宿儺にぶっ殺されたワイ、何故か子供になる   作:富竹14号

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 みんな、菫が死ぬと思ってるのには笑うしかない…まぁ、死ぬにしてもただで死ぬというわけではないのですけど。


蛆虫

 

 

 絶対に殺す…そんな烏鷺の宣言に菫は小さく嘲るような笑みを溢した。

 

 小さな小さな笑い声、嘲り小馬鹿にし、如何にもお前は愚かだと言いたげな声色で静かに笑った菫は───

 

「───ほざけ」

 

 瞬間、殺意のみに染まりきったその瞳を開いて、菫は自身の指を突き出した。

 

 狙いは眼球、半ば不意打ち気味に動き出し見事なまでの足捌きで以って烏鷺の懐へと潜り込んだ末に放たれた一撃。

 

 指の形を所謂ところのチョキへと変えて、その目玉抉り取ってやると言わんばかりの形相で迫ってきた菫に対して烏鷺は何処までも冷めた視線をぶつけた。

 

 

 何も変わらない、何処までも自分勝手で何処までも自己中心的、何も変わらないその光景にため息を吐き出したくなる。

 

 やってきた目突きの一撃、確かな殺意と悪意を混ぜ合わせたようなモノを隠しもせずにやってきたそれを、烏鷺は半ば反射的に食い千切っていた。

 

 防ぐことも出来た、防ぐことは言うまでもなく簡単なことだった、眼球を狙って放たれた一手をあの手この手で反らし防ぎ、そこから流れ作業で一撃を打ち込むことは出来た。

 

 けれど烏鷺はそれをしなかった、確実に一撃を打ち込めるその一連の動作へと移行せず、敢えて突き出された指を噛み千切るという摩訶不思議な行動を実行した。

 

 口の中に血の味が広がる、何処かネバネバとしたゴムのような感触と共が口内へと広がり、一つ一つ噛みしめる度にぐちゃぐちゃとした食感が歯を通して脳内へと伝わり、そこから更に気持ちの悪い鉄の味が喉を通り越していく。

 

 吐き捨てた、あまりの気持ち悪さと不味さに思わずと言ったようにプッと音を出してソレを吐き捨てる、吐き捨てられた二本の指だったモノが無数の噛み跡を残して地面へと転がる。

 

 プシューと気の抜けた音と共に血が吹き出る、目の前から吹き出る血が烏鷺の頬をこれでもかと汚し、その眼前で起こった事実に菫は何処か呆然としているようだった、反転術式を使うことすらしない。

 

 どうしようもない隙を、五条菫は晒していた。

 

 

「ッッ!?」

 

 気づいた頃にはもう遅い、引き絞り大きく振りかぶられた腕が菫の視界に映り込む、これでもかと肉を抉らんばかりに握りしめられた拳が菫の顔面を打つ。

 

 黒閃によって研ぎ澄まされた呪力制御、限界まで引き上げられた集中力に加えて五条菫を必ず殺すと今尚も高まり続けている殺意の波動、術式込みで打ち込まれたその一撃は菫の片目玉を躊躇無く押し潰す。

 

 ぐしゃっと言う生々しい感触と音、今までに無い程に柔らかく繊細なナニかを潰されたような感覚に菫は痛みを忘れて呆然とし…次の瞬間、菫は絶叫を上げるのと同時に烏鷺の肉体を無理矢理蹴り飛ばしていた。

 

 我武者羅、無我夢中…言葉にするならばこの二つ、普段の姿からは想像も出来ないほどに必死の形相へと歪んだ菫の顔から涙が溢れ出ていた。

 

 潰れた瞳を手で抑えながら痛い痛いと菫は喚く、押さえた先からダラダラと大量の血液が流れ落ちては頬を伝って地面に落ちる…そんな最中に放たれたその一撃は、いとも容易くソレを発生させた。

 

 黒い火花が散る、滅茶苦茶に我武者羅にと烏鷺へと放たれたその蹴りは、烏鷺の肉を抉りその内側の骨を完膚無きまでに砕き切るにまで至る。

 

 迸る激痛、あまりに唐突にやってきたその痛恨の一撃に烏鷺の息が完全に止まる、体内で滞留した空気が外へ出せと内側から危険信号を烏鷺へと送り出す。

 

 喉の奥で何かの詰まった感覚がした、呼吸をしようにも堰き止められているように息が通らない…その事実に、烏鷺は反転術式を使うよりも先に右手の拳を自らの胸へと強く叩きつけ、それと並行して口の中へと指を突っ込む。

 

 

「───ォォッゲェェェェッ…!!」

 

 汚い嘔吐音、喉の奥から湧き上がってくるソレに逆らわずにゲェゲェッと中身を全て吐き出し、それと並行して蹴りを食らった箇所に対して反転術式を使用、ゼェゼェッと荒く吐き出す息と共に傷の治癒する。

 

 口元を拭う、眼前にて潰れた片目を抑えて此方を睨みつける菫の姿が見えた、片手で遮られて見えはしないが恐らく既に目玉の治癒は済んでいることだろう、それだけのことが五条菫には出来るのだ。

 

 それでも尚、未だに目元を抑えているのは…やはり痛いからなのだろうと烏鷺は察する。

 

 六眼の成り損ないとはいえ、それでも微粒子レベルでの呪力制御を可能とする目だ、それだけの情報量を流し込んでいたモノが急に潰れでもしたのなら、その痛みはきっと計り知れない。

 

 激痛に反応を示さない菫がここまで大きく反応を見せる程の痛み…それを想像するだけで烏鷺の背筋を凍りついたような悪寒が走る。

 

「───殺すっ…!!」

 

 しかしそんなことは知ったことじゃないとでも言うように、烏鷺は目元を抑えたままの菫の下へと駆け出した。

 

 あれだけ時間が有ったのだ、既に傷の治癒は片腕を除いてとうに終わっている、戦闘続行は問題無く可能だった。

 

 砕ける瓦礫に罅割れた地面、烏鷺による全速力の突撃、未だ片目の部分を抑え込んだまま蹲っている菫へと烏鷺は一気に突っ込み───

 

 

「───……アハッ…♪」

 

 

 ソレを、見た。

 

 笑っていた、つい先程まで痛みに喘いでいたはずの五条菫という人間は、つい先程まで涙を溢していた五条菫という人間は、今この瞬間…どうしようもなく、笑っていた。

 

 先程までの涙は何処へやら、先程までの悲痛な顔は何処へやら…狂気すら感じさせるような菫の甘い笑みに烏鷺の背筋は今度こそ凍りついた。

 

 抑えていた片手を退ける…そこにあったのは無傷の瞳、美しい菫色が変わらずそこに存在していた…わけではない。

 

 光が無い、光が映っていない、本来見えるはずの情景を五条菫の片目は一欠片も映していなかった。

 

 あるのはただただ黒ずんだ菫色の瞳、つい先程潰したその瞳が映すのは何処までも空虚な暗闇で、だからこそ烏鷺亨子はヒュっと息を飲んだ。

 

 

───不味い、不味い不味い不味い不味いっ…!!!

 

 

 烏鷺は自身の迂闊を呪った、五条菫を無意識的にとは言え侮ってしまった自身の慢心を呪った。

 

 自分で語ったではないか、激痛であればあるほどに五条菫の反応は薄くなっていくのだと自分で言ったのではないか、それなのに何故己は痛みに呻く五条菫の姿を信じ込んでいたというのか。

 

 嘘、全てが嘘だった…痛みには嘆いていたのも涙を流していたのも全てが嘘、ブラフだったのだと…そう烏鷺が確信したその時点で、全てが手遅れと化していた。

 

 

 

「───虚式」

 

 

 

 

───『茈』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 五条菫の術式回復までの制限時間は、烏鷺に黒閃を打ち込まれたその時点で、残り一分と三十秒の状態だった。

 

 更にそこから烏鷺に目玉を潰されるまでの時間は約三十秒、そして烏鷺が菫への突撃を開始するのに掛かった時間は大凡5秒そこら…そこから互いに治療の為の時間を使っていたのだとしても、菫には最低でも四十秒という術式使用不可の時間が存在していたはずだった。

 

 烏鷺が菫の下へと到達するのに十秒と掛からない、その程度の距離…当然、烏鷺の襲来までに菫の術式回復は間に合わないはずであった…しかし、五条菫はそれを半ば無理矢理解決した。

 

 自身の目を生贄とした縛り…潰された右目を治癒したのと同時に菫は二十四時間、右目の視力の一切を封じるという縛りを締結、その代償として菫は術式回復までの時間を削ることに成功していた。

 

 その時間にして、約35秒…間に合うか間に合わないかのギリギリを攻めたその削られた時間、向こうが躊躇していなければ間に合ったであろうと菫は確信していた。

 

 だからこそ、菫は面白く可笑しく嘲りながら笑ってしまうのだ…何せ、己が少し場違いに笑みを浮かべただけで、敵は勝手に己を恐れてその動きを鈍らせてくれたのだから。

 

 故に、だから、だからこそ…五条菫は───

 

 

「───バーカ」

 

 花が咲くような笑みを浮かべながら、その姿を嘲笑った。

 

 

 

 

 放たれたるは無下限呪術の最奥、五条家が誇る秘中の秘、順転と反転という其々の無限を衝突させることで発生する仮想の質量をそのまま敵手へと押し出す五条家の奥義。

 

 不可視…見ることの叶わぬ必殺の一撃が埓外の速度にて飛来する、何もかもを文字通り消し飛ばしかねないその必殺が半ばノーモーションにて放たれる…回避は実質的に不可能に近い。

 

 故にこそ…その結末は、定められたものであったと言えよう。

 

 

「ボクの目の異変に気づいたのは流石だと思ったよ、傍から見たら分かんないだろうからね、コレ」

 

 右目を撫でながら今まで通りの笑みを浮かべる菫、空虚な暗闇を映し続けるその右目、術式回復の為に制限時間有りきとは言え捧げてみせたその現状に、やはり菫は笑ってみせた。

 

「でも、気づくのが少し遅かったよね…あともう少し早く気づけてたら、まだなんとかなったかもしれないのに」

 

 ゆらりゆらりと髪を揺らし、まるで自慢話でも話すかのように身体を揺らして言葉を発する菫…その言葉に応える人間は、既にここには居ない。

 

「…まぁ、そんなところだね、君の褒めるべき点なんて…それじゃあ───」

 

 

───バイバイ、蛆虫ちゃん。

 

 

 そう言った菫の視界の先には、うつ伏せに倒れ込んだ烏鷺の姿があった。

 

 身体の片側…片腕と片足を交互に無くし、身体の半分が半ば削れきったかのような姿で倒れ込む烏鷺の姿、身体の端々から大量に流れ落ちる致死量相当の血液がその傷の深さを誰とも知れずに教え込む。

 

 死んでいるわけではない、死滅回游という遊戯の関係上、死亡の際の点数追加の宣言が未だに成されていないその時点で烏鷺亨子は未だに死んでいない…その事実を菫は理解していた、理解した上で放置していた。

 

 烏鷺が途絶えかけの意識の中で反転術式を回していることに菫は気づいている、今尚も必死に生き残ってやろうと諦めずに意思を強く持っている烏鷺の存在に菫は気がついている…その上で菫は烏鷺を放置した。

 

 気づいているのだ、烏鷺の反転術式では傷を治しきれない事実に。

 

 分かっているのだ、烏鷺の反転術式のキャパを自身の与えたダメージが完全に超えているという事実に。

 

 放っておいても死ぬ、何もしなくても勝手に死ぬ…それが分かっているから、五条菫は死に逝くその姿をニコニコとした場違いの笑顔にて見続ける。

 

 何故なら───

 

 

「君は、どんな風に腐るのかな?」

 

 

 蛆虫らしく死んでいくところを、この目で見たいから。

 

 

 

 

 そんな、菫のちょっとした憂さ晴らしを邪魔するかのように、その男は降り立った。

 

 圧倒的な惨状、偶然その範囲ギリギリの場所に身を置いていたが為にほぼ無傷にて場に降り立ったその男は…ニコニコとした笑顔で死に体の人間の姿を見つめる菫の姿を視認するが否や…直感してしまった。

 

 こいつは、この女は───

 

 

 

───自身の親を名乗ったあの男並に、気に入らない存在であると。

 

 

 

 気づけば、蹴り飛ばしていた。

 

 空間の駆ける感覚、一気に研ぎ澄まされていく感覚から自身が黒閃を発現させたのだと直感的な察知し、しかしそんなことは知ったことかと男は菫を蹴り飛ばす。

 

 本来であれば当たらない、本来であれば当たり前に静止するその一撃、ソレに対して菫は何処かダラリとしたような動作で目線を動かし…次の瞬間には黒い火花と共に蹴り飛ばされていた。

 

 そう、本来ならば当たらないし止まってしまう…しかしそれは───

 

 

 

 

『ケヒヒッ、良いぞ小僧、らしくなってきたではないか』

 

「るっせぇ…少し、静かにしててくれ」

 

 

 何処ぞの呪いの王が、気紛れでその方法を教えていなかった場合に限る。

 

 

 

───虎杖悠仁 参戦

 

 

 

 

 

 これより約〇〇分後、虎杖悠仁の一撃が───

 

 

 

 

───五条菫を、瀕死に至るまでに追い込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 
 悠仁戦の後、〇〇が〇〇して○○○○○○○ことが確定している女…ネタバレかもしれないけど、この人はこれから廻に会うことも無ければ悟に会うことも無い。

 因みに、目玉を潰されて痛がっていたのは全部演技、本人は内心で馬鹿だよねぇと引っ掛かった烏鷺のことを馬鹿にしている。


虎杖くん

 メロンパンと似たような匂いがした、殺す気は満々。

 因みに、菫の下に来る前に天使に自身が堕天=宿儺の器であることを教えている。

宿儺

 気紛れで展延を教えてみたらなんか普通に覚えられて、しかもなんか自分のストーカーに似たやつを蹴っている姿にケヒケヒしている人…あとついでに呪いに段々近づいていってるのに愉悦を感じていたりする。




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