ゼンガーとリシュウは人外特攻がデフォでついてる説無い?そういやヒリュウ改に銭湯的なやつあったっけ?
タクラマカン砂漠にて、ジーベル軍及びゼンガー・ゾンボルトとの戦闘が終了した。
墜落したペレグリンに乗っていた乗組員や、脱出したパイロット達は投降した。後で連邦軍が連行していくらしい。
格納庫では部下のラッセルが上官であるカチーナを叱責したり、ATXチームがゼンガーについて話していたりしている。どうやらマサキにとって、ゼンガーはオッサンに見えるようだ。若いっていいね。
ユウはコスモリヴァルナのコクピットから飛び降り、リリーは普通に昇降装置を使って地面へと降り立った。それに続くように魔法陣が出現し、人間サイズになったカリ・ユガが現れる。
魔法陣から出てきたカリ・ユガは目にも止まらぬ速さでユウを抱きかかえた。
『ユウ〜〜〜〜ッ!!』
199cmの高身長の美女が、147cmより低い幼女を相手に泣きながら頬ずりしている。
ついでに言えば、今回はユウの事を心配して泣いているのではなく、カリ・ユガがゼンガーに対して恐怖を抱いてしまった事が原因だ。子どもが怖い目に会って親や教師に泣きついているようなものである。
要はカリ・ユガは幼児退行しているのだ。破壊と輪廻の女神は精神的に打たれ弱いのである。
その様子を見た格納庫にいる面々は軽く引いていた。勿論、リリーも例外ではない。……というよりも、リリーが1番引いていた。
地球の守護女神ともあろう者が子ども相手に泣きついて、慰められている。しかも大勢の人間がいる前でだ。
『なんなんですか!あのゼンガーとかいう人間は!?なんであんな強い人間がいるんですか!?なんであの出刃包丁が私の槍と渡り合えるんですか!?』
シュウ・シラカワとネオ・グランゾンのようなぶっ壊れではない。インスペクター四天王の時のようなボロボロの状態で戦った訳でもない。ほぼ万全な状態で……しかも、こちらが相当有利な状態でのあの一撃だ。流石にあの時は己が滅ぼされるビジョンが見えてしまったものだ。
もし、浄化の槍のリミッターを外していなければ槍ごとぶった斬られただろう。そこまでの相手だった。
……いや、おかしくね?何あのバグ人間。神殺しの剣でも使っているのか?と言わんばかりの気迫と一撃だった。
そう叫んだらユウが「ゼンガーの師匠の先祖は人外をバッタバッタとなぎ倒してた」と言った。しかも神に近い存在である生物兵器の最上位種を倒したとも。何それ怖い。聞きなくなかった事実だった。ゴッドスレイヤーとか聞いてない。ここに来てまさかの天敵登場である。
かつて、カリ・ユガはユウに触れた時、正史の自分が辿る末路を見せられた。
宇宙の寿命が尽きそうになっている上、とある邪神が宇宙そのものに細工をした。そのせいで正常な時が流れず、宇宙の寿命もみるみる内に減少していったのだ。
そのせいで予定よりも早く顕現する羽目になってしまった。いつも通りの時間で行けば確実に処理が間に合わなくなる為だ。例えるならば、いつもより1本か2本早い電車で出勤するようなものである。しかも赤の他人がやらかした事への尻拭いが原因で。
ーーー生きる為に。宇宙を救う為に。新たな生命を生み出す為に。貴方達の生命を捨ててください。
当然、この願いが聞き入れられるはずもなく戦いへと移行。最初はカリ・ユガの軍勢が圧倒的優位に立っていた。カリ・ユガの威圧に耐えながらも戦っている人間達。いつも通り敵対勢力と断定し、裁きを下して新たなユガの創造をする……筈だった。
ーーー何故!?どうして!?人間が、新たなユガを……!?どうやって〝無〟を超えたというのですか……!?終わりが……始まりが……!?
だが、人間達は死者の力を借りて完全回復した上、偶発的にとはいえ自身がやっていた新たなユガの創造をやってのけた。
その事実にカリ・ユガは戸惑い、恐怖した。その瞬間、カリ・ユガの存在意義が完全に崩壊してしまったのだ。
新たなユガの創造……宇宙の救済……宇宙の輪廻転生。それを使命とするカリ・ユガの意志という器にヒビが入った。
そこからだ。子機であるリヴァルナが次々と倒され、カリ・ユガにダメージが入り始めたのは。
己の存在意義が崩壊し、己の存在意義を否定され、己の力が打ち砕かれた。
ーーーの……飲まれてしまう……!!飲まれてはならない……!私が倒れてしまえば……次のユガは……!!
そして瀕死になった。剣は折れ、杖は破壊され、浄化の槍は既にボロボロだ。
それでも、僅かに無事であった杯の中身を使って自身に治癒を施した。
自分が滅びてしまえば、宇宙の救済は未来永劫叶わなくなる。あの危険因子をこのままにしてはおけない。使命感の強いカリ・ユガはそれでも抵抗を続けた。
ーーーな、なぜ…!〝無〟をも超えるもの…そんなものが、有るはずが…!あああぁぁぁぁぁーっ!
だが、そんなものは単なる悪あがきにすぎず、ボロボロの浄化の槍は無惨にも砕かれ、最後の一撃で滅びを迎えた。
その映像を見て、この世界のカリ・ユガの精神はズタボロになった。プライドは粉々に砕け散った。己の精神的支柱はガタガタになってしまった。
自分の使命……役割を全否定された挙句、それを取り上げられた上でボッコボコにやられるのが正史だと分かったからだ。トラウマになってもおかしくないレベルである。
ーーーならば、この少女を新たなユガに……。ユガの彼方に君臨し、死せる魂の救済を……宇宙に救済を運ぶーーーに……
『ユウ!今すぐ私の星に帰りましょう!今すぐ逃げましょう!!おうちにかえりましょう!!!そうしましょう!!!!私の星の近くに行きさえすれば〝外なる宇宙〟の干渉から貴方1人位余裕で守れますから!!』
「どうどう。カリ・ユガ、落ち着いて。1度お風呂入ってサッパリしよ。ドラム缶も用意してあるし……ほら、コーヒー牛乳もあるし、なんだったらお菓子もアイスもあるから一緒に食べよ?それからいっぱいお話して一緒にねんねしよ?ね……?」
弱音どころか泣き言に。果ては悲鳴にまで昇華した事で、カリ・ユガは更にヒートアップしてしまう。
ユウが幼子をあやす様に宥めても一向に効果が見受けられない。それもそうだろう。カリ・ユガは正史の自分が辿る末路を思い出し、トラウマが再発してしまったのである。ゼンガー・ゾンボルトという人間が繰り出した強い意志と、それによって繰り出された疾風怒濤はそれだけの強い衝撃があった。
リミッターを外さなければ致命傷は避けられなかっただろう。しかも今、ユウは自分の中にはいない状態。つまりはカリ・ユガただ独り……もとい、1柱だ。カリ・ユガの今の精神は、依代であるユウによって支えられている状態である。
融合時ならいざ知らず、分離している状態のカリ・ユガの精神状態は……酷く脆かった。ゼンガー・ゾンボルトが放った意志の強さによる威圧。それだけであの時のトラウマが再発してしまったのだ。
その様子を見かねたリリーがカリ・ユガに物申すが、カリ・ユガ本人は開き直るだけで精一杯だ。このままではゼンガーは兎も角、テンザンにすら遅れを取りかねない。カリ・ユガの次の出撃は無いと考えた方がいいだろう。その様子を見た格納庫の面々はカリ・ユガのイメージが完全に粉々に崩れ去ってしまった。
無論、カリ・ユガは療養してもいいのだが、〝意志の力〟はカリ・ユガの治療に役立つ物の1つだ。病は気からというように、心の持ちようで良い方向にも悪い方向にも進んでいく。特にスパロボ世界では意志の力は最重要と言っても過言ではない。故になるだけ早く精神を回復させる必要がある。
例えば、UX世界では生者と死者の強い意志が新たなユガを生み出した。
例えば、とある魔獣を中心とした人々の意志が異世界という名の避難宇宙を創り出した。
全く世界は違うが、死者と生者の意志が1人の人間の元に集い、巨大なエネルギーの剣となって邪神に成り下がった創造神を氷漬けに封印したという事例もある。1つの意志が。数多の意志がとてつもない程の力を発揮するのだ。
だが、今のカリ・ユガの意志の力は弱いと言わざるを得ない。正史の世界でも、人間が新たなユガを生み出した瞬間に彼女の支えが……意志の力が弱まってしまい、弱体化してしまった。この世界においては、その時よりも遥かに。
ユウはコスモリヴァルナに急いで飛び乗り、機体を操作して大きく口を開かせる。そこから出たのは、今まで使っていたお風呂用のドラム缶だ。今のカリ・ユガに必要なのは精神を回復させる事である。そう判断した。
「ほら、今用意するから一緒にお風呂入ろ?今のカリ・ユガに必要なのは休息。大丈夫。ここにはカリ・ユガを害する人なんていないから」
ドラム缶を持って再度機体から降り立ったユウは、カリ・ユガにやさしく言い聞かせる。そして、生身でシュクラ・メイスを生成してドラム缶の中に放り込んでいく。
「えーっと……?ユウ、何やってんだ?」
人間が持てるサイズの氷のフレイルをどんどんドラム缶の中に放り込んでいくユウの青く光る背中を見て、マサキが疑問を投げかけた。
「シュクラ・メイスを溶かしてお湯にしてる」
ユウの返答を聞き、マサキは「なるほどな」と納得した。恐らく魔術か錬金術辺りだろうと思っているのだろう。
シュクラ・メイス。青リヴァルナの武装であり、その実態は純度100%の氷のフレイルを生成して武器として扱うというものだ。
そして、純度100%の氷という事は溶かして水にすることもできる。つまり、飲み水にもお風呂のお湯にもなるという事だ。
だが、シュクラ・メイスを溶かすのは一筋縄ではいかない。すべてが氷で出来てるとはいえ、神僕の武器なのだ。火を通しただけではいつまでたっても溶けることは無い。
そこで必要なのは同じく神僕の炎であるアディ・ソーサー。ユガの炎を纏ったチャクラムを使い、ドラム缶の中いっぱいの氷を瞬く間に溶かしていき、水温を調節する。
「カリ・ユガ、見て。お風呂が沸いたよ」
カリ・ユガの手を引っ張り、暖かそうな湯気を放つドラム缶風呂に指を指す。
震えながら顔を上げるカリ・ユガに、「ここじゃ迷惑がかかるから部屋に持ってこ」と言い、移動するようにお願いした。
流石に機体を整備する格納庫でドラム缶風呂と洒落込む訳にはいかない。お風呂を沸かしたのだって、怯えまくるカリ・ユガを鎮める為に必要だったからだ。必要経費である。
カリ・ユガは震えながらゆっくりと頷き、神力を使ってドラム缶を浮かび上がらせて格納庫から退出する。
少女に手を握られてゆっくりと着いていく女神の背中は、とても小さかった。
箇条書きマジックって凄い。カリ・ユガ視点だから嘘は言ってないしへーきへーき。
ちなみに正史の末路を見ていなかったら未知の感情に戸惑うだけでなんの支障もありません。
リリー「まさか……臆したとでも言うつもりなのですか……?守護女神ともあろう者が……」
カリ・ユガ『っ……!!臆しましたっ……!!私の全てを否定されるんですよ!?そんな事は有り得ない!!私は死にたくありません!!』
エクセレン「うわ〜……守護女神様が言っちゃいけないセリフのオンパレードねぇ〜……」
カリ・ユガ『宇宙の救済よりも私の命の方が大事です!!』
リリー「それ以上喋らないでください……!!」
ブリット「い……一体どうしたというんだ……?」
ジャーダ「初陣で死にかけた新兵みたいな……いや、それよりも酷い怯え方だな……」
マサキ「負ける前提で話してねぇか?コレ」
ユウ「ダメだ……トラウマが再発してる……早く何とかしないと……」
実力:カリ・ユガ>>>>>>>>【越えられない壁】>>>>虹リヴァルナ>>>ユウ=7色リヴァルナ>>>>ライオットX
意志の力:ユウ>>カリ・ユガ