青春の角に箪笥とゴリラ   作:やんま

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もうちょっと昔

 

 

「大当たり〜!2等高級松坂牛焼き肉セット〜」

 

 とある商店街でくじを回した。俺は運がないからやめといた方がいいと言ったのに、無理やりハンドルを握らされた。出てきたのは見たことのない黄色の玉。今、己の人生で一際おかしなことが起きているのを感じる。幸運とは無縁の人生だったから。人より何倍もいい耳に残るはずの重たい鐘の音も、何処か膜1枚遠い。帳尻合わせでこれから悪いことが起こるのではないかと考えたところで、現実に引き戻された。袖を引っ張られたのだ。

 

「やったー!焼き肉なんて久しぶり!どうする?野菜買い足しちゃう?」

 

太陽みたいな笑顔で女が言う。俺はもう不幸じゃない。

この袖の重さが俺の幸せだった。

 

「いや、もっと肉が欲しい」

 

手を繋いで夕日に染まる帰り道を歩く。

 

「お肉ってあるだけで幸せ〜!このお肉を連れてきた君は差し詰め幸福の使者!」

「バカなこと言ってんな」

 

幸福を連れてきたのは女の方だと思う。女がいるだけで幸せだったし、女といるだけで帰りたい場所もできた。

 

「君がいるだけで幸せ100%!しかも両手に大量の肉を持っているから、プラス120%!合わせて幸せ220%!最強じゃない?」

「バカの計算式じゃねーか。しかも肉の方が数字がデケェ」

 

軽く頭をはたくと女は大袈裟に首をすくめ、このゴリラめもうちょっと力を抑えなさいと笑う。貧弱。この幸福は少し力を入れただけで壊れてしまうものだ。

失いたくないと思う。危ない目に遭わせたくないと思う。

 

「まぁ、いざというときは抱えて逃げりゃあいいか」

「えっなになになんの話?」

 

幸福の話。

 

「重さの話」

「なんで急に体重の話になってるの……?今日は目一杯お肉食べるんだからダイエットの話とかは明日以降にしよう?」

 

別にダイエットとかはしなくていい。どれだけ重くなってもいい。元気でずっと隣にいてくれるだけでいい。きっとこの無駄に頑丈な体はこの幸福を抱えるために生まれたのだ。

──そんなひと昔前の自分が聞いたら鼻で笑いそうな考えをするようになったのも、きっとこの女のせいなんだろう。

でもそんな自分は嫌いではなかった。

 

 

夕日の道の先。

向こうの角から眼鏡の男が出てくる。キョロキョロと何かを探しているみたいだったが、こちらと目が合った瞬間笑顔になり立ち止まった。嫌な予感がする。

 

「あっいた、そこのカップルさん!特に口元に傷跡があるナイスガイの方ー!止まって下さーい。ちょっとお聞きしたいんですけどー、さっき箪笥通りでt──」

 

女を抱えてダッシュで逃げた。幸福は目を回していた。

 

 

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