青(魔導具)のすみか   作:タンペペン

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ご め ん な さ い

ブルアカにかまけてこちらを疎かにしてました




10ターン目

「───なぁ夏油~」

 

「なんだい悟」

 

「暇だな~」

 

「奇遇だね、私もだ」

 

どこが奇遇だよ、と横で手足を脱力しながら椅子によりかかっている夏油を見る。窓越しに空を見上げれば、太陽が意気揚々と天頂に昇らんとする真っ只中。

 

……あれから約二ヶ月。特に何事もなく時は過ぎ、遂に夏休みに突入した。世間の学生が長期休暇に沸く中、俺と夏油は教室で暇をもて余していた。

 

硝子はスイーツを食べ歩いていて、蒼真は夏休みなのに普段と変わらず任務中。むしろ夏休みには行楽地で呪いが発生しやすいから普段より多く任務がやってくるらしい。

 

『はあ……なんでコイツの無茶に付き合わされた挙句翌日に任務なんだよ……休みくれよ……』

 

そう文句を言いながらも気怠げに任務に向かうアイツの背中には高校生とは思えない疲労と哀愁が漂っていた。

 

「いや、哀愁はどうだか知らないけど、疲労は悟が夏休み初日に東京のゲーセン全部を巡ろうだなんて言って無理矢理私と蒼真を連れ出したせいじゃないか……」

 

「そうかぁ?」

 

アイツ楽しそうだったじゃん、とあまり納得いかずに口を尖らす。一応格闘ゲームには滅茶苦茶自信があったのに、アイツにヴァンパイアセイヴァーでボコされた時のアイツの笑顔を考えると、納得がいかない。

 

……思い出すとイライラしてきた。まだアイツの術式の全貌すら見せられず、ゲームでも負けるというのはかなり癪に障る。

 

「あ゛あ゛~”っ゛なんかまたムカついて来た!!早く帰って来いよ蒼真!!今日こそ本気を出させてやる!!」

 

苛立ち……いや、ムカつきに耐えられず、大声をだしてそれを発散する。そんな俺を見て、夏油が呆れたように溜め息を吐いた。

 

「全く君は……蒼真は忙しいんだ。分かるだろう?何せ、彼は現時点で日本に居る唯一の特級術師。小回りと汎用性を備えた術式を持ち、任務で周囲に被害を及ぼす事も殆ど無い。さらにどんな任務でも素直に遂行してくれるとなれば上にとってこれほど使い勝手の良い駒は居ないんだ。だから蒼真が悟に構っている時間なんて殆ど無いのさ。」

 

まるで子供に諭すように話す夏油に苛立ちのボルテージが上がる。が、これはアイツも言っていた事だった。

 

多彩な『堕呪』で臨機応変に対応できて、多数の特級相当の式神も完璧に制御し従わせている。さらに式神は飛行能力を持っているから地形的に人が入りにくい場所でも問題なく呪霊を討伐できる。

 

我ながらあまりに都合が良すぎる人材になっちまったな~、とアイツは苦笑していた。

 

「ハイハイ、分かってるっつーの。はぁ……」

 

もう文句すら浮かびなくなり、口を閉じる。

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

再び、教室が静寂に包まれる。

 

 

鼓膜を揺らすのは、エアコンの冷気を送り込むゴウゴウという微かな音と、遠くに幻聴のように絶え間なく響く蝉の声だけ。

 

まるで、この教室の中だけ時の流れがゆるりと遅くなっているような、安らかな──

 

 

「そう言えば」

 

不意に、夏油が口を開く。遅かった時流が一気に速くなり、安らぎは泡沫の如く消えた。名残惜しさを心に溢しながら、夏油の方に向く。

 

「蒼真が入学してきた時、『呪力を無駄に消費するだけのゴミみたいな術式』と言っていたね、悟。あれはどういう事だったのかい?六眼は正確なんじゃないのか?」

 

 

「……ちっ、覚えていたのかよ……」

 

勿論、と薄く笑う夏油に、なんでそういうことばっか覚えてんのと思わず瞼を閉じて溜め息を吐く。

 

「……先ず最初に言っておくけど、オレの六眼に間違いは無かった。六眼で捉えた情報は絶対に正確だし、どんな術式でも、これに例外は無い。」

 

「……?でも、それじゃ」

 

「ああ、そうだ───アイツの術式は、本来何の意味も成さないモノの筈なんだ。」

 

「……しかし、現に蒼真は入学数ヶ月で特級にまで登り詰めた実力者だ。術式だって、かなりのモノを持っている。」

 

 

「……少し語弊があったな。本当に何一つ効果が無いわけじゃねぇ。アイツの術式効果の一例を挙げるぞ」

 

「……頼む」

 

「……『堕呪:カージグリ』『コスト3』『魔導具』『呪文』『シールドトリガー』『相手のクリーチャーを一体手札に戻す』」

 

「は?」

 

「『堕呪:ゴンパドゥ』『コスト2』『魔導具』『呪文』『シールドトリガー』『自分の山札の上から三枚を見て、その中からカードを一枚選び、手札に加える。残りを好きな順序で山札の一番下に加える』」

 

「訳がわからないよ」

 

「……どうだ?意味わかんねぇだろ?」

 

「ああ。クリーチャーとかシールドトリガーとか、意味の分からない単語が多すぎる。辛うじて山札や手札は分かるけど、まるで花札のようだ。こんな術式を彼はどうやって扱って───」

 

「───解釈だ。」

 

 

「え?」

 

 

「アイツはな、このバカみたいにイミフな単語を一つ一つ自分なりに解釈を現実世界に拡張してあの術式を使っている。」

 

「バカな、そんなことは不可能だ。解釈の拡張は術者がその解釈をまるで当然かの如く認識していないと成り立たない。シールドトリガー、コスト、その他の意味不明な単語群の意味を理解したその上で、現実世界上の概念と確信を持って一致させる必要がある。」

 

「ああ、そうだよ。アイツはそれを成したんだ。……いや、成したという感覚すら無いかもしれねぇ」

 

「なに?」

 

「この前のアイツの術式証明?に巻き込まれた時、オレはアイツの魂の一端を見た。……まさか魂そのものにその単語の意味が刻まれているとは思わなかった。」

 

「なっ……」

 

「アイツにとって、その意味不明な単語は意味不明じゃねぇんだ。アイツには意味が手に取るように分かるし、それを現実世界に拡張することも、当然のように出来る。意味さえ分かれば後は解釈でどうとでも弄くれる。」

 

「アイツの術式の根源は、アイツの桁外れの魂と、それに刻まれた青魔導具の『本質』、その2つだ。」

 

 

 

「なるほど……」

 

 

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「……あの術式証明に巻き込まれた時の事なんだが」

 

「……?」

 

「……あの時オレの眼に映ったのは、今の日本とどこか似ている街だった。その中で、アイツに似た顔の大学生かそこらの男が街を友達かなんかと歩いていたのを覚えてんだ。」

 

「……アイツによれば、『永転(ループ)』は魂に刻まれた情報や経験、記憶を永続的に相手の脳内に流し込む術式なんだと」

 

 

 

「……アイツには、何が見えてんだろうな」

 

 

 

「……さあ。」

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

「……僕の術式はタクシーじゃねぇんだぞ」

 

「んー、別に良くない?」

 

 

───夏の青く澄んだ大空を背に、白き神鳥が舞う。

 

……現在僕は任務からゼニスザークに乗って帰還中だ。今回はそんなに強力な呪霊の出現はなく、高くて2級、3級の雑魚ばかりだった。もうそんなんだったらわざわざ特級の僕が行くより現地の術師を使えよと言いたかったが、というか実際言ったが、「大金払ってるんだから当たり前だよね?(意訳)」と言われた。

 

……くぉれは舐められてますねぇ!!ふざけんな、というわけで現在僕は大変不機嫌です。

 

 

「……ふーん、大変なんだねぇ特級術師って」

 

まるで他人事のようにアイスを頬張っている家入さん。任務の帰りに寄ったスイーツの店でばったり遭遇してしまい、足が疲れたという理由でついでに拾わされる羽目になった。……この距離くらい徒歩で頑張れと言いたかったが、僕には美少女のお願いを拒否できない……!!

 

「大変だよ特級術師は……一応僕一人で国家転覆出来るのになんでこんな扱いなんだ……」

 

「なんでって……そりゃアンタが上からの指示にちゃんとホイホイ従う唯一の特級だからじゃん。自分で言ってたよね?」

 

「くっ……僕の気分次第でこの国滅ぼせるんだぞって事で……」

 

「なに?そんな勇気アンタにあるの?」

 

「無いです……」

 

「よろしい」

 

 

これだから僕って奴は……!!力に対して感性が一般人過ぎるんだ……!!おかげで良いように使われて使い潰されるんだよ……!!

 

……情けない自分に悲しくなり、思わず顔を手で覆う。指の隙間から滲み出した涙が風に飛ばされて行ったのは多分気のせいだ。

 

「やっぱ悟みたいに我が儘になった方がいいんだろうか……そしたらもう少し任務が減ったり……」

 

「それはやめて。アイツがもう一人とかマジで考えたくない。」

 

「……そうだな」

 

硝子の割と悲壮な言葉に一瞬で考えを却下する。これ以上硝子に迷惑を掛けられねぇ……

 

「……私としては今のままが良いと思うんだけど」

 

「へ?」

 

「だってほら、呪術師ってイカれてる奴多いし……ある程度常識持ってる奴が力を持ってればイカれた野郎が暴れ出してもすぐ解決できるじゃん。」

 

「……まぁ、それはそうだが……」

 

「あと扱いやすい、よくパシられてくれる。」

 

「うるせぇ!!」

 

「ごめんごめん。お詫びにアイスあげる。」

 

「マジすか!?」

 

「ちょろ」

 

「クソがぁ!!」

 

アカン、情緒が乱高下しすぎて墜落しそう……

つかメチャクチャ笑われてるんですが……ぐぬぬ

 

「あはは!!やっぱ蒼真は揶揄いがいがあるね~」

 

「……はぁ……」

 

「ほら、アイス。」

 

笑い涙を目に浮かべながら硝子がアイスクリームとスプーンを手渡してくる。からかわれたことに不機嫌になりつつも、甘い物は欲しかったので受け取る。

 

風で飛ばされないようにしっかり手で掴むと、アイスクリーム容器の冷気が手に伝わり、水滴が指先を伝う。

 

「じゃ、いただきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……待って、これ食べかけ?」

 

 

 

「……あ」

 




今もう一回懐玉・玉折を見直している所です
こんな作者ですが宜しくお願いします

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