宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

53 / 187

 作者の本音…なんかただの強敵ポジションで書いてたつもりのキャラがとんでもないことになっていた件について。

 追伸…作者の頭の中の渋谷事変がとんでもないことになっているせいで書ききれるか不安(あまりワクワクさせんなよ的な意味で)


再会 純

 

 

 視界の中で景色が流れていく…そんな光景をぼんやりと眺めながら、俺は席へと深く身体を預けた。

 

 場所は座席、新幹線の中、目的地は東京の渋谷、時刻は7時30分…向こうの方では既に悟とサマーオイルが現着しているらしい。

 

 視線を外から外し、新幹線内部の光景へと目を向ける…そこに居るのは俺の生徒達と歌姫先輩だ、今はみんなメカ丸が得た情報を共有しあっている。

 

 傀儡操術…天与呪縛を一部解呪したことによって呪力出力こそ落ちているが、それでもその範囲は依然変わらずそのままだ。

 

 しかも、そこから更に工夫して範囲を暫定的に伸ばしているというのだから驚きだ、現にこうして遥かに離れた箇所にある傀儡を用いて向こうの術師をサポートしてくれている、多分向こうでは大助かりなことだろう。

 

 そんな感じで自分の生徒が頑張っている中で俺は一体何をしているのか…簡単だ、何もしていない。

 

 …いや、より正確に言うならしようと思っても出来なかったと、そう言った方が正しいのかもしれない。

 

 ではそれは何故か…それこそ簡単なことだ、魔虚羅がやってくれないのだ。

 

 最初は白叡でそのまま行こうかと思った、白叡なら交通機関ガン無視出来るし何だったら新幹線で行くよか余程早くに着く、何だったら三十分と掛からない自信がある。

 

 だから、俺も最初は白叡で行こうと思っていた…魔虚羅がガチ拒否するその時までは。

 

 一体全体何故なのか、魔虚羅は梃子でも白叡を召喚しようとはしなかった、ちょっと怒り気味に頼んでみても顔をぷいっと背けて意地でも俺の言うことを聞こうとしなかった。

 

 だったらせめて索敵をやろうと鵺と玉犬を呼び出そうとしてみれば、それすら駄目だと言わんばかりにぷいっとそっぽを向く魔虚羅の姿にこりゃもう駄目だと諦めて、新幹線による移動に頼った結果が今である。

 

 原因は本当に分からない、何がここまで魔虚羅を頑なにさせるのか、何がここまで魔虚羅を突き動かすのか、それらの事柄全てが俺にはまるで分からない。

 

 今も俺の影で何故か臍を曲げているこいつのことを、俺はほんの少しくらいは分かってこれたかなとか考えたりもしてたけど、前言撤回全く分からんままだ。

 

 視線を外へと戻す、今尚高速で流れていく景色を尻目に俺は一つため息を吐きながら、今か今かと震える拳を何とか宥めようとして……違和感に気がついた。

 

 寒い…つい先程までそこまででもなかったのに急に寒くなった気がした、まるでいきなり冬真っ只中になったみたいに。

 

 気になって空調を確認しようと席を立つ…それよりも早く、けたましい音を響かせながら、新幹線が大きく揺れた。

 

 急ブレーキ故の揺れ…キキキッと不快な鉄の音を響かせながら徐々に徐々に揺れは収まり音も消えていき…次第に揺れは収まり、窓の外の光景は流れること無くそのまま静止した

 

 何なのという歌姫先輩と生徒達の戸惑う声と、一部生徒達の警戒が捻出した呪力反応、そして感じる異様な寒さと…何処となく感じる懐かしさ。

 

 気づけば身体は動いていた、歌姫先輩に生徒達を任せて俺は車両の先頭を目指し、止める駅員も無視して運転席へと不躾に入り込み…その光景を見た。

 

 氷山…言葉にするならそれが的確だろうと、そう素直に思えてしまう程にその名その言葉を体現したかのような氷の壁が、新幹線の進路を妨害するように聳え立っていた。

 

 そして、その氷山の目の前で立ちはだかるようにして立つその存在に、俺は目を奪われてしまっていた。

 

 何故という疑問と共に、納得もした…あぁ、確かに貴女ならばその程度のことは余裕で成し遂げるだろうと、そう納得してしまっていた。

 

 目の前の光景に訳も分からず固まってしまっている運転手に、俺は肩を叩いて迂闊に動かさないようにと一言告げて、車内から外へと飛び降りる。

 

 外は真っ暗、月の光と新幹線の灯りだけが夜闇を照らすその中で、異様な程に輝く氷山の輝きに俺は相変わらずと言ったように笑みを浮かべ、そこにいる知人の元へと足を運んだ。

 

 視界の先に映るその人…長く綺麗な黒髪を靡かせ、青いコートを羽織ったその姿は背後の氷山と相俟って嫌に絵になっており、菫とはまた違った美しさを感じさせる。

 

 そんな彼女の姿を見て、報告にあった姿とは偉く違うなと思いながら、俺は久方ぶりに会う知人へ向けて、一言声を掛けた。

 

 

「お久しぶりです雪姫さん…元気にしてました?」

 

「…あぁ……最悪な気分だったよ」

 

 久方ぶりの会話は、そんな何処か味気ない返しから始まった。

 

 

 

 

 

 

     

 

 

 

 

 

 ……何も…変わっていない。

 

 そいつを見た時、そう思ってしまった私は、きっと悪くないのだと思う。

 

 トテトテと、まるで散歩でもするように私の元へとやってきたそいつ…禪院廻は、まるで久方ぶりの知人に偶然出会ったかのように、私に言葉を投げかけた。

 

 久しぶり、元気にしてた……実際はこんな言葉遣いではないが、そんなことは最早どうでも良いことだろう。

 

 言葉遣いはどうあれ、アイツはそう口にしたのだ…よりにもよって、この私に向かって。

 

 無意識的に歯をギジリと噛みしめる、普段は握らぬ拳をあらん限りに握りしめ、今も軽く私を見つめるその姿に苛立ちを覚える。

 

 言いたいことは山のようにある、やりたいことも山程ある……しかし、それをすることは出来ない。

 

 何せ今の私は仕事を与えられた身だ、やることはキッチリとやらなければならない。

 

 

「……条件付きだ」

 

 間を置いて、言葉を吐き出す。

 

 私の言葉に疑問符を浮かべたような反応を見せる廻に、続けるように言葉を吐き出す。

 

 

「他の人間は通してやる…その代わり、お前は残れ」

 

 

 そう、私は廻へと条件を告げた。

 

 私がクソ脳味噌に任された仕事は宿儺の器…虎杖悠仁の中に眠る宿儺を目覚めさせるまでの間、可能な限り禪院廻を渋谷に近づけせないこと。

 

 言ってしまえば時間稼ぎ、そしてその中に他の術師は入っていない、素通りさせようが問題は無い…私からのささやかな嫌がらせだ。

 

 そんな考えから発せられた私の言葉に、廻はほんの少しだけ瞳を伏せて───

 

 

「聞いてたな与…先に行っててくれ、後から俺も追いつく」

 

 静かに、誰もいないはずの虚空へ向けて、その言葉を躊躇いなく吐き出した。

 

 ほんの一瞬呆気に取られてしまうが、そういう術式もあるかと思い直し、指を鳴らすと同時に術式を解除する。

 

 適温へと戻っていく空間に釣られるように溶け出していく氷壁、そして私の視線の先で、音を鳴らして新幹線が動き出した。

 

 ガタゴトと、向こうの電車で経験したような音は鳴らず、ただ静かに加速しながら私達の横を通り抜けていく新幹線を尻目に、私はふとした様に言葉を吐き出す。

 

 

「…宿儺を、起こすのだそうだ」

 

 

 クソ脳味噌と交わした縛りはあくまで私自身が計画を邪魔しないというものだ、要するに私が幾ら情報を喋ろうが結果として私が時間を稼いだのなら何ら問題は無い。

 

 

「私の目的は足止めだ、宿儺が起きるまでの時間稼ぎ…貴様が来る前に、起こしておきたいのだそうだ」

 

 

 遠く遠く、風を切る音を僅かに響かせながら新幹線は私達の視界の端へ端へと消え去っていく中で、私の言葉が静かに暗闇へと溶けていく。

 

 月明かりが照らす夜闇の中で、奴の瞳が金色に暗く輝くのを見ながら、私はふと思った…相も変わらず奇妙な瞳だな…と。

 

 朝昼…日が出ている間はまるで陽光のような琥珀色、夜になれば月明かりに反射する満月のような黄金色。

 

 朝と夜によってその色を変えるアイツの瞳は、何処かアイツそのものを表しているかのようだと、当時の私はそう感じた。

 

 

「…なぁ………このまま何もせず、ここで待っているということは出来ないか?」

 

 だからなんだろうか、そんなあり得ない質問をしてしまった、決して頷くことはないと…そう自分でも確信してしまえるような、そんな問いを何時の間にか投げかけてしまっていた。

 

 アイツがそれにどう返すか等、当に分かっている癖に。

 

 

「…悪い……出来ない」

 

「……そう…か…………そうだよ…な」

 

 分かり切っていた応え、お前を知っていれば誰もが辿り着くその返答に、私は乾いたように笑った。

 

 知っていた、貴様はそういう人間だ…どうしようもなく馬鹿でアホで、下賎な者にもさえ手を差し伸べてしまう…そんなどうしようもない不出来者だったものな。

 

 分かっていた、あぁ分かっていたことだ、最初から激突は免れないことなど分かりきっていたことなのだ。

 

 ……しかし、ならば…胸の内から溢れてくるこの痛みは、一体何なのだろうか?

 

 

「…………ばか

 

 

 酷く小さく呟かれた、私自身も認識出来なかったその小さな小さな言葉を合図として、私は術式を開放した。

 

 湧き上がる氷の空間、範囲内に入った全てを文字通り凍てつかせる私の業。

 

 完全に肉体に馴染んだが故に、以前とは明らかに出力も使いやすさも異なるその感覚のままに、私は有らん限りの力をアイツへと向けて、解き放った。

 

 

「…『鵺』」

 

 そしてそれに応じるように、アイツもまた静かに自らの影を喚ぶ。

 

 紫電雷光を撒き散らして向かい来る氷を砕き、翼を広げて私へと威嚇するように唸る怪鳥の姿に、私は不思議と笑っていた。

 

 まるで…そう、まるで大好きなものを、もう二度と見れないと思っていたものをもう一度見ることが出来た、幼子のように。

 

 

 

 





呪霊・呪詛師・???組

 現在五条対真人&漏瑚&脹相、サマーオイル対三途、地上の術師対地上の呪霊で戦闘中、虎杖と伏黒も居る。

 持ってきている宿儺の指の数は───
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。