続けて投稿、熱が冷める前に投稿せねば…早く魔虚羅が書きたい、玉犬が書きたい。
パパ黒…もう兄ちゃんでいいや、俺が兄ちゃんに抱きついてから約一日が経過した。
あれから色々調べたりやったりして分かったことは、ここは禪院の屋敷で、俺は当主とかそういうのに一切関係のないモブ禪院であるということだった。
呪力は普通よりかはあるが術式は無し、術師になれるが期待したそれではないと言うよくある普通の術師、禪院的に言えば落ちこぼれ的な感じの男児、それが俺らしい。
んで、その当の俺はそんなこと気にも止めず、兄ちゃんにあーだのこーだのと構い倒して、今に至る。
うん、色々と言いたいことはあるにはあるが、それでも一つだけ言っておく…グッジョブ俺。
因みに、俺が今いる場所は鍛錬場、禪院お抱えの術師達を育成してきた古く伝統(笑)のある修練場である。
そこで俺は…ひたすら筋トレに勤しんでいた。
腕立て伏せ、腹筋、木刀の素振りやら何やらをただひたすら、呪力の効率化とかそんなのは完全に後回しにしてただ筋トレだけをひたすらやっていた。
そんな俺を見る周りの目は何処か冷たい…いやまぁ、術師に非ずんば人に非ずとか堂々と口に出しちゃう奴等だから、どうせ術式も無い落伍者が無駄なことをしてるとかそういう感じのこと考えてるんだろう。
うっせーのだ、そんなことに気を割くくらいなら一秒でも長く鍛錬して地道に力を伸ばせと言う、お前等みたいに他人を見下しまくった奴から死んでいくのがこの呪術界なんだよ。
ただし五条と宿儺は除く…なんなのアイツら強すぎでしょ。
「なぁ、そこの君」
それにしても、禪院家も脆くなったよなぁ…平安の時とかは一級相当の術師がそれはもう沢山居たのに…今じゃ居たとしても精々がドブカスクソ親父程度の奴等しかいないんだもんなぁ。
「おい、君」
今が悪いと言わないけど…やっぱり物足りないというか、なんだろうなぁ…昔は敵にも味方にもナナミンレベルの奴がゴロゴロいたせいかなぁ、違和感が凄い。
片腕立て伏せをしながら、聞こえてくる声も感じる視線も全部無視して昔のことを思い出す…そういえば、弟は俺が死んでからも元気にやっていけたのだろうか?
可愛いやつだったんだよなぁ、ガキンチョの頃は兄様兄様ってちょこちょこと後ろを付いてきて、大きくなったらなったらで兄上呼びしながらドスドスと後ろを付いてきて…どうしよう、今になって喪失感ががが…。
今にして思えば、本当に禪院の人間とは思えないレベルで気持ちの良いやつだった、ドブカスクソ親父と同じ術式持ちとは思えないレベルの善人で最早呪術界の煉獄さんと呼んでも差し支えが無いレベルの───
「無視すんなやドブカス…!」
「あっ…?」
唐突に聞こえてきた声…というより肌にチクリと刺さるような殺気に反応して、ふと顔をそちらに向ける。
眼前には物凄い勢いで迫ってくる脚、下手人の顔に視線を向けてみればそこには何処かで見たことがあるような金髪の子供の姿。
(あっ、やっべぇ…)
ここで今更ながらではあるが、何故俺が筋トレに勤しんでいたのかを簡潔に説明しよう。
それはズバリ、今の自分の身体能力を確かめる為である。
呪術界は危険な世界である、油断すれば首を刎ね飛ばされ、油断してなくても首を刎ね飛ばされ、味方だと思っていた人間に後ろから心臓ぶち抜かれるなぞ当たり前の世界である。
そんな殺意と悪意とこれまた殺意を練って練って練り込みまくった世界で、自分の能力を把握していないということ程、危険なことはないのである。
というわけで、俺は筋トレを重ねて今の自分に出来ることを模索しようとしていたのだ。
まぁ、結果として前世の幼少期とそこまで変わりはないという結論が今しがた出てきたところなのだが…ここで問題が出てくる。
それは…俺が死ぬ直前まで宿儺を相手にしていたことだ。
分かるだろうか、俺は要するに死ぬその直前まで呪術界の中でもトップに位置する…というか正真正銘のトップを相手にバチバチ(ボロ負け)に殺り合っていたのだ。
そんな人間が、高々憧れの人にあってその腹筋を堪能した挙げ句に肩車してもらった上に頭をナ〜デナ〜デして貰った&一日経過した程度で元の非戦闘状態に戻れる訳がないのである(持論)。
まぁ…要するに何が言いたいかって……格下相手だろうが何だろうが加減が利かんのだ。
───秘伝『落花の情』。
触れたものを呪力で自動的に迎撃する対領域用の技術…何処かのドブカスクソ親父がそうした様に、俺はそれをカウンター用に使った。
即ち、一定範囲内に入った呪力を纏った全ての攻撃を自動的に迎撃する機構、それを利用したカウンター…なんで同じこと二回も言ってんだろ俺。
呪力を纏った脚を、範囲内に入ったと同時に肘と膝で挟み込むようにして防ぎ、その勢いのままに圧し折る。
「がっ───」
続け様に、脚が圧し折られたことで動揺、意識を乱した襲撃者へ、俺はその鳩尾に呪力を纏わせた拳を突き入れる。
瞬間、呪力が黒く染まる。
───黒閃。
意識が加速する、高揚感と全能感が身体に駆け巡り、その高揚も冷めぬままに突き入れた拳は襲撃者の鳩尾を生々しく抉るように突き進み、そのまま何をするでもなく襲撃者を吹き飛ばした。
修練場の壁を突き破り、果てはその先にあった小さな池すら突き抜けて、襲撃者は屋敷の壁へと突き刺さるようにめり込んだ。
この間、約四秒弱である。
…………………あっ……やっべぇ…やっちゃった。
辺りが騒がしくなる、それも当たり前だろう。
この家の、しかもこの時期の禪院家が、兄ちゃんの恐ろしさをまるで知らないこの家の連中が、まさか術式もクソも無い落伍者がこんなことやらかすなんて誰も思わない、思うわけがない。
ざわざわと周囲の声が大きくなっていく、ざわざわざわざわとまるでカ◯ジのざわめきみたいにざわざわと声と会話を広げていき────
「てめぇこの野郎!!」
何を血迷ったのか、俺に対して攻撃を仕掛けてきた……えっ…なんで?
大の大人…ではないだろうけど、それでも俺の倍はあるだろう身体を惜しげもなく使い、その手に呪力を纏わせながら俺に殴りかかってくる男に対して、俺はまた落花の情を……使うのも面倒だったため、男の放った拳をすい〜と避けて懐に入り込み───
「ていや」
軽い掛け声と共に、呪力を纏わせた足で、思い切り男の局部を蹴り上げた。
蹴り上げられた足はグチャリと生々しく何かを砕き、それを受けた男は白目を向いて泡まで吹いて、膝から崩れ落ちるようにして気絶し、そのまま仰向けに倒れた。
「……あっ…やっべ…」
本日二度目やっべぇ…という軽い俺の言葉が修練場に響くと同時に、今度は周囲の術師全員が纏めて此方に向かってくる。
十人か、二十人か、もしかしたら三十は居るかもしれない男達が一斉に俺に向かってくる光景に、俺は…というより俺の目は多分死んでいたと思う。
…どうしよう…宿儺との戦いが思いもしないデメリットを運んできてるんですけど…。
そんなことを考えながら、しかし俺の身体は意思とは真逆に眼前の塵芥達を相手に余裕気に構えていた。
まるで慣らしには丁度良いかと、そう言いたげに。
まぁ…斯く言う俺も、肩慣らし程度にしか考えていないわけなんだけど。
───秘伝『落花の情』。
さてと…どうしてくれようか…。
周囲のうめき声を聞きながら、俺は倒れている一人の男の術師の上に腰掛けていた。
手首は血で濡れ、足は血泥まみれでベタベタとして気持ちが悪い、身体中が血塗れも血塗れで最早重く感じる。
髪の毛にも血が付着したのか、ザラザラとして若干痛いまである。
傷は無い、反転術式は使えるが、使うまでもなく無傷である。
というか戦ってみて思ったけど、やっぱり弱くなったな禪院家の術師は、少なくとも昔はこんなもんじゃなかった。
やっぱり、昔が化け物じみてただけなのかなぁ、と昔に思いを耽っていると、背後から足音が聞こえた。
「随分とまぁ、派手にやったものだ」
振り返ってみれば、そこには和装の老人が居た。
ぴょんっと直角に跳ねた髭にオールバックの髪、白髪交じりのその髪からはダンディ的な風格を感じ取れる。
あぁ、すぐ分かった、貴方も貴方で妙にキャラが濃かったから、良く覚えている。
そうだ、確か───
「禪院フレームレートおじさん」
「おい待て、誰のことを言っている」
あっ、ミスった間違えた、禪院直毘人だった。
確か26代目の当主ってのは覚えてる、兄ちゃんのお父さんなんだろ確か…いやどうだっけ? 俺はそこら辺に関してはそこまで詳しくない…というか昔が濃すぎて擦り減ったというかなんというか。
誰にでもなく言い訳を重ねる俺の姿を、直毘人はふんっと鼻を鳴らすと周りの術師等のお構いなしに此方に歩み寄ってくる。
道端に術師が入ればそのまま踏みつけ、踏むことすら出来なければ蹴り飛ばして道を作っていた…うん、禪院してるよね。
そうして俺の前に立った直毘人は、値踏みするかのように俺をジロジロと見つめ───
「オマエ───」
「ねぇ、おじさん」
俺に話しかけようとした直毘人の言葉を遮って、俺が先に無遠慮に話し出す。
不躾で礼儀がなっていないってのも分かってるけど、それでも俺はこの人相手には絶対に言っておきたい言葉があった。
「なんだ小童───」
「最近のさ、フレームレートやら解像度やらを上げたがる風潮ってさ、不粋だと思わない?」
「分かる」
その時、俺達が浮かべていたのは、きっと満面の笑みだった。
この後、二人してLIVE A LIVEとかで遊んだ。
なお、周囲の術師は放ったらかしである。