宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 菫の末路がなんとなくで最近決まったのでそこまで走り抜けようと思います…とりあえず、殺す殺さないで言うならまぁ───。


絶対に殺す

 

 

 

 五条菫の極ノ番、『黎』と『灰』には明確な弱点が二つ存在する。

 

 一つは黎の停止条件、ほんの少しでも黎を構成する何れかが欠けた場合に即座にその機能を停止してしまうという脆さ。

 

 魔虚羅によって行われた空間切断による球体の切断…否、そうでなくとも敵手の何かがほんのミリでも黎を構成する何かをズラしたその時点で、黎はその機能を停止するという縛り。

 

 座標に呪力量並びに三段階に分割された出力定義、最低でもこれら三つの黎を構成する要素が一つでもズレてしまえば黎は業としての機能を完全に失ってしまう…それが、黎の弱点。

 

 そして二つ目、『灰』の弱点はこの一つでもズレればその時点で機能を停止してしまうという『黎』を、必ず経由しなければならないという点にある。

 

 黎から灰へ、収束から発散へ…黎によって収束されたそれを術式反転により発散させるという前提が存在して初めて『灰』は技として成立するのだ。

 

 故に、その大前提に当たる黎が発動しなかった場合、当然の如く灰は発動しない、よしんば発動したとしてもそれは精々が多少威力の上昇した赫でしかない。

 

 更にそれに加えて、空間から呪力に至るまで文字通り全てを呑み込むという特性上、『黎』には明確なタメが必要だった…それを解決する為に、菫は上記の縛りに加えて更に自身へと縛りを課した。

 

 『黎』及び『灰』の使用後に五条菫は()()()()()()()()()使()()()()()()()…それが、五条菫という人間が悩みに悩み抜いた末に自身へと課した縛りだった。

 

 敵手の領域を空間ごと呑み干し、それに上乗せして返すような形で攻撃を放つというズルの具現化のような技…それの弱点を克服するともなれば生半可な縛りでは許されない…それ故の術式使用不可の縛り。

 

 時間にして約四分間、この四分間の術式使用不可という縛りにより菫は黎のタメを約一秒未満にまで削り、灰の使用制限を実質的に帳消しとしてみせた。

 

 …そう、四分間、この四分間の間は五条菫はありとあらゆる術式の使用を許されない、虚式も順転も反転もニュートラルな不可侵でさえも、何もかもが許されない。

 

 烏鷺と菫が会話した時間は約40秒そこら、即ち五条菫の術式復活までの残り時間は───

 

  

 

───あと、三分二十秒

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 菫の身体が、後方へと引きずられるように下がった。

 

 腹部に走る痛みと衝撃、術式効果を上乗せされたその一撃に菫は舌打ちを一つ吐き、そこへと烏鷺が獣のように飛び掛かる。

 

 手を開いて爪を立て、腕を大きく振りかぶって虎か熊かのようにその爪を大きく菫へと振り下ろした。

 

 その爪撃に対して菫は回避を選択、紙一重擦れ擦れと言わんばかりの距離感にて爪激を躱す、空振った爪が地面へと鋭い爪痕を残し、当たればどうなっていたかを如実に菫へと伝える中で菫はその足をほんの一歩踏み出した。

 

 烏鷺の足の隙間、両の足の真ん中へと置き去るように足を踏み出した菫はそこから抱きつくように烏鷺の懐へと侵入し、その肌へと爪を立てた。

 

 ガジリと肉へと食い込む指、吹き出す血をそのままに服でも握り込むように強く強く烏鷺の肌へと指を食い込ませた菫はそのままプロレス技の要領で烏鷺を地面へと叩きつけようとする…よりも速く、烏鷺が菫の手首へと噛みついた。

 

  

「───いっつっ…!」

 

 思わず声が漏れ出た、激痛と呼ぶにはあまりに弱いその痛みについついと言ったように菫は反応してしまう、そこへと更に追い討ちを掛けるように烏鷺は顎へと更に力を込めた。

 

 ぷしゅりと吹き出す血液が烏鷺の口の中へと転がり込んてくる、口の中には広がる他人の血の味に烏鷺は不快感を覚えるがそんなこと気にしてる場合じゃないだろうとガラ空きの菫の足を全力で踏み付けた。

 

 メギャリという生々しい音、折れた訳でもなければ大した痛手にもなっていないだろうその行動、しかしその痛みに菫は咄嗟に反応してしまう…そして、それを烏鷺は見逃さない。

 

 

「───昔からそうだったわよね、アンタは…!!」

 

 菫の横面へと拳を叩き込みながら烏鷺は吐き捨てるように言葉を漏らす、五条菫という人間の明確な弱点を。

 

「激痛とかそういうのには人形かってくらい反応しない癖に、そういう小さな痛みとかには絶対に反応してたわよねぇアンタはぁ…!!!」

 

 言葉を紡ぎながらくるりと縦に回転、その勢いのままに菫の顎へとアッパーカットを繰り出そうとする烏鷺、鋭く振り抜かれるであろうその一撃を前に菫は苛ついたように息を吐き出し───

 

 

「───だから何さっ!!」

 

 拳が振り抜かれるよりも速く、烏鷺の首筋を打ち抜いた。

 

 素早く手早く確実に、威力こそ低くとも人体の急所へと的確に打ち込まれた素手の一撃、骨こそ折ることはなかったがそれでもその一撃は烏鷺の動きを止めるには十分過ぎた。

 

 

「───カッ…」

 

 息が止まる、呼吸が詰まる、首筋へと打ち込まれた一撃によって烏鷺の肉体への空気の供給が止まった…そこへと畳み掛けるように菫は拳を打ち込んだ。

 

 純粋な呪力強化による一撃、強く足を踏み込み放ったその一撃が烏鷺の鳩尾へと突き刺さり、そのまま何もさせずに烏鷺の肉体を吹き飛ばす。

 

 瓦礫の山を転がる烏鷺、ゴロゴロゴロゴロと無数の破片が突き刺さる街だった物の上を転がり、何度か破片が身体へと突き刺さるのも気にせず勢いを殺し…た直後に菫が飛びかかってくる。

 

 全体重を乗せた両膝蹴り、勢い良く獲物を仕留める鷹か何かのように急速に突っ込んでくるその一撃、顔を上げた瞬間に眼前へと迫ったソレが烏鷺の頭蓋へと突き刺さる。

 

 

「───ッッッ!!!」

 

 ゴーンッと鐘を間近で鳴らしたような音が頭から響く、鳴らした鐘との間に挟まったかのような感覚、グラグラと脳内が揺れ動いたような感覚に烏鷺は目眩を覚える。

 

「ほらほらがら空きだよぉっ!!」

 

 言うや否や烏鷺の右足へと蹴りを放つ、呪力出力を最大にまで跳ね上げて放ったその蹴りは容易く烏鷺の右足をへし折ってみせる。

 

 あらぬ方向へと折れ曲がる右足、激痛とバランスを失ったことで崩れ落ちる烏鷺の後頭部へと菫は踵落としを叩き込んだ。

 

 頭が地面に沈む、バゴンッと音を立てて顔面が瓦礫の奥へと亀裂を生み出しながら沈み込み、そこへ菫はゴキブリを執拗に潰すかのように何度も何度も烏鷺の頭を踏みつけた。

 

 何度も、何度も、何度も、何度も、何度も…加減も止め時も知らない、死んでいるかどうかさえ分からない烏鷺の頭を何度も何度も踏みつける、執拗に狂気に駆られたように何度も何度も。

 

「───死ねっ…! 死ねっ…!! 死ねッ…!!!」

 

 ズゴンッ、ズゴンッ…踏みつけられる度に鳴り響く重い音、一度踏みつける度にビクリッと反応しては沈んでいく烏鷺の肉体に吐き捨てるように菫は言葉を吐き出した。

 

「死ねよ、微塵も残らずこの世から消えてしまえよ…! アイツの視界からも記憶からも塵芥のように消えてしまえ…!!」

 

 殺意と呪詛、吐き出される言葉と雰囲気からは普段の菫の姿をまるで連想出来ず、もういっそのこと顔が似ているだけの別人と言われた方が納得出来る程に取り乱した様子で菫は言葉を吐き出す。

 

「お前も雪姫も何時も邪魔ばかりだ、特にこっちに来てからは肝心な時に何時も何時もゴキブリみたいに湧き出して来てさぁっ…!!」

 

 そこには普段の菫が持っていた余裕は何処にも無い、ただただ我儘を喚き散らすだけの子供の姿がそこにはある、普段の姿からは想像もつかないような痴態がそこにはある。

 

「お前達は廻と仲が良かったもんな!? 知ってるよだから殺してやりたかったんだお前達の方に傾くからっ!!」

 

 喚き散らしながら強く踏みつける、亀裂が大きく広がり衝撃波と音で以って深く深く地面へと沈み込める、最早姿が見えない烏鷺へと尚も菫は抑えきれぬ激情を吐き出すように喚き散らす。

 

 自身の課した縛りから来る焦りからだろうか、それとも単に今の今まで溜め込んでいたモノを吐き出しているだけなのだろうか…何方にせよ、それは紛うことなき五条菫の本音であった。

 

 

「ずっと死んで欲しかったよボクは、お前達がアイツと仲良さそうにする度に死んでほしいって思った、けど出来なかったんだ廻が泣いちゃうからずっと出来なかったんだ」

 

「後悔してるよ、あの交流戦の時に見つけたその時点で雪姫を殺しておくべきだった、雪姫の存在を廻に知られる前に殺しておくべきたった、だってそうすれば廻は何も知らないままにボクと関わってくれるから」

 

「そんな時に君まで出てきた、面倒なのが一つから二つに増えた…あぁもう気が狂いそうになったよ本当にねぇ…!!」

 

「あぁでも良かったよ君が廻と会う前で、お陰で何の気兼ねも無く君を殺せるし君を消せる、面倒なものが二つから一つに減ってくれる…だからさ───」

 

 

 

───死んで?

 

 

 矢継ぎ早に繰り出された言葉の羅列、狂気と愛情と憎悪をそのまま混ぜ込んだような混沌とした感情の中で薄らぼやけに笑みを浮かべた菫は、その瞳を見開いて地面へと沈み込んだ烏鷺の首筋へと全力の手刀を放つ。

 

 一撃にて屠り去る、必ず殺す良いから死ねと言わんばかりに放たれた刃が如き手刀、直撃すればそのまま綺麗に烏鷺の首を跳ね飛ばすであろうその一撃に対して烏鷺は地面へ沈み込んだままの無抵抗の姿勢で───

 

 

「───うるっさいわねぇ、ギャーギャーと…!!」

 

 

 ふと、呟かれた言葉が菫の耳へと届き、それと同時に目の前で瓦礫の山が吹き飛んだ。

 

 烏鷺が躍り出る、腕は失ったままで片目には瓦礫の破片が突き刺さっており、最早その瞳は光を映していない…しかし、折れ曲がった足の修復は既に終わっていた。

 

 呪力の放出と共に吹き飛ばされた瓦礫が菫へと直撃する、単なる小石程度のソレは菫の呪力強化を貫くことなく単なる目眩ましとしかならない…しかし、烏鷺からしてみればそれで十分だった。

 

 菫の懐へ、頭から流れ出る血と痛みも何のそのと言わんばかりに踏み込んだ烏鷺は、何処か哀れなものを見るかのような瞳で菫を見据え、その拳を引き絞り───

 

「喧しくギャーギャーと騒いでるけど、元はと言えば───」

 

 

───アンタがさっさとアイツに全部ブチまけなかったのがいけないんでしょうがぁぁぁぁぁっ!!!!

 

 

 その苛立ちと共に、その一撃を解き放った。

 

 

───黒閃っ!!!!

 

 

 裂帛の気合(苛立ち)の雄叫びと共に放たれた末に突き刺さる拳、鳩尾からそのまま貫通してしまうのではないかと勘繰ってしまいそうになる程に深く深く入り込んだその一撃が菫の内から血反吐を吐き出させる。

 

 黒い火花が散る、苛立ちと苛立ちと苛立ちのハイブリッドをそのまま拳にしたようなその一撃を黒い火花は祝福する…感情のかの字も無い単なる現象でしかないソレは、しかし何処か呆れ果てたようなモヤモヤとした煙のような黒を発生させていた。

 

 今度は菫の肉体が崩れ落ちる、両手を両膝を下に突いた四つん這いの状態で荒く息を吐き出し、ゴホゴホっと咳を苦しそうに吐き出しながら憎々しげな瞳で菫は烏鷺を見上げていた。

 

「散々言われたから私も言わせてもらうけど…私からしてみてもアンタは邪魔よ、これから自由に生きる上でアンタと羂索の存在はどうしようもなく邪魔なの…だから───」

 

 

───絶対に殺すわ、アンタのこと。

 

 

 そう言う烏鷺の拳には、未だに黒い火花が飛び散っていた。

 

 

 

 五条菫の術式が戻るまで、あと───

 

 

 







 ぶっちゃけ単なる我儘な子供、大人っぽい喋り方とか雰囲気って基本的に擬態でしかなく、本質的に我儘な子供。

 雪姫が現れなければ単に交流戦観察したり渋谷観察したりで終わったかもしれないけど認識した時点で殺す以外の選択肢が割と存在しない、だって取られるかもしれないんだもの。

 イメージ的にはボクの〇〇取らないでって言ってる子供。

 因みに、近接戦は悟よりも圧倒的に弱い、逆にそれ以外だとギリギリ勝っているタイプ、けどその内追い抜かれる。



烏鷺さん

 多分今回のことで菫の本質に気がついた人、術式取り戻されたら負ける可能性が八割くらい跳ね上がるけど、それはそれとして言いたいことは言うタイプ。


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