リリー・ユンカースはコロニー統合軍の総司令の副官である。
完全実力主義のコロニー統合軍にて、24歳の若さで中佐にまで上り詰め、その地位まで付いたのだ。
統合軍の憧れ。統合軍の象徴とも言っていい総司令官、マイヤー・V・ブランシュタインに功績と結果を認められ、その能力を重用された。
文字にすると簡潔にも程があるが、その背景には血のにじむような努力があったのだろう。
リリーの役職である参謀とは、作戦指揮を指導する将校や、リーダーの右腕等の役割がある。
指揮官を養成したり、組織のトップを支えたり、情報や作戦を細かく指示したりと、組織の頭脳とも言うべき役割だ。
そんな彼女は今ーーー
「えー、このように、情報漏洩というのは作戦を立てる上で最も行ってはならないタブーです。うっかりして口が滑って情報が漏れてしまった結果、何も戦果を挙げる事が出来ずに特大の被害だけを出しただけで敗退したという事例が過去にーーー」
ーーーカリ・ユガの拠点の洞窟にて、1人と1柱に教鞭を執っていた。ちなみにホワイトボードは自腹で買った物である。
リリー・ユンカースがこうして講義を行っている理由は、ユウがインスペクターの機動兵器を見て呟いた所まで遡る。
エアロゲイターから自身を守ってくれた美しい多腕の女神。その圧倒的な力で侵略者を蹂躙して見せた姿は正しく守護女神だ。
天から降り注ぐビームの雨で一掃して尚、圧倒的な数のバグスを相手に1歩も怯まず、寧ろ堂々と戦っている。ボロボロなのはそれだけ強い敵と戦っていたということなのだろう。
……時折聞こえる子どもの声は気のせいだと思いたいが、カリ・ユガが口を開いている以上正体は子どもなのだろうか?偶に大人の女性の声も聞こえるが……。
ここまでは理想の守護女神だ。本当にここまでの活躍は良かった。一瞬だけとはいえ、かつての英雄、マイヤー・V・ブランシュタインを幻視してしまうほどには。
問題は突如としてバグスの群れとカリ・ユガに降り注ぐ雷が発生してから。謎の4機の機動兵器が出現してからのカリ・ユガ……もとい、ユウの対応だ。
その内の1機に反応したのか、カリ・ユガが口を開くのを確認してしまった。
〝グレイターキン〟と。ハッキリ聞こえたのだ。
後に聞いて分かったことだが、ユウが口を使って言葉を話す時はカリ・ユガの口と連動する仕様となっているようだ。早い話が常にスピーカーモードという事なのだろう。オンオフの切り替えは無理らしい。
つまり、本人としては呟いただけでも、口を使ってしまえばカリ・ユガの口からユウの言葉が出てきてしまう。基本的に機動兵器は集音性が高い。そうなってしまえば簡単にその音声を再生してしまうという事だ。
結論を言うと、インスペクター側とリリーの耳にはカリ・ユガに話すユウの声が聞こえていたということである。
そこからはもう考えられない程のユウのやらかしの一部始終を見ていた。
百歩譲って最初のやらかしはうっかりが招いた事だとしても、その後の質問に答える意味が分からない。
アイツら、敵だろ?ゲストと同じ異星人なんだろ?何真面目にクイズ番組みたいに答えてんだよ。なんで向こうもノリがいいんだよ。おかしいだろ。おい、カリ・ユガ。自慢するな。お前が誇っている巫女はゴリッゴリにやらかしてるぞ。そうじゃないだろ。
これには尊敬する人であると同時に、異性としても意識していたマイヤー総司令を喪ったという悲しみの海に沈みつつあったリリー参謀はブチ切れた。
余談だが、輸送機に乗っていたトロイエ隊兵士の証言によると、「笑顔ではあったが目は笑っていなかった」 「あれ程殺気に溢れた参謀を見るのは初めて」といったものがあったという。
情報漏洩は言わずもがなだが、敵の情報を知りすぎた結果、消された人物も少なくないのだ。それなのに、「私、貴方たちの情報をこれだけ持ってるんですよ」と敵に堂々と宣言するユウの姿はとても目を疑う光景だった。〝You have witnessed too much…〟
情報整理のためなのか、単語を独り言のように口に出しているのも更に状況を悪化させている。おいバカやめろ。内心に秘めとけ内心に。
〝ゾヴォーク〟〝ゾガル〟〝ウォルガ〟〝ゴライクンル〟と、一通り呟いたカリ・ユガの巫女。インスペクターと呼称した異星人の情報らしきものを得られたのは幸いだが、情報管理がガバガバ過ぎないか?
言わんこっちゃないとばかりに青い機体……グレイターキンと呼ばれた機体は胸部から砲台を展開。雷を纏ったビームを繰り出した。それに対し、カリ・ユガの槍から放たれたビームがそれを相殺。そして、4機の一斉攻撃に対処している間に離脱した。
脱出して海に落ちたトロイエ隊を回収し、たまたまその場に居合わせたクロガネと合流。エルザムに話をつけてトロイエ隊を預け、クロガネにあった予備のコスモリオンに搭乗してカリ・ユガの跡をつけた。というのが一連の流れだ。
カリ・ユガのパワーは相当目を見張るものがあるが、機動力はそこまででは無いのが幸いした。大きくダメージを負っているのだから尚のことだ。
カリ・ユガと巫女が分裂した事には多少驚いたが、やる事は変わらない。
コスモリオンを着地させ、昇降装置を起動させた。その際に巫女が驚愕の目でこちらを見ていたのだから、恐らく此方の情報も持っているのだろう。
なるほど。カリ・ユガの「私の巫女はなんでも知ってます」発言はあながち間違ってないようだ。
コスモリオンから降りて友好的な姿勢を見せ、困惑している様子の巫女に握手した後ーーー
「あ゛あああああああぁぁぁっ!!」
ーーーそれはそれはいい笑顔でアイアンクローを叩き込んだ。
リリー、大切な人を失い傷心中→エアロゲイターに襲われる→消耗していて転移が使えないカリ・ユガとユウに助けられる→リリー、ユウのやらかしを目の当たりにする→激おこスティックファイナリティぷんぷんドリーム
DWでDC残党に合流しないのは傷心旅行でもしてたんかな……?