ユウ「そんなものありません!それに、戦いの衣装じゃないでしょソレ!……カリ・ユガに似合う水着ってなんなんだろ?」
アイドネウス島にある、DC本部。大きなモニターと、大量の電子機器がある管制室と思わしき部屋で男の老人は焦燥に駆られていた。
「な……何をしておる!さっさとハガネを沈めんか!!」
モニターをガン見し、目を見開き、大声を出しているのはアードラー・コッホだ。顔に金属片を付けている爺はツバを飛ばす勢いで兵士達に怒鳴っている。
「し……しかし、目標は強力なエネルギーフィールドを展開しつつ、高速で海中を進んでいるんですよ!!」
索敵をしているオペレーターがそう苦言するが、アードラーは慌てるばかりだ。
頼りにならない副総帥の爺にげんなりしつつも、自分たちの仕事をこなしていく。そんな兵士達の士気は高くはない。
そんな時、大きな音と同時にモニターに黒い煙が大きく映った。砲撃班が撃った攻撃が直撃したのだ。
「よっしゃ!砲撃命中!」
「よ……よし!コレでさしものハガネも……」
砲撃班からの報告に、アードラーは安堵した。
ここは天下のDC本部。迎撃システムも支部とは比べ物にならないほど高性能だ。
「……!!ハガネ、健在!ダメージというダメージは見受けられません!」
「な……なんじゃと!?砲撃班!ちゃんと命中させたんじゃろうな!」
「副総帥はさっき何を見てたんスか!?クソ!もう一度俺が……ん?」
だが、幾ら迎撃システムが高性能とは言っても、所詮は迎撃システム。相手がスペースノア級戦艦では分が悪いにも程があった。
しかも、相手はエネルギーフィールドという、攻撃にも防御にも使える万能なバリアを張っている状態だ。ガーリオンの物よりも高性能なバリアを搭載しているハガネが相手だとナマクラもいい所である。
そんな時だ。砲撃をハガネに直撃させた兵士が驚いたような目でモニターを見ていた。
「あ……アスラです!アスラがものすごいスピードで海中を進んでいます!!」
モニターに映し出されたのは、腕が8本ある金髪の巨大な女、カリ・ユガだ。
宇宙から来た侵略者を積極的に撃破している謎が多い女。DC内では連邦軍の新型だのマジモンの女神だのと噂されている手に負えない存在が、一目散にDC本部に向かっている。
カリ・ユガの白蛇がホエール級潜水艦や、海中用に改造されたリオンを蚊でも払うかのように次々と撃破している。魚雷を直撃させてもただ煙を巻き上げるだけに終わっているようだ。コクピットを狙ってないのは余裕のつもりなのだろうか。あ、ドヤ顔がドアップで映し出された。完全に舐められている。
「調子に乗るなよ!コレでお前も終わりだ!!」
砲撃班の1人が、カリ・ユガに照準を定めた。ターゲットロックのアイコンがカリ・ユガの周囲をグルグルと周る。
ピポッ!という音と同時に、緑のアイコンはオレンジへと色を変え、動きをとめた。ロックオンが完了したのだ。
「発射ァ!!」
砲撃手の叫びと共に、砲弾はカリ・ユガの方へと真っ直ぐ飛んでいく。カリ・ユガは避けることもせず、受け止めることも迎撃することもしなかった。案の定、砲弾は直撃し、モニターには大きな煙で埋め尽くされた。
その様子を見たアードラーはほくそ笑む。先程までは恐らく防御の体勢を取っていたからだ。迎撃していたから無傷だったのだと。
ハガネがダメージを受けなかったのは、スペースノア級戦艦であり、エネルギーフィールドを展開していたから。対してカリ・ユガの容姿は図体がデカいだけのただの人間だ。生きていたとして、無事ではいられまい。
「あ……アスラ、無傷で健在!!」
だが、モニターの映像とオペレーターの報告を聞いたアードラーは目が飛び出すほど驚いた。
周囲は情緒不安定な爺を見るかのような様子だったが、緊迫しているこの状況でそれを言う者は一人もいなかった。喚いているのはアードラーのみだ。
「アスラとの距離1000!間もなくエシュリオン湾に到達されます!」
「ハガネも第2警戒ラインを突破!キラーホエール8番隊が沈黙!」
「第2機甲部隊も突破されました!どうしますか!?副総帥!!」
「ぐぬぬ……どうすれば……!!」
「副総帥!!」
次々と場面が変わっていく。
副総帥の地位にいるとはいえ、アードラーはあくまでも研究者。軍人ではない。
部下に指示することはあれど、戦場で指示を出した事は1度たりとも無かった。この切羽詰まった状況の中で、初めて戦場で指示を出すポジションに立てたのが今だ。
頭の回転は早いアードラーだが、それ故にこの絶望的な状況に膝をつこうとしていた……その時だ。
『ふん。どいつもこいつも湿気たツラをしているな。こういう時は逆に考えればいい。本拠地でケリをつければいいとな!』
『16年……16年待ったのだ……!!腐った連邦に復讐する為の礎として、ここでハガネを落とす!!』
「オレグ大尉!!テンペスト少佐!!」
『まだゲームはまだ終わってねぇ!!へへっ、俺達が挑むステージは超高難易度……!!腕がなるっての!!』
「ナカジマァ!!」
『誰だ今の!?特尉をつけろっての!!』
オレグ・ナザロフ。テンペスト・ホーカー。DCの中でも実力の高い2人の激励により、管制部隊は士気を高めた。
その様子を見たアードラーは先程までの狼狽えようが嘘だったかのように冷静になった。
(そうじゃ。こっちにはまだ切り札がある……。ハガネと同じ、スペースノア級万能母艦……。それに、対アスラ用に開発した、ワシ専用の特機がある……。コレに賭けるしか無い……!!)
DCにはグランゾンとヴァルシオン。それらに加え、あと2つの切り札が残っている。
それを思い出したアードラーは、老骨に鞭を打って急いで格納庫へと向かっていった。
ーーーーーーー
一方、アイドネウス島に向けて急速接近しているハガネの方も緊迫していた。
遂にDCの本部へ殴り込みをかけるという超重要な作戦。敵の防衛力も今までよりも比べ物にならないほど強く、スペースノア級戦艦でも最小限のダメージとはならなかった。
「被害状況を知らせろ!」
「艦尾のみです!程度は中破!テスラドライブに異常発生!艦の速度が低下しています!」
「先行したカリ・ユガの様子は?」
「敵艦から何発か砲撃を食らっているようですが、無傷です!」
「どうなってるんだ……あの女の身体は……」
AGX-09、ファルシュタ。正式名、リヴァルナによる案内により、海上で気絶したカリ・ユガ……もとい、ユミ・キサラギを回収する事が出来た。
多少の寄り道だったものの、カリ・ユガという特大戦力を得ることに成功。イングラムの提案により、DCの本拠地への突入作戦の切り込み隊長を一任されている。
太平洋での戦いや、先程のエアロゲイターとの蹂躙劇を見た事で実力は充分に分かっているものの、実際に投入してみると驚愕するばかりだ。
海中という動きが制限される場所でも、艦以上のスピードを出している。魚雷や砲撃を受けても無傷な上、敵をあっさりと無力化していく。
流石に蛇のエネルギー攻撃は威力が下がっているものの、知ったことかとばかりの高威力だ。
正に無双。テツヤ・オノデラの目には、障害を排除する戦女神にしか見えなかった。
「一旦カリ・ユガを回収しろ!」
そんな獅子奮迅の活躍を見せているカリ・ユガに、艦長のダイテツ・ミナセはカリ・ユガの回収を命じた。
それを聞いたテツヤは質問する。このままカリ・ユガに切り込ませれば、ハガネはより速く、より安全にアイドネウス島にたどり着けるのだから。
DCとの決着を付ける超重要な作戦。失敗は許されない。故に、1パーセントでも勝率を上げるためにあらゆる策を投入するのが当たり前だ。
そんなテツヤの質問に、体力の回復が目的だとダイテツは答えた。
幾らカリ・ユガが強すぎるといっても、依代と言われたユミ・キサラギは人間だ。体力の限界もあるだろう。カリ・ユガにしてもそうだ。
要は光の巨人シリーズのように変身をしているにすぎない。故に、カリ・ユガは生身で戦っているも当然だ。だからこその配慮である。
それに、ユミ・キサラギを回収した時、傷を負った状態で気絶していた。あれ程の実力のあるカリ・ユガをあそこまで追い詰めたのは、恐らくグランゾンだろうとダイテツは読んでいる。
ビアン・ゾルダークとヴァルシオン。シュウ・シラカワとグランゾン。ヤバい相手を2機も相手にしなければならないのだ。それなのに、息切れが原因で敗北しましたでは話にならない。
「ユミ・キサラギには冷蔵庫にあるワシのケーキを食わせておけ!楽しみにしていたものだが、仕方がない!」
「り……了解しました!では、オーバーブーストの使用許可を!」
「まだだ!本艦はこの速度を死守!このままエシュリオン湾を目指しつつ、艦首トロニウムバスターキャノンのエネルギー充填を開始せよ!」
カリ・ユガの活躍により、障害はほぼ退かされた。残っている敵もいるが、ハガネの進行を妨げるほどでは無い。
エネルギーフィールドを纏い、物凄いスピードで進んでいくハガネは、遂にアイドネウス島にたどり着いた。
管制兵(情緒不安定すぎない?この爺)
カリ・ユガ「ケーキ美味しい(*´~`*)ŧ‹"ŧ‹"ŧ‹"」
ユウ(美味しいものチラつかせれば釣られそうだなこの女神……)
クスハ(リスみたいに頬張ってる……)