宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 今回は少しアッサリめの終わり方…なのかな?


暴君 ③

 

 

 

 自身の十八番が掻き消された…その事実に石流は驚愕こそすれ、呆然とすれ、それでもその思考を止めることは無かった。

 

 グラニテブラストを掻き消された、呪力反応そのものが掻き消えるような感覚がした、初見の呪具を振るった瞬間にそれは起きた…これら三つの事実から石流はソレを選び取る。

 

 

 それ即ち、接近戦。

 

 

 最早遠距離からのグラニテブラストでは致命傷に成り得ない、甚爾に当たる前にあの刀を振るわれてしまえばそれだけで渾身の一撃は霧散する、不意打ちをしようにも当の敵手自身のフィジカル自体が極めて高く、それをするにもまた困難。

 

 ならばいっそのこと真正面から接近戦を仕掛ける、一撃でも貰えば即死すらあり得るその領域へと、死中に活を求める他無い…石流は、そう判断した。

 

 飛び込む、窓の縁へと足を掛ける男の下へと石流は呪力出力を跳ね上げて飛び込み、それに応えるように甚爾もまた石流の下へと飛び込んだ。

 

 接近する…足の踏み場の無い空中での接敵、踏ん張ることも地面を蹴ることも許されないそんな場所で、石流は歯を食いしばるように噛み締めた後、甚爾の鳩尾目掛けて拳を打ち込んだ。

 

 速く、鋭く打ち込まれた拳、鳩尾ごと心臓をぶち抜いてやると言わんばかりに放たれたその一撃は、甚爾が身体を大きく横へ反らしたことで躱され…そこへお返しと言わんばかりに蹴りが放たれた。

 

 鋭い蹴り、引き裂くような音と共にやってくるここに来て初めての純粋な体術による攻撃、腕を盾にして防いだその一撃はドズンッと石流の身体へと響き、次いで肉体が押し出されるような感覚を石流は実感する。

 

 叩きつけられる、空中から蹴り落とすように放たれたその蹴りが石流の肉体を地面へと叩き落とした。

 

 ドズンッと重い音を鳴らし、石流は両足を立てて地面へと着地する、着地と同時に地面が割れ、辺りに衝撃波が舞い満ちる。

 

 風が舞い散る、衝撃波と共にやってきた強い風は辺りに落ちていた落ち葉を撒き散らし、ザラザラと何処か小気味の良い音を両者の耳へと届けてくる。

 

 敵手は未だ空中、自身は地面の上…己が有利であると、石流は直感した。

 

 

 

───『グラニテブラスト』

 

 

 

 放つは自身の十八番、呪力出力は通常のままに、空中に存在する敵手へと可能な限りの広範囲砲撃を行う。

 

 バチリと光る敵手の姿、特徴的な髪型から迸る呪力反応に甚爾は懲りない奴と手に握った神楽を構え…振り抜いた。

 

 

 瞬間、呪力が消失する、まるで最初からそこに何も無かったかのように消え失せる、先と同じ光景がまるで再現映像か何かのように繰り返される。

 

 分かっていた、あの刀がある限りグラニテブラストは最早武器としては頼りに出来ない、あの刀を手放させない限りは出来て精々が目眩まし程度であることを石流は理解していた。

 

 だから接近戦を仕掛けた、死中に活を求めた、片方の刀によって一撃死する可能性を考慮した上でそれを選び取った…選び取ったという姿勢を見せた。

 

 確信したはずだ、最早敵手の手は己には届かないと。

 

 確信したはずだ、こいつにはもうこれ以上の手札は無いだろうと。

 

 

 甚爾が刀を鳴らす、両手に携えた二刀を自然体のままにぶらりと下げたままに、敵手の首を刈り取ってやろうと空を蹴って突進してくる。

 

 速い、速さで言うならば間違いなく生涯最速であろうと石流は考える、しかも速さで言うのならば先程のソレよりも尚も速い。

 

 追いつけない…漠然とそう考えた石流は、ふとしたようにほくそ笑んだ。

 

 

 

 最早、これしか無いと思っていた。

 

 あの速さを捉えることは石流には出来ない、あの速さに追いつくこともまた、石流には出来ないことだった……ならばどうするか、答えは簡単だった。

 

 印を組んだ、表情に満面の笑みを浮かべて、勝ち気な表情を惜しみなく敵手へと披露する、まるでソレを待っていたのだとでも言うように。

 

 

 もうこれしか無いと思っていた…だから誘った、向こうから此方側の中へと入ってくるように、相手の方から範囲内に入ってくれるように。

 

 そして今、敵手はそこへと何の躊躇いも無く、足を踏み入れた。

 

 印は既に組んでいる、呪力も既に練り終わっている…後は、形にするだけだった。

 

 

 

「───領域展開」

 

 

 必中必殺が宣言される、術師の極地が一人の敵手相手に解き放たれる。

 

 逃げる隙も糞も無い、退避の選択肢を考えたその時点で甚爾は既にそこにいるのだから。

 

 視界が黒に覆われる、咄嗟にとでも言うように神楽を振るっても虚しく空を斬るだけで何の変化も起こらない…それも当然だろう、何せ神楽は放出された呪力を断絶する代物であって、呪力を流し込まれた器を壊す代物ではないのだから。

 

 故に展開される、必中必殺の領域が寸分違わず、何にも邪魔されることなく悠々と敵手の目の前でその中身を形作っていく。

 

 バチリバチリと呪力が弾ける、地面らしい場所へと降り立った甚爾の視界の先には、これでもかと言わんばかりの呪力をはち切れんばかりに溜め込んだ石流の姿があった。

 

 バチリバチリと放電さながらに呪力を撒き散らす石流の表情にははどうしようもない程の興奮と喜色が浮かび上がっていた、さながら今にもご馳走にありつきたくて仕方のない子供のような表情とでも言うべきだろうか。

 

 領域が構築される、あと数瞬もすれば領域に付与された術式が発動する…故に石流は確信していた、自身の勝利と敵手の敗北を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 石流の判断は正しい…少なくとも相手にしている人間が術師でさえあれば、それは酷く正しい選択であったようにも思う。

 

 領域に相手を引き込めば、その時点で大抵は勝ちが確定する、相手と自身の差が余程離れていない限りは必ずと言って良い程に勝ちが確定する。

 

 簡易領域、落花の情、彌虚葛籠、それら三つに加えて同じく領域展開…これらの領域対策に加えて菫の『黎』と言った対領域を想定した技を持っていたのならば話は別となってくるのだが…今回に限ってはそれは無い。

 

 何故なら、甚爾は呪術を使えないから…伏黒甚爾には、呪術を使う為の大前提、呪力が一欠片も存在しないから。

 

 故に石流は迷わない、自身の切り札への対策を持たないと確信してしまったが故に、石流は何の躊躇いもなくその切り札を切ってみせたのだから。

 

 …だからこそ、石流はことそこに至るまで気付きもしなかった…それが所謂悪手であるという事実に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結界に付与された術式を発動、眼前に浮かぶ敵手へと標的を定め、必中と成った自身の十八番を直撃させる…それよりも尚速く、それは石流の肉体へと突き刺さる。

   

 領域の構築に加えて行われた術式の起動、僅か数秒単位にも満たないその一連の動作はしかし、伏黒甚爾という人間からしてみれば十分過ぎる間であった。

 

 石流の意識が領域へと割かれたそのほんの僅かを狙って、甚爾は格納呪霊から取り出した鎖へと短刀を巻き付け、渾身の力を込めて石流へと投げつける。

 

 通常の状態であれば躱せたであろう、防げもしたであろう…しかし、領域へと割かれた思考の隙間を縫うようにして投じられたソレは、まるでほんの僅かに開いた切れ目を寸分違わず通り抜けるような緻密さで、石流の意識の隙間を通り抜けた。

 

 ほんの一瞬だけジャラリと鳴り響いた鎖の音、短刀を取り付けられたソレは一秒にも満たない程の速度にて石流へと接近し、いとも容易くその右下腹部へと突き刺さった。

 

 意識の外からの一撃、呪力を纏わないが故に無意識的に意識から除外していたその一撃が、痛みという形で石流へと危険を伝える…が、そんなこと知ったことかとでも言うように石流は術式を発動する…それと同時に、甚爾は空を舞う鎖を地面代わりに蹴りつけ、石流へと突進を開始した。

 

 大きく波打つ鎖、甚爾の踏み込みの反動がそのまま石流へと突き刺さった短刀にまで届く、反動によって揺れ動いた短刀が石流の肉を抉り、その中身をグチャリと混ぜ込む。

 

 痛み、激痛、右下腹部から響いてくる中身をグチャリと掻き混ぜられる感覚…それら全てを歯を食い縛ることで耐え、石流は甚爾のみへと意識を集中させた。

 

 猛スピードで突っ込んでくる敵手の姿、何処かゆっくりと動いているように見える強敵の姿…これが最後であると、石流は直感した。

 

 これから交わされる一度きりの勝負、それにて全てが終わるのだと石流は悟った…ならば、どうするか…簡単だ。

 

 

「───キメるぜ…!!」

 

 

 勝負、一発勝負…敵手が先に己を斬るか、先に最大出力を溜め終えた自身が敵手を撃つかの一撃勝負。

 

 小さい攻撃で確実に仕留める、相手の足を止めてから確実に仕留める…最早そんなセコく小狡い真似などしない、そもそもそれでは最早致命傷にすらならないことを石流は理解していた。

 

 分かっているはずだ、領域に入った以上は攻撃は必ず当たる、避けて躱したところで意味は無い…ならば残された道は、捨て身の一撃にて敵を屠ることのみであるということを。

 

 故にこれから行われるのは、一撃決着の決戦勝負…!!

 

 

 突っ込む甚爾に呪力を溜める石流、領域という外界と切り離された静謐な世界が二人の勝負を見守るかのように沈黙を作り出す。

 

 時間にして僅か一秒、先の手を取ったのは…石流であった。

 

 音すら消える、溜め込んだ呪力から光が消え、ほんの一瞬だけその姿を消す…そのほんの少しの工程の最中に、石流はふとしたように、内心で呟いた。

 

 

───あばよ。

 

 

 放たれる、閃光が甚爾の視界へと広がる…当たれば死ぬと、直感した。

 

 人間一人分…放たれた閃光の大きさを一言で言うのならばその程度、範囲を絞る代わりに威力を底上げした一撃が甚爾の目と鼻の先から放たれる。

 

 向かう、向かう、向かう…眼前にて微笑む石流の姿、そこから放たれた一撃をその目に焼き付けながら甚爾は───

 

 

───…マヌケ

 

 

 反射的に、未だに伸びていた鎖を蹴りつけ、その一撃を紙一重で躱した。

 

 見開かれる石流の瞳、遅れてやってくる鎖の弾かれる音、理解と思考が追いつかない脳内状態の中で、何故必中(あた)らないと疑問を浮かべる石流の視界の中で…銀光が、駆ける。

 

 

───斬ッ…!!

 

 

 斬撃音、スルリと入ってくる異物の感覚に何処か他人事のような感覚を抱きながら、石流の肉体はそれを容易く受け入れた。

 

 

 

 

 石流は知らなかった…甚爾の体質、天与呪縛『フィジカルギフテッド』の特性、生まれ持った呪力を全てを捨て去り、代わりに莫大な身体能力を手に入れる…そんな呪いの特性を。

 

 甚爾には呪力が全く無い、石流の読み通り甚爾には呪術は扱えず、領域への対策など当然の如く持ち合わせない…しかし、端からそんなものは必要無かったのだ。

 

 何故なら呪力の無い甚爾は、こと領域内に於いては建造物と同じ扱いを受ける、故に本人の意思か了承を得ない限りは、甚爾が領域に閉じ込められることは無い。

 

 今回、甚爾は自らの意思で領域への参入を了承した…そして、そうして自らその中へと入った呪力の無い甚爾という人間を、領域の必中効果は───

 

 

───認識することが出来ない。

 

 

 

 

 崩れ落ちる石流の身体…上半身だけが前方へと倒れ込むようにドチャリッと音を立てて地面へと落ち、下半身はその真逆の方向へと倒れていく…そんな光景を後ろ目で一瞥した甚爾は、ブンッと釈魂刀へと付着した血液を一振して払った。

 

 領域が崩壊する、黒いガラスが悠々と降り注いでくる中で、甚爾は背後の死体に目を向けることもなく、コツコツと足音を立てて歩き去っていく、最早興味は無いとでも言うように。

 

 

 点数の変化は、起こらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

───『天与の暴君』対『江戸の大砲』 勝者 『天与の暴君』伏黒甚爾 決め手 釈魂刀による斬撃。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたな…終わったぞ」

 

 

 とある無傷の住宅にて、そんな優しげな声が響き渡った。

 





石流龍

 多分ひたすらに相性が悪かったとしか言いようの無いお人、正直作者が唐突にパパ黒出したいとか思ってなかったらもっと良い勝負していたように思う。

 元々は直毘人VS石流の予定だったし領域勝負も考えていた…けど、作者が唐突にパパ黒出したくなった結果としてこうなった…ちゃんと格を落とさずに書けたか不安で仕方が無い、作者は石流も好きです。



 
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