宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

66 / 187

 色々あって作者は病院に入院しちゃったぜ★ 腹が減って仕方がない。


何時かの続き 魚料理 お預け

 

 

 引き絞られる腕、ギチリと音を鳴らす拳、それが俺へと音を突き抜けて放たれる。

 

 確かな殺意、確かな威力、その両者の兼ね備えたその一撃は真っ直ぐと俺へと向かい、それを俺は直前で弾き落とす。

 

 パシリと叩くように、それこそ飛び交うハエを振り払うような気楽さで、俺は宿儺の拳を弾き落とし、思い切り頭突きを噛ます。

 

 ガゴンッとまるで鐘がなったかのような音が領域内に響き渡り、俺はそのあまりの硬さに思わずと言ったように舌打ちをし、何処か八つ当たり気味に宿儺の顎を拳でかち上げるように撃ち抜いた。

 

 抜群の手応えが拳を通して伝わってくる、並大抵の術師ならばこれで昏倒ないし死んでいたりするのだが、如何せん相手が呪いの王ともなるとそうはいかない。

 

 打ち抜かれた顎、仰け反った顔が唐突に元の位置へと急速に戻り、仕返しと言わんばかりに頭突きが俺の顔面を襲う。

 

 それを手で防ぐ…なんてことはせず、俺は向かい来る頭突きに対して同じように頭突きで応戦した。

 

 ゴツンと生々しい音を立ててぶつかり合う頭突きと頭突き、間近に迫った宿儺の顔は今尚満面の笑みと言うしかない程に歪んでいて、俺はそれに対してやはり呆れの感情を捻出することしか出来ない。

 

 そんな俺の顔を見てニヤケ面を浮かべた宿儺の横顔を、唐突に飛んで来た一匹の脱兎が蹴飛ばし、更にそこへ大量の脱兎が次から次へと宿儺へと蹴りを叩き込んでいき、そこへ鵺が何の躊躇も無く突っ込んだ。

 

 紫電の弾ける音と同時にその場を飛び退いた脱兎に続くように降り注ぐ紫色の雷が宿儺を撃ち、そこへ浴びせかけられるように満象の滝が宿儺へと降り注ぐ。

 

 例え無害と思われがちな水であっても量が量ならば当たり前のように人を潰す、洪水で溺れ死ぬだけが水の恐ろしさじゃないのだ。

 

 

「…俺の領域、前とは随分違うだろ?」

 

 水に潰された宿儺へと視線を向けながら、俺は何となしに口を開いていた。

 

「風景もそうだけど、内容も結構違っててさ…お前に通じてたなら、嬉しいんだけど」

 

 開いた口から吐き出されるのは自身の領域について、ふとした折の何となしに語られるソレに意味があるか無いかで言えば間違いなくある。

 

 何故ならこれは、歴とした開示なのだから。

 

「ネタばらしをするとな、今の俺の領域には必中も必殺も付与されてない、言ってしまえば未完成品をそのまま完成品として展示してるような状態なんだ」

 

 何処か自慢したような口調で俺はペラペラと自身の領域について語り出す、そこには当然開示以外の意味は無い。

 

 

「考えてたんだよ、ずっと…この時代に生まれてからずっと、どうやってお前の領域に対応するか、対応出来るのかなって」

 

 本当のことだ、俺はずっとずっと悩んでいたし苦悩もしていた、どうすればお前の領域に対応出来るのかなって。

 

 今も外側に鳴り響いて止まない斬撃の音、これを聞いて思い出すのはこの音によって壊された昔の俺の領域、必中必殺を是としたオーソドックスな俺の領域。

 

 対して期待してなかったと言えば嘘になる、頑張って作り上げた領域だ、それが王に届いて欲しいと思うのは当然の帰結だろう。

 

 だけど届かなかった、無惨に崩れ逝く自身の領域にショックを覚えなかったと言えばそれこそ嘘だ。

 

 俺はその時、確かな悔しさを感じていた。

 

「だから考えたんだよ、考えて考えて考え抜いて…ふとした時思いついた」

 

 

───必中も必殺も、取っ払えばいいんだって

 

 

 そう言葉を放つと同時に滝が轟音を立てて吹き飛ばされ、そこから飛び出すように宿儺が俺へと術式を放つ。

 

 向かい来る不可視の斬撃、身体を上段から真っ二つにするように放たれた斬撃を身体の位置を僅かに移動させることで躱し、変わらず俺は口を開き続ける。

 

「いらなかったんだよ、こいつらには必中も必殺も最初から必要無かったんだ」

 

 俺にとっての十種は式神達のことで、影はその付属品…影は言ってしまえば十種達と俺のサポート用のソレ、俺自身が心の何処かでそう思っていたと言う事実に、俺は最近になって気がついた。

 

 そしてそんな俺の意識を直そうとして、殊更気付いた…あぁ、直す必要なんて無いんだって。

 

「難しく考える必要なんて無い、俺はただ作るだけでよかった、こいつらが思い思いに暴れられる場所を作ってやるだけで良かったんだ」

 

 言葉を口に出しながら、何時の間にやら側に来ていた獅子王を撫でる、硬く強靭な毛並みは何処かザラザラとしていて妙な心地良さを感じさせた。

 

 

「俺の領域の効果は十種達の能力の底上げ、最大値は大凡…200%ってところかな?」

 

 声を出しながら印を組み、俺は静かにその名を告げる。

 

 

 

「『廻輪奇劇・羅生門』」

 

 

 

 さぁ、奥の手の一端をお見せしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 告げられた名が領域内に響くと同時に、視界に映る景色が切り替わる。

 

 一寸の狂いも無く、何かしらの演出も無く、音もなければ影も無く、ただただ一瞬にしてその景色は切り換わる。

 

 暗く静謐だった空間に淡く光が刺す、ザーザーと身体を打つ雨音が身体を濡らし、空は曇りに曇った曇天模様。

 

 雷が堕ちる、木々に堕ちた雷雨が火の手を作って燃やしていき、踏みしめた地面をほんの僅かに熱くする。

 

 そして、両者の眼前に聳え立つ鬼面が如き巨大な門の向こう側に、禪院廻は居た。

 

 

「劇なんだ、場面が切り替わるなんて良くある話だろ?」

 

 雨に打たれながらそう言う男の姿に、宿儺の身体に緊張が走る。

 

 千年ぶりに感じる気配、この身を際限無しに終わらせる死の気配に宿儺は自然とその行動を取っていた。

 

 印を組み伏魔御廚子に掛けていた縛りを一部変更、対象を禪院廻及びその呪力を持つものから結界の外殻のみに変更し、更に宿儺自身が意識を集中させることでその威力を跳ね上げる。

 

 降りかかる斬撃が結界の外殻を撃つ…しかし崩れない、あまりに硬いそれは決して宿儺の斬撃を通さない。

 

 禪院廻の『廻輪奇劇』は必中必殺を捨て去った領域…その縛りの対価として手に入れた十種の能力上昇とは別に、圧倒的な外殻及び内殻の頑強さを廻の領域は手にしていた。

 

 現在の両面宿儺の指の本数は凡そ14本、未だ完全とは言えないその状態ではまず破られることは無い。

 

 故に───

 

 

「獅子王、出番だ…張り切っていこう…!」

 

 

 宿儺はソレを、許してしまう。

 

 廻の側に控えていた獅子王が、その体勢を四つん這いのソレへと変え、強く強くその両手足を踏みしめ、その肉体に紫電を纏わせる。

 

 バチリバチリと鵺とは比較にならない程の音を掻き鳴らし、高出力の呪力をその身に纏った獅子王の姿に、宿儺は喰らえば死ぬと直感した。

 

 形振り構わず距離を取れと本能が囁く、先に潰せと命が叫ぶ…しかし───

 

 

「あぁ、魅せてみろ、禪院廻…!!!!」

 

 

 両面宿儺はそれを許さない。

 

 避ける、躱す、防ぐ…それは良い、許そう…しかし逃げるも潰すも許しはしない。

 

 己の快不快のみが己の生きる指針、己の死の可能性と快を天秤に取りそれが快に傾いたが故の選択、宿敵が放つ初見のそれを見ずに終わることを宿儺は許さなかった。

 

 ここで見ねば何時見るというのか、ここで受けねば何時受けるというのか、受けぬ見ぬ躱さぬ…用意された至極の一品、これを喰らわぬことこそ無作法であると宿儺はそれら手段を切り捨てる。

 

 だからこそ、宿儺は大手を広げてそれを迎え撃つ、その身に纏う呪力の全てを防へと回し、向かい来る宿敵の最強の一端を刮目してやろうとその身を構えた。

 

 そんな呪いの王の姿に廻は僅かながらに目を見開き、しかし次第にその表情を呆れへと変えていく。

 

 相変わらずと言うべきか、されどそれでこそと言うべきかとでも言いたげな表情を隠しもせず表に出した廻は、しかしその手順を止めはしない。

 

 

「───(ひら)け、羅生門」

 

 鬼面が口を開く、重厚な音を立てて勢い良く開いた鬼面の門は、その先にある全てを映し出し、同時にけたましい音と共に放電を開始する。

 

 まるで通る者全てを焼き尽くすかのような鮮烈な音と気配が宿儺に降りかかり、その向こう側にいる獅子王はその先に存在する獲物へと標的を定めた。

 

 踏みしめた手足が地面を割る、何時何時なりとも往けると言わんばかりに大きく吐き出された吐息がまるで蒸気のように吐き出され、その無数の眼光が鋭く吠えた。

 

 まだか、まだかとギジリと噛み鳴らされる音が周囲に響き…そして───

 

 

「───討て」

 

 合図は、出された。

 

 爆発する地面、獅子王の全力で以て踏み鳴らされた地面は寸分違わず崩壊し、主すら巻き込んで何もかもを吹き飛ばす。

 

 疾走、疾走、疾走…駆けてから僅か一秒足らずで最高速度へと到達した獅子王がその身に有り余る暴力の全てを獲物へとぶつけんと猛進する。

 

 爆音を鳴らしながら突っ込んで来る獅子王に対し、宿儺は何処までも何処までも笑みを浮かべ、それを受け入れるように強く構えを取り、やってくる絶対の暴力への防を成す。

 

 獅子王が門に差し掛かる、雷渦巻く鬼面の口へとその身を投げ出した獅子王は…次の瞬間、加速する。

 

 獅子王の姿がブレる、宛ら電光石火の如くその姿はブレて消え、一拍置いた次の瞬間には既に宿儺はその一撃を喰らっていた。

 

 羅生門は発射装置である、獅子王の呪力に呼応して獅子王を射出する獅子王専用の最終兵器こそが羅生門、即ち『廻輪奇劇・羅生門』とは獅子王が主役の舞台なのである。

 

 その一撃は音を超え、遂には光にすら届く。

 

 即ちその一撃、必中が付与されるまでもなく必中であり、必殺が付与されるまでもなく…必殺である。

 

 

「───ッッッ!!!!」

 

 

 吠える、吼える、咆哮した獅子王の声が遅れて宿儺へと届き、その身に駆け巡る怒りの感情が宿儺へとダイレクトに叩きつけられる。

 

 単なる突進、光速へと至った一撃が宿儺の身体を根底から吹き飛ばし消し飛ばす中で、宿儺は───

 

 

「ケヒッ…魅せてくれたな、禪院廻っ!!!」

 

 何処か満足気な笑みを浮かべて、光と共に彼方へと消えた。

 

 





廻輪奇劇について

 必中必殺全てを投げ捨てて、式神の能力上昇に振り当てた領域、当然必中が無いから簡易領域とか意味が無い。

 伏黒と違い、元の必中必殺の状態から此方に変化させている為、その能力の上昇値は200%にも及ぶ。

 因みに、劇ということあって十種達専用の舞台並びに場面が存在しており、それを利用しての戦闘がメインとなる。

 因みに、作者はこれを思いついた時に思ったことが馬鹿なんじゃないのという一言だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。