宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 割りと適当なところがある予定としては学生編最後の番外編…なんでも良いからやる気満々な様子の先輩を書きたかった、反省はしていない。


番外編 歌姫先輩

 

 

 

 

 …なんでやねん。

 

「よぉしついてきなさい廻ぅ! 先輩のあるべき姿ってもんを見せてあげようじゃないのぉ!!」

 

 そう言って、今回の任務の同行者、『庵歌姫』先輩は張り切りながらずんずんと目的地まで進んでいく…その表情は満面の笑顔で、何故だか無茶苦茶嬉しそうである。

 

 ……うん、なんで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事の発端は約数分前、俺が集合場所に着いた時に遡る。

 

 謹慎も解かれて、特段久しくもない京都校に出戻った俺は、丁度先輩達と同級生が任務に出ていたこともあって、特に挨拶らしい挨拶を交わさずに任務に就くことになった。

 

 場所は何処かの名前も知らない町でそこで発生した呪霊を狩るというのが任務の内容だった。

 

 等級は二級相当、俺と同じような感じでその町に向かってる術師がいるからその術師と協力して呪霊を狩れ…俺が言われたのはそれだけだった。

 

 協力者が誰かは言われなかったし聞いても答えてくれなかった、理由は今のところは不明。

 

 今回の担任は前の担任と違って何処か刺々しいというかネチッコそうで今にも舌打ちしそうな顔をしていた。

 

 何か妙に俺のことをこう…虫けらか何かのように見てきたのは気になったが、まぁ別に良いかと無視して俺は指定された集合場所に向かった。

 

 そこで出会ったのがさっきも言った歌姫先輩だったわけなんだが…ここでちょっとしたことがあった。

 

 俺は前世的な意味合いで一方的に歌姫先輩のことを知っていたからどういった人かは知っていたが、向こうは俺とは完全に初対面のはずなのだ。

 

 …なのに、何故か無茶苦茶嫌そうな顔で俺のこと見てくるのである、不倶戴天の敵に出くわしたかのような顔で俺のことを見てくるのである。

 

 あまりに刺々しい気配、お前のことなんて信用してないからなと言わんばかりにガルルと唸り声を上げて俺を睨みつける歌姫先輩の姿に、俺は正直困惑していた。

 

 しかしまぁ、これから一緒に任務に臨むのだからこんな意味の分からんことを続けて貰っちゃ困るということで、俺はとりあえず失礼にならない程度の挨拶をして、来る前に買ってきた和菓子の入った袋を歌姫先輩に渡した。

 

 手渡された袋を、歌姫先輩は何処かポカンとした様子で受け取り、ほんの僅かな時間の後…ニマァと擬音が付きそうな笑顔で、笑った。

 

 

 

 

 

 

 

「ほら廻! さっさと来ないと置いてくわよぉ!」

 

 

 そして、今に至る。

 

 ハッキリと言おう、まるで意味が分からん。

 

 失礼にならないように挨拶をして、買ってきていた和菓子を渡した…やったことなんてこれだけだ、たったこれだけのことしかしてないのに、何故か歌姫先輩はご機嫌絶好調みたいな様子でるんるんとし始めたのだ…意味が分からん。

 

 俺に対する態度も目に見えて柔らかくなったし、言葉遣いも砕けてこそいるけど何処か優しい感じだし、何から何まで全部が全部先程までとは別物と感じてしまう。

 

 何か気に入ることでもあったのか…もしかして和菓子が効いた? でも歌姫先輩が和菓子が好きだとか聞いたこと無いし、流石に東堂とかみたいに存在しない記憶錬成した訳でもあるまいし……うん、やっぱり分からん。

 

 とりあえず、今は任務を済ませよう、話は後からでも聞けるはずだし、何より待たせるのも悪いし。

 

 そんなこんなで、俺は俺を呼ぶ歌姫先輩に一声返し、小走りで歌姫先輩の方へと走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最初は、五条達と同じような人間だと思っていた。

 

 この前会った五条が妙に自慢してきたし、硝子にも自慢していたのか、当の硝子からは五条がそいつの自慢をしてきて煩いと連絡してきたくらいだったし。

 

 ましてや禪院家の人間だ、良い印象というものがまず抱けなかった、それは確かなことだった。

 

 どんな人間なのだろうか、五条悟のようなクズなのか、それとも夏油のようなクズなのか…どちらにしろ私としては御免被りたかったし関わり合いになりたくはなかった。

 

 任務だから仕方なく一緒にするだけ、帰ったら浴びるくらいビールを飲んでやろうと決めて、私は集合場所に向かった。

 

 当初、集合場所には誰も居なかった、私が一番乗りでなんだったら私しか居なかった。

 

 それに関しては文句を言う気は無かった、何故なら私が普通よりも早くに来たからだ、私が集合時間よりも三十分くらい早くにここに来たからそうなっているだけだ。

 

 嫌だったのだ、禪院の奴等に自分より遅いとかどうなっているんだぁとか女の癖に生意気だーみたいなことを言われるのが私はどうしても嫌だったのだ。

 

 だから早くに来た、だから早くに来てやった、文句なんて聞きたくないし言わせてやろうとも思わない、何も喋らずただ黙っていてほしいと思う私はおかしいだろうか?

 

 まぁ、そんなこんなで待つこと大凡二十分程度、そろそろ来ないかなぁなんて考えていた時に、タイミング良くアイツは私の前に現れた。

 

 

「…あれ? 随分お早いんですね?」

 

 少し早めに来たのになぁ…等とぼやきながら、コツコツと靴音を鳴らしながらワタシの方へと向かってくるその男へと、私は視線を合わせた。

 

 黒い髪に琥珀色の瞳、高専の制服に身を包みその手には何故か手提げ袋がぶら下がっている。

 

 顔は整っていて服装に乱れもない、何故か私を見て困惑の表情こそ浮かべているがそれ以外は別段おかしな点は無い…いやまぁ何故手提げ袋をぶら下げているのかは知らないけど。

 

 まぁ、なんでもいい、兎にも角にも人員が揃ったんだからさっさと任務を済ませて帰り───

 

 

「えっと…はじめまして、禪院廻です……歌姫()()…であってますよね?」

 

 そう言って、何処か照れくさそうな様子で頭を掻く男、禪院廻のそんな言葉に、私は足を止めた。

 

 先輩? 先輩と呼んだのか? あの五条悟の幼馴染が?

 

 やれ俺より強いだの、やれ未だに底が見えないだのそんなことばっかり言ってる五条と、一種の化物だと断言しながら何処か嬉しそうな夏油のせいで五条悟と夏油を合わせたクズのように思っていたけど…もしかして違う?

 

 信じられないものを見るかのような目で禪院廻を見ている私に、その当の本人はそのことに気づいていないのかつまらないものですがと前置きした上で、その手に持っていた手提げ袋を私に手渡した。

 

 中身を見てみると包からして和菓子らしきものが入っていた、私自身甘いものは好きじゃないからあんまり嬉しいものとは言えない、しかしそれに関してはどうでもよかった。

 

 そんなことよりも、私は禪院廻が私へと向けている目が気になって仕方がなかった。

 

 瞳から感じ取れる尊敬の念、私を敬い慕っているかのような…そんな気配をありありと漂わせる琥珀色の瞳。

 

 頭から爪先まで電流が走る、口角が上がり手がわきわきとこの溢れ出る衝動に耐えられないかのように動き出す。

 

 五条悟と同じだと勝手に思っていた、夏油と同じ類の人間だと勝手に思っていた…けど違った。

 

 尊敬がある、他人を敬える、礼儀を払える…この三つが揃っている時点でどうしてあのクズ共と一緒に扱えようか。

 

 私はこの時、半ば確信に近い形で直感していた。

 

 

 あっ…この子、私の後輩だ…と。

 

 

 

 

「えぇ、ありがたく頂くわ、ありがとうね」

 

 そう思ってしまったからには、五条のように扱うわけにはいかなかった、なるべく笑顔で和菓子に対する礼を言い、それを現場監督に預けて直ぐ様目的地に向かっていく。

 

 道中で任務の詳細な内容を話しながら歩き、ふとした時に振り向き言葉を向ける。

 

 

「それと、私よりも強いからって無茶はしないこと、危なくなったら逃げるの…分かった?」

 

 どの口でとは思う、向こうは一級で私は二級…差は歴然、寧ろ私の方が言われるべき言葉だろうこれは、自分で言っていて恥ずかしくなってくる。

 

 しかし、そんな私の言葉に禪院くんはキョトンとした顔をした後に、吹き出すように笑って───

 

 

「えぇ、頼りにしてます、歌姫先輩」

 

 そう言って、私へと手を差し出してきた。

 

 握手とかしてませんでしたよねと、そう口にして。

 

 

 

 ……………。

 

 ………………………。

 

 

 ………………………………………。 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉしついてきなさい廻ぅ! 先輩のあるべき姿ってもんを見せてあげようじゃないのぉ!!」

 

 

 私はその手を握り、直ぐ様振り向いて意気揚々と目的地へと歩を進めた。

 

 かわいい後輩に良いとこ見せてやろうじゃないのぉ! …と、そう息巻いて。

 

 ……こいつが五条みたいになったら私、人間不信になるかもしれない。

 

 




 この後、やる気満々になった歌姫先輩の手によって呪霊はボコボコにされた。

 
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