宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 虎杖は正直、メロンパンにこれだけ言っても良いくらいのことされてると思いました、まる。


殺意と殺意と殺意

 

 

 

───黒閃

 

 

 火花が散る、骨を鳴らした直後に踏み込まれた脚から再び黒い花火が咲き誇る。

 

 2.5乗の速度、穿血に迫る程の速さで以て虎杖は禪院へと向けて一気に肉薄し、拳を禪院へと向けて突き出した。

 

 二度目の黒閃を転用した移動法、一度目の黒閃によって研ぎ澄まされたその感覚は虎杖の呪力効率を更なる領域へと押し上げ、二度目はそれすら踏み越えて更に上へ上へと押し上げる。

 

 自然体に、当たり前に、だらりと脱力した状態から行われたソレは本人からしてみれば大して変わりは無い、先と同じことをやっただけのことでしかないのだろう…しかし外から見たソレは、つい先程のソレよりも更に速くなっているように見えたことだろう。

 

 無駄の削ぎ落とし…一度目に存在した無駄を行動から呪力の運用に至るまで出来得る限り削ぎ落としたソレは最早一度目のソレとは別のソレへと変化していた。

 

 

 それに対し、禪院は───

 

 

「───ハハッ…!」

 

 

 わらった、笑った、嗤っていた。

 

 親が子供の成長を喜ぶように、才能を開花させた子供を祝福するように、愉悦と喜悦を隠しきれていないその笑みを浮かべた禪院は、突き出された拳をパシリと叩き落とす。

 

 穿血に、音速へと迫るその速度は確かに脅威だろう…しかし、禪院はその本人の都合上、それらの速度にどうしようもなく慣れてしまっている。

 

 どれだけ速くても、どれだけ近づかれていても、それを予測されてしまっているのでは意味が無い。

 

 黒閃の移動法によって跳ね上がるのは移動に於ける速さのみ、本人の打撃の速さまで上昇するわけではない…故にそれが来ると分かっているのなら、来ると思っていたのならば、防ぐのは存外に容易い。

 

 後は、本人のフィジカルが、物を言う。

 

 

「まだまだ勉強不足だね、()()

 

 

 名前を呼んだ、愛する息子の名を呼ぶ親のように、愛する息子の成長を喜ぶ親のように。

 

 その姿に、その慈愛に、虎杖悠仁は───

 

 

「───オォァアァッッ!!!」

 

 

 殺意で以て、応えた。

 

 気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。

 

 何が何だか分からない、何故こんな感情を抱くのか虎杖には検討も付かなかった。

 

 ただ気持ち悪い、ひたすらに気持ち悪い、この世の何よりもただひたすらにどうしようもないくらいに気持ち悪い。

 

 名前を呼ばれた瞬間、虎杖の身体に奔ったのは怖気と寒気、術式による効果を疑いもしたがそれは違うと本能が叫ぶ。

 

 何はともあれ気持ち悪い、ただただ目の前の存在が気に入らない、ただただ目の前の存在をただ───

 

 

───グチャグチャにしてやる…!!

 

 

 殺したくて、仕方がない。

 

 

 殺意を込めて、拳を放つ…呪霊に向けるものとは訳が違う、正真正銘心の底からの憎悪と殺意と嫌悪の感情を纏った拳が、禪院の顔面を吹き飛ばした。

 

 急速に肉体のキレが増す、相手を呪う負の感情が虎杖の肉体へと満ち満ちていき、それと同時に虎杖の思考の熱が急速に冷めていく。

 

 殺意に殺意に殺意に殺意…ただ目の前の存在への殺意のみに彩られた虎杖の思考は、ただ目の前の存在を殺害することのみに集約されていた。

 

 

 

 

───ケヒッ…良いぞ小僧、分かってきたではないか。

 

 

 頭に響く声、邪悪に邪悪を塗りたくったようや声色と共に身体の内から呪いが湧き上がる、その存在に塗り潰されるように。

 

 

───そうだ、それで良い…ただ望むがままに、本能のままに、飢えるがままに呪い、喰らえ。

 

 

 ただの一度も向けられることのなかった愉悦、呪いの誕生を愛でるかのように虎杖の内側から溢れ出した呪力が虎杖の肉体へと染み込んでいく。

 

 そうだ、それでいいのだと殺意に染まった虎杖へと呪いは囁く、善性…人間としての当然なんて捨て去りただ望むがままに振る舞えと呪いの王は囁く。

 

 肉体に奔るのは見覚えのある入れ墨、身体から頬へと至るまで刻まれたその入れ墨は自身の呪いの道へと引きずり込んだ元凶…それに虎杖は何を思うこともなく、ただ満たされた殺意のままに動き出す。

 

 その姿に禪院は思わずと言ったように喜悦を吐き出す、あまりにも想定外の展開に愉悦が溢れて止まらない、素晴らしいと小さく呟いてしまう。

 

 溢れ出した呪力は宿儺の呪力…ではない、溢れ出したのはあくまで負の感情によって増幅した虎杖自身の呪力だ、宿儺のものではない。

 

 しかし、似ている、どうしようもなく似てしまっている。

 

 その質や濃さは宿儺程ではない、宿儺程ではないが指と勘違いされても仕方のない程の悍ましさがそこにはあった。

 

 

 息を薄く吸う、何百と行ってきたそのほんの僅かな動作が冷え込んだ空間に嫌に大きく響き渡る。

 

 青く輝く呪力の光が氷の表面に反射する、込められた負の感情…その大きさを現すように深く強く輝くその呪力に禪院は口角を釣り上げ───

 

 

「───殺してやる」

 

 

 瞬間、地面が大きく爆ぜた。

 

 ほんの僅かに吐き出した殺意の言葉、それが禪院の耳に届くのと地面が爆ぜ散らしたのは殆ど同時、その僅かな時間の間に虎杖は一気に禪院の懐へと踏み込んだ。

 

 黒閃ではない、純粋な地面に踏み込んだ上での通常接近…しかしその速度は先程のソレとそう変わらない、寧ろそこから感じる圧力が大幅に増したようにも思える。

 

 一瞬にして距離を詰めた虎杖に対し、禪院は何をするでもなく大手を広げてそれを迎え入れる、来なさいとでも言いたげに大手を広げて自分を見る禪院に虎杖は殊更嫌悪を感じた。

 

 拳を打つ、鋭く首元を狙って躊躇無く打ち込まれた拳が首の骨を砕いてやろうと迫り、それを禪院はほんの僅かに首を傾げて躱した、浮かべる笑みは未だ胡散臭い。

 

 その笑みが鬱陶しかったのか、それとも避けられることが最初から分かっていたのか…恐らく後者であろう虎杖は躱された拳を瞬時に開き、禪院の首根っこを捻じるように掴み取り───

 

 

「───アァアァァッッ!!!」

 

 

 咆哮と共に、氷壁へとその肉体を叩きつけた。

 

 砕けて飛び散る氷の破片、光に照らされて反射する鏡のようなソレが周囲へと飛び散り、それよりも尚速く虎杖はそこへと蹴りを叩き込む。

 

 ガシャンと音を立ててより深く砕ける氷の壁、ズガンと重々しい音を立ててより深く深くへと沈み込む禪院の肉体へと虎杖は更に拳を叩き込む。

 

 死ね、死ね、死ね、死ね、とにかく死ねと殺意を一辺倒に込めて一つ一つと打ち込まれる打撃、音を聞くだけで震え上がりそうな打撃音を前に、しかし虎杖は決して手を緩めない。

 

 連打に次ぐ連打、放たれる全てが急所狙いのソレがその行動を封じるように禪院へと殺到する。

 

 最早外側からは禪院の姿は見えない、それほどまでに深く沈み込んだ禪院へと何の容赦も躊躇も無く拳と蹴りを叩き込み続ける。

 

 黒閃によるゾーン状態、淀みの無い呪力操作に加えてそこから繰り出される正確無比且つ虎杖自身の強大なフィジカルから放たれる打撃の数々、それを殺意と憎悪に濡れた瞳で繰り出し続ける虎杖の姿は端から見れば鬼のように見えたに違いない。

 

 鬼神…何時かの未来で呼ばれるはずだったその名を虎杖は既に体現しかけていた。

 

 しかし、それでも───

 

 

「我ながらと言うべきか…元気一杯だね、悠仁」

 

 

 禪院には未だ届かない。

 

 蹴り飛ばされる、打撃を放とうと拳を引き絞ったタイミングと同時に虎杖の腹部に蹴りが突き刺さり、虎杖の肉体を後方へと弾き飛ばす。

 

 よっこいしょと老人のような掛け声を出しながら氷壁の奥からのそりと姿を現した禪院の顔からは笑みは消えておらず、埃に塗れてこそいるがそこまで目立った傷も見受けられない。

 

 殆ど無傷、ダメージは無し、繰り出された打撃を丁寧に砕けかけの氷の壁の内側という狭い空間の中で禪院はさも当然のように繰り出された打撃の大半を捌き切っていた。

 

 コキリコキリと首を鳴らし、ゴキゴキと肩を回して骨を鳴らす…そんな余裕そうな禪院の姿に虎杖はギシリと拳を握り込み、腕を弓のように引き絞って、虚空へと拳を放った。

 

 瞬間、禪院の横面を衝撃が襲う。

 

 何をしている…そう思考した隙間を縫うようにやってきた衝撃と痛みに身体が僅かに揺れ傾き、そこへ獣のように虎杖が飛びかかる。

 

 両手を前に突き出し両足を後ろへ、文字通りの四足獣のような動きで自身へと迫った虎杖へと禪院は半ば反射的に蹴りを放つ。

 

 鋭い蹴り、当たればただでは済まないと確信させられるような鞭のように鋭い蹴り、それを虎杖は避けるでも防ぐでもなく全身を使って抱き込むように受け止め、そこから更に身体ごと捻り回すように回転する。

 

 足を抱きとめられ、更にそこからやってくる軸の回転、このまま行けばそのまま足を捻りきられると禪院は判断した。

 

 咄嗟に自身も同じ方向に身体全体を回転させる、ギュルリと回転した禪院は叩きつけられるように地面へと仰向けの状態で縫い付けられ、そこへと虎杖は獣のように大きく腕を振りかぶった。

 

 振りかぶられた腕が振り下ろされる、万力の膂力で振るわれたソレに対して禪院はさながらヘビのような動きでその場を離脱し、カウンター気味に虎杖へと蹴りを放った。

 

 放たれた蹴りが虎杖の額に直撃する、ガツンと人体からまず鳴ってはいけないだろう音が鳴り響き、しかしそんなこと知ったことかと言わんばかりに虎杖は禪院の顔面へと頭突きを見舞った。

 

 グチャリと生々しい音を立てて頭突きが禪院の顔面へと食い込む、鼻血を出しながらそれでも笑みを浮かべる禪院に対して虎杖は───

 

 

「お前だけはぁっ!! 殺すっ!!!」

 

 

 自分でも理解出来ない、理解しようのない衝動の赴くままに、禪院へと殺意に濡れた言葉を吐き出した。

 

 

 禪院は、笑っていた…慈愛に満ちた笑顔を浮かべて…まるで、独り立ちする子供を見守る親元のように。

 

 





虎杖くん

 名前を呼ばれた結果、めでたくメロンパンガチ殺し勢と化しちゃった子、ほぼ本能的且つエゴ的なソレも含めてメロンパンを殺したくて仕方がない。

メロンパン

 息子が予想外の方向に成長している姿を見せられてテンションが上がっちゃった系の人、気持ち悪いから死んでくれ。

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