ちょっとした強化要素が入ってます、嫌いな人は呪術廻戦の原作を見ましょう。
空気が唸り、音が裂ける…そう表現するしか無い程の一撃が、石流の脇腹へと突き刺さった。
吹き飛ぶ、まるで水切り石のように円滑に滑らかに荒々しく、まるで滝が吹き飛んだかのような爆音と水飛沫を上げながら、石流の肉体は道端の大橋へと叩きつけられる。
叩きつけられると同時に吐き出される少量の血液、脇腹からやってくる激痛の元に手をやりながらも石流は本能的に笑みを浮かべ…瞬時にその場から飛び退いた。
瞬間、そこへと突き刺さる三節棍。
突き立てるように向けられた赤色、真っ直ぐとまるで隕石か何かのようにやってきた男…伏黒甚爾の一撃が地面へと突き刺さる。
三節棍は槍ではない、武器の種別として言うのならヌンチャクと言った物に当たる打撃武器だ、断じて槍のように突き出し刺せるような武器では無いことを石流は知っている…だからこそ───
「───ハハッ」
その光景に絶句する、容易く地面の奥深くへと突き刺さっているソレを見て冷や汗を流す、直撃していたらどうなっていたかを考えて自然と唾を飲み込んだ。
単純な力技ではないことは見れば分かる、確かな技量と確かな経験に裏付けされたその一撃は筆舌に尽くし難いものであることも分かる…それを分かって尚も度肝を抜かされるそのフィジカル。
術式を使っている訳ではない、そもそも呪力自体を使っていない、故に身体能力を呪力でブーストしたと言う訳でもない…その上で、引き起こされた眼の前の光景に不思議と石流は口を開いていた。
「───ゴリラかよ」
霊長類の中でも特に力を持つ個体、森の賢者とすら呼ばれることのあるその動物の名、それを侮蔑というより称賛の意味を込めて発した石流の言葉に反応したのか、それとも単に偶然なのか、甚爾はゆらりと突き刺さった三節棍を引き抜いた。
「───誰がゴリラだ」
答えは後者、言うが否や甚爾が踏み込む。
砕ける地面、膝を折って足へと力を溜め込み、それを一息に開放する。
溜め込みから開放へのカタルシス、それを目にする間もなく石流は半ば直感的に行動を開始した。
───『グラニテブラスト』
お得意お馴染みの呪力砲、死滅回游一の出力を誇る大砲が秒と待たずに発射される。
狙いは広範囲、眼前から向かってくる男ではなく視界に映る全てを対象として放たれたグラニテブラスト、範囲も広ければ威力も洒落にならないその一撃、当然そこにはその先にいるであろう誰かに対する配慮など一欠片も存在しない。
だからこそ───
「───…あ?」
その一撃で以て、石流は伏黒甚爾の逆鱗へと触れた。
小さく呻くような矮小な声、確かな殺意と確かな憤怒を以って吐き出された一言にも満たない小さな言の葉…それが、石流の耳へと届いた…その次の瞬間、グラニテブラストの軌道がガクッと擬音が付きそうな程に折れ曲がった。
目を剥く…石流はグラニテブラストの操作を行っていない、真っ直ぐと全てを巻き込まんばかりの広範囲で撃ったのだ、操作を行う必要性が無い…なのに曲がった、不自然なまでに。
で、あるとするのならば、下手人は…そう思考を割いたその刹那、石流の視界に赤が映り込んだ。
咄嗟の判断、呪力出力を全開にまで引き上げその上で呪力を両腕のみに集中、振るわれた一撃をそれにて受け止める。
視界には映り込んだ赤…游雲による打撃が石流の両腕へと直撃し、決して鳴ってはいけないような音が石流の両腕から鳴り響く。
額から流れ落ちる脂汗と冷や汗、両腕から響いてくる度を越した衝撃と激痛、呪力で強化して尚も響いてくるその一撃によって石流の肉体は後方へと引きずられるように押し飛ばされる。
ズザザッと靴の擦れる音と共に舞い上がる土煙、思い切り足を踏みしめることで流れる肉体に踏ん張りを効かせて動きを止め、ふぃーっと石流は息を吐き出した。
腕が痺れる、先の一撃を受けたその瞬間、石流は自身の腕が吹き飛んだのではないかと錯覚した…それほどまでの一撃。
骨が砕けたような感覚、筋肉が断裂し神経までもが千切れたような感覚が同時に一気に襲いかかってくるような痛み…それら全てが錯覚であることを理解した上で、石流は無理矢理拳を握り込んだ。
ギチリと痛みが響く、殴られた箇所が罅割れるような痛みを発する…それらの感覚が心地良いとでも言うように、石流は勝ち気な笑みを浮かべみせながら、自身の頭髪を整えた。
まるで、まだまだ食い足りないとでも言うように。
そんな石流の姿に何を感じたのか、それとも端から何も感じて等いないのか…恐らく後者であろう甚爾は、オゲッと何かを吐き出した…それが収縮した呪霊である事実に石流が気付くのに、然程時間は掛からなかった。
大きく、本来の姿を取り戻していく紫色の呪霊、赤子の頭に芋虫の胴体をくっつけたかのようなその見た目からは、相も変わらずと言ったような気味の悪さが滲み出ていた。
巻き付いていく、収縮していた呪霊が本来の姿を取り戻すのと並行してその身体を甚爾の肉体へと抱きつくように巻き付き、その頭部を甚爾の肩へと乗せた。
キャッキャッと騒ぐ呪霊、甚爾の肩に頭を置いたその時点で何処か満足気な雰囲気すら醸し出していたその呪霊の姿に石流は気持ちの悪いものを見たとでも言いたげに顔を顰めた。
「飼ってんのか?」
思わずと言ったように口を開く、人間が呪霊を飼っている姿など幾らでも見慣れている、今更気持ち悪がるものでもない…しかし、それを見た瞬間に石流は言いようの無い感覚を覚えた。
それはさながら沼地に落とされたような感覚、徐々に徐々に沈んでいく身体を呆然と見つめることしか出来ないようなその感覚が石流の口を開かせていた。
そんな石流の言葉を無視するように、最初から何一つとして聞いていないかのように、甚爾は極々自然な動作で呪霊へと手を伸ばし───
───ゲロぉ
吐き出された『柄』を、掴み取った。
唾液に塗れ、気色の悪い嘔吐音と共に吐き出された刀の柄、それを何の躊躇も無く掴み取り、引き抜く。
僅かな唾液と涎、引き抜かれると同時に顕になる幅の広い刀身の姿、明らかにその体積に収まり切らないだろう長さを持ったソレが石流の視界の中に現れる。
───呪具『釈魂刀』
往々と掲げられた刀、陽光へと当てられ鈍く反射する鉄色の刀身、それを視認したその瞬間に石流は直感する…あぁ、これは駄目だ、と。
ニヤけてしまう、笑みが隠せない、吊り上がる頬と共にブルブルと手足が痙攣でも起こしたように震え出す。
恐怖がある…握り込まれた刀から感じるその気配に対する恐怖が石流の中にはある。
恐れがある…単純明快な本能による直感、眼前の男が手にした呪具は己を容易く殺害し得る代物であると本能が叫んだことによる恐れ。
これら二つ、何方も己の死と生の判断に直結しかねない程に重要なソレ、それらを加味した上で石流の思考は遠距離戦を行えと冷静に冷徹に告げてくる…しかし───
「───ハッハァッ!! 冗談じゃねぇっ!!!」
石流はそれを決して認めない、断じてそのような無粋を罷り通さない。
能力は不明、等級も不明、しかし繰り出される一撃一撃が自身を容易く殺し得るソレであることを石流は直感している…嗚呼、その事実のなんと甘美なことか。
甘い、なんと甘いのだろう、
「腹を空かしたガキか、お前は」
「あぁ、食べ盛りなもんでな」
モリモリ行こうぜ…言うが否や石流は駆け出す、当たれば最悪死にかねないと理解している癖に、そんなこと知ったことじゃないとでも言いたげな笑みを浮かべて、何の躊躇無く伏黒甚爾と言う人間の間合いへと踏み込んでいく。
振るう…まずは小手調べと言わんばかりに左手の游雲が振るわれ、そこから僅かに遅れて右手に握り締められた釈魂刀が石流の胴体へと振るわれる。
やってくる死、当たれば死ぬと確信している刃の一撃…それがやってくると分かっていた時点で石流は既にその決断を済ませていた。
無理矢理掴み取る、高速を超えて音速の域に達し掛けたその一撃を石流は指が砕け折れ曲がるのも厭わずに掴み取り、更にそれに僅かに遅れてやってきていた釈魂刀へと、石流は自ら自身の腕を叩きつけた。
刃が完全に加速し切る前にぶつけられた腕、加速しきっていないが故に威力も不完全であるはずのその一撃はしかし、まるで豆腐でも斬るかのように何の抵抗もなくスルリと石流の中へと侵入していく。
釈魂刀は対象の硬度を無視出来る…無機物の魂すらも観測する目を必要とするが、その代わりに釈魂刀はありとあらゆる物の硬度を無視して魂を斬り裂く能力を持つ。
故にこそ、理論上はどれだけ呪力で強化していようが釈魂刀の前では無意味に過ぎず、生半可に防ごうものなら強化された物体ごと対象を斬り裂く絶対の切断能力を有する。
当然、その事実を石流は知らない、対象の硬度を無視するというある意味では自身の天敵とも言えるその能力を知らない石流は、いとも容易くその一撃の侵入を許した。
このまま刃が突き進めば、石流は叩きつけた腕ごと自身の胴体と下半身が泣き別れとなるであろう現状…まるでそれを想定していたかのように、石流はそれを成した。
刃が進む、豆腐を斬るように、糸鋸が薄い木材を切断するかのように、スルリスルリと硬度を無視して突き進む釈魂刀の刃…それが、石流の腕を突き抜ける寸前、石流の腕が爆ぜた。
内側から爆ぜ散る腕、骨と筋肉がバラバラとなって甚爾の眼前を舞うその光景を前に甚爾の思考は驚愕に染まり、そこへと射し込むように石流の蹴りが右腹へと直撃する。
ズドンッとまるで大砲を撃ち放ったかのような音、重く濃厚なその一撃が腹を通して甚爾へと痛みを送り、それを現実として伝えるように甚爾の肉体が後方へと引きずられるように下がる。
「───チッ」
舌打ちを一つ、ダメージはあるが大した問題とはならなかったそんな一撃に面倒なと言いたげな表情を浮かべてみせた甚爾は瞬時にその視線を前方へと向け…思わずと言ったよう再びに大きく舌打ちをした。
その視界の先に存在したのは───
「───あぁ、もっとだ!! もっとモリモリムシャムシャと行こうぜぇぇッッ!!!」
爆ぜ散り、砕け折り曲げられた両腕を再生させる、石流の姿だった。
石流
バタフライエフェクトによる変化点:反転術式を使用してくる。
パパ黒
グラニテブラストの射線の先がさっきまで嫁さんの居た場所だった、キレた。