宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 作者の一言:氷凝呪法の情報が少なすぎて書くのが難しい…それはそれとして投稿(ポチッ


雷、氷、炎、水

 

 

 変わっていない、何一つとして変わっていない……そんなこと、とっくに分かり切っていたことだろう。

 

 やりたいことをやる…そう言って必死に自分を鍛えて、見知らぬ誰かを助けに助けて、そうして自分の願望から逃げずに生きてきたアイツの姿を、私は何度も何度も見てきていたはずだ。

 

 だったら…こうなることも、アイツがこうすることも、とっくに分かり切っていたことだろう。

 

 

 紫電が舞う、私の生み出した氷が容易く砕かれていく。

 

 翼を広げた橙色の怪鳥、羽音を鳴らし唸り声を上げて私を威嚇しているその姿…見るだけで分かる、相対するだけで感じる以前とはまるで別物の存在感。

 

 並大抵の術師ならばまず絶望する程のソレを前に、しかし私が感じていたのは…得も知れぬ安心感だった。

 

 

 靴先で地面をコツンっと叩く…それと同時に溢れ出す氷の飛沫、霜を作り出しながら生み出されたソレは、宛ら波打つように廻へと迫り行く。

 

 迫る危機、音を立てて周囲を容易く凍てつかせる波を前にして、しかし禪院廻は臆すること無く静かに眼前の脅威を見据え、静かに呟いた。

 

 

───ぶち抜け、『鵺』

 

 

 その一言と同時に翼を瞬かせた鵺は、バチリっという紫電の弾ける音を僅かに鳴らして…次の瞬間には私の目の前にいた。

 

 はっ? と声を上げる間も無く、その動きに対応する間も無く、私は突っ込んできた鵺の体当たりに大きく吹き飛ばされる。

 

 衝撃に痛み、そして同時に襲い来る痺れと状況への理解…それらに私の思考が追いつく前に、奴は再び私の目の前に現れた。

 

 金色に染まった獣特有の割れた瞳、髑髏のような仮面が私の視界に映り込み、先程までと同じようにバチリっと音を鳴らして私の懐へと潜り込み、私の身体へと激突する。

 

 痛み、痺れ…それが私の身体へと流れ込み、私の動きを阻害する中で、鵺は激突した私の身体に密着したままスピードを落とさず前へ前へと突き進み、次の瞬間には私の背後から痛みが走った。

 

 爆音に土煙、地面を砕く音が耳元から響き渡り地面に引きずられたような感覚が背部からする…それが、意図も容易く私の現状を教えてくれた。

 

 起き上がる…そんな暇すら惜しいと言わんばかりに地面に手をついて氷を展開し、次に来るだろう一撃へと備える。

 

 しかし、それすら無駄だと言わんばかりに、鵺は容易く氷の壁を真正面から突き抜けて、私の前へと姿を現した。

 

 瞬く紫電が私を撃つ、痺れと衝撃が身体の隅々へと行き渡り今にも意識を失ってしまいそうになるのを歯を食い縛って耐えながら、私は思考を回し…ふと、あることを思った。

 

 何故、未だに私は生きているのだろうと。

 

 

 痺れの影響かそれとも痛みの影響か、そんなことを唐突に考え出して、しかしそれを止められるような余裕が私には無かった。

 

 視界に映る光景は異様に遅く感じ、それと同様に私の動きもまた鈍くなっている…そんな中で私は何故だ何故だと考え続け…ふとした時に思った。

 

 

───手加減されている。

 

 

 そんなことはないだろうと普段の私ならば考えただろう、こんな状況でしかも宿儺が蘇りかねない今のこの状況で、何故アイツが手加減等するのかと、そんなことをするような男ではないと自分が一番知っているだろうと否定したのだろう。

 

 しかし、この時の私の思考能力は痛みと痺れによって下がっており、尚且つその当のアイツ自身が鵺以外の式神を呼び出していなかったという事実が、私にその選択をさせた。

 

 

「……っざけるな」

 

 

 

 お前にならいいと…そう思ったのだ。

 

 お前になら良いって、確かにそう思っていたんだ…お前にならやられたって良いって…それを…それをっ……!!

 

 

 

 一度でもそう思い込んでしまえば、その時点でもう自分でもどうすることも出来ない、特に証拠も無ければ理論も無いその仮説が正しいと一度でも信じ込んでしまえば…後はもう突き進むことしか出来ないのだ。

 

 歯を噛みしめ唇すら噛みしめる、噛み締めた端から血が流れ落ちて口を伝い、それが緩やかに凍り付いて砕け散る。

 

 口から僅かに漏れ出た言葉は確かな本音で、しかし実際に口に出したかったこととは別物で、しかし湧き出る感情はそれを吐き出せと私に催促し、私はそれに悩みも苦も無く従った。

 

 

「───ふざけるなぁぁぁぁぉぁぁぁぁっっ!!!!」

 

 

 怒髪天、つい先程まで確かに抱いていたはずの安心感も不確かなソレも何のその、ただ怒りに焼き焦がされた私の思考が獲物は何処だと唸り声を上げた。

 

 瞬間、視界に色が灯り緩やかになっていた時間が通常のものへと戻り、そのまま確定事項のように紫電を纏った鵺が私へと突っ込んでくる。

 

 氷では防げない、かと言って私の能力では避けることも叶わない…そんな道理等知らぬと言わんばかりに、私の身体は半ば反射的に動いていた。

 

 

「調子に乗るな鳥畜生がァァっ!!!」

 

 引っ掴む…身体が追い付かない、そもそも察知することすら出来ていなかった鵺の突撃を私はさも当然のように引っ掴み、即席で作り出していた氷の壁に思い切り叩きつけた。

 

 砕ける氷、舞い散る破片、痛みに悶えた鵺…それらが視界に映り込む中で私は拳を握りしめ、それを鵺へと叩き込んだ。

 

 普段の私ならば決してしない行動、近接が得手でも何でもない私が何故そんなことをするというのか。

 

 しかし、そんなことは怒り狂った私の頭の中には既に無く、ただただ衝動の赴くままに私は鵺へと拳を叩き込んでおり、奇しくもそれがその偶然を生んだ。

 

 黒く染まる呪力、身体に漲る全能感…何時か廻が言った黒閃と呼ばれる現象を、私は知らず知らずの内に引き起こしていた。

 

 近接戦闘を基本行わないが故に、生涯を通して経験することの無かった黒い火花、怒り狂っていた私へと灯ったそれは私の認識を容易く塗り替えていく。

 

 私の拳に吹き飛ばされた鵺が再び高速で移動する…が、私の目は既にその姿を捉えていた。

 

 術式を使用し氷柱を生み出して射出する、無数に生み出された氷柱が鵺へと襲い掛かり、鵺はそれを見事な飛行技術であれよあれよと躱し、更には自身の雷を放出して一定範囲に迫った氷柱を纏めて砕いてみせた。

 

 ……見える、黒閃を経験した影響なのか、つい先程まで見ることすら出来ていなかった鵺の姿を私は勘でも無ければ偶然でも無く、明確に察知することに成功していた。

 

 そして、それを見て廻の式神の進化を実感する、以前の鵺は雷の放出等出来なかったはずなのだが…今は特に苦も無く行っているように見える。

 

 些細な情報…しかしそれは非常に貴重且つ重要な情報だ、昔と今との違いに比較は時として大きな優位となる…のだが、そんなこと怒り狂っている私には関係無いわけで。

 

 

 鵺が突っ込んでくる、その身に紫電を纏って、ただ私へと真っ直ぐに一匹だけで私へと向かってくる。

 

 その姿に私は怒りを隠すことも抑えることもせず、ただただこの身に渦巻く感情の渦を、ただただ殺意として吐き出した。

 

 

 

「───術式反転っ…!!」

 

 

 炎が渦巻く、私の感じた全てを表すかのように渦巻き焦がし燃え盛る、自身で生み出した氷なんてとっくに溶け切っていた。

 

 炎を一転に集中させ、弓矢のように構えて狙いを定める…狙いは、私へと愚直に突っ込んできている髑髏面の怪鳥。

 

 紫色の雷と純粋な赤い炎、互いに夜闇を照らすそれらが月が見下ろす中で向き合い、互いが互いに殺してやると言わんばかりにその目を見つめている。

 

 時間にしてたかが一瞬、その一瞬の間に私と鵺の視線が交わり、それと同時に私は溜め込んだ炎を───

 

 

「鵺っ!!」

 

 

 放つ…のと同時に声が響いた、私のよく知る声でその名を呼ばれた鵺は私への一直線から機動を変えて瞬時に私の炎を躱し、そのまま廻の下へと降り立つ…こと無く、直ぐ様私へ向けて突っ込んでくる。

 

「芸が無い…!」

 

 炎を躱されたことに対する苛立ちか、それとも言葉通りの意味なのか、私は舌打ちしながら相変わらず愚直に突っ込んでくる鵺へ向けて再び炎を構え…その奥に、合わせた手を私へと向ける廻の姿が視界に映り込んだ。

 

 なんてことはない、本当にただ手を合わせてこちらへと真っ直ぐに向けているだけのそれ…しかし、その姿に私の本能は警報を鳴らしていた。

 

 

「───満象」

 

「───氷凝呪法」

 

 

───穿水(うがちみず)

 

───霜凪!!

 

 

 

 …同時だった。

 

 呟かれた言葉と共に廻の手から高速すら越えたナニカが射出されるのと同時に、私は霜凪を展開していた…結果としてどうなったか。

 

 何もかもを凍てつかせる霜凪…それすら超えて、私の目と鼻の先に突きつけられるようにして伸びた鋭く細長い氷が、私の眼の前でガシャンと音を立てて落ちた。

 

 冷や汗が垂れる、あと少しでも遅ければ殺られていたかもしれない、そう思わせられる程の速さと威力を感じた…鵺が霜凪を警戒して突っ込むのをやめていなければ、当たっていたかもしれない。

 

 あともう少しで死ぬかもしれなかった…そう考えて背筋に寒気が走った私の思考とは裏腹に、しかしその事実を前にして私は思わずと言ったように笑ってしまっていた。

 

 あぁ、それでいい、それで良いんだよ貴様は…手加減なんて、そんなことをするんじゃない。

 

 嬉しい…死にかけたというのに、殺されかけたというのに、それでも私の中に渦巻く感情はそれだけだった。

 

 死に対する恐怖はある癖に、アイツを殺すことに対しての恐怖はある癖に、自身が死ぬことに対する恐怖だけはまるで無かった…おかしな話だと自分でも思う。

 

 けど…それでもいい…なんでも良いから私を見ろ、もっともっと私を見てほしい。

 

 そんなことを考える私の頭の中からは、アイツに怒っていたという事実は既に綺麗さっぱり消え去っていた。

 

 





雪姫について

 実は戦闘時と通常時で性格が若干変わる人、因みに黒閃を打つのは今回が初めて。

 キレても心の何処かで冷静な部分がしっかり残っているせいで、時間稼ぎのことはキッチリ覚えていたりする。


万象・穿水

 宿儺がやったやつ、作者がどうしても打たせたかった技の一つ。
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