そろそろ死滅を始めますかねぇ…と言いながらも始めない作者である。
斬撃、斬撃、斬撃…銀光が暗闇を駆け、叢がる羽虫を一掃する。
悍ましい悲鳴に悍ましい断末魔、臓物を撒き散らしてその場に息絶えた呪霊の姿に刀を一振して納刀、チンッと小気味の良い音と共に刀が鞘の中へと納まる。
周囲の敵影を確認し、その姿が見えないと言う事実を認識する。
その事実に男は…日下部はコキリと肩首を鳴らしながら、懐から飴玉を取り出して口の中へと放り投げた。
口の中に広がる仄かな甘み、薄酸っぱい甘味の味が口内へと広がりそれが日下部の疲労と心労を癒やすかのように身体の内へと響いてくる。
ふぃーと息を吐く、ただ意味も無くただ己の内に溜まっているであろう疲労を吐き出すかのように息を吐き、何気無く納刀したばかりの刀へと手を掛ける。
湧いて出てくる呪霊、呪霊、呪霊…さながら巣の中にいるアリか何かのように湧き出た呪霊の群れを、日下部は何処かうんざりしたような目付きで見つめ…徐ろに地を蹴った。
───シン・陰流『簡易領域』
地を蹴るのとほぼ同時に日下部は簡易領域を展開、領域内に侵入したモノを
瞬間、抜刀…領域内に入った端から呪霊へと斬撃を浴びせ掛け、一体一体手早く確実に祓って行く。
呪霊の格は一級が三体に準一級が五から七体、それに加えて有象無象が何十匹…しかしそんなことは知ったことかと日下部は抜刀の勢いを緩めない。
手始めと言わんばかりに領域内に入った一級一体を抜刀による連続斬撃により膾切りとし、更にその数瞬後に入った二体目の一級とついでに近くにいた三匹目の一級の首を二匹仲良く纏めて跳ね飛ばす。
空中へと躍り出る二匹の首、黒く塵となって還ろうとしている二体の顔面、それが消えるよりも尚速く、日下部は領域内に入った全ての存在へと斬りかかる。
全自動によって行われる迎撃、入れば最後の死地へと愚鈍に足を踏み入れた呪霊の首が次から次へと跳ね跳ぶか膾切りとなって塵も残さず消えていく。
黒く淀んだ塵が宙を漂う、風に揺られて不規則に揺らめくソレを横目に日下部は面倒くさ気に大きくため息を吐き…唐突に刀を振るう手を止めた。
鞘に納まったままの刀から手を離し、ダルそうに肩をゴキリゴキリと音を鳴らしながら回し、如何にも自分の仕事は終わったと言わんばかりに飴玉を口の中へと放り込む。
呪霊は未だ残っている、数匹どころの話ではなく巣から湧き出たアリンコのように未だ際限無く湧き出し続けているそれを前に、日下部は増殖するタイプの呪霊なのだろうなと適当に当たりを付けた。
姿形は違う、一体一体明確に異なる、増殖と言うのは随分とバラけた見た目をしているのだが…如何せん感じる呪力が同じであればまるで意味が無い。
先の一級三体は準一級共とも違う、後ろか或いは集団の中…はたまた或いは自分の見えない何処かにでもいるのか…何方にせよ面倒であることには変わりない…ならばどうするか。
突っ込んできた増殖したであろう呪霊、大口を開けて飛びかかってきたそれを前に日下部は徐ろに呪霊へと手を伸ばし、その首根っこを思い切り引っ掴む。
刀による斬撃でも無ければ打撃でもない、ただ徐ろに首根っこ引っ掴まれただけのそれに呪霊はジタバタジタバタと抵抗するように小さな手足をバタバタと振り回し、それを無視して日下部はコツコツと目的の場所へと歩を進める。
向かう先は己の同行者の居所、ガキンガキンと何かを打つかのような音が耳へと届き、そこから更に呪力の弾けるような感覚を日下部は感知した。
「───釘崎!」
良く通る大きな声、未だ四苦八苦と戦っている同行者…釘崎野薔薇へと日下部は遠慮もクソも無しに呼びかける。
はいっ!? という困惑と苛立ちが混じったかのような声色と共に返事が返ってくる、その手に持つ金槌を上段から全力で振り下ろし、正面に居る呪霊の頭を粉砕した釘崎へと暇等与えぬと言わんばかりに呪霊が襲いかかる。
そんな呪霊に向けて、日下部は唐突に手に持っていた呪霊をフルスイングで投げつけた。
今までに溜まったストレス…主に五条や渋谷での連戦連闘、特級同士の戦闘区域に長時間留まざるを得なかったという嫌にも程がある現実…それらで溜まり込んだストレスを発散するかのように日下部は全力で呪霊を投げつけた。
ジタバタと手足を振り回していた呪霊、それが徐ろに感じた浮遊感と速度、風が自身の頬に当たりそれが次第に加速していく現状を前に何かを出来るという訳もない。
それ故に、呪霊は悲鳴と意味の分からない文字列を吐き出しながら、釘崎へと襲いかかっていたカマキリのような呪霊の顔面へと直撃した、重苦しい音を立てて。
あまりに唐突にやってきた衝撃、鎌を振りかざそうとしていた時に突然やってきた想定外の乱入者にカマキリの思考は一瞬停止した…そして、それを逃す釘崎野薔薇ではない。
翻るように前へと踏み込み、叩きつけるように藁人形を呪霊へと充てがう。
何がなんだか分からない、何の意図を持ってこの呪霊を投げ飛ばしてきたかなんて分からない…けど、なんだかんだと言っても自身の名を呼んだ時点で何を望んでいるのかは分かっている。
懐から取り出すの何時も使う物の二倍程大きく長い大釘、鋼鉄のソレに貼り付けられた札がただの釘であるはずのソレに禍々しさを刻み込んでいた。
突き刺せば絶対に痛い…そう思わせられる程の大きな釘を釘崎野薔薇は何の躊躇も無く、その矛先を呪霊へと向け───
「───芻霊呪法」
───『共鳴り』ッッ!!!
何の躊躇いも思考も無く、その釘を打ち込んだ。
カァンッと鳴り響く硬質な音、釘と金槌が奏でる鉄の不協和音が周囲へと鳴り響く。
フルスイング、釘を打つという行為に於いてはあまりにもやってはいけないこと過ぎるその行動に違和感を覚える者は誰一人としておらず、そこへと至るように呪力が奔る。
結果としてどうなるか…爆散する。
日下部の背後からやってきていた呪霊達、釘崎の真正面から迫っていた呪霊達、日下部が斬り殺し釘崎が殴り殺した呪霊を除いた全ての呪霊が釘崎の共鳴りにより、全てが纏めて爆散する。
都市内に響き渡る悲鳴、日下部達の遥か前方…呪霊達で言う所の後方にて大きく悲痛な悲鳴が響き渡り…そこへと一筋の旋風が駆け抜ける。
走り、奔り、疾走る…疾風の如く建物と建物の間を潜り抜け、真っ直ぐと悲鳴の出どころへと疾走するその存在…それを探知したのかそれとも単なる勘なのか、隠れていた呪霊がもたもたと逃げ出そうとするのが視界に映る。
逃がすか…そう言わんばかりに足に力を込め、地面を踏み砕かんばかりに加速する。
背後から迫る脅威、それが自分を殺しにやってくる事実に呪霊は必死の形相でその場から逃げ出そうと足を動かし…それをするよりも尚速く、赤色の弾丸が呪霊の足を刈り取る。
舌打ちを一つ、頭を狙ったソレが逸れて足へと当たったその事実に男は舌打ちを打ち、流石に気配だけで捉えるにはまだ無理があったかと自身を戒め…笑みを浮かべながら呟いた。
「足は潰した…後は任せたぞ、悠仁」
呟かれた言葉、絶対の信頼を持って投げかけられたその言葉に応えるように男は…虎杖悠仁はそこへ行く。
足を失って苦しむ呪霊…限りなく人に近しい形をした白色の異形、足から迸る激痛に汚い悲鳴を上げるそれを前に、虎杖は拳を握り込む。
やってきた襲撃者、自身の痛みの原因とも言える存在…その存在を前にした白色の異形は痛みも何もかもを度外視し、怒りの咆哮を上げて虎杖へと鉤爪を振るう。
狙いは頭、撃ち抜けば即座に死が確定する急所目掛けて突きつけられる凶器、常人ならばまず反応出来ない程の速度で繰り出されたそれを、虎杖は首を傾げるだけで躱し…その隙間に撃ち込むように拳を突き立てた。
───黒閃
黒い火花が散る、埒外の威力とタイミングを以って放たれたその一撃に苦悶の声すら上げることなく、呪霊は内側から爆ぜるようにしてその存在を消失させた。
息を一つ、ふぃーと吐き出された息が寒空の元を静かに舞う、見上げた空は何処までも広がる晴天だった。
一級術師『虎杖悠仁』…彼は今、放たれた呪霊をひたすらに狩る日々を、生き別れに近しい兄と共に送っていた。
ブルアカ書こうと思ってたら全部呪術になるからこっちに丸ごとコピった話…なんで作者が書くと全部ブルア廻戦になるんや。