宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 …無理っす、流石に原作同様のハイスピードな戦闘は無理っす、作者にそんな技量は無いです。

 クソぉ、これもそれも三話分の魔虚羅戦闘シーンが全て吹き飛んだのがいけないんだ……笑えよ(地獄兄)


五条の回想②

 

 「ぐぶっ…!」 

 

 漏れ出るうめき声、腹を抉る尋常じゃない痛み…それら全てが、眼の前の存在に与えられたものだ。

 

 

「グルルルルルルルルッ!!!」

 

 

───ガコンッ…!

 

 

 低い唸り声と共に、法陣が回る、これで何回目かは覚えていない。

 

 最初はほんの僅かに拮抗していた不可侵も最早一分のズレもなく突破される…廻の展延でも一秒は掛かるのになんなんだズルいんだよお前のソレ。

 

「ウガァァッ!!」

 

 玉犬が唸り声を上げながら飛びかかってくるのを屈んで躱し、そこに赫を撃ち込む…が、呆気なく躱される。

 

 ……やはり速いな。

 

 赫は威力は勿論のこと、その展開速度や接敵速度も尋常なものではない、普通ならまず避けられない。

 

 しかしこいつはそれを避ける、少なくとも以前までの玉犬ならば絶対に避けられなかったそれを、いとも容易く。

 

「不可侵への適応だけじゃなく、全体的な能力も上昇してるっと」

 

 軽く呟きながら、振るわれる爪や剥き出しで噛みついてくる牙をあの手この手で躱していく…面倒だ、何が面倒ってこんだけ攻めてきてくる癖にこっちが反撃すると全部躱されることだ。

 

 カウンター決めてやろうと殴りかかれば尻尾で牽制されるなり腕を斬り落とされるなりされて全部捌かれるし、避けた後の隙を狙って赫とか蒼を使ってみたら何時の間にか視界から消えてるし、もう面倒なことこの上ない。

 

 そして何よりも厄介なのが…未だに動き一つ見せない魔虚羅だ。

 

 飛びかかってこようとしていた玉犬に蹴りを放って牽制しながら、視線を魔虚羅へと移す。

 

 何をするでもない、玉犬と殺りあっている私を見ているだけ、そうただずっと見ているだけなのだ…不気味でならない。

 

 たまにガコンガコンと法陣が動いてこそいるが…逆を言えばそれだけだ、魔虚羅自身が動けばそれこそ決着なんてすぐに付くだろうに、何故動かないのか…。

 

 白から距離を取り、何気無しに考える。

 

 何故動かない? 何故何もしない? 何故適応だけに留める? 何故殺しに来ない?

 

 考える、奴の目的を、狙いを、それを潰して自分の益にしようと思考を回す。

 

 攻撃を避けて防いで捌きながら、考えて考えて考え続けて…そしてそれが、致命的な隙となった。

 

 

 何度も躱した、何度も捌いた…それを繰り返す内に一種のルーティーンと化していたそれの間を縫って、そいつは現れた。

 

 また同じ攻撃を何度も繰り返す白に、私は同じように対処しようとした、この時点でもう駄目だった。

 

 気が抜けていたのかもしれない…五条悟や魔虚羅の相手を想定し続けただけに、強くなったとはいえたかが玉犬と侮っていたのかもしれない。

 

 

 ザンッと、白の攻撃を防ごうとした私の両手が、唐突に斬り飛ばされた。

 

 訳が分からなかった、頭が真っ白になりかけた。

 

 間合いにはまだ入っていなかった、尻尾で斬ったというには速すぎて、爪で斬ったというにはあまりにも遠すぎた。

 

 斬り飛ばされた私の腕が宙を舞う、それを視線で追うことすら許さないとでも言わんばかりに白が私へと歯を剥き出しにして迫り来る。

 

 狙いは首筋、鋭く生えた牙を私の急所へと突き立てんと迫る白に対して、腕を失くしていた私は一瞬反応が遅れた。

 

 反転で腕を治して防ぐ…と言ったことすら間に合わず、白の牙が私の首筋へと突き立てられる。

 

 ガブリッと音を立てて、白の牙が私の肌へと食い込んでいく、ブチリブチリと皮を突き抜け裂いていく嫌な音がすぐ近くから聞こえてくる。

 

 痛い、痛い、痛い、痛い…痛い痛いと感覚が訴えかけてきても、私にはどうすることも出来ない。

 

 貪られる、食われる、殺される…それらの思考が私の脳内を流れた時、私の中にあるナニカが千切れる音がした。

 

 反転で腕を治し、そして抱きしめるようにして白を捕まえる…さながらジー◯ブリーカーである。

 

 

 

「つ〜かま〜えた〜〜♪」

 

 

 

 歌うように耳元で囁く、白は藻掻いて暴れて逃げようとするが私の方が力が強いのか逃げられる様子は今の所はない。

 

 もふもふとした体毛が身体を包む、暖かくそしてふわふわとしたその毛からは人という種族そのものを駄目にしてしまいそうな不思議な魔力のようなものを感じた。

 

 気持ちいい、また撫でてあげたいし廻と一緒に撫でたい…犬が家族にいるって周囲から見たら羨ましい人は羨ましいんだろうなぁ…。

 

 

「死んじゃえ」

 

 だが殺す。

 

 抱きしめながら、ゆっくりと白へと赫を充てがっていく。

 

 ゆっくりと、深く深く入り込むようにゆっくりと、沈み込ませるように、深く深くにまで赫を潜り込ませる。

 

 白がバタバタと暴れだす、必死な様子で爪を振るい牙をより深く食い込ませる…それでも()()は何も止めない。

 

 首筋から地面へとダラダラと血が流れ落ちていく、血が砂浜へと流れ落ちて地面の色を赤く紅く染めていく。

 

 痛い、寒い、クラクラする…それらの危険信号全てを無視してボクはゆっくりと赫を捻り込み続けた。

 

 そして───

 

 

「バイバイ」

 

 囁くように呟かれた別れの言葉と共に、パァンとまるで風船が割れたかのような音を響かせながら、白は膨れ上がるようにして弾け飛んだ。

 

 ビチャビチャと辺りに内臓やら血管やらを撒き散らし、不可侵を貼れない程に近くにいたボクには弾け飛んだ白の血液がベッタリとこびり付く。

 

 腕から力を抜いて、抱きしめていた白から手を離す。

 

 ドチャリと力無く地面に落ち、血溜まりを作る白だったものの姿を冷めた瞳で見つめた後、徐ろに視界を魔虚羅へと移…そうとしたボクの目掛けて黒くて鋭いナニカが飛来する。

 

 それを首を傾げて躱し、顔に笑みを浮かべながらボクは視線を自分の影へと落とす。

 

 視線の先にあるのはなんてことはない、自分自身の影だ。

 

 ボクが動けばその通りに動き、ボクと同じ動きを繰り返すだけのただの影だ。

  

 そんな影へと向けて、ボクは人差し指を構えて、静かに唱えた。

 

 

 

「位相 波羅蜜 光の柱」 

 

 

───術式反転『赫』

 

 詠唱と共に放たれた赫が砂浜を吹き飛ばす、ボクを中心地として暴風を巻き起こしながらまるで砂嵐のように砂浜を吹き飛ばしていく。

 

 砂嵐とは比喩に非ず、まるで竜巻でも起きたみたいに爆ぜ、一定方向へと猛スピードで動き続ける樣は正しく砂嵐だ。

 

 そんな中で、黒い影が暴風から逃れるようにして大きく後方、魔虚羅の側へと着地する。

 

 

「…アッハッ」

 

 口元が歪む、喜悦が隠しきれていない。

 

 黒い体毛に黄金の瞳、先程の白と瓜二つの姿。

 

 『玉犬・黒』…白と対を成すもう一匹の玉犬、それが私を静かに睨みつけていた。

 

 白と違うのは、唸り声を上げずに静かにボクを睨みつけていること、動き方からして白とはまた違った行動を取るだろうということ、そして白が破壊されたことで継承が発動する───

 

「…あれっ?」

 

 突如として視界が落ちる、足に踏ん張りが利かなくなる。

 

 いや、ちょっと違うな…踏ん張りが利かないと言うよりは、支えが無くなったような感じがする。

 

 視線を足元へと向ける…片足が一つ無くなっていた。

 

「……あれ?」

 

 間抜けな声が静かに響く、血をダラダラと垂れ流し鋭利な刃物で斬られたかのような綺麗な断面を晒している私の片足は、ドチャリと音を立てて地面へと膝をつく。

 

 バランスを崩し、その場に片膝をついたボク、傍から見れば弱って隙晒しまくった美味しい獲物…それ故玉犬はそれを見逃さない。

 

 黒が駆け出す、駆け出しジグザグと蛇のような挙動で動き回りながらボクへと向かい、その鋭い爪をボクへと振るった。

 

 咄嗟に腕を盾にして致命傷を防ぐ、グチャリと嫌な音と感触が腕を伝って脳へと届き、一秒と経たぬ間に痛みが奔る。

 

 腕を見てみれば爪の形に皮が抉れていた、若干ではあるが白い部分が見える、どうやら骨が見えるほど深く抉られたようだ。

 

 即座に腕と足を反転で治そうとする…しかしそんなボクを邪魔するように黒の逆側から白い影がボクへと襲い掛かる。

 

 

「ッ!?」

 

 その姿に、思わず驚愕の表情が浮かぶ。

 

 当たり前だろう、何せつい先程殺したばかりの式神がさも当然のようにそこにいるのだ、傷も血痕も何一つ残さずさも何もありませんでしたよ? とでも言いたげな風貌でそこにいるのだ。

 

 咄嗟に印を組んでその場から大きく離れた場所に移動する、あんまりにもあんまりな事実に驚愕を隠せなかった。

 

 先程殺したはずの白、それが落とした場所を見てみれば、やはりと言うべきかそこには何も無い。

 

 白と黒、二頭一対とも言うべき玉犬は、今は特に動くこともなく魔虚羅の側で低く唸り声を上げていた。

 

 ……うん……なるほど?

 

 

「仕組みからして違うかな、これは」

 

 そう言いながら、ボクは自分の口元を拭った。

 

 その拭った口は、まるで歓喜に震えるように、弧を描いていた。

 

 

 





真・魔虚羅の特徴
  
 魔虚羅が死なない限り他の式神も死なない。
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