三途のモチーフ:片目が石のマザコンで最後は身体真っ二つなやつ、作者はこいつが嫌い。
「なるほど、そうきたか」
ふと、言葉が漏れた。
眼下に広がるのは雑多に群れた人の群れ、意味も分からず困惑と苛立ちと恐怖を含んだ表情をする一般人達。
そして…その中に紛れ込む、呪霊。
目視で確認した限りは、居たのは頭富士山と悠仁の報告にあった継ぎ接ぎ呪霊…それが人混みに紛れて僕をニヤニヤと見つめている姿を見れば、何が狙いかなんて嫌でも分かる。
僕の術式を封じに来た、無下限の術式は威力が高いのが多いから、人混みに紛れれば使えないとでも思ったのだろう…あぁ───
「正解だよ」
苛立たしい…そんな感情を隠しもせず、僕は奴等の目の前まで降りていく。
そんな僕の動きに呼応して、継ぎ接ぎと富士山は人混みの少ない場所…駅の線路へと向かって歩いていく。
誘われている…だから何だ、知ったことじゃない。
「やぁやぁ久しぶりだね、お前と会うのは二度目なんだっけ? 早速で悪いけど───」
───今度は
軽い言葉、軽い雰囲気、軽い気配…それらを纏った中で殺意を膨れ上がらせることもなく、ただ一言で殺意を示した言葉を二体へと叩きつけ、それと同時に動き出す。
会話も、視線も、何かする時間すら与えず、
重く深く富士山の体内へと突き刺さる俺の腕、呪霊特有の紫色の血が富士山の口から吐き出される、その表情は何が起きたのかをまだ理解出来ないていないように感じる。
順転も反転も使えない、何せどっちも威力が高くて一般人を巻き込むし、建物が崩れて全員殺しかねない。
一応、一般人達はまだホームにいるが…万が一もある、術式はそう易々とは使えない。
だったらどうするか…それこそ簡単だろう、殴って解決すれば良い、その為の方法は幾らでも見てきたし味わってきた。
「ほらどうした? 頑張れよザコ富士山」
首筋を掴んで頭を掴み、引き千切るように互いを反対方向に捻りあげていく。
肉の裂ける音、みちみちと今か今かと頭と身体が分離する一歩手前まで行くような感覚が手から伝わってくる…そんな状況の最中に、背後からやってくる呪力を纏った拳が俺の目の前で静止する。
継ぎ接ぎ…魂を弄くり回すらしいそいつは何処か焦ったような表情で俺へと拳を向けていた、冷や汗すら流しているかもしれない、必死だねぇと笑ってやる。
継ぎ接ぎの拳がぐんっと俺へと近づき、そこから徐々に徐々に俺へと拳が近づいてくる、それをニヤけながら眺めてぽんっと手を叩きながら背後の富士山を蹴りで吹き飛ばす。
「領域展延かぁ、懐かしいなぁ、そういえば最近は廻とも戦ってないしなぁ」
今度付き合ってもらおうかな…そんな場に似つかわしくない言葉を呟きながら、俺は突き抜けてきた継ぎ接ぎの拳をもぎ取った。
遅いんだよお前、廻なら一秒と掛からず不可侵を突破してくる、レベルが低いんだよお前。
殴る、殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る、偶に蹴る。
七海からの報告によれば、こいつは魂を直接攻撃出来ない限りはダメージらしいダメージを負わないらしい、言ってしまえばHPが本体なんじゃなくてMPが本体みたいなもんなんだろう。
だったらどうするかと言われれば、一撃で微塵も残さず粉々に吹き飛ばすか、呪力が無くなるまで潰し続けるかの二択…今回は後者だな。
悠仁の攻撃は効いてたらしいけど、今はここに居ないし来たとしても今の悠仁じゃ富士山には勝てないだろうし、無いもの強請りは良くないって廻も言ってたしな、今出来る方法でなんとかしようか。
「真人ォォ!!」
叫び声、それの同時にやってくる炎の波、不可侵に遮られて届きこそしないが全身を包み込む程の炎は容易に俺の視界を遮った。
それだけじゃない、継ぎ接ぎごと俺へと向けられた炎に、しかし継ぎ接ぎは晴れ晴れとした笑顔で巻き込まれ、俺の視界の先から消えていく。
まぁ、魂を直接攻撃されない限りは無事なんだから、こういう離脱の方法を取りもするかと考えている内に視界は晴れ…次の瞬間、駅のホームにいた一般人達が次から次へと線路の中に落ちてくる。
悲鳴に怒号、恐怖に困惑…それらの声を吐き出しながら一般人達が線路の中に訳も分からないと言った風に落ちてくる光景を見ながら、俺は一つ舌打ちをした。
なんてことはない、今度は俺の移動能力を削ぎに来た、目の前にある光景から俺は面倒なことになったと顔を顰め、それと同時に一般人達を
べチャリと勢い良く俺の目の前で弾けた赤色が俺の視界を遮り、更にその向こうからざわめき喚く一般人達の隙間を縫うようにして、さっきと同じように赤色…血の弾丸みたいなものが俺目掛けて飛んできて、同じように眼の前で弾けてべチャリと消える。
赤血操術…呪胎九相図のやつかと、そう推測したところに富士山と継ぎ接ぎが突っ込んでくる、当然その身体には展延を纏っている。
ため息をつく…ここに一般人が居なければすぐにでも殺せていたであろう二体を見て、どうしようもなくため息を吐きたくなる。
うざい…それが俺の、率直な感想だった。
「やぁ、また会ったね」
「あぁ…会いたくはなかったけどね」
渋谷地下五階…悟はそこにいる、私は今からそこへと向かう予定だった。
地下五階には非術師達が大勢居る、悟の術式はそういう状況とは相性が悪い、最低でももう一人は居た方が良いし私の術式上呪霊の相手としては相性が良い。
だから行こうと、そう思っていた時に…前と同じようにこいつは現れた。
老人のような白い髪、片側の目が隠れるほどに伸びたその髪から覗く赤い瞳が嫌に不気味に感じてしまう。
灰色のコートを靡かせ、私の前に立つこの男の周囲には前と同じように無数の呪霊が屯している。
蝶やカマキリ、カブトムシに芋虫にクワガタにバッタ…全てが虫で構成されたその存在を周りに控えさせたまま、男はさも当然のように言葉を放ち、私はそれに嫌悪感を隠しもせずに応えた。
「退いてくれないか? 私はその先にいる親友の元に行かなければならないんだが?」
「それは無理だ、僕は君を止めるように言われている」
そうだろうなと、心の中で吐き捨てる。
分かっていたことだ、あの場あの時に現れたのと同じ、今この場この時に現れた時点でお前の目的は分かっているし、お前達が何をしたいのかも大凡把握出来た。
狙いは悟で、何らかの方法で悟をどうこうしようとしているんだろう…そう考えれば今のこの状況にも説明がつく。
「そうか──」
ならばと考える、どうするべきかと考えながら、私は至極冷静沈着に言葉を発する。
冷たく、感情を込めず、ただただ何者にも興味が無いと言った風に言葉を吐き出し、吐き出された白い吐息が浮かぶ光景を目に浮かべ───
「───死ね」
知ったことかと、一息に殺意を吐き出した。
呪霊を男へと三体ほど射出する、弾丸のように放たれた呪霊達がその命貰い受けると言わんばかりに男へと迫り、しかし呆気なく側に居たカマキリに斬り落とされる。
「この際だ、自己紹介をしておこう…僕は三途」
───君を殺しに来た。
そう言葉を放った男は、つい先程までの冷静さをかなぐり捨てたかのような凄惨な笑みを浮かべながら、大きく手を振りかぶった。
それと同時に一斉に虫の呪霊達が動き出し、私へと次々に向かってくる、その後ろで三途と名乗った男は楽しそうにクツクツの笑っていた。
その姿に私は以前同様の嫌悪感を覚え、次第に胸の内から湧いてくる拒絶感を隠しもせず、呪霊を召喚する。
───一級呪霊『虹龍』
───一級呪霊『黒虎』
鱗が虹に煌めく白色の龍、毛並みが影のように蠢く黒い虎が私の背後から咆哮と共に飛び出し、虫達同様に一直線に獲物に向かって行く光景を横目に、私は三途を睨みつけた。
未だ愉快愉快とでも言うように笑みを浮かべるその男に、絶対に殺意と憎悪を向けながら。
割と冗談抜きで渋谷で終わらせるか死滅回遊やるか悩み中…読者的にはどっちがええんかなとか考え中…そんな心の奥から出てくるいいから宿儺を書くんだよと囁きかけてくる本音…どうすればいいんだってばよ(お目々ぐるぐる)