◇ ◇ Sideオボロ 拠点 訓練所 ◇ ◇
ダイアルさんが出て言った後、オルファンさんが残された。
「・・・・・・あの人に追いつけるんでござろうか?」
「さあな。追いつけるとは限らん。儂はあやつを目標にして追いかけるだけよ。しかし、あそこまでかけ離れていたとはさすがの儂も知らんかったが・・・・・・」
第九超越者だってのは初めて聞いたんだね。
私は超越者ですら無いからどれだけ凄まじいのかなんて分からないんだけどね。
「超越者になるにはどうしたら良いんでござるか?」
「・・・・・・儂の後追いは出来るだけやめた方が良い。意図してなるような代物では無いからな」
意図してなるような代物じゃ無い?
それに、余り言いたくなさそうな雰囲気を漂わせてる。
試練がとかそんなんじゃない。
もっと致命的な何かがあるんだろう。
「儂は知らんが、違う覚醒方法をダイアルが知っておる。力を付けて奴から聞き出す方が良いだろう。と言っても、なるときはなるものだ」
偶発的だけど私でも普通にあり得る?
なるときはなるものだってそう言う意味に聞こえる。
偶発的に起こるのは条件満たしていれば、そこまで厳しい代物じゃ無いのかな?
でも、教える気は無さそうだ。
「さて、このことは忘れろ。どのみち其方は条件を満たしておらん。武技を教える。手本を見せる」
「分かったでござる」
オルファンさんが構えた。
腰を低くして刀を構える。
「ハァ!」
訓練所にある人形に向かって素早く剣を振るう。
その軌跡は殆ど分からなかった。
刀が振られたという事実を、人形が切断されたことで分かったくらいだ。
「居合斬り、それを武技に落とし込めた代物。【居合一閃】と呼ぶ居合斬りの基礎ともよべる武技だ」
「【居合一閃】・・・・・・」
余りにも速すぎて見えなかった。
居合って確か・・・・・・
「最速といわれてる居合斬りの武技でござるか」
「最速、それは違うぞ」
私の言葉を否定された。
え、居合斬りって最速の斬りじゃないの!?
「何と比べて最速といわれてるのかは分からんが、居合斬りが最速であるというのは間違った認識だ。納刀した状態から相手の攻撃をどうにかするために、最速で刀を抜く技術、それが居合斬りだ。実のところ抜刀状態の方が攻撃速度は速い。あくまでも不利な状況を覆すために洗練されてきた技術だからな」
そうか。
最速と言われてるのは、刀を振る早さでは無く抜刀しながら攻撃する速度のことなんだ。
「居合斬りとは牽制、後の先によるカウンターが主な使い方だからな。本当の意味で速度を突き詰めるなら、抜刀状態で新たな武技を編み出した方がいい」
カウンターね。
後に出て先に攻撃する。
これ自体は速度は関係ない。
立ち回り次第では剣速が遅くても先に当てられるのだから。
「カウンター以外では当てられないんでござるか?」
「対人相手だと、よほど格下か居合を知らぬ相手でもなければまず当てられん。攻撃軌道が単調だからな。鞘から抜きつつ斬りつけるという動作故に、どうしても攻撃範囲が限定されるからそれを見切られてしまえば防御回避は容易だ」
言われてみれば確かにそうだ。
自分の強さに酔って相手を見下す典型的な戦闘者みたいなのだと、仮に格上だとしても当てられそうだけども、オルファンさんみたいに真面目な人だと当てられそうに無い。
というか、ホムラちゃんやコクウちゃんにも避けられるだろう。
「つまり、カウンター限定の技でござるな」
「いや、モンスター相手には効く。それに、居合ならではの火力強化手段がある」
モンスターには効くんだね。
知恵があるモンスターにはしばらくしたら効かなくなるんだろうけど・・・・・・
兎竜みたいなのだと普通に対処されておしまいな気がする。
でも、強化手段って一体何だろうか?
「居合ならではってどうやるんでござるか?」
「居合と普通に刀を振るった場合。何が違う?」
あ、これ普通に答える気無いね。
私が正解を解答するまでそれは秘密にする気だ。
でも、そうなるとそこまで難しいことでは無いんだろうね。
・・・・・・普通に刀を振るのと居合で何が違うか?
納刀状態で刀を抜刀するという手順が挟まることかな?
納刀? まさか・・・・・・
「鞘でござるか?」
「正解だ。そう、鞘を使う事で短時間の強力なエンチャントを施せる。普通に振るってたんじゃ、そう簡単には強力なエンチャントは付与できん。納刀状態にしエンチャントを施す。その始まりの一太刀こそが居合系武技の真骨頂だ」
納刀状態だから刀身全体をエンチャントしやすいんだ。
しかも、鞘自体には攻撃とか考えなくて済むからそういうエンチャントのしやすさに特化した代物として作れる。
でも、エンチャントって確か付与術だよね?
錬金術の・・・・・・生産適性だよね?
「付与術使えないんでござるが・・・・・・」
「戦闘系付与の基本なら無くても出来る。上等な代物となると適性が必要なのだがな」
ってことは、最終的には付与術を手に入れなきゃいけないってことね。
となると、切断術とか使える錬金術関連の技術でどうにかして錬金術だけの適性を上げないと・・・・・・
料理で手に入れた解放値を錬金術の解放には使えないからね。
最低でも料理の適性を100にしないと他の所に使えないようになってるからね。
勢いよく成長してたけど、そろそろ鈍化し始めてるから100なんてかなり遠い。
だから錬金術に手を出さないと駄目なんだろうね。
「其方の実力だと、完成させたところで抜刀状態での二撃目を使う事など出来ぬだろう。付与術の適性がないならなおさらだ」
使えたとしても居合斬りだけしか駄目な訳ね。
発展させるには付与術の適性が必要になってくる訳か。
となるとやるしかないよね。
上手く行くかは別としてね。
「だから、武技を習得して終わりでは無い。始まりなのだ。それを頭に入れ武技を身につけるんだ」
「分かったでござる」
【居合一閃】は最初の一歩。
たとえ習得出来たところで完成はしていない。
本当の意味で完成させるには、鞘を介した付与術を完全にマスターしてからだ。
それまでは不完全な武技として見るしか無いね。
「では、まずは居合斬りからだ。居合斬りがまともに出来ぬようでは【居合一閃】を身につけることなど出来ないぞ」
武技は基本が出来てないと形には出来ないよね。
それじゃあ、基本をやっていこう。
・・・・・・そういえば。
「付与術を用いた【居合一閃】はどうなるんでござるか?」
「ああ、少なくともここで扱えるものではないな。流石に超高火力の一撃をこんな低ランクの訓練所で使ったとなれば何が起こるか・・・・・・付与術使うと流石に単体の【居合一閃】みたいに加減はできん」
ってあのお手本自体加減したものだったの!?
さ、さすがは戦闘に特化したスペシャリストだね。
真面目にやればしっかりと強くなるんだね。
戦闘者じゃなくても、オルファンさんなら強かった気がするけどね。
「この事態が終わって、其方が外出出来るようになったらちゃんとした施設のプライベートエリアで見せてやる。ただし、それまでに居合斬りをものにして見ろ」
「分かったでござる」
鞘から高速で抜いて斬りつける。
それだけだけど、結構難しい。
どうすれば良いのかを居合斬りを撃つ度にオルファンさんが教えてくれるけども・・・・・・
一朝一夕には習得出来そうに無いね。
「居合斬りを百回やったら今日はここまでだ。あとは、武技を扱うための力である闘気を高める瞑想を行う。故に力を込めて全力で行え。後の体力に気を配るな」
一回一回を全力で行えって事ね。
闘気を高める訓練はそこまできつくないからね。
むしろ、戦闘で使う闘気を空っぽにした方がいいからね。
なら、一回一回を全力でやっていこう。
ホムラ「闘気って何?」
コクウ「闘気知らないであんな武技作り出したのか・・・・・・」