宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 四日ぶりの投稿、最近妙にナイーブなのがたまに傷。


交流戦②

 

 

───ちっがぁぁーーうっ!!!

 

 

 遠くから木霊するように聞こえてくる大きな聞き覚えのある声、森の向こうから聞こえてくるその声に、ほんの一瞬だけ意識がそちらへと向きかけた。

 

 そんなほんの少しの意識の合間を縫って、ソレはやってくる。

 

 頬を掠める紫色の布で包みこまれた大刀の刃、障害物の多い森の中という振り回すことが難しいはずのソレを、目の前の存在は意図も容易く振るってくる。

 

 

「ッッ…!」

 

 苦悶の声、ただのうめき声にも似た小さな声が私の口から漏れ出る。

 

 上段からの大刀の振り下ろし…それを刀で受け止め、そこから流してカウンターを決める……つもりだったんだけど、どうにも無理っぽい。

 

 重たい、地面を踏みしめ全力で力を込めて耐えてこそいるけど、それでも長くは続かない。

 

 流すとかそういう問題じゃない、一撃一撃が流せないレベルで重く私の身体へと伸し掛かる。

 

 強引に刀を斜めにずらして力の行き場を逸らす、本来ならここで返しを入れているけど、そんなことはせずに後方へ飛び退いて大きく距離を取る。

 

 息を吐き出し適度に吸う…その一連の工程を終えた瞬間にはもう、大刀が目の前に迫っている。

 

 狙いは腹部、横薙ぎに振るわれた大刀を刀で受け、力の差に引きずられるがままに勢いに任せて大刀の上を転がるようにして躱す、さながら大道芸だ。

 

 振り抜かれた大刀、振り抜かれた位置とは逆の位置に立つ私、ここなら幾らなんでも大刀は間に合わないだろう…そう思っていた時期が私にもありました。

 

 

「へぇ、やるじゃん」

 

 そんな喜色の混じった声が聞こえるのと同時に、振り抜かれた大刀が返す刀のようにして私へと迫りくる……なんでですか!? 刀じゃなくて長物なんですよそれ!?

 

 悲鳴を上げそうになるのをなんとか堪えて、攻勢に転じようとしていた身体を咄嗟に四つん這いになるようにして屈ませる。

 

 頭上から聞こえる風切り音、それに恐ろしや恐ろしやとふざけているのか馬鹿にしているのかも良く分からない思考が私の脳内を駆け巡り、次の瞬間には警報が鳴り響く。

 

 身体を横へとずらす、そこに突き刺さる靴。

 

 鍛えられた筋肉質な足が私の視界に映り込む、筋肉質ながらも何処か女性的な魅力を漂わせるその…言ってしまえば美脚の部類に入るであろうそれに私は一瞬目を奪われ、次いでハッとしてゴロゴロと転がり、そして刀を構えながら立ち上がった。

 

 ……真依とはまた違った魅惑の脚だったなぁとか、そんなことは思っていないのです、はい。

 

 

 

 ………まぁ、それはそれとして…やっぱり強い。

 

 

 

 単純な身体能力が私よりも上って言うのもあるんだろうけど、それ以上に上手いと感じる。

 

 この障害物の多い森の中でも大刀を振り回していたことにしても、あの時の返し太刀のことにしてもそうだけど、貴女なんで大刀そんな手足みたいにぶん回せるんですか?

 

 

 ほんの僅かではあるが攻撃が止まった、その合間を縫って息を整え、思考をどうにかこうにかと纏め上げる。

 

 まず近接戦はこっちの方が不利、けど遠距離から攻める手段なんて私は持ってないからどの道意味が無い。

 

 じゃあどうするか…答えは至ってシンプル…!!

 

 

「行きますよ、真依のお姉ちゃんさん!!」

 

「いいぜ、来いよ…でもお姉ちゃんさんはやめろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チィっ…!!」

 

 

 …まただ。

 

 拳が頬を掠める、頬から痛みが走り、タラリと液が流れ落ちる。

 

 次段の拳が繰り出される、そこに不知井底の舌が巻き付きその動きを食い止めようとする…だが───

 

 

 

「脆弱」

 

 巻き付いた腕を大きく振り被って、叩きつけるようにして振り下ろし、舌の先にいた不知井底はそのまま地面へと叩きつけられる。

 

 地面に亀裂が入る程の力で叩きつけられた不知井底はぐちゃりと俺の目の前で生々しく弾け飛び、足やら何やらを辺りにばら撒いた末に影に戻っていく…そんな光景を後目に、加茂先輩は気付けば俺の眼前に居た。

 

 …まただ、またこの展開だ。

 

 腕を交差して繰り出された掌底を何とか防ぐが、勢いを殺しきれずに吹き飛ばされ、そのまま近場の木へと身体を叩きつけられた。

 

 背中から痛む、硬い感触とザラリとした感触が背中を通じて全体に伝わり、それが俺の意識を繋ぎ止めた。

 

 視線を眼前へと向ける、そこでは加茂先輩が此方へとゆったりと歩いている姿が見えた。

 

 

「『鵺』…!!」

 

 

 気付けば印を組んでいた、一撃で撃ち落とされると分かっているのに、それでも俺は印を組んだ。

 

 翼を広げて、髑髏の仮面を身に纏った橙色の怪鳥がその身を現す。

 

 身に纏った雷をパチリバチリと鳴らし、歯を剥き出しにして奇妙な鳴き声を上げる鵺へ、加茂先輩はふと視線をやって、袖から何かを無造作に投げつけた。

 

 

「赤血操術──」

 

 

───赤縛

 

 

 瞬間、投げつけられた何かは弾け飛び、縄状の形状となって鵺を雁字搦めに縛り付けた。

 

 苦悶の声を上げて鵺が地面へと落ちる、なんとか抜け出そうと藻掻いていこそいるが、それも無駄とでも言わんばかりに赤い縄が鵺の肉体へと硬くキツく食い込んでいく。

 

 直ぐ様術式を解除し鵺を影へと戻す、そして再び印を組んで鵺を再召喚───

 

 

「そうするだろうね、君なら」

 

 

 懐から声がした───

 

 

「ふぐ…!?」

 

 

 顎下から衝撃が響いてくる、打ち上げられ首が後方へと大きく仰け反り脳が揺れて意識がぶらつく。

 

 唇を噛んで無理矢理意識を繋ぎ止める、そして未だ懐にいるであろう加茂先輩に直感で拳を放った。

 

 放たれた拳はパシリと軽い音を立てて受け止められ、そこから流れるように体勢を崩され更にそこから背負い投げを叩き込まれる。

 

 背中に響く痛み、地面に叩きつけられ息が詰まる、肉から肉へと骨から骨へ衝撃が伝わっていく。

 

 受け身も取れずに叩きつけられた、息もままならないから身体もそもそも動かせない、こんな隙だらけの所に追撃しない馬鹿はいない。

 

 負けだ、完敗だ…そんなことを考えながら身体から力を抜いて───

 

 

「ッッできるかぁ…!」

 

 まだだ、手も足もまだ動く、呪力も未だに尽きていない。

 

 振り絞れ、何でも良いからただ闇雲にでも良いから振り絞れ、こんなことで負けているようじゃ何時まで経っても俺は弱いままだ。

 

 影を先輩の足元へと設置し、先輩の片足を影の中に沈み込ませる。

 

 最近思いついた影の中に武器を収納するという方法、実際やってみて出来た時から考えてはいた、恐らく人も入るんだろうなと。

 

 でもそれをする機会なんて無かったし、そもそも不確定事項の多いことに他人を巻き込むのは気が引けた、だからと言って自分でやる気概も無かった。

 

 ぶっつけ本番の試し技、それは奇しくも加茂先輩の足元で形を為し、そして結果として成功した。

 

 一瞬、ほんの一瞬だけ先輩に隙が生じた…そこに、俺は鵺とは別の切り札を、先輩へと叩き込む。

 

 ついさっき、俺が地面に叩きつけられた時のことだ…玉犬が、()()()()()()()()()

 

 

「玉犬───」

 

 

───渾

 

 少年院の一件で破壊された玉犬・白の能力は、既に黒へと引き継がれている、後は俺が何時使うかを決めるだけだった。

 

 本来なら相手が死ぬかもしれないからと使わないと決めていた手…けど知ったことか、相手は一級だ、早々に死にはしないだろう。

 

 白と黒、二色の色が混じった毛並みに大きな身体、まるで人狼か何かのような姿をした玉犬が、その拳を加茂先輩へと叩きつける。

 

 影に足を取られ、一瞬の隙を晒していた先輩は、やはり流石一級とでも言うべきか、既に体勢を整えていて特に苦も無く玉犬・渾を迎え撃った。

 

 拳と拳がぶつかり合い、周囲の木々が揺れ動く。

 

 草や花が僅かに揺れ動き、耳に微かに聞こえてくる水音が僅かに振動で揺れたような気がした。

 

 …やっぱり凄いですよ、貴方は。

 

 加茂先輩を見て、素直にそう思う。

 

 こっちの式神は白を継承して大幅に能力が底上げされている、低級の呪霊どころか最低でも準一級にも通じるという自信がある…というかこの前、あの目隠しクソ教師にそう言われた。

 

 だって言うのに、ただの身体能力…多分ドーピングも入ってこそいるが、それでも式神の膂力に押し負けていないというのはとても凄いことだと言うことを、俺は良く知っている。

 

 拳を止められた玉犬・渾が、続けて拳を繰り出し、加茂先輩はそれを避けて渾に蹴りを叩き込んでいる。

 

 蹴りを叩き込み、僅かに怯んだ渾へ顎下から掌底を打ち込んで首を打ち上げ、そこから更に渾の足を素早く払い、体勢を崩したところに鳩尾へと掌底を叩き込む。

 

 掌底を打ち込まれ、そのまま俺の方へと吹き飛ばされた渾が俺の真横を通過していく…分かっていた、玉犬・渾で勝てないことは端から分かりきっていた。

 

 何せ廻さんの生徒だ、近接戦闘に関してのことは大分叩き込まれているだろうし、きっとそれ以外のことも大きく教わっているのだろう。

 

 俺は親父に近接を習ったが、親父の身体能力が高すぎてまるで当てにならなかった。

 

 だったらと廻さんに教わろうと思ってみれば、あの人はあの人で京都校に就職していて中々時間が取れなかった…あの時ほど廻さんが居ないことを口惜しく思ったことはない。

 

 だから正直な話、羨ましいですよ加茂先輩…貴方は、俺の兄から様々なことを学んでいるのだろうから。

 

 加茂先輩が俺へと足を踏みしめているのが見える、恐らく次の瞬間には先程と同じように俺の目の前にいるのだろう……だが知ったことか。

 

 

 

───大丈夫だよ恵くん…君はその内、凄く強くなれる。

 

 

 

 

 ずっとそうだった、あの式神を召喚すれば並大抵の敵はどうにかなるからと、何処かで冷めている自分が居た。

 

 アレさえあれば問題無い、自分が死ぬだけで全てが片付く…その認識が結果的に俺を弱くしていると、最近になってようやく気付いた。

 

 そして、それと同時にあの言葉を思い出した…何時か廻さんが、幼少の頃の俺に言ったその言葉を。

 

 

 呪力が巡る、身体から外へとまるで吐き出すようにして溢れ出していく。

 

 練っては吐き出し練っては放出し、無駄にも思えるソレをどうにかこうにかと形へ纏め上げる。

 

 

 

 

 廻さん、貴方の言うその内が何時かなんて分からない、そもそもその内なんて曖昧な表現して…何年経ったと思ってる。

 

 …でも、それでも俺は信じます。

 

 だって貴方は、俺が心底尊敬した、俺の兄貴分なんだから。

 

 

 

 

「───()()()()…!!!」

 

 

 

 

 

───『嵌合暗翳庭』

 

 

 

 さぁ、見とけよ兄貴の生徒…弟の意地を見せてやる。

 

 

 

 

 

 




 何でも良いからめぐみんの領域を出したかった、反省はしている。
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