雪姫さんについて
当初は単なる敵役で書いてるつもりだったのに何時の間にかツンデレと化してた人、鬼の方と共々長く登場させようとしたら鬼の方がスピード退場したので、キャラ付けしようとしたらこうなった…なんで貴女ヒロインとして書いてるつもりじゃないのにヒロインしとるんです?
因みに、モチーフキャラは砕蜂とルキア…CVは何だかんだと坂本さん…なんでこうなったんやろなぁ(遠い目)
「ねぇ、アンタはなんで受肉したの?」
それは、あまりに唐突に吹っ掛けられた問いだった。
凍りついた空間…周囲一体を氷壁に覆われている中で唐突に問いかけられたその問いに、雪姫は何処か胡乱げな視線を烏鷺へと向けた。
「聞いてどうする?」
「別に何も?」
軽い言葉の応酬、氷に覆われた空間に相応しい何処か冷めたようなやり取り、寒空の下で薄く息を吐き、白い吐息が宙を泳ぐ光景を何気無く見つめながら、烏鷺はゆらりと宙を泳いだ。
「私はね、何者かになりたいの…何かに成って、人生の全部を自分に為に自由に使いたいの」
これまた何気無く吐き出されたのは正真正銘の本音、心の底から抱き、生前はついぞ叶うことの無かったその願いを烏鷺は白い吐息と共に吐き出した。
トンッと電灯の上に足を立てる、踊るように泳ぐようにゆるりとその場に舞い降りた烏鷺は薄く瞳を開き、両手を広げて抱きしめるように、太陽が眩しく光る空を見上げる…まるでこれが欲しかったのだと言わんばかりに。
「だから私、羂索を殺すわ…アイツが生きてる限り、私は自由になれそうにないし…それで───」
───アンタはどうなの?
ゆったりと電灯の上へと座り込みながら問いかけられたその言葉、明確な答えを聞くまで何度でも問い続けると言わんばかりに光る烏鷺の瞳に、雪姫は深くため息を吐いた。
何がお前にそこまでさせるのか、何がどうお前の何かに引っ掛かったのか、そんな思考を脳内で繰り返し、何処か面倒臭そうな表情を隠しもせずに雪姫は言葉を吐き出した。
「別に…ただ、気になっただけだ…あいつの護った先にある未来というものが、どうしようもなく」
斬り裂かれたアイツの姿、死んで逝ったアイツの姿、最後に笑みを溢したアイツの姿…瞼の裏に刻み込まれたその光景、今でも時折夢に見るその情景…気になったのはなんとなくだった。
そうまでして守った先にある光景とはどんなものなのか、死んでまで守った未来で待っている光景とはどんなものなのか…それがどういうモノなのかが、どうしようもなく気になっただけだった。
それだけ、たったそれだけの理由、たったそれだけの為だけに死後の安らぎを雪姫は投げ捨てた…何故なら、知りたかったから。
禪院廻という人間が自身の命を賭してでも守ったその未来にそれだけの価値があるのか、禪院廻という人間が生命を捧げるに足る未来がそこにあるのかを、どうしても知りたかったから。
そんな雪姫の内心をなんとなくで分かっているのだろう、何処か呆れたような表情をした烏鷺は、何処か頭の悪い人間を見るかのような目で雪姫を見据え、口を開く。
「それで、今どんな気分なの? アイツが守ったらしいこの時代を見てどう思った?」
アンタは満足できたの?…そんな何処か突き刺してくるようなその一言に、雪姫は分からないと頭を振った。
分からない、答えなんて未だに出てこない、本当に廻が生命を懸ける程の価値があったのかと自問自答を繰り返す程度には、答えのコの字すら出てきていないのが現状だった…それでも───
「───壊させるわけにもいかないだろう」
だって、アイツの守った未来なんだから…そう口に出さずとも伝わってくるその答えに、烏鷺は雪姫へと向けていたその視線を益々馬鹿を見るようなソレへと変えていく…最早、ため息を吐くことすら馬鹿馬鹿しいと言わんばかりの目を、雪姫へと向けている。
「…アンタ、いい加減にしないと本当に爆発させるわよ?」
「何故だ…?」
烏鷺の何処か投げやり気味なその言葉に如何にも私、何もしてませんよ? とでも言いたげなキョトンとした表情を浮かべた雪姫に、烏鷺はスタスタと近づき、唐突にその頬を引っ叩いた。
パシィンッと小気味の良い音が極寒の空間へと響き渡る、勢い良く美しい軌道を描きながら振り抜かれた烏鷺の張り手は、それはもう見事なまでの放物線を描きながら雪姫の頬へと直撃した。
頬から響いてくる痛み、小気味の良い音と共にやってきたソレに対して雪姫は何をされたのか分からないとでも言いたげな様子で烏鷺へと視線を向け、そんな雪姫へと烏鷺は畳み掛けるように言葉を捲し立てた。
「そんなにウジウジするくらいならいっそ会いに行けば良いのよ、居るんでしょ?」
ウジウジするくらいなら会いに行け、会いに行って思いの丈をぶち撒けろ、それをしないならいっそここで爆発してしまえ…そう暗に言われた雪姫は、だが…と反論を口にする。
「縛りがあったとは言え、私は敵としてアイツの前に立ったんだ…今更アイツに会いに行っても───」
「やかましい、良いから行け」
一刀両断とはきっとこのような事を言うのだろう…そう思わせる程に切り捨て振り、取り付く島が欠片も無い、反論なぞ知ったことか良いから行けと言わんばかりに烏鷺の手刀が雪姫の脳天へと突き刺さる。
ゴスゥッと重い音が鳴り響く、恐らく術式込みで放たれたであろうその一撃は以前にそれをやられた腹いせなのか、纒われていた呪力防御を平然と貫通して雪姫へとダメージを与える。
頭から響いてくる痛み、術式込みで殴られた痛みからか頭を抑えて蹲り、うぅ〜っと何処か幼子のような声を出しながら涙を溜めた瞳で烏鷺を睨みつけ…そんな雪姫の頭に再び手刀が落とされた。
泣きっ面に蜂…慈悲? 何それ美味しいの? とでも言わんばかりにやってきた二度目の一撃が雪姫の頭へと直撃する、ズゴンッと先の一撃よりも尚も重い音が鳴り響いた。
「な…何をするんだぁ…べ、別におかしなことなんて何も言ってないじゃないかぁ…!!」
頭を抑えて、隠しきれていない涙の溜まった瞳をこれでもかと釣り上げて、しかし何処か弱々しく振り絞るように口を開いた雪姫に対し、烏鷺は───
「───うっさいのよ、胸焼けすんのよアンタ見てると」
そう一言、放り投げるように言葉を吐き出しながら、デコピンを雪姫へと打ち放った。
───良いんじゃないですか、別にそれでも。
それは、肯定の言葉だった。
何時かアイツへと漏らした言葉、思わずと言ったように漏れ出たその言葉を、アイツは容易く肯定した。
───何者かに成る必要なんて無い、誰かの為に生きろ…戯言ですよ、そんなの。
そう言ったアイツの瞳を、私は何処か薄暗く感じた。
闇夜の中で輝きを放つ月のような瞳、晴天の中で輝きを放つ太陽のような瞳…それら二つの印象を持つその瞳が、その時だけはどうにも別物に見えたような気がした。
───人は自分の為にしか生きられない…俺も、
なんてことないように、アイツはそんな事を言ってのけた…私の知る限り、誰よりも他人の為に生きていたアイツが、そう言ってのけたのだ。
何故と疑問に思った、他ならぬお前がそれを言うということがどうにも納得出来なかった、だってお前が誰かの為に生きている姿を私達はこれでもかと見てきたから。
───俺が?…買い被り過ぎですよ、俺は自分の為にしか戦ってないし、自分の為にしか生きちゃいない。
───俺が誰かを守るのは俺自身がその醜い光景を見たくないから、俺が戦うのは弟に格好良い所を見せたいから…そんな俗な物なんですよ、俺が戦う理由なんて。
嘘だと思った、それは違うと思った…例えそれが本音なのだとしても、きっとその根底にあるものはそれではないのだろうと…なんとなくそう感じた。
じゃあ何で命を懸ける、何故に傷だらけになってまで誰かを救う、何故にお前は宿儺に挑んだ。
何時か死にたくないと言われたことがあった、うっかりと言わんばかりにその言葉を漏らしたことがあった…それでもお前は、あの呪いの王を相手にしても逃げなかった。
───良いじゃないですか…
───何時か、そうなると良いですね。
アイツは笑ってそう言った…私の望みを応援すると、私の願いをさも当然のように肯定した…それがどれだけ困難なことか知った上で、アイツは本気で私のことを願いを受け入れた。
…その日からだ、私がソレを確かめたくなったのは。
私の願いは変わらない、私の望みは変わらない。
私は何者かになる、私は『私』を手に入れる、その果てに私は自分の全てを己の人生の為だけに使い切る…それは、何一つとして変わらない私の根底の望み…そこに、私は一つのことを付け足した。
───確かめてやる。
アイツは言った、自分は最初から自分の為にしか生きていないと、初めから自分の為だけに人生を生きてきたのだと…ならば、それが真実そうであるのかを私が確かめてやる。
お前が本当に自分の為に生きてきたのか、心の底から自分の為に生きてきたのか、それを見極めて暴いて日の下に晒してやる。
そしてもしも…もしもアイツが少しでも他人の為に動いていると私が判断したその時は…その時は───
───私を『呪った』責任を、取らせてやる。
主人公
大切な人達が死ぬのを自分が見たくないからと戦うことを自分の為に戦うことと同義としている人…なお、現代的にも平安的にもその理論は誰かの為に戦うとほぼ同じである、少なくとも作者はそう思ってる。
雪姫さん
戦う時とそうでない時のギャップが激しいタイプの人、戦いの痛みには耐えられるが理不尽な折檻には割と涙目で講義してくる人。
元々は敵キャラのままで格好良く散ってもらう予定だった…けど何か、本当になんとなくで作者が思う可愛いキャラの一部を混ぜ込んで書いてみたらなんかヒロインみたいになってた人…作者はルキアとか好きです。
烏鷺さん
意訳:私の男性観を無茶苦茶にした責任を取れ。
作者的には実は当初の予定ではこっちを腐れ縁なヒロイン的な感じで書こうとしてた人、今は知らんし決めてない。
因みに恋愛的なもんは全部裏設定的な感じであって表に出す気とかない、呪術廻戦で恋愛は無理がある定期(本音=作者の解釈)