宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 最近鬱気味だったこともあって半ばヤケクソ気味に書いた話、三人称は久しぶりだと思う今日この頃。


絶望は何時だって誰にでも

 

 

 

 

 

 一触即発、決戦の前段階。

 

 確かにそう言うべきであろう状況だった、間違いなく我等は今より相手の全てを滅する呪い合いを始めようとしていたはずだった。

 

 両者睨み合い、互いに決して引かず媚びず、ただ眼前の敵を屠ってやろうと決めていたのだ、我等は。

 

 奴等は拳を、私は炎を…互いが互いの凶器を向け合い構え、それを殆ど同時に振るおうとしていたその時…奴は唐突に現れた。

 

 

 

 

 

 

 空が弾け飛ぶ、まるで汚れた水に真新しい水をぶち込んだかのように、夕闇に染まっていた空が青一色に染め上げられていく、それが意味することはただ一つ。

 

 帳が破られた……時間切れだ。

 

 

 

「ここまでだな」

 

 一言呟きその場から駆け出す、帳が破られたら即刻逃げろとあのクソ脳味噌から言われているのもあって、その逃走に迷いは無い。

 

 …本音を言えば、あの二人とはもう少しだけ戦っていたかったが、それをしようものなら最終的に帳を破ったであろう人間に殺される自信がある。

 

 視線を空へと移す、視線の中で宙に浮く人影が見えた。

 

 五条悟…白い髪に蒼い瞳という昔のあの方を連想させる容姿をしたその男は、あのクソ脳味噌曰く現代最強の術師…らしい。

 

 距離は離れている、私の存在に気づいたような気配も無い…しかしそれでも感じるその圧力と存在感からは最強と呼ばれる所以のようなモノを感じられた。

 

 それでも五条悟のことをらしいという曖昧な呼び方をしているのは、私にとっての最強が未だに()()()で固定されているからなのだろうが…まぁそんなことはどうでもいい、死人の話をここでしたところで仕方が無い。

 

 兎にも角にも逃げるが勝ちである、背後から聞こえてくる声が次第に私から突き放されていくのを感じながら、私は予め指定されていた目的地へと向か…おうとしたところで、私の視界の端が唐突に爆音を上げて吹き飛んだ。

 

 地面を砕き、木々を薙ぎ倒し、文字通り何もかもを吹き飛ばしながら爆音に爆音を重ねたかのような音を叩き上げて、それは私の前を横切った。

 

 

「───ッッ……!!?」

 

 

 視界の先、爆音の着地点、巨大なクレーターを作り出しながらそこへと叩きつけられたソレは、うめき声のような意味不明な音を出しながら苦しみ藻掻き、紫色の血を垂れ流しながらそれでもと地面に手を突いて起き上がろうとしている。

 

 それが、今回の一件における協力者ならぬ、クソ脳味噌が手を組んだらしい呪霊であることに気づくのにそこまで時間は掛からず、しかしそれでもそのほんの僅かな時間が、眼前の呪霊の運命を決定付けた。

 

 次の瞬間、天を突くような雄叫びと共に、そいつは私の前に降ってきた。

 

 複数の瞳に牛のような角、鋭く尖った牙に虎のような爪に牛のような尻尾、その身に渦巻く暴力の奔流。

 

 あぁ知っている、知っているとも、一体何度お前の姿を見たことか、何度お前の力に助けられたことか。

 

 故に問わざるを得ない、その誕生の経由を知っているが故に私はお前にこの疑問を吐き出さざるを得ない。

 

 何故だ、何故お前が今ここに存在している───

 

 

 

 

───獅子王…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 獲物を見つけた。

 

 獅子王は眼前の存在を見ながら、ふとそう考えた。

 

 主からの命令は至って単純、とにかく呪霊を狩ってこい、ただそれだけである。

 

 最初に呼び出されて相手にさせられたのは鬼もどき、久方ぶりの出番と張り切ってみれば如何せん相手はあまりに脆く、獅子王の我欲を満たすモノとはなり得なかった、玩具にすらなりはしない。

 

 しかもその直後にもう終わりと言われた時の獅子王の胸中は絶望一色だった、久しぶりに呼び出されたのにこんな木偶の坊を壊してもう終わりと、あんまりにもあんまりなソレに思わずイジケてしまったのは記憶に新しい。

 

 幸いなことに、その発言はすぐに撤回され、その後の出番はすぐということもあって獅子王は主を乗せて目的の場所まで走って向かい、そして一定の地点で命令を下された。

 

 

 曰く、呪霊を狩ってこい、人間は無視して良いからとにかく呪霊を狩ってこい。

 

 ただそれだけの命令、それでもって獅子王は行動を開始し…そして今、獲物を見つけた。

 

 挨拶混じりの突進、人間と戦っていた呪霊を相手に獅子王は一切の躊躇いもなく突進を仕掛けた、当然と言うべきかその脳裏にその人間達が巻き込まれないような攻撃をするという発想は一切無い。

 

 唯一の救いと言えば、簡単に壊れてはつまらないからと紫電を纏わなかったことだろう、纏っていたならば確実に側に居た人間ごと呪霊を吹き飛ばしていたであろうから。

 

 呪霊が吹き飛ばされる。

 

 地面を砕き、森を裂き、破壊の音を空へと響かせながら呪霊を森の奥へ奥へと吹き飛ばされていく。

 

 獅子王からしてみれば単なる挨拶代わり、だがそれを食らった当の呪霊からしてみれば溜まったものではない。

 

 吹き飛ばされた呪霊…花御の頭の中は混乱で埋まりきっていた。

 

 何が起きた? 何をされた? 術師との戦闘の最中に唐突にやってきたあまりに強い衝撃、今まで受けてきたどの攻撃よりも強いその一撃は、花御の思考能力を奪い混乱させていた。

 

 地面に叩きつけられる、クレーターを作り出すほどの勢いのままにまるで地べたを這いずり虫か何かのようにへばりつく。

 

 痛みが、今の今まで感じたこともないような痛みが花御に襲いかかってくる。

 

 立ち上がることもままならず、そのあまりのダメージからか肉体の再生も覚束ない、自身に起こった全てが花御という呪霊にとっては初めてのことだった。

 

 

 

 しかしだから何だと言うのか。

 

 自分には使命がある、この地球(ほし)を再び青く輝かせるのだと、この地球(ほし)に人の存在しない時間を作るのだと、そんな使命があるのだと。

 

 故にこんな所で蹲っている場合ではないのだと、花御は持てる力の全てで立ち上がろうとし…そして、絶望を見た。

 

 

 咆哮と共に、獅子が大地に降り立つ。

 

 吐き出した吐息が蒸気のように沸き立ち、無数の瞳が花御という獲物を一点に見つめている、その視線に殺意以外の二文字は無い。

 

 だからどうした良いから死ねと、実際にそう言われたわけでもないのに、花御は眼前の存在に有り体にそう言われたのだと感じた。

 

 故に…なのだろうか、花御は動いた。

 

 素早く印を結び、自身の持つ領域を即座に展開しようとする。

 

 眼前の存在に立ち向かうには、最早自身の持つ必中必殺の(わざ)しかない、それでなければ対抗すらできないと…少なくとも花御はそう判断した。

 

 それと同時にそれを見ていた傍観者、虎杖と東堂から逃亡していた女性…『雪姫』もまた動き出す。

 

 印を組む…花御がその行動を取ったその時点でその場からの離脱を図り、森の奥へと身を隠して姿を眩ませる。

 

 五条悟が見ていない、獅子王の注意も自分ではなく花御に向いている、逃げるならば今しかないと雪姫は判断した。

 

 その判断は正しく、雪姫はこの後にエリアからの完全な離脱を達成し、無事に生還している。

 

 故に、ここから先の事実は花御と呼ばれた呪霊しか与り知らぬことである。

 

 

 

「領域展───」

 

 印を組み、領域を展開する……それすら遅いと言わんばかりに、獅子王の拳が花御の肉体を地面に叩きつけた。

 

 技術もへったくれもない単なる握り拳、単純明快な拳を握り込んだグーパンチが花御の上から降りかかり、その技術もへったくれもないただの一撃が花御の肉体をより深く地面に沈めた。

 

 より深く沈み込むクレーター、血反吐を撒き散らす花御に獅子王は再びその拳を花御の肉体へと叩きつける。

 

 ズゴンッと凄まじい音が周囲に鳴り響く、地面が砕けより一層大きな血反吐を吐き出す花御へ、獅子王は更に更に拳を叩き込む。

 

 血反吐を吐いた、叩き込む。

 

 また血反吐を吐いた、ならばまたと叩き込む。

 

 またまた血反吐を吐いた、更に更にと拳を叩き込む。

 

 

 殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る…最早ただの連打でしかないそれが、絶対的な死を幻視させるような速度で次から次へと花御へと打ち込まれていく。

 

 終わらない、決して止まらない、自分が死ぬその時までこの暴力の嵐は永遠に途絶えることはないのだと、花御は確信した。

 

 

 それ故に───

 

 

 

 

───すいません…漏瑚…陀艮…真人…どうやら私は、ここまでのようです。

 

 

 そう一言、誰に届くわけでもない謝罪の言葉を放った花御が最期に目にした光景は、無数の瞳を持つ鬼が自身に拳を振りかぶる姿だった。

 

 

 





花御

 活躍させられる気がしなかった。

氷娘

 本名は雪姫、平安時代出身、メロンパンが大嫌い。


 
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