サイズ的にもバランスいいな。
コスモリヴァルナの本格的なテストの為にDC残党の増援を蹴散らしたついでに、ハガネ隊とヒリュウ隊と合流したユウ。
リュウセイやガーネット、ジャーダと軽く会話をした後、共に伊豆基地を攻めてきたDC残党軍を撃破した。
レールガンの変わりに装備されているソマ・アローでリオンを撃ち落とし、チャクラムとは名ばかりの円盤刃、アディ・ソーサーでガーリオンを真っ二つにする。
遠くの敵は重力弾であるボラ・ボールや、不可視の光弾であるラヴィ・ライトで撃ち落とす。近くの敵はシュクラ・メイスをぶつけ、アサルトブレードで切断した。
元がコスモリオンとはいえ、この機体は実質リヴァルナも同然。つまりはカリ・ユガと同じ感覚で……否、それ以上に簡単に動かせる。
もし、ユウが乗っているのがコスモリオンならば動かすだけでも苦戦していただろう。事実、リリーと一緒に乗った時、コクピットの開け方ひとつ知らなかったのだから。
敵の数もそれなりに多かったが、こっちにはヒリュウ隊とハガネ隊がいる。
その2つの隊もDCと戦い始めた頃は負けもあったし苦戦もしたが、今の彼らにとって、DCは大した相手では無い。残党ならば尚更だ。勝ちたければビアン総帥かマイヤー総司令でも連れてこいと言わんばかりの勢いだ。
伊豆基地にやってきたDC残党を鎮圧するのにそう時間はかからなかった。
ーーーーーーー
ハガネへの着艦許可を貰い、ユウはコスモリヴァルナをハガネの格納庫に移動させた。
コスモリヴァルナは神であるカリ・ユガや機械生命体のリヴァルナとは違い、純粋な機動兵器だ。カリ・ユガの羽への収納は出来ないし、転移は使えない。
「えーっと……コクピットを開くにはっと……」
「中央のスイッチを押せばコクピットが開きます」
「おおっ!!あったあった。ありがと」
コクピットの中にあった、付箋が沢山貼られてあるコスモリオンのマニュアルを見ながら苦悩しているユウに、リリーが後ろから答えを言った。
操縦方法はリヴァルナだが、それ以外がコスモリオンなのだ。そしてユウは、機動兵器に乗るのは今回が初めてである。
コクピットを複座式にしてリリーを後ろに乗せたのは、ユウが機動兵器の操縦はこれが初めてだからである。
コクピットの開き方も知らないし、機体の起動の仕方も知らない。昇降装置の作動の仕方など分かるはずがない。だからこそ、指導教官のようなものが必要であったのだ。
コクピットを開くと、ハガネの格納庫にいる人達の様子が確認出来た。
ガーネット、ジャーダはラトゥーニと一緒に待ってくれているし、リョウトはこの機体を見て考察を始めていた。
リュウセイに至ってはコスモリヴァルナに興味津々なのか、コスモリヴァルナをガン見している。
普段ならば全身を使って抱きしめているところだろうが、今は非常事態だ。なるだけ気が緩んでしまう行為は避けたい思惑があるのだろう。
「では、次は昇降装置を起動させてえぇっ!?な……何をしてるんですか!?危ないでしょう!?」
まるで実技指導を行っている教官のように、機動兵器初心者であるユウに操作方法を教えているリリーの身体が浮いた。
勿論、実際に浮いている訳では無い。ここは宇宙ではなく地上なのだから。
その答えは簡単。ユウが抱えているのである。……米俵のように。
「飛び降りるだけだけど……?」
そんなリリーの疑問に顔を傾げながら即答を決めたユウ。
ユウにとっては20mの高さから飛び降りる事は朝飯前だ。カリ・ユガの惑星でやった修行ではこれより高い所で戦闘した事も珍しくなく、パラシュート無しスカイダイビングなんて日常茶飯事だったのだから。
「ちょっ!?待ちなさっ!?きゃああああああぁぁぁっ!?」
だが、ユウに掴まれているリリーにとっては恐怖体験以外の何物でもない。
6〜7mという、建物の2階の高さから下を見ただけでも身震いしてしまうが当たり前だ。それは、飛び降りたら高確率で大怪我。最悪死亡してしまうということを理解しているからだ。
ちなみにコスモリヴァルナの全長は約21m。これは建物の7階程の高さである。
ゲームでもリアルでも、高い所にいると自覚した時、寒気を感じて竦んでしまうのが本能というものだ。
今のリリーの状況は、落下中のジェットコースターがレールから脱線したような状況に等しい。
ましてやどんどん地面が近づいているのが嫌でも視界に入る以上、恐怖に声を上げるのは当然と言えよう。
その様子を見たハガネ隊の面々は……特にライディースはリリーを視認した瞬間警戒心を強めていたが、今では額に手を当てて「あちゃー……」と言わんばかりの表情をユウに向けている。ガーネット達も同様だ。
無事に着地したユウは、抱えていたリリーを地面に下ろした。
2人の様子は対照的だ。ユウは息を切らすことなく周囲を見渡し、リリーは心臓付近を手で抑えながら息切れを起こしている。
「あがっ!?」
突如、視界が暗くなったと思ったら、頭を掴まれたような感触を覚えた。
「あ・な・た・はーーーっ!!!」
「あだだだだだっ!?」
「あんな降り方をする人が居ますか!!」
リリーは目にハイライトが宿っていない状態で睨みつけながら、ユウの頭をガッチリと掴んだ。
機動兵器初心者のユウにとって、リリーは言わば指導教官だ。幾ら身体能力が高かろうが、指示に従う必要がある。不慮の事故の発生を防ぐ為に。
にも関わらず、あのような行動を取ったが為に、リリーによる折檻を受けている。ユウは「ゼンガー・ゾンボルトなら余裕で出来る筈」と苦し紛れの言い訳をするも、「出来るのと実際にやるのとでは全然違います!」とあっさり両断。更に力を強めた。
「ガーネットさん!ジャーダさん!リュウセイ!ヘルプ!ヘルーーープ!!!」
ユウの叫び声が、格納庫中に鳴り響いた。
「なぜ……どうして……?」
数十分後、リリーのアイアンクローから開放されたユウは顔がしおしおになりながらも、ハガネ隊の面々に挨拶をする。
ガーネット達は心配してくれたが、ガチガチの軍属であるライやレオナは「当たり前だろ……何言ってんだ?」と言わんばかりにユウを見ている。
沈黙が続く中、この場の雰囲気を何とかしようとリュウセイが口を開いた。
「そういや、この機体はどうしたんだ?」
「そこにいるリリーのコスモリオンをリヴァルナ達が改造したんだ。勿論、スペックはめちゃくちゃ高いよ」
「へぇ〜。万能なんだな」
コスモリオンを改造したというリヴァルナに対し、更に興味を持ち始めたリュウセイ。
今の彼は心を落ち着かせる為にコスモリヴァルナについて聞いたのだが、もしこんな状況でなければ全身でコスモリヴァルナに触れていただろう。
過去にリヴァルナがハガネに助けを求めた時、世界中で天変地異が巻き起こった事があった。原因はカリ・ユガとネオ・グランゾンとの戦いだ。
時間にして僅か数十分程度だが、その時は輸送機は勿論の事、スペースノア級万能母艦のハガネですらまともに動かす事もできない状況だった。
画面にはノイズが走り、進む方向がギリギリ分かる程度の物。そんな中でリヴァルナ先導の元、何とか海に落下していくユウを回収出来たのだ。
ノイズが走りまくった映像でも、執念とロボットオタク魂だけであんな出来がいいスケッチが書けたなぁ……。と、リュウセイは思い出す。
ふと、ユウが指した方向を見てみると、ライとレオナとリリーが向き合って真剣な表情で何かを話しているようだ。
「あの機体の事については分かったけど、貴女、なんでカリ・ユガに変身しなかったの……?」
続いて質問してきたのは最近メガネを変えたばかりの紫髪の少女、ラトゥーニだ。
イングラムがやった質問会の時、ユウがカリ・ユガになったのをハガネ隊のほぼ全員が見ている。そして、カリ・ユガの活躍はアイドネウス島の戦いで目の当たりにしたのだから尚更だ。
エアロゲイターやDC水泳部の蹂躙は勿論のこと、その時点ではみんなの協力の元になんとか倒せたグラビリオンを、単独でいとも簡単にボコった実績を持っている。その上、ヴァルシオンを倒すまでの間にグランゾンを抑えていたのだ。疑問を持つのは当然と言えよう。
ラトゥーニのその質問はハガネ隊全員の意見と言っても過言ではない。
カリ・ユガになればいいのに、何故わざわざコスモリオンを改造した物に乗っているのか。向こうで真剣な表情をして話し込んでいるライ、レオナ、リリーを除いた全員がユウの方に視線を向けた。
その時だ。コスモリヴァルナの頭部に見覚えのある魔法陣が出現した。
魔法陣の中心から獅子の兜を被っている8本腕の金髪の女性、カリ・ユガがゆっくりと現れる。ちなみに人間サイズだ。
見覚えのある場所に来たせいか、少し驚いたようなリアクションを取ったものの、直ぐに気を取り直して何かを探す。
2度3度と顔を動かし、そしてユウの方に顔を向けた瞬間ーーー
『ユウーーーーーッ!!』
「ごぶぁっ!?」
ーーーカリ・ユガがユウに向かってダイブするように抱きついた。
人間サイズとはいえ、カリ・ユガの現在の身長は199cm。対するユウの身体はラトゥーニよりも小さい。
「ああああああぁぁぁっ!!」
そのサイズ差から思いっきり飛びつかれたユウは2回、3回と回転してコスモリヴァルナの脚部に衝突してしまう。
ユウに抱きついたカリ・ユガの表情は、さながら初めて隣町までお使いに行った子供が帰ってきた時の母親のような表情だった。
カリ・ユガ、現在の完治度、ダメージ:85パーセント回復、神力:75パーセント回復。
DC兵「必ず戻ってくるぞ!!」
ユウ「……?脱出装置優秀すぎない?」
縮退砲の直撃を受けても「脱出する!」的なセリフが出てくるということは、脱出に成功してるのだろうか。