◇ ◇ Sideコクウ 謎の迷宮 ◇ ◇
「あはは、君の力を見せてくれよ。【ズドライ・ヒュフト】」
空気の玉を男は打ち込んでくる。
ボクは、軽く避けるのでは無く勢いよくその場から飛び退いた。
壮絶に嫌な予感がしたからだ。
そして、その予感は当たっていた。
空気の玉が着弾した瞬間、とんでもない爆発を引き起こしたのだ。
恐らく、あの空気の玉のなかにはとんでもない気圧の空気が入っていた。
それが破裂したことによってここまで凄まじい爆発を引き起こしたのだろう。
「へぇ! 分かるんだ。中位呪文並みの力があるとは言え、フェーズ3にしただけの初期呪文だ。特に【ヒュフト】ともなると見た目では分からないはずなんだがなぁ」
ペラペラと喋ってくれてありがとう。
確かに見た目では分からなかったよ。
恐らくだけど、ズドライというのがフェーズ3とかそんなのを表す呪文の単語なんだろう。
フェーズ3ってことは当然フェーズ2もあるんだろうね。
初期の呪文だからフェーズ3を使えたって可能性あるから、フェーズ2でもさっきのより強力な呪文跳んでくるかも知れない。
そもそもこいつの使う呪文というのが一切分からないから全てに対して警戒しないと不味いだろう。
「いいねいいね! フェーズ2の存在、それが更に強い可能性も警戒している! そうさ! その通りだよ!」
めんどくさい。
ペラペラ喋りまくるおかげでコイツの思考を読み取る力が働き過ぎる。
耳を塞ぐとか出来ないから、どうしても聞き取ってしまう。
ペラペラと内情喋るだけで思考読み取れるのってインチキすぎるでしょ。
「しかし、不可解だ。さっきの視線の力を連射してこない。なんでなんでしょうねぇ?」
これは、普通にばれてるね。
【雷撃の邪眼】が連射が効かないことに。
一度放てば三分は使えない。
一度の戦闘で三分は長すぎる。
会ったこと無い姉は別の邪眼でフォローしていたらしいけど、生憎姉の持っている全ての邪眼を使う事は出来ないんだよ。
だから、数少ない手札の使える力で押し通すしかない。
今も、使っているけど・・・・・・今まで使ってこなかったツケが回ってきていて効果を発揮するまでに時間がかかる。
コイツがボクの行動をみたいと思わせ続けて時間を稼がないといけない。
だが、効果を発揮する過程でひょっとすると・・・・・・
「う~ん、なんかよく分かりませんが大分冷めて来ちゃいました。おかしいですねぇ。実におかしい。ひょっとして、貴方・・・・・・私に干渉してますねぇ!?」
ばれるよね。
流石に興奮している研究者気質の相手に仕掛けたらそりゃばれるよね。
自分の興奮が理由も分からず冷めていくのを分析して答えを導き出すのも当然だ。
「興奮、というよりも感情でしょうか? どんどん失われてますね。最も、根源から奪うのでは無く発生した感情を奪うという代物でしょうか? 興味がわいてきたおかげで奥底から歓喜の感情があふれ出てますからねぇ。失われるよりも多いですよぉ!」
そう、ボクの力は感情を自他問わずに奪うという代物だ。
自分の感情はボクの意思関係なく強制的に全てを奪い取り、他者の感情を奪うことだけをボクの意思に託している。
正直最低な力だ。自分は奪われるんだから他人のも奪って良いみたいな感じの力なのだから。
強欲さを押しつけ、強欲に育て上げる強欲のアンノウンの力、それこそが感情燃動力炉だ。
「興味が尽きません! その力は何なんですか!? 感情を奪うだけ!? 違う! よく見ると貴方は感情の仮面を貼り付けている。つまり、その力の対象は貴方自身も含まれる! 不可解です! 自分まで対象にするような感情を奪う力なんて妙です! となれば、その力の正体は! 見てみたい! 見てみたいですねぇ!」
男は興奮しすぎて、かけているメガネをガタガタと揺らしている。
揺らしすぎてレンズが片方外れたよ。
興奮しすぎだろコイツ・・・・・・
「ふふふ、私の名前はザフキエル。天使騙りのビナー担当って所ですね。保有するフィセラは【ザフキビナー】ですよ」
ザフキエル。確かに天使騙りだ。天使の名前を騙っているしね。
天使騙りという集団は全員天使の名を騙っているのかな?
ビナー担当とか【ザフキビナー】の意味はさっぱり分からないけど。
「なんで今更名乗ったのかな?」
「謎の多い貴方に敬意を表しただけですよ。正直、私は貴方を連れて帰りたい気分ですが、それやると他の奴らはやれ危険だの排除だので面倒ですからね。それに、貴方に課せられた適性の制約の解除手段をこちらは持ち合わせていません」
こいつ、普通に仲間を裏切るつもり満々だな。
天使騙りって集団は一枚岩じゃ無いって事なんだろう。
ひょっとすると、例外がコイツだけかも知れないけども・・・・・・
「つまり、ボクの力を見るだけ見て帰るつもりか?」
「そうですね。殺せるなら、それも良いでしょう。それが私の運命だったと言うことなので」
予想はしていたけど、コイツは自分の死すらいとわない狂人みたいだね。
死なないと分かっているからではなく、本当に死んでも良いと思っている。
「狂ってるな」
「狂ってますかぁ? そうですねぇ! かつて勇者と呼ばれたこの私の一つの末路ですからねぇ! 天使騙りも私の興味がわくからこそ協力しているだけ! 奴らも私を殺すことが出来ず、かつ私自身が協力するからこそ一員みたいになっているだけで実質制御不能の爆弾みたいな扱いです!」
制御不能の爆弾って、それ自分で言っちゃうのか。
でも、かつて勇者と呼ばれた人の末路か。
狂ってしまうだけの何かがあったのかもしれない。
言っていることはでたらめではなく、本当のことしか話してない。
つまり、勇者というのは本当だということだ。
しかも、自分がどう思われているのかも理解しながら平然と仲間になるというイカれっぷり。
本気で何があったんだろうか?
これは、向こうが最初からその気ならやられていたのはこっちかも知れない。
向こうがボクが切り札を使うことを承知の上でそれでも本気を出してない。
その方が色々と知れるからという理由だけで。
使わないという手は無い。
興味を失せれば速攻で仕留めにかかるだろうし、どうしようもない。
だから、ボクは本気を出し続けるしか出来ない。
感情を奪うのは感情燃動力炉の福次効果だ。
本格的に動き出すなら、もう少し出力が安定してからだ。
「いいですねぇ! 使わなかった力を研ぎ澄ますつもりですか。いいですよぉ。使えるようになるまで付き合ってあげますよ」
「本当にやりづらい。何処まで思考読まれてるか分からないとなるとね」
差し込んだ情報を元に考えると情報を抜き取るという代物なんだろうけど、コイツがペラペラ話しまくるせいで、どこから何処まで情報が抜かれてるのか分からないのが最悪だ。
というか、さっき意図的に情報明かしたのってそう言う意図もあったのだろうか?
だとすると、相当タチ悪いよ。
私は力を回す。
どんどんと、回していく。
槍が耐えられるかなんてもう知らない。
無理矢理にでも修復する。
「纏え・・・・・・」
四女の力である付与の力、それを行使する。
付与する物は決まっている。
そもそも、今ボクの手元には付与出来る物はこれしかない。
「【
雷撃の邪眼を槍に付与した一撃を放つ。
この方法だと、冷却時間が大幅に減る。
視線による攻撃じゃなくなるという理由があるからだろうね。
比較的連射しやすいボクの武技だ。
最近身につけたばかりだからかなり粗めだけどね。
槍はザフキエルの本体である本を貫いた。
というか、ザフキエル自体が意図的に当てに行った。
本気で死ぬことを恐れてないね。
「グブゥ・・・・・・凄く痛い! 本当にダメージが本腰から響いてる! 殺しきる事は出来ずとも私に本当の意味でダメージを与えられる存在なんて初めてですよぉ!」
本は傷一つ付いていない。
やはり、今のボクではダメージを与えることは出来ないみたいだ。
作者「なんか、ザフキエルに変な設定生えてきた! でも、全体的にキャラ薄めだったしよしとしよう」
コクウ「何がよしだよ。勇者でしたとかいう設定が敵に使われてるって割とおかしい話でしょ」
ザフキエル「旧作ではクラフティングの方の三章で初登場した割りにはかませ犬でしたからねぇ」
コクウ「旧作でも出てきてるんかい! しかも、かませ犬って・・・・・・どんな登場の仕方したんだよ」