宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 最近フリーレンやらMFゴーストやら何やらにはまり込んでいる作者、漫画を買おうか検討中。

 なお、それをしたら呪術廻戦のネタが消えるかもという恐怖と戦っているものとする。


交流戦④

 

 

 …予想以上、言葉にするならそんなところだろう。

 

 眼前の術師、伏黒恵の姿を視界に収めながら、私はそんなことを一人思った。

 

 正直な話をすると、私は彼のことをそこまで脅威には感じていなかった。

 

 歩き方から分かる重心の位置や使い方、呪力の量や流れに質と言った呪術的な観点、更に禪院先生からの私的な評価。

 

 それら全てから能力を予測し、実際にこの目で確認した結果、伏黒恵は私の目線から見て未だ凡域を出ない普通の術師であると…少なくとも私はそう認識していた。

 

 

 

 ……それが、どうだ。

 

 

 手加減したとはいえ、私と真っ当に攻防を交わし、領域すら展開してみせた。

 

 領域を展開した後の彼の攻めはとても良いモノだった、私も何度か思わず術式を制限無しで使ってしまいそうになった。

 

 この時点での私の評価は伸び代が有り、今後の成長が楽しみな後輩…と言ったところだろうか、この先の成長がとても楽しみな後輩とも言えるだろう。

 

 そんな彼は今、私…正確に言えば私と三輪の二人に剣を向けている。

 

 領域を展開した影響で術式は焼き切れているだろうに、そうでなくとも領域の消耗で立っているのがやっとの状態であろうに、それでもその瞳から迸る戦意には一点の曇りも無い。

 

 その隣に立つ真希は、そんな彼の姿を横目でチラリと見据え、何処か満足そうに笑みを浮かべた。

 

 

 それが、合図となった。

 

 

 

 真希の姿が、掻き消える。

 

 爆発するように弾ける地面、大きな音を立てて土煙が舞う。

 

 それがただの踏み込みによるものなどと、常人ならばまず思いもしないだろうアニメか漫画のようなソレ。

 

 しかし厄介なことに、実際に有り得ているから起こっているわけで、幸か不幸かで言うなら幸とでも言うべきなのか、私はその動きを認識することが出来ていた。

 

 

 

 真希が駆ける、狙いは私だ。

 

 

 振り抜かれる薙刀を屈むようにして躱し、振り抜かれたがら空きの懐へと潜り込む…なんてことはしない。

 

 

 私は知っている、そこは踏み込んだら最後の死域だ。

 

 

 

───赤血操術『百斂・穿血』

 

 

 踏み込めば終わり…その認識が、私にこの選択をさせた。

 

 当然威力は落としている、しかし流石に伏黒くんに向けて放ったものよりかは威力は上だ、あの威力では足止めにもならん。

 

 初速は音速すら超えると言われている穿血、それを特に躊躇するでもなく放った私の視界に映ったのは、その音速を超えるらしい穿血を首を捻るだけで躱す真希の姿。

 

 驚愕は無い、どうせ避けるだろうことは分かりきっていたからだ、大した痛手にはならないだろうことは分かりきっていた。

 

 

 故に───

 

 

 

───シン・陰流『簡易領域』

 

 

 

 

 同時に攻める。

 

 

 

 

 刀を鞘に収め、居合の構えを取った三輪が、何時の間にやら真希の背後に立っている。

 

 

 真希の顔が、僅かに驚愕に歪んだ。

 

 それもそうだろう、気配も音も何もかもを拾っていたはずだ、それは呪力が一般人程度にしか無い真希にとっての生命線だからだ。

 

 故に、それら全てをすり抜けて自身の背後を取った三輪には注目せざるを得ないだろう、私だってそうする…というよりどうやって背後を取ったのかは寧ろ私が一番聞きたい。

 

 しかし、今の私達にはそんなことをしてる暇など無いのだ。

 

 

 

───抜刀

 

 

 

───赤血操術『赤縛』

 

 

 高速に振り抜かれる三輪の刀、そのタイミングに合わせて私は袖下から輸血パックを真希へと放り投げ、そのまま術式を発動する。

 

 縄のように伸びた血がその身体を縛り上げようと真希へと迫り、更にその向こう側では三輪の高速抜刀が真希の背後から迫っている。

 

 これで倒せるとは思っていない、しかし最低でも一撃か手傷程度は負わせておきたい、そうでもしないと負ける。

 

 

 

 

 

 

 …そんな風に考えていたのがいけなかったのだろう。

 

 

 この時の私は、ある一つのことを失念していた、伏黒恵の存在を完全に思考の隅に追いやっていた。

 

 自分でも予想以上と言っていたはずなのに、真希の存在を前に私は完全に伏黒恵という術師を放ったらかしにしていた。

 

 三輪はまだ分かる、そもそも三輪は真希と戦っていたのだ、その意識が真希だけに向くというのも分かる…しかし私は違う。

 

 私は両方を相手にすると決めていたのだ、真希の言葉からも二対二を想定していたのだ。

 

 しかし私は放り投げた、そんな自身の思考を彼方へと放り投げた。

 

 真希が強かったからなど理由にならない、私は確かに未だ伏黒恵という存在を舐めていたのだ。

 

 そして、そのツケは、当然のようにやってくる。

 

 

 

───『満象』

 

 

 その言葉が聞こえるのと同時に、私の身体は何かに押し流された。

 

 冷たい感触に服に染み付く瑞々しい感触…それが水であることは、すぐに分かった。

 

 圧倒的なまでの物量と圧力、それで以て私の身体は踏ん張ることすら許されずに奥へ奥へと押し流された。

 

 呪力で肉体を強化、或いは赤鱗を使っていればまだ踏ん張れたかもしれないが、真希との戦闘を意識し過ぎていたのが災いした、肉体の強化よりも術式の操作に重きを置いてしまった。

 

 私は東堂のように素のスペックが極端に高いわけでは無い、強化が間に合わなければ当然物量には負ける。

 

 

 べチャリと地面に放り出される、水を大量に吸ったせいか地面は泥塗れと化しており、その泥が私の服へと付着する。

 

 弓は何時の間にか何処かへ消えており、矢筒の中に入っている矢だけは無事だった。

 

 次いで伏黒や真希、三輪は何処だと周囲を見渡し───

 

 

「良いだろウチの後輩、良く気が利くんだ」

 

 

 そんな声が、背後から響いてきた。

 

 振り向くことはしない、それが誰なのかもどうしているのかも大概は予想が付くからだ。

 

 あの激流の中でどうやってとも聞かない、強いて言うならそれが禪院真希だから…とでも言うべきなのだろう。

 

 

「…あぁ、そうだな」

 

 

 一言そう返す、きっと今の私は呆れたような笑みを浮かべているに違いない。

 

 領域を展開した後は術式は焼き切れる…不完全でこそあるがあの時確かに伏黒は領域を展開した、当然効果時間を過ぎればその後は術式を使えなくなるはずだ。

 

 なのに使えた、あの水はきっと伏黒の術式に依るものだ…というよりそれ以外にあり得ないのだ。

 

 団体戦が終わったら種明かしをしてもらおう…そんなことを考えながら、私はゆっくりと両手を上げた。

 

 降参、降伏の意味合いを持つその仕草に、真希は吹き出すように笑い、薙刀でコンッと小さく私の頭を叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ〜もうびっくりしたぁ〜」

 

 水浸しになった服に絞りながら、私は溜息を吐いた。

 

 刀は無事で身体に異常は無し、というか寧ろピンピンしてるというか寧ろ水自体は気持ち良かったと言いますか…まぁ、それはそれとしてびっくりしたけど。

 

 それにしても強かったなぁ真依のお姉ちゃんさん、結局一太刀も当てられなかった、それどころか投げ飛ばされたし。

 

 加茂先輩と半ば連携みたいな形で挟み込んだ時は流石に行けたかなっと思ってたのに、まさかまさかの何処からやってきた大洪水、お陰で服はビシャビシャです…気持ち悪い。

 

 うめき声をあげながら大きく伸びをする、身体を解して手首をポキリと鳴らし、何気なしに周囲に視線を向ける。

 

 辺りは木々一色…というには色々と倒れている、地面とかそこら辺りも結構泥だらけだし、これ見たらどれだけの規模で水を流されたのかが良く分かってしまう…良いなぁ羨ましいなぁ。

 

 それはそれとして周囲に敵影らしきものは無し、下手をすればこのままのんびりぐだりと出来てしまうのかもしれないが、それだけはどうしても嫌だ。

 

 だってこのままでは真依のお姉ちゃんさんにサラッとやられ、その後の絶好のタイミングを水に流されただけの女で終わってしまう、役立たず三輪になってしまう。

 

 それは嫌だ、家は貧乏なのだ弟だって二人もいるのだ、私が頑張らなければ誰が弟達を養うと言うのか、誰が親孝行するというのか。

 

 パシンと頬を叩いて気合を入れ直し、さっそく呪霊狩りだとその場を後に───

 

 

「……………」

 

 

「─────」

 

 

 

 しようとして、私は息を呑んだ。

 

 ドスンドスンと大きな足音を立てて、目の前にソレは現れた。

 

 

 白い身体に目から生えた木の枝のようなモノ、人型でこそあるけどしかし人間と呼ぶにはあまりにも異形な姿形。

 

 左腕の部分が何か布のようなモノで包みこまれていて、それが一層その存在の異常性を高めている気がしてならない。

 

 そして何より、私の身体に重く伸し掛かるこの圧力と呪力。

 

 今まで戦ってきた呪霊とは文字通り一線を画す存在であると、肌で理解させられたような気がした。

 

 そんな存在が、無造作に、私の目の前に立っていた。

 

 

 

 

 ごめん皆……私、ここで死ぬかも。

 

 

 

 柄にもなく、そんなことを思った。

 

 




 なお、この三輪ちゃんは条件さえ整えば東堂を一撃で昏倒させるような一撃を放てるものとする。
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