ユウと合流したマサキとリューネが3機でヴァルシオンと戦闘を開始した同時刻、ガーリオン小隊とグラビリオンもジガンスクード達と熾烈な戦いを繰り広げていた。
「ジガンスクードォォォォォッ!!」
テンペストは憎き相手の名を叫びながら、グラビリオンの胸部から広範囲のビームを発射する。
それに対し、タスクはジガンスクードの胸部装甲を解放し、大型の熱線砲で対抗した。
自らの妻子を奪った原因であり、忌まわしきホープ事件の象徴であり、それ故にコロニーの住民からも呪われた存在として憎まれている機体だ。
テンペスト・ホーカーはジーベルやリリーと同じコロニー統合軍に所属している軍人であり、また彼に着いてきているガーリオン小隊のメンバーも同様だ。
互いのビームの衝突による爆発から出てきたジガンスクードが、渾身の右ストレートを放つ。両腕に装備されている〝シーズシールド〟という巨大な盾。強力な武器であり、頑丈な盾でもあるシールドを利用した拳の破壊力は壮絶な物だ。軽いパンチ1発でゲシュペンストやガーリオンが破壊できるし、なんなら戦艦だって撃沈させることもできる。
巨大な2機の拳がぶつかる音が戦場中に鳴り響く。
グラビリオンの全長は約80m。対するジガンスクードの全長は約70mであり、その差は約10mとなっている。
人間サイズにあてはめるならば子どもと大人程度だろうか。いずれにせよ、殴り合いが成立するサイズ差であった。
「貴様は何故その機体に乗って戦う!?ソレはホープ事件が起こった原因……呪われた機体なんだぞ!!」
さっさと降りろと言わんばかりに、テンペストはタスクへと言葉を投げかける。
「けどよ、コイツが直接何かしたって訳じゃねぇだろ!」
現在、ジガンスクードとグラビリオンは取っ組み合いの体勢になっている。互いが両手を強く握り、前方へと重心を傾けて押しあっているようだ。
「アンタ達はジガンを呪われただの、忌まわしいだの言ってるけどよ……。悪いのはコイツじゃなくて、当時の連邦と……コイツを利用したテロリストだろ!?」
ホープ事件はジガンを奪ったテロリストと、当時のコロニーの独立を許さなかった当時の連邦の傲慢さと怠慢が産んだ悲劇と言えるだろう。
だが、それは客観的に見た第三者が言えることであって、当時の遺族が聞いたのならば間違いなく怒りのボルテージが上がる事は間違いない。ましてや、その光景を鮮明に見てしまった者ならば尚更だ。
「だからこそ、俺はDCに入ったのだ……!!」
その連邦軍の勝手な都合によって妻子を失い、葬儀への参加も許可されなかった元教導隊の男の怒りが……憎しみのボルテージが跳ね上がった。
グラビリオンがジガンスクードに頭突きを食らわせる。相手がよろめき、力が緩んでいる間に手を離し、飛び蹴りで地面に突き落とす。
「ホープ事件から16年経った今でも、連邦はあの頃から何一つ変わっていない!」
ジガンスクードが何とかスラスターを噴かせ、地面との衝突は免れるものの、グラビリオンから放たれた無数のミサイルが襲いかかる。
ホープ事件の後も、連邦は何も変わらなかった。少しも反省しなかった。足の引っ張り合いは当たり前に起きており、数少ないまともな人間は事故を装って謀殺される事もあった。ハンスがキョウスケにやった仕打ちのように。
挙句の果てには地球を侵略者に売り飛ばす愚行をかましたのだ。幸い、シュウ・シラカワとビアン・ゾルダークによって売星奴の行動は未遂に終わったが、もしこの2人が動かなかったらと思うとゾッとする。
だからこそテンペストは連邦を完全に見限り、ビアンの考えるDCの理念に賛同した。今でこそ多少落ち着いてはいるが、もしラトゥーニやカリ・ユガがいなければ手段を選ばない復讐鬼になっていただろう。
「腐った連邦に変わり、DCが地球圏に新たな秩序を打ち立てる!DCこそが地球を守る剣となるのだ!!そうする事で俺の16年の復讐は報われる!!」
テンペストのグラビリオンの胸部装甲が開かれ、その中心に熱と光が集まっていく。
「俺の復讐の墓標となれ、ジガンスクードォッ!!」
グラビリオンの胸部から巨大なビームが発射された。
広範囲を破壊する一撃ではなく、少数の敵を確実に破壊する一撃だ。一点集中したビームが直撃すれば、幾らジガンスクードが堅牢でも耐えることは出来ないだろう。
「……む?」
ビームによる大爆発で発生した煙から、巨大な人型のシルエットが見え始めた。
その巨大な機影はどことなくガーリオン系列にも見えるが、大きく破損した大盾がその正体を物語っていた。
「チッ……!!無駄に頑丈だな……!!」
恐らくは持ち前の巨大なシールドで防いだのだろうと当たりをつける。いや、宇宙での戦いではビームを弾いていたという報告があった為、恐らくはビームコートを装備しているのだろう。もしかしたらその上位互換のアンチビームフィールドかもしれない。
それとも、先程と同じく巨大ビームで威力を抑えたのか……どちらにしろ、ホープ事件の象徴が今も健在で動いている事に変わりはない。
「…っ…んだ……」
息を切らしているタスクは何とか機体を立ち上がらせる。その様子は最強の盾の名に相応しくないほど脆く弱々しい様子であった。
「俺は誓ったんだ……」
思い浮かんだのは、初めてジガンスクードを動かした時だ。
あの時はゼンガーが繰り出す最高の一撃からヒリュウ改を身を呈して守った。
自身のアバラ数本と、機体の駆動系をやられながらも零式の斬艦刀をなんとか受け止めた。しかも斬艦刀を欠けさせるという偉業を達成したのだ。その後何故かゼンガーが満足したように撤退して行ったが、その際に残していった一言が今、鮮明に思い出せる。
ーーー呪われた最強の盾……。その機体の背負った業を払うには、勝ち続けなければならん。その重さを忘れるな。
勿論、当時はジガンが背負った業が何か分からなかったが、それでも統合軍の様子を見る限りではただ事ではないとは感じていた。
呪われた機体。忌まわしい機体。そう言われている。だが、道具が……機体が悪い訳では無い。結局の所動かすのは人であり、無人機でも設定するのは人だからだ。食べ物を切るのも、人を刺すのも、同じナイフで出来るのだから。
そしてその業を背負った経緯を知り、復讐を誓う相手と戦った。その相手は無差別に攻撃するのではなく、復讐の対象という一点のみに集中している。
それを見て、感じて。今改めて誓った。
「コイツの……ジガンの業ってやつも、アンタの憎しみも、全て受け止める……!!」
コイツを呪われた存在じゃなく、祝われた存在へと変えるのが、今の自分の使命だ。タスクは改めてそう決意し、操縦桿を強く握って機体を動かした。
仲間を守り、地球を守る巨大な盾。そういう願いを込めて名付けられた機体。その本当の意味を取り戻す。コイツと……相棒と一緒に地球を守る。そうすることで、コイツは初めてスタートラインに立てる。その道は酷く険しいものなのだろうが、それでもタスクはジガンと共に歩んでいくだろう。
ジガンスクードのツインアイが、パイロットの意志に応えるかのように力強く光った。それを見たテンペストの表情はとても複雑そうだ。
「……ならば、その意志が本物かどうか、確かめさせてもらうぞ!ジガンスクードのパイロット!!」
ーーーーーー
「ハハハハハハ!!」
ジーベルは笑いながら青いヴァルシオンを動かしていく。
振り下ろした大剣はサイバスターのディスカッターを弾いた後、ヴァルシオーネに向かってクロスマッシャーを発射する。同じくヴァルシオーネも両手でエネルギーを収束させ、クロスマッシャーを放ち、相殺させる。
隙を突いたコスモリヴァルナがシュクラ・メイスを直撃させるが、やはりヴァルシオンの装甲は硬い。
「先程よりも出力が上がっている……?それに、ジーベルの様子に違和感を感じますね……」
「ちぃ……!ジーベルの野郎、調子に乗りやがって……!!」
カロリックミサイルを放ちながらマサキは毒づいた。
本来ならば戦艦に乗ってふんぞり返り、後方で指揮をしている相手が機動兵器で大暴れしている。しかも、かつて戦ったヴァルシオンに乗ってだ。
やり方は間違っていたが、本気で地球の事を考えていたDC総帥のビアン。彼が乗る究極ロボと剣を交えたマサキは、ビアンとヴァルシオンが地球を守る剣になるという決意と気迫、覚悟を感じ取っていた。
だが、目の前の男は違う。
ジーベル・ミステル。コロニー統合軍に所属している軍人で、自らの勝利の為ならどんな汚い手段であろうと関係なく使うという狡猾な男だ。
たとえそれが守るべき対象を人質に取ったり、コロニーの禁忌を平気で行おうとしたりするなど兎に角やり方が汚い事で有名である。
そんな男がヴァルシオンに乗って暴れている。大義や信念といったものは一切なく、持っているのは制御出来ない大きな自尊心と、DCの総帥になるという野望だけ。
自身の地位に固執し、立場を上げる事しか考えていない。そんな男は今、今まで積み重ねてきた地位を全て失っている状態だ。
……だからと言って、あれ程凶暴になるものなのだろうか。
「ハーッハハハハハ!!」
失うものが何一つ無い。だからこそジーベルは今癇癪を起こしたタチの悪い大人のように大暴れをしている。気分が高揚しているせいだろうか。機体のパワーが少しずつ上がっているような気がする。
ジーベルの標的は、かつて自分の地位を上げるために躍起になって狙っていたサイバスターやヴァルシオーネではなく、弱そうな見た目をしているコスモリヴァルナだ。
「……!!」
ヴァルシオンは景気づけと言わんばかりに、1発のグレネードをコスモリヴァルナに放った。
チャフグレネード。どんな機体にも装備できる換装武器の1つで、当たれば対象の電子機能を一時的にダウンさせる事で命中精度を妨害する効果を持つ。
放たれたグレネードに対し、コスモリヴァルナはソマ・アローを射出した。
雷の矢はグレネードを貫通し、そのままヴァルシオンに当たるものの、やはりダメージは少ない。例えるならば、HPが3万ある相手に100や200しか与えてられてないようなものである。
(カリ・ユガなら……あんな奴一撃で倒せるのに……!!)
ユウの心に焦りが募る。もし、カリ・ユガのメンタルが良好であれば、この戦いはかなり余裕を持って終わらせられたのは間違いない。ビアンが操るヴァルシオンならいざ知らず、ジーベルが扱っているヴァルシオンであれば、アイドネウス島でグラビリオンを圧倒したように瞬殺出来ただろう。
ーーーなんか、調子悪い。
ソマ・アローをものともしない青の究極ロボは剣を構え、そのままカラクリ天使に向けて一直線に向かって行く。
それに対し、コスモリヴァルナはボラ・ボールで対応する。燃費は悪いが、その分の威力が期待できる重力弾だ。今回はGウォールのようなバリアとして運用するのではなく、そのまま攻撃として転用している。
「効かないと言っただろう!そんなものはァっ!!」
「……!!」
「やらせません……!!」
ボラ・ボールはヴァルシオンのディバイン・アームによって切り裂かれた。本家のボラ・ボールの強度はバリアとは比較にならない程強いが、究極ロボの剣には効かなかった。振り下ろす直前、螺旋を描いたエネルギー波と炎の鳥がヴァルシオンの背中に当たったようだ。
そこに追撃のミサイルがヴァルシオンに直撃する。その衝撃で手元が狂い、ユウはコスモリヴァルナを咄嗟に機体を動かしてなんとかノーダメージで済んだ。
もしリリーとリューネとマサキが援護してくれなければ、少なくとも片翼や片腕を失っていたのは間違いない。
「ユウ、しっかりしなさい!!」
「……!!」
後方からリリーの声が聞こえてくる。
敵の装甲は硬い。もしかしたらオリジナルの7色リヴァルナですら突破出来ないかもしれないほどの硬さだ。虹色リヴァルナなら行けるだろうが……。
ユウは目を瞑り、息を吐いてイメージする。
武装はシュクラ・メイス。その実態は大気中の水分をユガの力で凝固させ、氷のフレイルを生成するというものだ。
より大きく。より破壊力に特化させた氷の武器をイメージし、搭乗機であるカラクリ天使の羽のような手に氷の粒子が集まっていく。
「ハガネもヒリュウも……改造リオンもサイバスターもヴァルシオーネもこの機体には敵わない……!!最高だ。コイツは最高の機体だ!ハハハハハハハハハハ!!」
ビアンが設計した究極ロボをアードラーが再現したヴァルシオン改は、グラビリオン宜しく対カリ・ユガ戦を想定しているという。
かつてカリ・ユガと戦ったグラビリオンの二の舞にならないよう、防御周りは特に念入りに強化を施したようだ。しかも戦えば戦う程にどんどんパワーが上がっているというオマケ付きである。
つまり、何ものにも破壊されない堅牢な要塞を兼ねた大量破壊兵器という事だ。現にサイバスターもヴァルシオーネも、改造リオンもヴァルシオン改を前に攻めあぐねている。
己こそが王だ。己こそが最強だ。そう主張するように大きく笑う。
ーーーだが、ジーベルは知らない。ヴァルシオンのバワーが上がるほど、自身の凶暴性が上がっている事を。
「シュクラ・メイス・ヴィジャール・ランス……」
ジーベルが高笑いしている間、ユウが生成を完了させる。コスモリヴァルナの数倍はありそうな大きさを誇る氷の大槍だ。
「これから見せるのが……本当の力……」
そして、ユウは気づいていない。自身がリリーの静止が聞こえない程に冷静さを失っていることを。
テンペストが復讐に走った原因はホープ事件の後の連邦軍の行動態度にも問題あったでしょ。
スパロボ世界は自軍が強い意志と明確なスタンスを持って初めて反撃が有効になるイメージある。特にネームドボスやラスボス戦。
ユウの意志の力はカリ・ユガより強いと言ってもあくまでも折れたカリ・ユガよりマシって程度だからそんなにって感じ。
心がへし折れたカリ・ユガの意志力Lv1ならユウは2〜3位。勿論カリ・ユガのメンタルが万全なら両者ともLv7〜8位かな。あとゼンガーは常にLv9(最高レベル)なのは間違いない。
今回はメンタルブレイクして部屋に籠ったカリ・ユガが心配で戦いに身が入ってない感じ。そのせいでカリ・ユガを意識しすぎてコスモリヴァルナとユウの本来の戦い方ではなく、カリ・ユガのような戦いをしているから本来の性能を発揮出来てない。ちなみに本人に自覚はない上に焦っている状態という2重にメンタルデバフがかかっている。
例えるならキュリオスでヴァーチェの戦法取ってるようなもん。しかも装備付きで。