…というか原作からして極ノ番少ないのはどうにかしてくださいよ…なんで三つしかないんだよ五条先生の極ノ番見たかった((泣)
…羨ましいと思った。
「ハッハハッ…!!!」
視線の先では、あのクソ女が楽しげに笑っている…その身体を血に濡らしながら、心底楽しいと俺に自慢するかのように笑っているあの女のことが、心底羨ましく思った。
白と黒の犬…玉犬達がクソ女へと襲い掛かる。
その鋭い爪と牙、俊敏な身のこなしで一斉に女の命を刈り取りに掛かる。
速い…俺の目から見てもそう思える、流石にあの時の廻程…とはいかないが、それでも速さで言うなら俺の知ってる中で言うなら上から数えた方が早い。
女の身体にどんどん傷が刻まれていく、腕を飛ばされ足を飛ばされ、終いには両手を斬り刻まれた後に目ン玉を抉り取られていたことさえあった。
それでも、そんな状況になっても、女は笑っていた。
嬉しそうに、楽しそうに、それでいて何処か寂しそうに女は笑っていた、そこに不純物は一切無い。
…羨ましかった。
アイツの本気…それに一番最初に挑むのは俺だと思っていた。
自分から退いたとはいえ、それでも一番最初に本気の廻に挑むのは俺なんだと…そう思っていた。
…けど、今アイツの本気と戦ってるのは、あのクソ女だ。
俺の目の前で魅せつけるみたいに大笑いして、傷だらけの血塗れになりながらもずっとずっと笑っているアイツなのだ。
その事実が、どうしようもなく俺も苛立たせる。
分かっている、狙われていたのは俺じゃなかった、それを知った上で俺は何もしなかった…分かっている。
分かっているから、過去の自分を思い切り殴り飛ばしたくなる。
なんで俺は、あそこに乱入することを選ばなかったのか、なんで俺はあの時、あの式神に何もしなかったのか…なんで俺はあの時、注意の逸れたアイツを殺さなかったのか。
後悔だけが頭の中を巡っていく、絶好のチャンスをふいにした事実に憤慨し憤る。
噛み締めた歯からギリリッと音が鳴る……あぁ、妬ましい。
女は今も踊っている…赫を放って砂浜を吹き飛ばし、玉犬を殺そうと蒼を最大出力で発動している。
それら全てに玉犬は容易く対処する、赫はさも当然のように避けて躱し、蒼は一気に射程外まで退避することで躱した。
そして、躱しきれば今度は自分達の番と言わんばかりに尋常じゃない速さで女へと突っ込んでいき、そしてまた応酬が始まる。
迫りくる爪と牙を避け、隙間隙間を見つけて拳と蹴りを繰り出し、そしてそれらを躱されてはまた傷だらけになっていく。
何度も何度も反転で治し、治した先からまた傷を負っていく…その痛みも相当なものだろうに、それでも女は笑っている。
…羨ましい…羨ましい、羨ましい、羨ましい。
叶うことなら今すぐにでも乱入したい、アイツの本気と戦ってみたい。
しかしそれは出来ない、何せするかしないかで俺はしないを選んだ、今更あの輪の中に入るのは幾ら何でも無いと俺でも思う。
自分で決めたことだ、最後まで守っていたい、廻もきっとそうする。
……あぁ、でも…それでもやっぱり───
「…いいなぁ…」
そんな、子供のような言葉が溢れ、そして誰に聞かれることもなく、波の音と共に消えていった。
キリがない…ボクの脳内にそんな言葉がよぎり始めた。
玉犬・白を蹴り飛ばし、その直後に飛びかかってきた玉犬・黒を屈んで躱し、飛びかかってきた黒へと向けて赫を放つ。
放たれた赫は黒の尻尾を掠めて海へと直撃する、海から大きな飛沫が飛び出し、それが雨のようにボク達へと降り注ぐ。
視線を玉犬・黒の尻尾、赫の掠ったであろう箇所へと移す、そこには一目見ただけで重症と分かるような傷があった。
掠っただけ…そう、掠っただけだ…だというのに黒の尻尾はその大本を失っていた。
フサフサとしていた毛は大量に飛び散った血液で濁り荒れ果て、つい先程までブンブンと振るわれていた大きな尻尾も今ではクタリと力無く垂れ下がっている。
肉は吹き飛び骨が薄っすらと視界に痛々しく映り、今にも千切れてしまいそうな様相ですらある。
そんな状況だと言うのに、当の玉犬・黒は痛がりすらしない、表情を歪ませることも痛みに喚くこともしない。
犬にとて表情はある、だというのに黒は一切反応しない、痛みの声も表情も何も見せない……一体誰に似たのやら。
…まぁ、それは良いだろう…問題は別にある。
今の応酬からして分かったのは、恐らく玉犬達はボクの不可侵にしか適応していない、赫で尻尾が吹き飛んでいるのがその証拠だ。
最初は無下限全部に適応してるのかな…とか考えもしたけど、今にして思えばそれはないだろう、それなら玉犬・白がボクの蒼や赫を避ける理由が無い、だって適応してるならそもそもダメージにならないし白の内側に赫押し込んで爆散させるなんてことも出来なかったはずだ。
よって、恐らく玉犬達自体は無下限にそこまで適応してない、不可侵には流石に適応してるけどボクの攻撃自体は通る。
ただ問題なのは、多分次に殺しても普通に蘇ることだ。
これが一番面倒だ、殺しても殺しても蘇る、まだ白を一度殺しただけだけどそれでもなんとなくで分かる、絶対に生き返る。
恐らくではあるが、同時に殺さなきゃいけないとかそんな簡単なことじゃない、多分二匹同時に死んでも普通に生き返って不意打ちしてくる。
んで、多分ではあるがその大本となっているのがアイツだ。
頭をポリポリと引っ掻きながら、視線を未だに動かさないどころか身動ぎすらしない魔虚羅へと向ける。
その目…目? はボクを捉えており、相も変わらず何を考えているのか分からないような顔をしている…いや、そもそもこいつに表情なんて無いんだけどさ。
話を戻すけど、多分この蘇りの連鎖の大本は十中八九魔虚羅だ、というかアイツしかいないだろう状況的に考えて。
視線を一度玉犬達へと戻す…低く唸り声を上げてボクのことを睨みつけているが、向かってくる気配は無い、もう少し考えていても大丈夫そうだ。
そうして唸る玉犬達を尻目にして再び思考を回す…まぁ何が言いたいかって、多分というか絶対にそうなんだけど、アイツを倒さない限り式神は死なない、だったらさっさとアイツを破壊してしまおうってことなんだけど…それが一番無理っぽいんだよなぁ。
だってボク、アイツに赫とか蒼とかましてや虚式とか何度もぶち込んでるもん、平安の頃に廻の死体奪って呪物にしようとした時に戦ってるもん、その時に撃ち込みまくったもん。
絶対に適応されてる、しかもあれから千年近く経ってるんだから絶対にボクの無下限に適応されてる…多分アイツに撃ってないのは仮称『白』とボクの
『白』は危険過ぎて、極ノ番はその時以降は魔虚羅に会えてなかったから見せられなかったが正しいか…どっちにしろ、見せてないのは大凡その二つ…。
それじゃあそれを撃とうってなるが、ここでも問題が出てくる、それはズバリどれを撃つべきかだ。
おすすめは『白』だ、あれなら確実に殺せる自信がある…まぁその代わり準備も大変で予備動作も分かりやすいからそもそも撃たせてもらえないっていう欠点があるけど。
もう一つの極ノ番は比較的簡単に撃てる、予備動作も少ないからほぼ確実に撃てる…撃てるんだけど…『蒼』を奥義にまで押し上げたような技だから、蒼や赫と同じ判定されたら無傷で終わるという圧倒的デメリットがある。
「……どうするかなぁ」
一言呟く…いや、本当にどうしたものか。
出来ることならアイツとあのクソガキは殺しておきたい、絶対にボクと廻の新婚生活……じゃなくて親友生活の邪魔になるから殺しておきたい。
じゃあ迷うこと無く『白』で良いじゃないかとなるが、さっきも言ったけどそもそも撃たせてもらえない可能性がある、しかもさっきクソガキに見られたからクソガキの方も絶対に止めに来る。
今は何故か観戦に徹してくれてるけど、流石に『白』を撃とうとしたら絶対に止めに来る、だから白は実質論外。
…まぁ……つまり───
「選択肢は無し…やるしかない…かぁ」
極ノ番…『
さぁて…頑張りますかぁ。
一応言っておくと白は極ノ番じゃありません、コントロール出来ないものを人は極ノ番とは呼ばんのですよ。