今回は少し短め、ネタが少ないのが悪い。
因みにこんなに時間が一気に飛んだ理由は廻が京都校の教師だから。
あの後…具体的に言うと東堂の意味の分からん発言の後に起こったことを話そうと思う。
なんてことはない何時も通りに頭が東堂している東堂は、あの後も度々俺に高田ちゃんとはどういう関係なんだとひたすら聞いてきた、意味が分からんかった。
ハッキリ言うが知らんもんは知らん、俺はそもそもお前の言うアイドルの高田ちゃんのことなんぞあんまり知らんし、詳しくもなければ握手会にも行ったことは無い、だからお前の言う高田ちゃんとの関係なんぞ何も無い。
そう言いはしたのだが、当の東堂本人がまるで俺の話に耳を傾けず同じことを何度も何度も聞いてきた、即ち高田ちゃんとの関係を…である…だから知らんと言うとろうに。
あまりにしつこいし気持ち悪かったので、途中で絞め落として保健室に放り投げておいた、だって面倒なんだもの。
分かるだろうか? 自分の生徒が身に覚えも無ければ聞き覚えも無い他人の名前を出して、ひたすらどういう関係なのかと問い詰めてくるのである、正直に言うとキツイ。
何がキツイって、こいつの言っていた俺と高田ちゃん関係云々の話は多分…というか十中八九存在しない記憶案件だということだ。
たまにあるのだ、なんか急に思い出したみたいに意味分からんこと言ってくることが、何が酷いってその大半が基本的に存在しない記憶案件なんだからもう嫌で仕方がない。
ただ頭おかしな行動取るだけなら別に良いのだ、その時は俺が適当に捌けば良いだけの話だから…でもこいつ何をトチ狂ったかたまに術式込みで殴りかかってくるのである。
あぁいや、術式込みで殴りかかってくるのもまぁ良い、東堂がどういう人間なのかは知ってるつもりだし分かってて教師してるんだからそこに異を唱えるつもりはない。
……けど、それはそれとして最近その高田ちゃんのファンになったっぽい真依ちゃんに凄い目で見られるから出来れば止めてほしいとは思う。
なんというかこう、私の推しに手ぇ出したらどうなるか分かってるだろうなぁって感じというか、睨み方というかメンチの切り方がまんまヤクザというか…まぁ、少なくともそれくらいには嵌っていそうではあった。
いや別に良いけどね? 別にその高田ちゃんのファンでもなければ個人的な知り合いでもなんでもないから睨んでくるのは良いんだけど…やっぱりこう、見知らぬ事実を押し付けられてるみたいで嫌なんだよ分かってくれよ主に東堂。
…まぁ、そんなこんなで色々あって、俺は今も教師をしているわけなんだが…最近になって上からある情報が降りてきた。
曰く…『宿儺の器』が死んだ。
寝耳に水だった、それを聞いた時の俺の驚愕はきっと計り知れない。
乙骨憂太は既に東京校に入学している、というか前の交流戦で普通に来たしその際に里香ちゃんは大暴れしてた。
サマーオイルとも普通に会っていたが特に問題は無かった…というかそもそもサマーオイルが普通に教師してるからそもそも百鬼夜行が起きない、真希ちゃんを煽りもしないから乙骨くんがサマーオイルに対してどうたらな感情とか当然持っていない。
それのせいか、二人は普通に仲良さそうだったし特段ギスギスとしていなかった、端から見れば仲の良い教師と生徒の関係性に見えたことだろう。
それから現在、つまり丁度一年くらい経ってるわけだ、そんなわけだからそろそろ呪術廻戦が始まるなぁ〜とかどうにかしなきゃなとかは思ってはいた。
思ってはいたが…なんというか如何せん早すぎた。
だって宿儺の器が現れたって話から数ヶ月も経たない内に宿儺の器が死んだ…である、そうなるともう知っていようが知っていまいが驚くしかない、こんなにも早いものなのかと目を見開くしかない。
だったらさっさと関わって繋がりを作れば良かったろうという話なのだが…忘れてはいけない、こちとら京都校の教師である。
つまり、関わり合いになるような機会がまず無い。
よしんば機会があったとしても、それは宿儺の器を殺すとかそういう物騒なことする時だけだ、器と友好的に…とはまずいかない。
要するに関わりたくても関われんのだ、東京校の教師ではない俺には宿儺の器に関わる名分が存在しない、それが俺が宿儺の器に何も出来なかった理由になる。
よしんば関われたとしても、それはその宿儺の器こと虎杖悠仁が恵くん達と合流する交流戦の時からだ、少なくともその時まで俺は虎杖悠仁には関われない。
そしてその当の交流戦の引率には歌姫先輩が行く手筈となっているため、実質的に俺が虎杖悠仁と関わり合いになるのは渋谷事変かその後くらいだろう……と思っていた、少なくとも俺はそう思っていた。
…そう、思って
「ハイ、おっぱっぴー!」
目の前に置いてある箱の中から、そんな掛け声と共に少年が飛び出してくる。
赤い髪に明るく彩っている表情、改造したものかそれとも元々そうだったのか、赤いフードのついた高専の制服。
『虎杖悠仁』…少なくとも俺が死んだと聞かされていた人間、宿儺の器その人が、俺の目の前でおちゃらけていた。
……………。
…………………。
……………………………。
……………なんで?
いや、虎杖悠仁が生きている、これは分かるし知っている、流れはさして変わっていないからなそりゃ生きてるよなってなる。
けど…なんで俺がここにいる?
おかしいなぁ? 歌姫先輩が引率するって言われたんだけどなぁ? そう聞かされたんだけどなぁ? なんで俺まで一緒に来てるんだろうなぁ?
歌姫先輩はそこにいる、虎杖悠仁が箱から飛び出してきたこと…というより宿儺の器が生きていたことに半ば愕然としている、そしてそれは我等が学長こと楽巌寺学長もまた同じ。
何故生きている、どういうことだと目がくわっと効果音が付きそうなレベルで語っていたが…すいません、それは俺の台詞なんですよ学長、なんで無関係の俺までここにいるんですか?
そんなことを聞きたくなるもそんな空気でもなし、流石にこの空気の中でそんな的外れなことは言えないし言っちゃいけないと思うのだ常識的に考えて。
まぁ…とりあえずは───
「はじめまして虎杖くん、禪院廻です、どうぞよろしく」
「あっ、はい…虎杖です、こっちこそよろしく」
何処か居心地が悪そうな様子で固まっている虎杖くんに、俺は一言挨拶する、それに虎杖くんも何処か虚を突かれたようにして挨拶を返した。
それに満足気に頷いて、俺は踵を返して京都校の生徒達の元へと戻っていく、これ以上は再会の邪魔になりそうだし。
恵くんにも挨拶とかしときたかったんだけど…流石に今は友達を優先しといた方が良いでしょう、何せ死んだ相手との再会なんて普通は滅多に無いもんなんだからな。
ガンっと箱を蹴る音と三人組の声が背後から聞こえてくるのを感じた俺は、口角を釣り上げて生徒達の元へと戻った。
───ケヒっ
何処かで、そんな聞き覚えのある小さな声が聞こえた気がした。
廻が連れてこられた理由:対五条対策