交流戦スタート…五条以外の原作キャラの戦闘を書くのは実質初めてだから少し不安が残っていたりする。
「はい、開始〜一分前でーす」
悟の間延びしたような声と同時に、閉じていた瞳を開ける。
視界の先にはテレビの画面、映っているのは京都及び東京校の生徒達の姿、みんな悟の合図を待っている。
東京側は恵くんに虎杖くん、真希ちゃんにパンダくんと狗巻くんと釘崎さん。
京都側には東堂に真依ちゃん、加茂に三輪に与くんことメカ丸、あと西宮さん。
生徒達全員が持ち場につき、開始の合図をただ静かに待っていた。
「…それでは───」
───姉妹校交流会、開始。
至極真面目な声色でかつ静かに告げられたその言葉を合図として、両校生徒達が一斉に駆け出す。
映像は恐らく金を積まれて来たであろうお金大好き術師こと冥冥さんの黒鳥操術によって映し出されている為、みんなが動き出せば当然動き出す、だって鳥だもの。
…まぁ、それはそれとして…お前随分真面目に開始宣言したな悟、どうした何か良くない物でも食べたか?
見てみろよ歌姫先輩の顔を、誰だお前はって顔に書いてあるレベルでびっくりしてるよ、そんな風に出来るなら私にも同じようにしろよって顔してるよ。
軽薄そうにニヤニヤと楽しげに笑って、歌姫先輩からの視線なんて知らんと言わんばかりにガン無視して、悟は首だけ傾けて俺へと視線を向ける。
黒い目隠しに覆われてるから本当は視線なんて見えない、でもなんとなく俺に視線を向けているということだけはなんとなくで分かった、そして何が言いたいのかも。
「勝負だね、廻」
───君と、僕達の生徒達、どちらが強いか
そう言ってこれまた楽しげにニタリと笑う悟に、俺は自分でも分かるくらい大きく口角を吊り上げて───
「教師らしくなったじゃん、全然似合ってないよ?」
「負けた方、後でご飯奢りね」
軽く小馬鹿にするようにして笑って言葉を吐き出す、それに悟も口角を吊り上げるようにして笑みを作って、ほんの一言だけ言葉を吐き出した。
展開は物語通り…でも、ウチの生徒の強さまで物語通りにする気なんて俺には更々無かった。
物語は関係無い、俺の生徒になったからには生き残ってほしい、生き残って人並みの幸せを手に入れてほしい、だから強くなってほしい、それだけである。
見とけよ悟、俺の…俺達の生徒達はすっごく強いんだから。
───つまらんな、お前は
今でも、あの言葉が脳裏を過ぎる。
───何故逃げた? 『白叡』と『獅子王』はどうした?
冷たい雨の日、あの時の宿儺の言葉が、何時までも俺の脳裏を過って離れない。
───本当につまらんなお前は、これなら小僧の方が幾分かマシだったぞ。
あの時の宿儺の冷めた表情、まるで期待していたものとはまるで別物が出てきたとでも言うような落胆感、さながら好物かと思えば別の物だった時の子供のような顔…それを隠すこともなく表面に出して、宿儺はその言葉を俺へと叩きつけた。
数秒だ、ほんの僅かな数秒、その僅かな時間の間に虎杖が身体の主導権を取り戻すのがほんの少しでも遅れていたら、俺は自覚すら出来ずに死んでいた、その自覚があった。
───小僧に感謝しておけ、伏黒恵。
その言葉を最後に宿儺は虎杖と入れ替わり、そして虎杖は笑って俺の目の前で死んだ。
何故それが出来た、何故心臓を抉り取られた状態でそれが出来た…それは虎杖悠仁が虎杖悠仁だからとしか言えない…だからこそ、あの日のことが常に頭を過ぎる。
宿儺の言葉通りだとするなら、俺はあの時、あの特級呪霊に勝てる可能性があったということ…そしてそれは、奴の言う『白叡』『獅子王』と呼ばれる式神によって成し遂げられる可能性があったということ。
それが出来ていれば…いや、それが出来なくても俺が十種という術式をもっと理解出来ていれば、虎杖は宿儺と変わる必要は無かったのではないかと…そんな後悔が頭を過ぎる。
「伏黒?」
虎杖の声が耳に届く、視線を向ければどうした? とでも言いたそうに俺を見ている、他の皆も同じような感じだ。
…虎杖は生きていた、五体満足で飄々としたままで生きていたのだ…その事実に、俺がどれだけ安心したのかなんて、きっとこいつは知らないのだろう、あの登場の仕方でさえなければ俺自身もう少し露骨に喜んでいた自信がある。
……良い奴なのだ、虎杖は…呪いに殺されていいような人間じゃない。
しっかり生きてしっかり普通に死ぬ…そんな死に方をするべき人間なのだ、虎杖悠仁という人間は。
あの時はそれが出来なかった…俺が弱かったからだ。
だから…俺はもう誰にも負けたくない、もう二度と弱いからなんて理由で取りこぼしたくない。
「…なんでもない」
言葉を返す、ぶっきらぼうに。
それに対して、虎杖はそうかとだけ返して、再び前を向いた…のと同時に前方に存在した呪霊が、横合いから突っ込んできた何かによって潰された。
…いや、何かじゃない、人だ。
覚えている、最近お前に意味の分からん理由で殴られ蹴られ、本気で殺してやろうかと悩んだ男の姿だ、簡単には忘れられない。
デカい図体に筋肉隆々な立ち姿、上半身裸な状態で見る人間が見れば変態か何かと勘違いしそうになるスタイル。
東堂葵、一級術師…化物と呼ばれる人間が今、そこにいた。
凶悪に笑みを浮かべる東堂に、自然と拳に力が入った───
───赤血操術『
悪寒が走った、俺に向けられたものではない、それが分かって尚も悪寒が走った。
咄嗟だった、咄嗟に虎杖の首根っこを掴んで俺の方へと引き寄せる。
虎杖は驚いたような顔で俺を見ているが、それは俺も同じだ…俺もなんでこんなことしてるか分かってない。
しかし、その結果は、すぐに俺の目の前に現れた。
───『穿血』
瞬間、赤いビームのような物が俺の目の前を通り過ぎた。
あまりにも早い赤の軌跡、それが目の前を通り過ぎ、そしてその進行方向にあったであろう木へと直撃し、大きな衝撃を与える。
「…ふむ、外したか」
声が聞こえる、聞こえてくるがそちらに視線を向けてる暇なんて無かった。
捕まれ引っ張られた虎杖が俺を蹴り飛ばす、そこに何処からか飛んできた弓矢が突き刺さる。
呪力を纏った弓矢、それが複数本奇妙な軌跡を描きながら俺達へと向かってくる。
視界の端に映った虎杖はそれらを拳で叩き落とし、俺は手に持っていた木製トンファーでそれらを折り潰した。
ガキンっと背後から金属音が響く、振り返ってみればそこでは真希先輩が青髪の女と鍔迫り合いをしていた。
パンダ先輩は何時の間にか居らず、狗巻先輩の姿もそこには無い。
先手を打たれた…ほんの僅かでこそあるが、そう気づくには十分すぎる程の情報が、ここにはあった。
「虎杖───」
───『赤鱗躍動』
虎杖へと声を掛ける…その瞬間には、既に男は目の前にいた。
目を見開き、俺へとその手を真っ直ぐ突き出して来る。
掌底、それをトンファーを交差させて防ごうとする…が、それも虚しく容易く突き破られる。
掌底を受けたトンファー両方が威力を殺しきれずに破損し、それでも尚威力を殺しきれずに俺は木々の奥へと吹き飛ばされた。
吹き飛ばされ、地面を転がされ、頭の中で真っ先に出た思考が虎杖がヤバいという自分度外視な思考…だが、それ以外を考える間も与えず次が飛んでくる。
「赤血操術───」
───
そんな声と一緒に、前方から赤いチャクラムのような物が俺目掛けて飛来する、それを身体全体を傾けて躱し、躱すと同時に印を組む。
玉犬は既に出している、それでも俺がこんなだから指示が追いついていない、今頃虎杖と一緒にいることだろう。
だったら───
「鵺+蝦蟇───」
───『
拡張術式で作り出した俺の式神、戦闘能力は大幅に下がるが代わりに何度破壊されようが関係無しで何度でも呼び出せる俺のオリジナル。
鵺…通常の式神は駄目だという確信があった、通常の式神ならば撃ち抜かれて破壊されるのが関の山だという確信があった、それだけの実力差が目の前の先輩と俺にはある。
「安心するといい、先程の技も今の技もどちらも威力を限りなく落とした状態で使用している、教師にも確認は取った…当たったとしても精々が打撲程度で済む、死にはしないさ」
そう言って、此方へと歩いてくる和服の男へと、俺は今度こそ視線を向けた。
「…加茂先輩」
加茂憲紀…加茂家嫡流の赤血操術使い…
これと言った話は聞かない、東堂と違って一級複数と特級を祓ったなんて噂話も聞いていない…だが、それでも分かる。
この人は───
「さぁ、来るといい…交流会の名の通りのことをしよう」
東堂と同じ、化物だ。
加茂くんは良い子で天然で母親想いだったからとうしてもテコ入れしたかった、反省はしていない。
因みにパンダ先輩と狗巻くんは東堂が術式でどっかに飛ばしました。