「さあ、教えてもらおうか。お前は、アスラなのか。そして、何故リュウセイやラトゥーニの名を知っているのか……という事もな」
ユウの耳に、イングラムの声が反響するように聞こえてきた。なんなら、リピートしているような気がする。
『ユウ?何をそんなに怯えているのですか?彼は連邦軍の中でも、貴方が安心出来るほどの存在である、ハガネのメンバーですよ』
『そういう問題じゃなくて、この展開はマズイ!この頃のイングラムはこの騒動の……そして、これから起こる騒動の殆どに関わっている黒幕に操られているから、何とかして誤魔化さないと……!!』
前回の反省を活かして、カリ・ユガとの会話に対して口で返答するのではなく、念話で対応する。
下手な事をしてしまえばデッドエンドシュートされてしまうこの状況。ソレが焦りを募らせる。唯一の救いは、この時期はまだ枷がそこまで強まっていないということだろうか。
逃げる事は容易いが、たとえ逃げても問題を先延ばしにしているに過ぎない。それに、バイト先が割れている以上下手な事は出来ない。今の連邦軍なら尚更だ。
仮に襲われたにしても、カリ・ユガの力をもってすれば対処は容易い。なんなら、エアロゲイター等指先ひとつでダウンだ。懸念点は、この世界に存在するかもしれない霊帝位なもの。
仮にカリ・ユガが君臨し、全ての敵を打ち倒してしまえば、地球を支配する事は容易いだろう。何せ、守護女神として勝手に信仰してくれるのだから。サルース!
だが、安易にそんなことをしてしまえば、主要人物の成長の機会が無くなってしまう。そして、戦える剣が極端に減ってしまい、いざと言う時に詰みに成りかねない。破滅の王案件がその筆頭だ。
下手に出しゃばって鋼龍戦隊の成長フラグを潰した結果、この宇宙は滅びました。ではシャレにならないのだ。
「もうコイツ1人でいいんじゃないかな……」案件はNGである。
「どうした?答えられないのか?」
どうやって乗り切ろうかと思考を重ねている所に、イングラムの手がユウの肩に置かれた。
今のユウは半分パニクっており、必死こいてグルグルと考えを纏めようとしている所だ。そんな集中している中、急に手を置かれてしまったユウは思わず叫んでしまった。
「カリュガ問火銀こヴ脳ぎ大怒ジまてぃクパジェもムビ百合いナ御いレくェンッッッ!?」
「……すまないが地球の言語で喋ってくれないか?」
「……自分の掘った墓穴の中に入って鍋パした後ブラジル行ってリオのカーニバルしたい」
「何がどうしてああなったんだ」
ユウの支離滅裂思考、発言に、イングラムはちょっと引いた。いや、ドン引きしたと言ってもいいだろう。
さっきまで普通に会話ができたと思ったら、急に奇声を上げたのだから。いや、もしかしたら電子音かもしれない。
なんならその時の容姿すらも歪んでいた。例えるなら、アニメで大規模な電流を浴びたギャグキャラのような感じだろうか。イングラムの目の前の少女は人間じゃねえのか?
もちろん、引いたのはイングラムだけでは無い。アスラの事が気になって見に来たというギャラリーも対象だ。ガーネットとラトゥーニを除いて若干引いている。
『……ユウ。少し変わってください。私が事情を説明します』
『わ……分かった』
ユウは目を閉じ、手を組んでお祈りをするような構えを取った。その姿に何事かとこの場にいる全員が疑問符を浮かべる。
すると、ユウの身体が光の玉に覆われ、そのシルエットを変えていった。それは、ここにいるメンバーが見た事あるフォルムへと。
「……驚いたな。特機サイズのアスラが、まさか人間サイズに変化するとは……」
「お望みなのでしたら、戦艦サイズになる事も可能ですが」
「……このままで頼む」
その場にいた者はその光景に驚いた。何せ小学校低学年位の子どもが、いきなりイングラムサイズの人間になったのだから。
しかもその姿は映像で。リアルで見たアスラの姿だ。
獅子の兜を装備している、8本腕の金髪の美女。常に目を閉じている姿は、神秘的な聖職者を彷彿とさせる。
それに対して女戦士のような鎧を装着しているという、イメージとは真逆の衣装だ。回復と物理攻撃、両方に特化してそう。ちなみにヘビと武具はオミットしている。
「では、改めて自己紹介を。私は、輪廻するユガそのもの。名をカリ・ユガ。この宇宙を守護する、破壊と輪廻の神です」
「破壊の神だと!?」
「ヴォルクルス……などという邪神と一緒にしないでいただけますか?風の魔装機神に選ばれた者、マサキ・アンドー」
「……!!」
破壊の神という単語にまっさきに反応したマサキに、カリ・ユガは軽く訂正する。
他の面々は「なんのこっちゃ?」といった反応だが、ピンポイントで当てられたマサキの顔に動揺が走った。
魔装機神とは、ラ・ギアスに4機しか存在しない伝説の人型機動兵器の名称だ。例えるならばRPGや神話にある勇者にしか抜けない剣のようなものである。
地上だとシュウ以外知らないはずの事を知っており、尚且つ神話でしか聞いた事がないヴォルクルスの存在まで把握している。南極事件の時点ではシュウや己と初対面であったにも関わらず、だ。
カリ・ユガとマサキの視線が交錯している中、話の流れを戻したいイングラムは手を鳴らした。
「……ふむ。ユミ・キサラギがアスラだということは理解した」
「アスラではありません。カリ・ユガです」
「これは失礼した。では次の質問だ、カリ・ユガ。ユミ・キサラギは、何故リュウセイやラトゥーニの名を知っている?ついでにマサキ・アンドーについてもだ」
「俺はついでかよ……」
これも、イングラムには重要な案件だろう。リュウセイ・ダテは、既にR-1という重要な新型機を起動させた軍人。ラトゥーニ・スゥボータは、悪い意味で有名な〝スクール〟出身の少女であり、人型機動兵器の操縦に優れ、生身ではSP数人分の強さを持っている。そんな2人を……特にラトゥーニを何故知っているのか?
その事についてイングラムは聞くが、カリ・ユガは冷静に口を開いた。
「さあ、何故でしょう?私からの神託かもしれませんし、並行世界の住人だからかもしれませんし、黒の英智の影響かもしれません。……いいえ、もしかしたら虚憶を思い出したからかもしれませんよ。イングラム・プリスケン」
「……真面目に答える気は無いということか。まあいい、次の質問だ」
可笑しそうに答えるカリ・ユガ。とりあえず当てはまりそうなものを全部ぶち込んでいくスタイルだ。脳筋にも程があるのでは無かろうか。
イングラムはカリ・ユガの発した単語に反応し、ぴくりと眉を動かしたが、気にせずに質問を続けていく。
イングラムはカリ・ユガに幾つか質問を投げかけるが、きちんと答えたものもあれば、のらりくらりと誤魔化されたのもあった。
「では、最後の質問だ。……お前は、敵か?それとも味方か?」
その言葉こそ、イングラムを含むハガネのメンバーの疑問であった。
リュウセイやジャーダのように味方だと信じている者も、ライやアヤのように目的が分からない為に警戒している者も、マサキのように怪しんでいる者も全て等しく。
「……」
相手は神を名乗っている。普段なら「何を馬鹿な(笑)」と流すところだろうが、ハガネ隊はカリ・ユガの強さを目の当たりにしている。
太平洋でのエアロゲイター戦の膨大なエネルギーと、大量の敵のみを葬った強力なMAPW。たとえ神でなくとも、その圧倒的な戦闘力はまるで南極事件やスターバク島でのグランゾンを彷彿とさせる。
その相手が今、人間サイズで目の前にいるのだ。警戒して当然だろう。
「私は……」
カリ・ユガが漸く口を開いた……その時だ。
「な……なんだ!?」
ハガネの船体が大きく揺れ、爆音が艦内まで聞こえてきた。
それと同時に警報が鳴り響き、ハガネのオペレーター、エイタ・ナガタの艦内放送が全員の耳に入る。どうやら、エアロゲイターの奇襲を受けたようだ。
「私が敵か味方か……。それは私の行動を見て判断して頂けませんか?」
「それはどういう……」
リュウセイがどういうことかと説明を求めている間に、カリ・ユガは魔法陣を展開する。
「さあ、行きますよ、ユウ。そろそろ起きなさい」
『あと5分……』
「起きないと後頭部をグーでパンチしますよ」
『家庭内暴力だ!!』
交代した時に寝ていたユウを起こし、カリ・ユガは転移する。
ハガネの近くにいる、エアロゲイターを倒すために。
カリ・ユガ「追加戦士はミステリアスであると相場が決まっています……!!」
カリ・ユガは人間サイズだと絶対高身長でしょ。
イングラム「鍋パか……隊の交流を深める為に、採用してもいいかもしれんな」