宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 最近Fate&十種の小説が出たので見てみようと思いました、まる。

 それはそれとして今回は直毘人爺さんの話、なんでも良いかららしくない爺さんの話が書きたかった、今回は流石に反省している。


らしくないですよ爺さん!

 

 

「廻、オマエ高専に入れ」

 

「……はい?」

 

 夜、爺さんの部屋に呼び出されて、ちきちきお気に入りアニメ一気見大会をやっている最中、唐突に放たれた言葉がこれだった。

 

「不満か?」

 

 アニメのシーンを止め、不満かと此方へと顔を向ける爺さん、その表情は何時ものような活気のある笑顔ではなく、何処か淡々としたものだった。

 

「いやまぁ、別に不満とかはないけど…なんで?」

 

 高専…正式名称は呪術高等専門学校、略して呪術高専、更に略して高専…なんで略が二つもあるんだよ。

 

 東京と京都にしか存在しない呪術の教育機関、普通の術師ならまずそこに通う、そうしないと呪術師の資格が取れないからだ、取らずに呪術師してたら呪詛師判定されて資格持ちの奴等には殺されるか資格取りに行けと説教される。

 

 だけど俺…というか禪院家を含む御三家は違う。

 

 御三家の人間は全員基本『特別呪術師』というものになれる、当然俺もなれる、なんだったら俺はもうとっくに一級だ、なんで呪霊を倒したこともないのに一級なのかは知らない、なんか知らない内にそうなってた。

 

 まぁ、要するに何が言いたいかって…俺が行く必要がねぇ。

 

 だからこそ分からない、確かドブカスも通わなかったはずの高専に、なんで俺が行かなければならないのか……いやまぁ、術式が無いからかもしれないけど。

 

「……聞きたいか?」

 

 そう言うと爺さんは、とてもとても憂鬱そうな表情で俺を見つめた、その瞳は俺ではなく何処か遠くを見つめているようだ…いや待って、凄く嫌な予感がする、なんか聞いたらヤバイやつな感じが凄くする。

 

「あっ、やっぱ言わなくて───」

 

「数日前のことだ、お前が五条の所の坊と出かけていた時、五条家の当主がオレを訪ねてきた、青い顔でな」

 

 奴は言っていた、五条の坊が高専に入ると…と爺さんは続ける、俺の言葉はガン無視ですかそうですか。

 

「その時にだ、当主の奴はオレに手紙を寄越した…五条の坊からの手紙だ」

 

「手紙にはこう書いてあった…『廻を高専に入れろ───』」

 

───じゃないと最大出力の順転で禪院家吹き飛ばすぞ☆ と。

 

 

 ………………。

 

 …………………………。

 

 ………………………………………はい??

 

「最初は何時もの悪質な冗談か何かかと勘繰ったが…お前と共に家に来た坊を見た時に確信した…こいつは本気でやると」

 

 ……えぇ、ちょっと待って、いや本当に待って。

 

 吹き飛ばす? 最大出力の順転で? 蒼で? 何を? 禪院家を?

 

 ………待て待て、流石の悟でもそんなことは………いや待って、なんだろう、ありえないと思ってても悟ならやりかねないって思ってる俺がいる…えっ、待って本気で言ってるのかアイツ?

 

 そりゃ爺さんもこんな顔になる、六眼持ちでしかも無下限の併せ持ちだ、俺でも流石に最大出力の蒼を相手には術式無しじゃ防げない、自分の身体護るので精一杯だ。

 

 ……えぇぇぇぇ…嘘やん、いや別に高専行くのは良いけどこんな形では行きたくなかった───

 

 

「何か勘違いをしているようだが、俺は五条の坊に言われなくても端からお前を高専に入れるつもりだったぞ?」

 

 ………ん?

 

「当たり前のことだろう? 誰が坊に脅された程度で言うことを聞くか、確かに奴は本気でそれをやるつもりではあったろうが、それは何方かと言えばお前と本気で戦うための言わば方便だ」

 

「要するに奴にとってはどちらでも良かったのだ、お前が高専に入ろうが入るまいがな、何方に転んでも結局自分の望みは叶うのだからな」

 

 …………えぇ…なにそれぇ…。

 

 

「結局何がしたいのそれ、意味が分からん」

 

「遊びたいんだよ、お前とな」

 

 …いや、それは流石にドン引きですわ。

 

 いや、確かにこれだけで態度を変えるとかそういうことをする気はないよ? そういうのは俺が一番嫌いなヤツだから、一回関係作ったなら最後まで付き合ってあげるのが友達ですから? でもそれはソレとして引くことには引くよ俺は。

 

 えっ、何? 遊ぶって何? 普段から遊んでるじゃん、思いっきり遊んでるじゃん、徒手空拳の訓練が混じるけど基本一緒にゲームしたり鬼ごっこしたりしてたじゃん、あれじゃ満足出来ないならお前どんな遊びから満足するの? 呪力有りだと決着付かないから呪力無しでやったのが駄目だった? いやいやそんなことはない実際にアイツだって………ってあれ?

 

「じゃあ…なんで爺さんそんな浮かない顔してんの?」

 

 ふと、口から零れ落ちた疑問…そうだ、悟が原因じゃないならなんで爺さんそんな遠い目してんの? 何時もはあんなに笑ってんのになんで今日に限ってそんな憂鬱そうな顔してんの?

 

 そんなふとした俺の疑問に対して、爺さんは不意に顔を背けて、手元にあったビールをグビッと一気に飲み干した。

 

 ビールを飲み干し、小さく息を吐き、ゆっくりとコップをちゃぶ台の上に置き、また一つため息を吐き、一言で笑うなよと言って話し始めた。

 

「なぁ廻よ…オレ達が知り合ってからどれだけ経ったか覚えているか?」

 

 唐突な爺さんからの問い、俺と爺さんが出会ってどれだけ経ったか……初めて会ったのが5か6歳くらいの時で今が14くらいだから───

 

 

「9年くらい?」

 

「そうだな、大体それくらいだ…お前と会ってから、九年の付き合いになる…毎日が騒がしかった」

 

 そう言って爺さんはニコリと笑いながらコップにビールを注ぎ、またグビッと一気に飲み干した、相変わらずの飲みっぷりである。

 

「…オレはな廻、詳しくは言わんがそこまで情の深い人間ではない、実の息子に対しても甥っ子姪っ子に対しても、自分の妻に対しても、あまり情を持ち合わせているとは言えない」

 

 爺さんは静かに語る、今までに溜め込んだモノをゆっくりと吐き出すように、放出するように、コマを進めるように。

 

 その表情に暗さはない、暗さは無いが、ほんの少しの皮肉交じりの表情が見えた。

 

「そんなオレがだ、息子にも嫁にもそこまでの情を感じないオレがだ…お前に対してはソレを感じた、お前を高専に行かせると決めた時、お前がこの家を出ることを考えた時、言い様のない感覚に襲われた」

 

 爺さんが天井を見上げた、天井を見上げているせいでその表情は見えない…ただ、ほんの少しだけ呆れている風に感じた。

 

「自分でも分かっている、らしくないとオレでも思う…しかしまぁ人間というやつは度し難くてな、一度感じてしまった以上はソレを決して忘れられんのだ……まぁ、要するにな───」

 

───寂しいんだよ、お前の居ない日常が。

 

 そう締め括って、爺さんは再びビールをコップに注ぎ、ソレを一気に飲み干した…ぷはぁと息を吐き、コップを卓袱台の上に置き、そのまままた入れようとして、止めた。

 

 ………………………うん、らしくない。

 

「…ふふふ…ふふふふふふふふふ」

 

 笑いが漏れる、口元がニヤける、自分で止めようと思っても止められない。

 

 だってしょうがないじゃないか、らしくないんだから。

 

「ほら見ろ笑うだろ? だから言ったんだ笑うなと」

 

 爺さんの言葉にごめんごめんと返すも、それでも笑みと笑い声は止まらない、最初は小さかったその笑い声も、段々と大きく大きく部屋の外にまで響いていく。

 

 でも仕方がないんだ、仕方がないんだよ。

 

 だってらしくないのだもの、何度でも言うがあまりにも禪院直毘人らしくないのだもの。

 

 だって俺の知ってる禪院直毘人は、俺の印象に残っている禪院直毘人は常に笑顔を浮かべる人間だった。

 

 アニメーションに煩くて、酒が好きで、それでいて自分の身内にそれなりに情があって、とてつもなく速い…そんな強烈な印象を最初の俺に残した人間だ。

 

 それが…それが、俺が居ない日常が寂しいとか言ってるのだ、情が大して無いはずの自分が俺に対しては情を感じてしまったと悩んでいる…こんなに笑えることがあるだろうか、そんな馬鹿みたいな理由で悩んでるなんて想像出来なかったよ流石に。

 

 最初の術式順転の件は流石に仕方がないかなぁって思ったけど、流石にこれは無理、これは笑う、笑うなと言う方が無理がある。

 

 

「ふふふ、ねぇ爺さん、ちょっと訂正させてもらうけどさ、爺さんはこの家の中じゃ充分情のある人間の枠に入るよ?」

 

 それは俺が最初の頃から思ってたことだ、周りがあまりにも酷すぎたというのもあるが、何度も言うが呪術界は危険な場所だ、そんな世界を生業にしている以上情が消えるのは当たり前だ。

 

 ましてやその中心に位置する御三家の当主だ、情が無くなろうが誰も文句なんて言わないし言えない…けど爺さんは違った。

 

 未来の世界で禪院真希を庇うような場面があった、兄ちゃんが真っ当な取引相手として選んだ、遺言で兄ちゃんとの約束を守った…この時点で禪院家の中では歴とした情持ちだろう。

 

 そんな人間がわざわざ気にしているのだ、俺に対して情を持ったことを、笑わずにはいられないだろう。

 

 

「忘れたの爺さん、俺も禪院だぞ? 結局何処まで行っても俺が帰ってくるのはここなんだから、何時も通りに酒片手に大笑いして行って来いって言ってくれれば良いんだよ」

 

 そっちの方が俺的にもやりやすいと、そう一言据えて俺は言葉を締め括った、爺さんは何処か呆然としている。

 

 しかしそれもほぼ一瞬、次の瞬間にはクカカカカカカカカッと大きな笑い声が部屋に響き渡る、当然爺さんの笑い声だ。

 

「そうか、ならば言ってやろう…高専に行ってこい廻、遠慮なんぞいらん、五条の坊を叩きのめしてこい!」

 

 そう言って爺さんはビール缶をプシュッと開けて、グビリグビリと直接飲み干し、最後にはビール缶を手で握り潰した……あぁ、これだこれ、ようやくらしくなってきた。

 

 

「言われなくても……あっ、そういや行くのは東京の方で良いの? それとも京都の方かな?」

 

「京都の方だな、どうもお前と遠慮無しで呪い合いたいらしい」

 

 そっかと一言返してふと思う…あれ、てことはさしす組が揃ってしかもガッデム校長が居るのでは? と。

 

 それを考えたら正直東京の方に行きたいが…他ならぬ悟と爺さんがそれを望んでいるのだ、今回ばかりは我慢しよう。

 

 

 

 …うん、大体のことは分かった………というわけで難しい話はここいらでおしまい!!

 

 

「爺さんアニメの続き見よ〜!」

 

「よしきた、オレの新しいコレクションを見せてやる!」

 

 

 これだよこれ、やっぱり爺さんは、禪院直毘人はこうでなくちゃね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 この後、徹夜でアニメを見て爺さんの嫁さんにしこたま怒られた、禪院家に於いて女に人権は無いってのは嘘だと思った廻と直毘人であったとさ。

 それはそれとして…どうしよう、マコーラを出すタイミングが分からぬ。
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