宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 なんとなくやりたいことも固まらずに書いた結果がこれである、上手く書けているか不安…鹿紫雲は存在感の割に出番が少なすぎるっピ。


影と雷 ②

 

 

 綺麗だ…少なくとも、鹿紫雲はそれを見てそう思った。

 

 最大にまで跳ね上げられた呪力出力、禪院廻の肉体から溢れ出したその呪力を見て、鹿紫雲が感じたのは感動だった。

 

 単純に美しいのだ…一切のムラが無い呪力操作、どんな術師にでも必ず存在するムラが禪院廻のそれには欠片も無い…いや、きっとあるにはあるのだろうが、それは精々がミリ単位での話だ。

 

 ここまで出来るものなのか、人間とはここまで呪力操作を洗練させることが出来るのか、正しく神憑りとしか言いようが無い程に研ぎ抜かれたその呪力に鹿紫雲は不思議と涙を流していた。

 

 嗚呼、なんて…なんて───

 

 

 

───美しいんだ

 

 

 術師の目指す完成形、その一つ…限りなく…否、正しく己の理想そのままを体現してみせているその存在に、鹿紫雲の箍が完全に外れる。

 

 突撃する、棍を振りかぶって眼前の最強の片割れへと万力の力を込めて振り下ろす。

 

 バチぃと鳴り響く雷の音、最大呪力出力で繰り出されたその一撃に廻は拳を握り込み…埒外の速度にて、鹿紫雲の顔面を殴り飛ばした。

 

 振り下ろされた棍、それが当たるか当たらないかの距離に差し掛かった時点で目にも止まらぬ速さにて懐へと潜り込み、思い切り地面を踏み締めた上で放たれる最大呪力出力による拳…それが、吸い込まれるように鹿紫雲の顔面を打ち抜いた。

 

 速い…否、最早速いという言葉で一括りにしてはいけない程の速度、あまりにも埒外の速さにて繰り出されたその一撃が吹き飛ばされている鹿紫雲の脳をこれでもかと揺らす。

 

 ぶらつく視界に麻痺した全身、しかしそんなもの知ったことかと無理矢理身体を動かそうと意識を巡らせ…その直後に、鹿紫雲の肉体は地面へと叩きつけられた。

 

 腹部から奔る激痛、内臓の一部が潰れたのではないかと錯覚する程のソレ、吐き出された血液が宙へと弧を描くように飛び散る。

 

 視界に映るのは拳を振り下ろした体勢の敵手の姿、突き刺すように己へと拳を放ったその男の瞳が、金色の満月のような瞳が自身のことを捉えている。

 

 圧倒的、動きを捉えるどころではない程の俊敏さに防ぐどころの話ではない程の一撃一撃の威力、先程まで効いていた筈の自身の呪力特性を殆ど無視出来ているその現状に鹿紫雲は───

 

 

 

───術式開放『幻獣琥珀』

 

 

 

 自身の全てを解き放つことに決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気配が変わる、追撃を放とうとした廻が間近で感じたのは気配の変異、それと同時に行われる肉体の変質。

 

 幻獣琥珀…鹿紫雲の特性によって生まれた電荷、それによって引き起こされるありとあらゆる現象を実現する為だけにその肉体を作り替える一度限りの術式。

 

 脳内の電気信号の活性化による敏捷性の向上、物質の固有振動数に最適化・同調する音波、照射されたものを蒸発させる電磁波…これらを実現する為に作り変えられた鹿紫雲の肉体は既に人の域を超えている。

 

 故に術式終了後、鹿紫雲の肉体は崩壊する。

 

 

 すぅぅぅっと息を吸い込む音、敵手の目の前で大きく息を吸い込んだ鹿紫雲は───

 

 

「───『あ』!!!!」

 

 

 その吸い込んだ空気を、音波として廻へとぶつけた。

 

 弾ける地面、唐突に引き起こされた超音波による破壊、それに対して廻は特段動揺することもなく煙に覆われた視界を見据え…横合いから繰り出された拳を理知的に叩き落とした。

 

 ビリっと痺れる手、先程まではほんの僅かにでも動きの鈍ったそれに、恰も慣れたと言わんばかりに鈍りの見えない拳を鹿紫雲へと叩き付ける。

 

 腹部へと突き刺さる重く鋭い一撃、身体の内から湧き上がる血反吐を吐き出すまでもなく飲み干し、鹿紫雲は廻へと変質した腕を向け…唐突に斬り飛ばされた。

 

 振り抜かれた刃、何処から取り出したのかと疑問に思いたくなる程に唐突に取り出されていたその刀を前に、鹿紫雲は大きく後方へと下がる。

 

 腕を幻獣琥珀の変質によって作り直し、さてどうすると眼前の敵手へと視線を向け…その時点で、禪院廻は既に鹿紫雲に目の前にいた。

 

 目を離していたわけではない、視線を向けると言っても改めて観察するというよくある話だ、鹿紫雲は片時も禪院廻から視線を外さなかった。

 

 それでも尚追いつけぬ程の速度、幻獣琥珀によって能力が底上げされていても尚も認識することが叶わない程に洗練された速さ、正しく埒外のソレに鹿紫雲の認識が追いつかない。

 

 振るわれる銀光、鋭く疾く振るわれたそれを鹿紫雲は反射的に棍で受け止める。

 

 鉄と鉄のぶつかる音、ギャリギャリと火花を散らして鍔迫り合う刀と棍、超至近距離にて向かい合った廻と鹿紫雲の視線がカチ合う。

 

 

 満月…満月が己を見ていると鹿紫雲は錯覚した。

 

 暗く、昏く、儚く、(くら)い…暗い宵闇の中に存在するような美しい満月、誰も彼もを狂気の底へと落とし込みそうな程に美しい真ん丸な満月が己を見据えている…少なくとも、鹿紫雲はそう感じた。

 

 ギャリギャリと鍔迫り合う刀と棍、互いに押し合い今か今かと相手の隙を狙うこの刹那、唐突且つ突発的に……禪院廻の口が、吊り上がった。

 

 怖気と寒気、身体の芯から隅まで凍えそうな程に冷たい気配に鹿紫雲の意識は一瞬だけそれに集中し…次の瞬間、棍が上空へと跳ね上げられ、それと同時に鹿紫雲の身体に蹴りが突き刺さった。

 

 前蹴り、ヤクザキックとも言われる程に乱雑なその一撃に鹿紫雲の肉体は後方へと大きく蹴り飛ばされ、そこへ更におまけと言わんばかりに刀が投擲される。

 

 蹴り飛ばされ、勢いを殺した直後にやってきた超高速のソレ、呪力によって強化されたその投擲を鹿紫雲は間一髪、紙一重と言わんばかりの回避にて躱し、そこから思い切り突撃しようと足を踏み締め……()()を見た。

 

 

 

 両手を前方へと突き出し拳を握るその姿、無表情だった先程までとはまるで別人かと疑うほどに吊り上がったその頬、そして…どうしようもない程の死を感じさせる絶対的なナニカ。

 

 不味い…そう悟ったその時点で、既に全ては終わっている。

 

 

 

 

「───布瑠部」

 

 

 

───由良由良

 

 

 

 

 

 

 次の瞬間、鹿紫雲の視界は暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、起きた?」

 

 

 気がつけば、寝転がっていた。

 

 視界に眩しく映り込む日差し、身体を優しく包む柔らかい草っぱに花の匂い、太陽が暖かく自身を照らす中で鹿紫雲は瞬時に身体を起こし、飛び跳ねるようにその声の主から距離を取り…唖然とした。

 

 一面に広がる草原、緑が瑞々しく生い茂る中で無数の花々が咲き誇るあまりにも穏やかなその光景、先程まで存在していたビル群とはまるで違うその光景に鹿紫雲は唖然とし、直ぐ様その正体に気がついた。

 

「領域か」

 

「当たり…流石ですね」

 

 

 パチパチと叩かれる拍手、音の先でさも当然のように草原へと座り込んでいた男…廻はなんてことないように笑みを浮かべてそこにいた。

 

 つい先程まで戦っていた存在がそこにいる…その事実に鹿紫雲は瞬時に臨戦態勢に入ろうと構え…止めた。

 

 

「…負けたのか、俺は」

 

 

 座り込む、目の前にいる敵手であった存在と同じように柔らかい草原に腰を落ち着け、当たり前の事実を確認する…己は負けたのかと。

 

「えぇ、ウチの子に完膚なきまでに」

 

 返ってきたのは肯定の言葉、特に自慢するでも勝利を提示する訳でもないそれに対してそうかと静かに応えながら鹿紫雲は草原へと寝転がり、自身の当たり前を問いかける。

 

 

「俺は何故生きている?」

 

 

 鹿紫雲にとっての当たり前、術式を使えば己が死ぬことを分かっているからこその問い、勝っても負けても次なんて無いことが分かりきっているからこそ吐き出されたその言葉に、廻はなんてことないように口を開いた。

 

 

「少し説明が面倒なんですけど…強いて言うならこの領域に入ったからですかね」

 

 説明になってねぇ…そう口を開こうとした鹿紫雲の言葉を遮るようにヨイショと老人のような声を上げながら起き上がり、何時からそこに居たのか、のそのそと足音を立ててやってきた大きな鹿の頭を優しげな手付きで撫で始めた。

 

 巨大な四つ目の鹿、廻の倍近い体躯を持つその鹿は撫でられたことに反応してなのか、何処か甘えるような鳴き声を上げながらスリスリとその頭を主へと擦り付け、その顔をペロペロと舐めた。

 

 ベロベロと唾液がたっぷりと付いた舌で顔を舐め回され、ベトベトとなっていく自身の顔を気にもせず、擽ったいなぁと笑みを浮かべて鹿を撫でている…そんな廻へと、鹿紫雲は自身の疑問を口に出した。

 

 

「何故、俺を生かした」

 

「だって満足してないでしょ?」

 

 即答だった…何故生かしたのかという鹿紫雲の疑問に数秒と掛からず返ってきたその答えに鹿紫雲は目を見開いた…そんな鹿紫雲の様子など素知らぬと言わんばかりに廻は言葉を続ける。

 

 

「俺は貴方の問いに応えられなかった、貴方の求めた答えをあげられなかった…だったら納得なんてするわけないし出来るわけもない、そうなったら当然満足だって出来ない」

 

 

 それは俺としてはなんとなく嫌だ…そう言葉を切って、撫でていた鹿から離れて鹿紫雲の下へと歩み寄り、廻は何気ないようにその手を差し出して…告げた。

 

 

「どうせ死ぬなら満足してから…そっちの方が良いでしょ?」

 

 そう言って差し出されたその手、なんてことないように屈託の無い笑顔と共に差し出されたその手を、鹿紫雲はジッと見つめた。

 

 満足…そう、確かに満足はしていない…闘いこそは楽しめたがそれでも求めた答えを得られていないという不満足な感情が鹿紫雲の中には確かにある。

 

 差し出された手…術師にあるまじき純粋な感情、純粋な善意によって差し出されているのであろうその手を、鹿紫雲は───

 

 

「…言ったからには満足させろよ?」

 

「そりゃ当然、言い出しっぺは俺な訳ですから」

 

 

 ガシリと、その手を掴み取った。

 

 

 






円鹿の領域について

 入った存在全てを無差別に癒す廻輪奇劇の舞台の一つ、円鹿が主役の舞台。

 領域内に入った全ての存在の状態(呪力の残量を含めた)を約一時間前に巻き戻すという効果がある…その為、鹿紫雲の肉体は幻獣琥珀を使用する以前の状態へと巻き戻された状態となっている。

 名前は(作者が)まだ決めていない。


鹿紫雲さん

 この後、廻に頼まれてポイントを使った…因みに、廻の知る中で鹿紫雲の疑問に答えられそうな存在を二人〜三人くらい教えてもらっていたりする。

 それはそれとして、廻とは組手する、だって楽しいから。

 因みに、生かした理由は作者的にまだ活躍させたかったから、具体的に言うと虎杖とかとぶつけたかったから。


主人公

 いい加減に出たがっていたので出した、瞬殺だった、無茶苦茶急いで領域展開した。

 鹿紫雲に関しては割と切実に答えを求めていたのと、色々と悩んでいた頃の自分に似ていたということもあって放っておけずに助けた、ただし隙あらば闘るぞと言って襲いかかってくるのはやめてほしい。

 

 
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