限界や、今の作者のテンション的にこれが限界やったんや。
それはそれとして、宿儺のCVが諏訪部さんなせいで廻の台詞を書いてるとCV:杉山で再生されてしまう罠。
吹き飛ぶ人影が、ビルに突っ込み煙を巻き上げる。
破壊音に破砕音、黒く散った火花が未だに視界の端でチリチリと飛び散り弾けた。
腕から奔る痛みを気にもせず、反転術式を肉体に掛けながら壁にめり込んだ腕を薙ぐように引き抜き、それと同時に宿儺は視界に映り込んだ宿敵へ向けて術式を発動する。
───『解』
振り抜かれる術式の刃、音も無ければ予備動作すら殆ど存在しないその不可視の斬撃が宿儺へ追撃を仕掛けようとしていた廻へと襲いかかる。
線にするならば横一文字、並であろうがなかろうがまともに喰らえばまず死ぬであろう程の威力を秘めたその斬撃を身体を大きく獣のように屈めることで躱し、更にそのまま態勢を崩さず犬が獲物へ向けて飛びつき噛みつくように一気に宿儺の懐へと突っ込んだ。
拳の射程圏内、そこへ入るのとほぼ同時、廻と宿儺は両者共に自身の拳を振り抜いた。
激突する両者の拳と拳、衝撃と衝撃がぶつかり合い周囲に拳同士がぶつかり合ったとは思えぬ程の重苦しい音が響き渡り、更にその数瞬後に宿儺の拳が一方的に吹き飛ばされた。
何をされた…そう思考する間も無く、宿儺の視界に斬り裂くように放たれた廻の蹴りが迫り、それを受け止めた宿儺の腕ごと廻は宿儺を吹き飛ばす。
窓を砕き壁を砕き鉄骨を砕き、全てを突き抜けて建物の外へと吹き飛ばされた宿儺の視界に映るものは満天の夜空、そしてそこから流星のように降り注いでくる…白叡の呪力砲。
先程の物に比べて一発一発の威力や規模は低い…しかし今現在の宿儺に限って言えば確かなダメージ足り得るだけの威力を備えたソレが、宛ら雨あられのように宿儺へと降り注ぐ。
「ケハッ…!!」
低く薄く漏らしたその声は歓喜かそれとも息を呑んだだけか…恐らく前者であろう宿儺は即座に迎撃を開始する。
斬撃、斬撃、斬撃斬撃斬撃斬撃斬撃、一つ一つ魚の身を卸すかのように丁寧に念入りに自身に飛び交う呪力の塊を斬り落とす。
数はあっても威力はそこまで、少なくとも先の『開』を突き破った一撃ではない、ならば対処するなぞ宿儺にとっては造作も無いこと。
斬る、斬る、斬る、斬る…視界に入ったもの、感知で感じたものから直感的に悟ったものを片端から斬り裂く。
上から下から右から左から、時に曲がり時に過ぎ去った先から反転して向かってくる光線を、宿儺はその笑みを崩さぬままにひたすらに斬り落とす。
雨のように降り注ぐだけだったモノが何時しか全方位から襲い来るソレへと変わった事実、以前のモノとはまるで違う未体験のソレに、宿儺のボルテージが人知れず上昇していき…そこに差し込むようにして、それは放たれる。
───『穿水』
細切れと化していく呪力の光線、暗い夜闇に薄く輝く紫紺…その合間を縫うように入り込む超スピードの一矢が、宿儺目掛けて突き進む。
舞い散る光の中から唐突に突き抜けてくる超高速の水の矢、何時か喰らった見覚えのあるソレが宿儺の視界に入るのとほぼ同時に、宿儺は穿水を術式で叩き落としていた。
一度喰らったことがあるからこその理解、確かな一撃として記憶されていたソレを宿儺はいとも容易く撃ち落とし…その代償とでも言うように、宿儺の腹部に光が突き刺さった。
宿儺が穿水に意識を向けたのはほんの一瞬、僅かにも満たない時間でこそあれど、それは白叡からしてみればそれはどうしようもない程の隙でしかなかった。
収束呪力…その中でも威力こそ低いが取り分け速度の速い方法で生成された呪力の弾丸は、廻の穿水に被せるように且つ時間差で宿儺に直撃するように発射され、無数の技を隠れ蓑として遂に宿儺へと痛手を与えるに至った。
腹部に突き刺さった弾丸によって宿儺の動きが僅かに鈍る、そこへと降り注ぐ呪力の光線達、反転術式を使う間など与えぬとでも言わんばかりに畳み掛けられる怒涛の嵐が宿儺を襲う。
紫色の極光が夜空の上から無数に降り注ぐ光景は最早雨や嵐というよりも流星群、地面に叩き落された宿儺の元へと群がるように一斉に降りかかるその群生の破壊は周囲の被害等二の次とでも言わんばかりにその猛威を振るう。
砕けては爆ぜる地面、猛烈に時間差も無ければ隙間も無いノンストップ攻撃、無数に吐き出される呪力砲が絶え間無く宿儺へと叩きつけられる。
端から見れば最早終わった勝負、どちらが勝ったかなど言わずとも分かるその光景…しかし、この程度で終わるならば宿儺は呪いの王等とは呼ばれていないのだ。
瞬間、宿儺へと叩きつけられていた呪力砲全てが一斉に叩き斬られ、そこから更に爆音を響かせながら宿儺が廻へと突っ込んだ。
ゲヒャヒャと聞いたことも無いような嗤い声を響かせながら廻へと突っ込んだ宿儺がその指を線を描くように振るい、それを目視するのと同時に廻は自身の腕を薙ぎ、ガギンッと音を鳴らして不可視の刃を容易く弾いた。
弾かれた刃は雲を斬り裂き何処へなりとも消えていく…そんなこと知らぬと宿儺は廻の間合いへと踏み込み、先程のお返しと言わんばかりに飛び蹴りを繰り出し、廻はそれを腕を交差させることで受け止める。
重い蹴りだ、未だ完全顕現と言うべきではない状態でこの威力、器である虎杖を褒めるべきかそれとも単純に宿儺が化物染みているだけなのか…恐らく両方であろうと、廻は判断した。
「もう頼むから寝ててくれないかお前…!!」
何処か切実な様子で吐き出されたその言葉は紛れもない廻の心の底からの本音だった、何が悲しくて二度三度と呪いの王相手に命の取り合いをせねばならないのか。
何処か引き攣り気味な笑みをそのままに、未だ自身の腕に食い込むように存在する足を掴み取り、そのまま慣性に任せてビルの屋上へと宿儺を叩きつける。
跳ねて飛び散るコンクリートやアスファルトの断片、あらん限りの力で宿儺という怪物を叩きつけられたビルの屋上がまるで硝子細工か何かのように砕け散り、そこから更に二次災害の如く下へ下へと落ちていく。
「眠らせてみろ、子守は得意だろう?」
「苦手だよ!!」
ビルの崩落に巻き込まれながらも、しかして両者の態度も様子も何も変わらない、軽い口調で交わされた宛ら友人同士のような会話がその異質さを際立たせる。
打撃と打撃のぶつかり合い、ビルの崩落に逆らうこと無く崩れ落ちていく足場の上で行われる格闘戦の音が瓦礫の音に掻き消される。
不安定な足場、今まさに落下している最中の足場の上で交わされる拳と蹴りとその他諸々の格闘技術が火花を散らすように激突する。
放たれる宿儺の拳を加速しきる前にして叩き落とし、そこから繋げるようにして放たれる掌底突きを宿儺は首を傾けることで躱す。
拳から蹴りへ、蹴りから投げへ、投げから足技、足技から更に拳へと途切れることなくひたすらに繰り出される格闘戦技を時に受けて躱し、流しては反撃しそこから更に追撃へと歩を進める。
止まらない攻防、瓦礫の山と化していくビルの落下途中の瓦礫の上で行われているとは到底思えないほどのハイレベルな攻と守、残像すら見えてしまいそうな程に超高速で繰り広げられる攻防に遂には足場としていた瓦礫すら悲鳴を上げる。
瓦礫が地面に激突する…その直前に二人は適当且つ手頃な落下途中の瓦礫へと移動し再び攻防を始め、その瓦礫が地面へと激突寸前になればまた別の瓦礫へと即座に移動するを繰り返す。
宿儺から放たれた蹴りを廻は逆に足で絡め取り、そこを軸に回転しその勢いのままに逆に顔面に蹴りを叩き込む。
重苦しい打撃音と共に宿儺の身体が大きく横に傾き、そこを逃さず両手を地面について一気に押し込むように飛び跳ね、そこから宿儺へと蹴りを叩き込む。
腹部へと突き刺さる鋭い蹴り、しかしその程度で動じるようならそもそも宿儺は呪いの王等とは呼ばれていない。
「───龍鱗 反発 番いの流星」
ガシリとお返しとばかりに掴まれる足、それと同時に唱えられた呪詞と向けられた手は、廻の脳裏に何時かの記憶を呼び起こす。
そう、それは久しく見ることも感じることも無かった男の術式、その基本とも呼ぶべき斬撃の真骨頂。
「───『解』…!!」
張り裂けそうな笑みと共に放たれたその一撃に、廻は咄嗟に領域展延を発動、宿儺の斬撃の威力を極々最小限へと落とし込むが流石にその勢いまでは殺しきれずビルの外へと吹き飛ばされる。
爆音が響き渡る、建物の外へと吹き飛ばされた廻は着地前に数回回転し、着地するのと同時に強く足を踏みしめ勢いを大きく殺す。
ギャリギャリと火花さえ散らしながら勢いを殺しながら停止した廻…そこへと相も変わらずの笑みを浮かべた宿儺がゲラゲラと笑いながら突っ込み、そこを狙って放たれた廻の拳がカウンター気味に宿儺の顔面へと突き刺さり、先のお返しと言わんばかりに宿儺の顔面を殴り飛ばし───
「やっぱりもう寝てろよ大喰らいッ!!」
「同じことを言わせるな! 寝かしつけてみろ禪院廻ゥゥゥっ!!!」
互いに啖呵を切り合い、再び激突した。
渋谷が、悲鳴を上げる。
ちゃんと化物対化物の戦いを描けているか不安になってくる、やっぱり宿儺は難しい。