メロンパンってキショいよねとか考えながら書いた、キショ。
爆砕音…言語にするのならばそんなところだろう、文字通り砕け爆ぜる音が周囲に響き渡る。
暗い暗い渋谷の街の中、その中で一際輝く氷の山のその内側でそれらの音は鳴り響いていた。
次いで鳴り響くのは深く重い打撃音、呪力と共に突き出されたそれは対象を寸分違わず狙い撃ち、その肉体を吹き飛ばす。
内から外へ、視界に映り込む色が青から黒へと切り替わり、土煙を立ててそれら視界を歪ませる。
氷壁の向こう側からガラスを突き破るように飛び出し地面を転がる男…禪院は地面に手を突き出し擦り付けるように勢いを殺し…そこへと飛び込んできた虎杖の飛び蹴りが禪院を襲う。
咄嗟に腕を交差させて蹴りを防ぐ、蹴りが腕に触れた直後にバキリと腕から悲鳴が上がり、それと同時に踏みしめた地面が陥没を始める。
重い、重く深く沈み込んでくるような一撃に禪院は隠すことなく笑みを浮かべ、突き出された足を掴み取ってそのまま地面に叩きつけようと振りかぶり、そこへノーマークだった片足が薙ぐように禪院の顔面を横合いに蹴り飛ばす。
血が吹き出る、鼻血と口血が空中へと散乱し身体が仰け反るように横側へとズレ、更にそこへ突き刺さるような渾身の蹴りが顔面に直撃する。
更に大きく禪院の身体が仰け反る、大きく大きく後方へと仰け反ったその隙だらけの身体へと虎杖は更に更にと追撃を仕掛けようと動くが、その直後に下から掬い上げるように振り抜かれた蹴りが虎杖の顎下を捉えた。
ガツンと響いてくる顎下からの衝撃、あまりに唐突に繰り出された不意に近いその一撃に脳が揺れ、ほんの一瞬ではあるが虎杖の意識は飛んだ…そしてその僅かな空白を禪院は逃さない。
仰け反った頭を勢い良く戻し、その勢いのままに先程のお返しと言わんばかりに頭突きを虎杖へと見舞い、更にそこから流れるように連続で蹴りを叩き込む。
ほんの一瞬、ほんの僅かな空白を狙って放たれたそれら連撃に虎杖はまともに反応出来ず、攻撃に次ぐ攻撃をモロに食らってそのまま後方へと大きく後退り、そこへと禪院が飛び掛かる。
「駄目じゃないか悠仁、やるならキチンと最後までやらなくちゃっ!!」
抱き着き押し倒すように虎杖へと馬乗りになった禪院は、そこから浴びせかけるように虎杖へと拳を叩き込む。
顔面に腹、防いでいない空いている所へと容赦無く降り注ぐ拳の雨あられ、寸分違わず急所を突いてくるその拳に虎杖は血反吐を吐き出した。
満面の笑みが虎杖の視界を掠める、降り注ぐ拳の向こう側で禪院はこれでもかと言わんばかりの満面の笑みを浮かべながらも虎杖へと躊躇無く拳を振り下ろした。
止まらない、終わらない、まるで止む気配が見えない…そんな半ば無尽蔵にも近いようにも感じる時間の流れの中で、ふとした折に見えたのは拳の雨の先にある気持ちの悪い笑顔。
こんなものではないだろう? まだやれるだろう? もっと見せてくれないか? …そんな、あるかも分からない可能性に目を輝かせる子供のような目で、それと相反するかのような気持ちの悪い笑みを浮かべる男の姿が、虎杖の視界に入り込んだ。
「ッッ…!!!」
湧き上がったのは不快感と殺意、その気持ちの悪い笑みを虎杖が認識したその瞬間、虎杖の中に確かに存在していた箍が完全に外れた。
突き出された片拳を掴み取り、決して逃さぬと言わんばかりに万力の力を込めて握り締め、更にそれと同時に馬乗りになっている禪院の腹部へと手を充てがい…虎杖は唱えた。
「───龍鱗 反発 番いの流星」
湧き上がり、膨れ上がる呪力反応、虎杖の口からまず発せられるはずのないその言葉…詠唱に禪院の動きが僅かに硬直し、それと同時に虎杖の体内で練り上げられる呪力とその起こりに、禪院の瞳は大きく見開かれた。
咄嗟にその場から逃れようと禪院は身体を浮かそうとするが…虎杖悠仁はそれを決して許さない、万力の力で握り締められた腕がギチリと悲鳴を上げる。
掌印はしていない、片腕が塞がった現在の状況下に於いてそれは不可能に近い。
それ故に、そこから放たれる術式の威力は陀艮の際のそれに比べてみれば遥かに劣る…劣るが、それでも位置が位置である。
完全な零距離、外すことの方が難しいその状況下でましてや直接手を触れている状態だ、威力が多少低かろうが最早関係無い程の位置に虎杖と禪院は居た。
それ故に───
───『解』
虎杖の掌から放たれたその一撃は、容易く禪院の身体を吹き飛ばした。
斬撃の跡が音もなく禪院の肉体へと刻まれる、それに対して驚愕の表情を浮かべた禪院の肉体はその勢いをモロに食らったかのように後方へと血潮を撒き散らしながら弾かれたように吹き飛ばされる。
身体に伸し掛かっていた重みから開放され、何処かダルそうに身体を起こした虎杖は、ペッと口の中に溜まっていた血液を唾液と共に吐き出し、憎々しげに倒れこんだ禪院へと視線を投げかけ…苛立たしそうに舌打ちした。
「…素晴らしい、素晴らしいよ悠仁…こんなに面白いことを目の当たりにするのは、本当に久しぶりだ」
感極まったような声が虎杖の耳へと届く、嬉しさと楽しさを必死に押し殺そうとしたような声に思わずと言ったように虎杖は顔を顰めた。
むくりと禪院が身体を起こす、与えられた傷も痛みもなんのそのとでも言わんばかりに、さも当たり前のように身体を起こした禪院は、そっと撫でるように身体に刻まれた斬撃の跡に触れた。
「ふふっ、痛いなぁ…こんなに痛いのは君を
なんてことないように愛おしいものに触れるかのように傷跡を撫でる禪院、そこから飛び出したその言葉に虎杖の思考は一瞬停止した。
「産ん…だ…?」
混乱する胸中をなんとか整理しようと言葉を吐き出し現実を認識する、しかしそれでも虎杖の混乱は収まらずただただ呆然と眼前の敵を見据えることしか出来ない。
そんな虎杖の姿に禪院はきょとんとしたような表情をしたかと思うと、クスリと笑いながらあぁ、済まないとだけ呟いて、徐ろに自身の額へと指を当てて…何かを引き抜いた。
「そういう術式なのさ、脳を移植さえすれば私は幾らでも他人の肉体を取っ替え引っ替え出来る」
言いながら禪院は自身の頭頂部をパカリと取り外した、たらりと垂れた何かの液体と共にそこにある白い脳髄が顕になる。
白い、白い脳髄、通常の人間であればまず考えられない色をしたその物体には何故だか口と歯のようなものまで付いていた。
たらりと垂れた液体が禪院の顔を伝う、頬から口へと落ちていくそれらを気にもせず、禪院は何でもないように口を開いた。
「少しばかり興味のあることがあってね、死んだ君のお父さんの奥さんの身体…それを使って君を産んでみたんだ、まぁつまるところ私は───」
───君の実の親ってことになるのかな?
なんてことないように、さも大したことではないと言うように、いとも簡単に投下されたその爆弾にも近しいその言葉に、虎杖の思考は再び停止し───
「…は?」
瞬間、悍ましい程に深い呪力が虎杖の内から発せられる。
深く深く深く、何処までも濃いドス黒い程の青が禪院の視界に映り込み、更にその奥には凡そ人とは思えぬ程に感情が抜け切った虎杖の姿があった。
最早その瞳に光は無く、あるのはただひたすらの殺意のみ、禪院に向けていた視線の中に確かにあった人間に対してのソレが今この瞬間、虎杖の中から完全に消えた。
「…爺ちゃんがさ、死ぬ前に言ってたんだよ…
───お前がそうか。
一切の感情が消え失せたような声色で、凍えるような冷たい口調で独り言のように呟いた虎杖の肉体に、更により深く入れ墨が蠢くように侵食していく。
肉体の内側から聞こえてくるゲラゲラとした愉悦の声に、内心何が面白いやらと冷たく吐き捨て、虎杖は眼前のゴミクズ目掛けて一歩踏み込もうと足を踏み出し───
───『穿血』
それよりも尚速く、赤色の弾丸が禪院へと撃ち放たれた。
音速へと至る程の速度で以て放たれたソレ、あまりに唐突且つ不意打ち気味に放たれたソレに禪院は然程動揺することもなく、首を少し傾げるだけで躱した。
「身体を転々とする術式だと…そう言ったな…」
呟かれたその言葉には、憤怒が込められていた。
声の出処、赤い弾丸の発射先で立っているのは一人の男。
黒と白の法衣に独特な髪型、合わされた手は何かを抑え込むようにぷるぷると震え、それと同時に男の…脹相の肉体から大量の血液が溢れ出す。
「何故…気がつけなかった」
呟く、自身の浅慮を恥じるように、自身の間抜けを悔いるように、自身の恥を吐き捨てるように。
「何故…忘れていた」
呟く、今の今までそれを忘れていた自分に対しての怒りを、その事実を言葉にされるまで気が付かなった己への憤りを。
「何故だ…何故俺はっ…!!」
───母の仇等に、手を貸していたッ…!!!
激情、怒りと憎しみとこれまた怒り、湧き出る感情のままに言葉を吐き出した主へと呼応するように、湧き出た血液が小さな球体へとその姿を変え、それをパシンと脹相は手で挟み込み───。
「殺してやるぞ───」
───
湧き上がり、燃え上がる激情のままに、その名を吐き出した。
今ここに、呪い呪われた親子が邂逅した。
虎杖くん
多分もうメロンパンのことをゴキブリか何かを見るような目で見てる。
虎杖くんのおじいちゃん
廻が出現したことによるバタフライ・エフェクト的なアレでキッチリ情報を残してから死んだ人、なお虎杖くんここに至るまでに忘れていたものとする。
一級術師組
現在、裏梅を相手に激戦中、要は直毘人と東堂。