宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 鬼と言えば絶対的で理不尽な暴力なイメージが作者にはあったりする…上手く書けた気がしないような気がしたりもする。


理不尽な暴力

 

 

「あぁもうなんで先に行っちゃうかなぁ!?」

 

 

 走りながら、先に一人でエリアに向かって行ってしまった後輩に対して悪態をついてしまう…こういうのは集団行動が鉄則でしょうにとついつい口が動きそうになってしまう。

 

 言いたいことは山程ある、具体的に言うと初めて会った時に言った等級が上でも無茶はするなという言葉を筆頭として色々とぶち撒けてやりたい。

 

 …だけどまぁ、正直責める気にはなれない。

 

 何故なら───

 

 

 

「まぁまぁそう怒んないの歌姫、小じわ増えるよ?」

 

「うっさい!」

 

 この目隠しクズに比べたら遥かにマシ且つ人間味があるからだ。

 

 

 

 

 

 

 今まさにエリアへ向かって走っている真っ最中、私の横を学長と五条が並んで走っている中で、私はきっと苦虫を噛み潰したような顔をしていたことだろう。

 

 それもそのはずで、私は五条悟という人間が根本的に嫌いだ、具体的に言うと禁酒とこいつのどちらが嫌いかと言われればほぼ間違いなくこいつの方を選ぶ程度には嫌いだ。

 

 ましてや緊急事態、交流戦の真っ最中に侵入者が現れた可能性が高いというこの状況で、未だにヘラヘラと笑っているこいつのことをどう好きになれと言うのだろうか、少なくとも私は無理だ。

 

 そんなこいつに比べれば、ウチの後輩は天使のようなものだ。

 

 確かに独断先行は咎められるべき行動だけど、それでもキチンと行く前に私と学長に伝えているし、無表情を装ってこそいたけどその表情には若干の焦りが見えた。

 

 きっと生徒達のことが心配だったのだろう、こんな業界だから何が起こるかなんて誰にも分からないし予測出来ない。

 

 最悪を考えて行動した…言葉にすればそんなところだろう。

 

 さっき聞こえてきた咆哮と言い、札が一斉に燃えたりカラスの視界が見えなくなったことと言い、不吉なことしか起こってない。

 

 どうか、お願いだから何も起こらないでほしい……そんな私の願いは、目の前で唐突に爆散した。

 

 

「ぐぉぁっ…!?」

 

 

 爆音と共に、鬼が壁を突き破って私の目の前を通り過ぎ、そのまま別の壁に叩きつけられた。

 

 苦悶の叫びが耳に届き、現状に理解が追いつく前にソレはやってくる。

 

 雄叫び、咆哮…それらを上げながら超高速で鬼へと何かが突っ込み、爆音を鳴らして私の視界から消えていく。

 

 ズガンという音を鳴らして破壊される壁や石段及びコンクリート、まるでレゴブロックか何かのようにそこにあった物達が壊されていく。

 

 呆然とその光景を見つめる、口は半開きできっとまん丸と丸くなっているであろう私の瞳は、何処までも非常識な光景をその目に映し続けて、最終的に───

 

 

「…何…あれ…?」

 

 

 一言、疑問の言葉を呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんだこいつはなんだこいつはなんだこいつは!?

 

 

 身体が宙に浮き、その数瞬後にはジェットコースターさながらの加速を味わわされる。

 

 腹に響く痛み、顔から脳髄が飛び出したんじゃないかと錯覚させられる程の衝撃に鳩尾から未だに響いてくる骨の砕ける感触。

 

 それらを現在進行系で感じながら、俺は地面に大きく叩きつけられた。

 

 二度、三度、四度と何度も何度も足を捕まれた状態で、まるで子供が玩具を乱暴に扱うのと同じように何度も何度も地面に叩きつけられる。

 

 一体何度死にかけた? 俺が反転を使えていなければ俺は一体何度死んでいた?

 

 分からない、分からない、何度死んでいたとかもうそんなこと覚えていない、最初の奴の突撃の時点で死んでいないことに疑問すら覚える。

 

 まだ生きている…その事実が、未だに俺の意識を繋げていた。

 

 

「ぬぁぁッ!!」

 

 咄嗟の行動、咄嗟に掴まれていた足を鉤爪で斬り落とし、転げるように奴の手から逃れる。

 

 斬り落とした足を反転で治す…その合間すら惜しんで俺は奴へと視線を向けた…その向けた視線の眼前に、赤い物が迫っていた。

 

 いや違う、物ではない、何せソレはつい先程まで俺であった部分だからだ。

 

 赤い物…俺の足であったモノが、音すら置き去りにして俺へと迫り、それを見据える俺の視界がスローモーションのように流れ、そして───

 

 

「ガッ…!?」

 

 

 俺の顔面へと直撃した。

 

 視界がぐらりぐらりと揺れ、パチパチと電灯のように点滅し、そこから遅れて激痛が顔面全体に伝わってくる。

 

 痛い痛いとほんの僅かでこそあるが痛覚に思考が占領される、更に頭からバキリと鳴ってはいけない音が確かに耳元へと聞こえてくる。

 

 面の音かとも考えたが、次の瞬間に襲ってくる嘔吐感と気持ちの悪さ、顔面全体に伝わっているものよりも数段上の激痛がガンガンと頭に響いてくるという現状に加えて頭から響いた音が、俺にその事実を気づかせた。

 

 即ち、今のは俺の頭蓋の割れた音だ…と。

 

 

 判断は迅速だった、何もかもを後回しにして半ば反射的に反転術式を使用、その間精々一秒程度…更に続けて仰け反った頭を正面へと向かせる、この間約0.1秒程度。

 

 そしてその僅か一秒程度の間に、既に奴は目の前で拳を振り抜いていた。

 

 純粋な右ストレート、技術もへったくれも無い何処までも純粋な暴力によって振り抜かれたその拳が、いとも容易く俺の腹部を撃ち抜いた。

 

 腹部から張り裂けんばかりの痛みが襲いかかり、内臓を吐き出しそうになる程の衝撃が身体全体に響き渡る。

 

 最早纏っている鎧は意味を成しておらず、腹部への一撃によって鎧全体がヒビ割れ砕け散っていく、原型を残していることそのものが正しく奇跡としか言いようのない光景が目の前にある。

 

 血反吐を吐き出しながらも反撃を試みようと鉤爪を振るう…が、奴の身体に当たったところで弾かれる。

 

 まるで鋼鉄に当たったかのような音が鉤爪から響き渡り、次の瞬間には振るった腕ごと鉤爪を毟り取られ、更にもう片方の腕をついでと言わんばかりにもぎ取られる。

 

 ぐちゃりと生々しい音が耳元で鳴り、もぎ取られた腕から血飛沫のように血液が周囲へと飛び散り、奴と周囲の色を赤く朱く染め上げていく。

 

 腕をもぎ取られたのだ、当然痛いし泣き叫びたい…しかしそんなことは日常茶飯事だと反転術式を使用し、直ぐ様両腕を治癒してその場から逃げ出そうと足掻こうとし…その上から奴によって踏み潰された。

 

 潰されたカエルの気持ちはこんなものなのだろうかと何処か冷静に考える自分と、唐突にやってきた痛みにパニックになる自分がいた。

  

 内臓が弾け飛ぶ感覚を体内から知覚し、更に喉から感じたこともない大きな物を吐き出しかけ、それが喉に詰まって呼吸することすら難しく感じてしまう。

 

 なんだこれは、なんだこいつは、なんなんだ今日は…。

 

 そんな無駄な思考が頭を過ぎり、ふと自分を踏みつけているものへと視線を向けようとして…後悔した。

 

 

 

 そこには…鬼が居た。

 

 

 

 自身を見つめる無数の瞳、鋭く凶悪に開かれた顎から覗く強靭な牙は今か今かとガチガチと音を鳴らしていた。

 

 恐怖が湧き上がる、ガタガタと身体が震え歯がカチカチと音を鳴らす。

 

 逃げたい…鎧はほぼ全壊状態で尚且つ逃げ出せる確率は最早0に等しくとも、それでも生きたいと地面を掻きむしって逃げ出そうとただ足掻く。

 

 怖い、怖い、怖い…死にたくない、死にたくないと涙と鼻水を豪快に垂れ流して嫌だ嫌だとその場から惨めったらしく逃げ出そうとして、鬼に首筋を猫のように掴まれた。

 

 吊り上げられる、指を器用に使って俺を持ち上げた鬼への恐怖で顔がぐちゃぐちゃになるのを自覚しながら、俺は反転で治していた腕を鬼へと振るいながら術式を発動する。

 

 

 俺の術式は構築術式、呪力で0から物質を作り出す非常に効率の悪い術式…それの術式反転を俺は主に使っていた。

 

 俺の術式反転は分解、構築とは真逆の何かを生み出す力ではなく何かを壊す力、触れた物を文字通り問答無用に分解してしまう力…それが俺の構築術式の使い方だった。

 

 0から物質を生み出す訳ではない為なのか、術式反転の癖に通常時よりも効率が良いという意味の分からない効果をしていたが、それのお陰で俺は今日ここまで生き延びてこられた。

 

 これで殺せなかった術師はいない、あの五条悟の無下限呪術でもない限り、俺は誰にも負けない…少なくとも俺はそう思っていた。

 

 

 

 …しかしどうだ目の前の鬼は。

 

 効かない、壊れない、分解されない、死なない。

 

 何故死なない、何故壊れない、何故死んでくれない、何故にお前は今までの者達のように壊れてくれないのだ。

 

 死んでくれ、壊れてくれ、今まで通りの景色を見せてくれ。

 

 そんな俺の願いも懇願も無視して、鬼は無造作に俺を空中へと投げ飛ばし、そして殊更無造作に拳を引き絞り…打ち放った。

 

 拳が俺へと迫り…そこで俺の意識は暗く染まり…その直後に、鬼の咆哮を、聞いた気がした。

 

 

 

 

 

 

 




 とにかく理不尽な暴力が書きたかった、反省はしている。
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