさっき白に腕を噛み千切られていた時に拳なりなんなりをされていれば少なくとも五分の確率で私は死んでいた。
しかし何故か奴はそれをしなかった…何故だ?
くるりと着地し、私へと唸り声を上げる玉犬・白に視線を向け、次いでその後ろにいる魔虚羅へと視線を向ける。
…分からない、分からない、疑問が頭を渦巻き混乱の淵へと落とそうとする…いや、というか不可侵の時も軽く流したが、どうやって玉犬を召喚した? 玉犬は宿儺に破壊されてそのまま魔虚羅へと受け継がれたはずだ。
なのに、何故呼び出せる? 何故今になって呼び出した?
何故? 何故、何故と私の脳内がこの言葉に埋め尽くされる、頭の中が真っ白になりかける。
「…ふぅー」
一つ息を吐く…考えてるだけでも仕方がない…やってみよう。
昔から、特にこの『目』になってからはそれが当たり前だったろう、何を今更悩んでいる。
術師は疑ってなんぼ、探ってなんぼ、嘘ついてなんぼの商売なれば、やれるようにやるしかない。
分からないなら見つければいい、戦いながら少しずつ明かし、そして明かし終えたその時に一気に殺せばそれでいい、終わりよければ全て良しだとも。
コキリと手首を鳴らす、こんな状況なのに不思議と笑みが浮かぶ、恨み辛みを今すぐにでもぶつけてやりたいのにそれはそれとして口角が上がってしまうのは何故なのやら。
対象は今のところは二体、廻の玉犬・白と魔虚羅…どいつもこいつもクソ強い奴ばっかりだ。
……まぁ、やるようにやるかぁ…!!
構える、足を踏みしめる、砂浜の砂に足が沈み込む。
「よっし、やるぞぉ…!」
その言葉を合図に、私は一気に敵の最中へと足を踏み込んだ。
菫の目は言ってしまえば六眼のなり損ないで、天元との因果が無い代わりに相手の術式が分かりません。
それでも分子レベルで呪力を視認する能力は残っているので無下限は普通に使えます。