宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 いきなり宿儺戦本番を書くのは無理があった、ちょっと無茶がありますぜこれは(作者の目玉真っ黒)


ちょっとした挨拶代わり

 

 

 響く嗤い声、耳に届くその声に、ため息を一つ吐き捨てる。

 

 眼前の先、遥かに上空に見える笑みを浮かべた男の姿に、廻は呆れたようにため息を吐き、まるで仕方がないなぁとでも言うように、小さく小さく笑みを浮かべた。

 

 

「───『■』」

 

 

───『(フーガ)

 

 

 瞬間、顕現する滅炎が廻達を照らした。

 

 肌身に感じ取れる度を越した呪力、圧倒的な破壊の気配、千年前についぞ見ることも知ることも叶わなかったソレが、遂に鎌首擡げて廻の前にその姿を現した。

 

 心の何処かで見てみたいと思いつつも結局は見られなかったソレ…それに対して廻が抱いたのは一種の感傷、自身がまだ普通の人間であった頃に見た情景が今そこにある…その事実が、廻の顔に穏やかな笑みを浮かべさせた。

 

 しかし、それは廻だからこそ抱くモノであり、他の人間からしてみれば溜まったものではない。

 

 事実、夏油や三途は炎が顕現した瞬間にその場から離脱を図っており、その約数秒後に日下部もまたその場から離脱しようと走り出そうとしていた。

 

 ここに居れば必ず死ぬ…そんな直感が日下部を突き動かしたのだ。

 

「動くな、日下部さん」

 

 

 しかし、そこに廻が待ったを掛ける。

 

 見向きもせずに日下部へと放たれたその言葉に、日下部は思わずと言った風にその足を止めた。

 

 普段ならばそんな言、意にも介さずスタコラサッサと日下部は逃げ出していただろう、実際日下部はそうやって生き延びてきたのだから。

 

 ただ逃げ出すのではない、的確に状況を読み取り可能ならば仲間全員で逃げ出し確実に情報を持ち帰る…日下部が術式無しで一級として数えられているのは実力もさることながら、この的確な状況把握能力に依るものが大きい。

 

 勝てる相手に勝ち、勝てぬ相手からは何とか逃げる…それが出来ていたから、日下部篤也という人間は今日まで生き延びてこれたのだ。

 

 そんな歴戦の日下部の直感が目聡く告げていた───

 

 

「離れられると守り辛い、そこに居てくれ」

 

 日下部に見向きもせず、ただ収束していく炎を真っ直ぐと見つめるその顔には最早先程までの穏やかな笑みは無い。

 

 あるのはただ、研いで研いで研ぎ切った抜身の刀のような鋭さを持った真剣な表情…それを見て日下部は確信した。

 

 こちらの方がより、生き残れると。

 

 

「───『白叡』」

 

 言紡がれるその名、知る者ならば誰もが知る禪院廻の切り札の一つが、現代の渋谷にて千年ぶりに解き放たれる。

 

 陰の中からぬるりと湧き出る巨大な影、美しい白い体毛に恐ろしく何処か畏敬すら感じさせる鋭い眼光に蛇…否、最早龍と呼んでも差し支えの無い肉体が、廻の背後を浮遊する。

 

 獅子王とは違い吠えることも無ければ何かしらの感情を顕にするわけでもない、ただそれが当然と言わんばかりにただ主の傍らに何をするでもなく佇み、一声吠える。

 

「…ごめん、いきなりで悪いけど…やれる?」

 

 問いかけ、自身の術式…ましてや式神に掛ける言葉とは到底思えないその言葉に、白叡は何をするでもなく、自身の呪力を解放した。

 

 その行動の意味や即ち…肯定である。

 

 

 

 

 

 

 呪力が収束し、圧縮されていく。

 

 白叡の肉体から溢れ出した呪力、それが大口を開けた白叡の口へと球体の形へと収束し、一通り集まるのと同時に圧縮し再び収束していく。

 

 

 多様性と言う意味でなら、恐らく十種影法術は最強であると廻は自認している。

 

 何をするでもなく割り振られた其々の役割を持つ式神達、其々が其々固有の能力を持ち、尚且つただ使うだけならば非常に扱いやすいというのもある。

 

 更に言えば拡張術式にしても組み合わせによって可能性はそれこそ無限大、自身の生み出した白叡や獅子王にしても伏黒の不知井底にしても、組み合わせ次第で幾らでも変化を遂げる。

 

 故に禪院廻という人間が求めたのは何処までも単純で分かりやすい代物、即ち決め手に成り得る切り札としての個、それを求めた先で偶然生まれた存在…それが白叡と獅子王である。

 

 近接戦、ただただ絶対的な暴力で敵を殴り殺すのが獅子王であるとするのであれば、白叡は言ってしまえばオールラウンダー、近中遠全ての射程に対応可能な万能特化の式神。

 

 

 

 捻じれ歪み一つへと纏まっていく呪力、何処までも純粋に濃厚に纏められた淡い紫色の形をしたそれを白叡はバクリと喰らい、大きくその首を仰け反らせる。

 

 

 

 白叡の能力は他の式神に比べてみれば特殊だ、何故ならそれはやろうと思えば廻本人にも出来てしまう代物だからだ。

 

 廻は玉犬のように広範囲の感知は出来ない、鵺のように飛べないし雷も纏えない、蝦蟇のように舌を伸ばし突き刺すことも、大蛇のような巨体も、満象のような水を出す能力も、円鹿のような正の呪力を放出することも、貫牛や虎葬のような能力も持ち合わせていない。

 

 故に白叡の能力は十種の中でも非常に異質である、何故ならそれは廻どころか大抵の術師が可能とする基礎、苦手だがやろうと思えば出来るという人間も多い基本の能力。

 

 即ち…収束及び圧縮された呪力の、放出である。

 

 

 

「───撃て」

 

 

 ただ一言、言い放たれた言葉を合図に白叡が大口に溜め込んだ呪力を開放する。

 

 ゴウッ! と言う空気を裂くような音と共に放たれた紫色の極光、それが放たれるのと同時に、宿儺の『開』が放たれた。

 

 殆ど同時に放たれた両者の必殺、極光と炎が渋谷の夜空を裂き、赤と紫が両者の視界を染め上げていく。

 

 もう夜だと言うのに、視界に映るのは何処までも赤く染まった空、まるで夕焼けか何かのような色となった夜空を前に日下部は本能的に逃げ出そうとする足を無理矢理押さえつけ…それと同時に、極光と炎が激突した。

 

 瞬間、空が淡く弾ける。

 

 宛ら花火、ぶつかりあった炎と極光がせめぎ合い喰らい合いを繰り返す故にその際に生じた激突と侵食が無数の色を生み出し周囲へとそれらを弾き出していく。

 

 光だけを見れば美しく感じてしまうそれも、日下部のような人間からしてみればただの滅びの象徴であり、であるが故に日下部はこの時、心の底から禪院廻という人間に感謝していた。

 

 あの時逃げていれば、きっと逃げ切る前に死んでいた…そう確信してしまったが故に。

 

 美しさとは裏腹にその実、ただの破壊と破滅の押し付け合いを繰り返す両者の必殺、ぶつかり合い端から見れば拮抗しているように見えるソレの均衡は…いとも容易く崩れ去る。

 

 ぶつかり押し合った時間は僅か数秒、渋谷に幾多もの色を撒き散らした極光と炎は、いとも容易くその姿を変えていく。

 

 炎が飲み込まれる…時間にして僅か一瞬、その一瞬の内に白叡から放たれた呪力の極光はいとも簡単に呆気なく、宿儺の『開』を瞬く間に貫通した。

 

 

「ケヒャッ…!!」

 

 

 宿儺、咄嗟の回避行動。

 

 ほんの僅かしか存在しない『開』を破られた僅か刹那、その一瞬にも満たない秒数の間に宿儺は回避行動を取っていた…しかし、間に合わない。

 

 宿儺の真横を呪力砲が通り過ぎ、宿儺の左腕と左足を容赦無く溶かし塵すら残さず消滅させる。

 

 奔る痛みと片手足の喪失、それを受けてなお宿儺は笑みを浮かべ続けていた、まるで何もかもが楽しいと言う子供のような満面の笑みを。

 

 その瞳に映るのは何時かの宿敵の姿、最後の最後で邪魔が入りその味わいを最後の一滴まで味わい尽くすことが叶わなかった生涯最大の御馳走の姿。

 

 何も変わらない、その眼差しも何もかもが宿儺の知る姿から何も変わっていない、それどころかその身から溢れる呪力の質は寧ろ以前よりも遥かに精錬され味わい深くなっている。

 

 思わずと言ったように口元から涎が垂れる、待ち侘びた御馳走の続きが、お預けを食らった御馳走が今そこに在るのだ…そうなるのも無理なからぬ話というものであろう。

 

 

「…もう逃げて良いよ、日下部さん…俺も、出来る限り遠ざけてみるから」

 

 独り言のように発せられた言葉、それに対して日下部が疑問を吐き出すよりも速く、廻は宿儺へ向けて飛び出した。

 

 上空、片手足を失った自身へと猛烈な速度で突っ込んでくる廻と白叡の姿に、宿儺はその表情を鮮烈なまでの喜色へと染め上げ───

 

 

「───続き…いや、まだ味見だな」

 

 

 振り抜かれた拳を、その身で受け止めた。

 

 渋谷の上空で、黒い閃光が迸る。

 

 禪院曰く付きの『最強』対『最強』が、今ここに開幕した。

 

 

 

 

 





『白叡』について

 呪力の放出が能力の万能特化型の式神。

 非常にシンプル且つ普通の能力である代わりなのか、その呪力出力は以上に高いのが特徴。

 なお、反転術式…もとい『正の呪力』の放出も可能である為、対呪霊決戦型の式神でもある、大抵の呪霊はこれで消し飛ぶ。
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