日蝕のアサルトレコード   作:その辺の残骸

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共闘

 

 コジマ粒子反応を検知したアークセイバーの戦術COMが警報を鳴らす。

 

 戦場において最も警戒するべき警報である。コジマ兵装による攻撃は他の兵器と比べ物にならない加害範囲を持ち、励起された粒子による分子レベルの崩壊作用に耐えられる装甲は存在しない。

 

 ネクストなどコジマ粒子装甲を有した機動兵器や大型機であれば最悪だ。

 だが、味方であればこれほど心強い存在はない。それが凄腕の傭兵が操る機体であれば猶更。

 

『わっ! イクリプス、エリスのだ!』

『援護に来てくれたのか。有難い』

 

 コジマ粒子装甲を纏った機体は友軍信号を発していた。

 大袈裟に歓声を上げるリゼ。

 金髪ツインテールのクールな美少女レイヴンも連戦にややお疲れ気味で額に汗が滲んでいる。

 

『せっかくなんで来た! 混ぜてもらっていいか!?』

 

 一方、エリスは元気一杯。ナノスキンスーツでくっきり包んだ胸を張って、声を張り上げる。

 

『勿論だ。歓迎する』

『そうこなくっちゃ! とりあえず硬そうなヤツは仕留める!』

 

 アークセイバーが交戦したソラリスの抗体――自律制御のMTやACの残骸を目印にして、エリスは追いついた。

 真紅のネクストはフロアに侵入すると、重厚なバレルのヘヴィライフルで重装甲MTを薙ぎ倒す。

 

「いいなー、大口径ライフル。それにコジマキャノンまで背負ってる。あれ、御坂が開発中の新型じゃない」とサブシートで黒髪の妖艶なJK、リゼがイクリプスの武装に羨ましそうにしていた。

 

 

 イクリプスはアークセイバーと背中合わせに。

 

『ササラ、連携を試したい。合わせられるか?』

『問題ない。エリスは好きに動いてくれ』

 

 二機は同心円状に旋回しながら敵機を片付ける。互いに装備している左腕のレーザーブレードを抜刀し斬り払う。

 

 プライマルアーマーでプラズマキャノンを防ぐ。炸裂した光のなかでもエリスの感覚は敵ノーマルを捉えている。

 イクリプスは距離を詰め、一突きでノーマルのコアを貫く。コクピットにあたる部分にAIの中枢がある。

 

 アークセイバーは月光色のレーザーブレードで複数のノーマルACを撃破している。横目でササラの動きを窺い、赤髪の戦乙女は目を見張る。

 

「これがトップクラスの実力か。いいね、前に戦った二人も良かったけど、それ以上だ」

 

 前に戦った二人――ユーロアリーナのランカーであるタンク型"大筒丸"と超軽量逆関節の剣豪機"ダイヤウルフ"のことである。動向を確認したらユーロアリーナでのランクがさらに上がっていた。

 

「すごいな、あの二人は。理論上の理想値を上回っている」

 

 珍しく電脳サメが素直に感心していて、エリスまでびっくりしてしまう。

 

 驚くべきことにアークセイバーの機動戦能力はネクストACに匹敵していた。

 通常の操縦系で瞬間的な急加速、急減速までやってのけている。それはササラの技量とリゼの機体制御のコンビネーションの賜物であった。

 

 プライマルアーマーの有無による防御力の差は依然大きいが、懐に潜り込んだアークセイバーがMOONLIGHTの斬撃を繰り出せばネクストとて墜ちる。

 

 

「ゴールだやった! エリスのおかげで無事に着けたよ!」

 

「まだ気を抜くなよ――――破壊は任せてくれ」

 

二機は暴風のような剣戟で突き進み、ついに動力炉に到達。十分に距離を取って、破壊する。

 

 アークセイバーは弾切れになったマシンガンからノーマルから奪ったレーザーライフルに武器を持ち換えていた。

 本来、ロックが施されているので、戦場で拾った武器を即座に使用することはできない。

 しかし、リゼが得意のハッキングでプロテクトを破っていた。

 

 フルチャージで放ったレーザーの青い閃光が瞬き、無防備な動力炉を射抜いた。動力炉は瞬間的に膨張し、破裂。プラズマが放出される。

 

 既に二機は反転していた。

 脱出だ。イクリプスが後ろにつき、プライマルアーマーで爆発からアークセイバーを庇うようにしている。

 

 

 アークセイバーが出撃した貨物船に設けられたオペレーションルーム。メイドたちを従えた小柄な金髪の女子高生フィクサー、桐嶋ミコは腕を組み、神妙な表情である。

 

「上手く脱出してくれよ、三人とも」

 

 ササラ達の無事を祈っていた。

 ディスプレイに映るソラリスは動力炉の爆発によって起きた誘爆であちこちから黒煙を吹いている。

 ミコとて、ササラやエリスの実力を疑っているわけではないが、アームズフォートが内部から崩壊していく様は破滅的で、心配になってしまう。

 

 

 黒灰色の巨大な鉄鯨が墜ちていく。

 

 月を本拠とする巨大企業トリニティが建造したばかりの空中要塞は、象に対する蟻のように矮小な人型機動兵器に破壊された。

 アームズフォートに並ぶ絶対兵器たる第四世代(ネクスト)、イクリプスが現れたことで、言い訳が立つのはトリニティにとって不幸中の幸いであった。

 

 トップクラスとはいえ、たかが傭兵のアーマード・コアに企業の威信の象徴が敗れるなどあってはならないのだから。

 しかし、ソラリスの迎撃を第五世代のノーマルが突破した事実はトリニティのプライドを著しく傷つけることになるだろう。

 

 

 熱波が通路の角を曲がって押し寄せてくる。背中に感じる致命的なエネルギーの塊に少女たちは否応なしにスリルを味わっていた。

 

「空が見えた! あと少し!」

 

 後部シートのサブドライバーが叫ぶ。

 リゼはアークセイバーのジェネレーター出力を調整。ラストスパートに全力を出せるようにした。

 

 侵入に用いたハンガーから脱出する。金髪ツインテールの美少女レイヴン、ササラは青空を見据える。

 

 エクステンションの可動式ブースターとオーバードブーストで猛加速。

 アークセイバーは一気に最後の直線を駆け抜ける。

 

 ハイレグスーツで一際長く見えるササラの美脚はフットペダルを限界まで踏み込んでいた。

 

 白と青の人型機動兵器、アークセイバーがまず飛び出し、続いて真紅のイクリプスが蒼天に躍り出る。

 噴出するプラズマを浴びないように降下で角度をつけた。

 海面スレスレを飛び、二機は並走する。

 

 複座のため、狭苦しいアークセイバーのコクピット。ハイレグスーツの美少女の汗とアドレナリンの匂いが混ざり合う空間に張り詰めていた緊張が緩む。

 

「はーどうにかなった」

 

 脱力してシートにもたれかかるリゼ。全身、汗だくだ。たっぷり時間をかけてシャワーを浴びたい気分である。

 

「リゼのサポートのおかげだ。感謝する――エリスにも」

 

 金髪ツインテールのクール系JKが戦友二人に礼を述べる。

 完全脱力している黒髪の妖艶な相棒に比べて、ササラは緊張を維持している。それでも多少はリラックスしていた。

 

 綺麗に引き締まった白いお尻を軽く浮かせ、シートに座り直すなどしている。

 

『思った通りの凄腕だな。一緒に仕事できて光栄だったぜ』

 

 通信ウィンドウに映る赤髪ヤンキーギャルなエリスの勝ち気な笑顔。

 こっちが本性のようだが、令嬢風の振る舞いと正反対で、ササラとリゼは揃って驚かされていた。

 

『こちらもだ。エリスが今後も味方でいてくれるなら頼もしい』

『学園でも一杯サービスしたくなっちゃうな』

 

 ササラの涼やかな眼差しと微笑みは同性にとってさえ魅力的だ。なんか気恥ずかしいな、とエリスでさえ思う。

 一方、ニコニコしているリゼからは妖しく危険な気配を感じる。

 彼女の言うサービスとやらは遠慮しておこうと決める赤髪ヤンキーギャルである。

 

「それにしても残念だね。このまま斬り合いたかったのに」

 

 と、電脳サメがエリスの気持ちを代弁する。ササラ達と共闘してその実力を間近で確かめて、手合わせしたくなったのである。

 

 それができない理由は海面に漂うコクピットブロックだった。

 自分達の命を狙ってきたレイヴン、セミラ・ミィスが中でガタガタ震えているのだが、アークセイバーはそれを救助しようとしていた。

 ソラリスが墜落すれば大波の飲まれ、命の保証はない。

 

『優しいんだな、ササラは』

 

 アークセイバーがコクピットブロックを両手で拾い上げると、エリスは言った。

 殺し殺されの世界で、敵の命を助ける。それは時にエリスもやることだが、殺す必要がなく気に入った相手に対してする行為だ。エリスならそのまま捨て置いていた。

 

『少しでも多く稼ごうとしているだけさ。依頼主も聞き出したいしな』

 

 微笑みながら、金髪ツインテールの美少女レイヴンは答えた。彼女は悪党退治専門とはいえ傭兵であり、中々シビアだ。

 救助したセミラから謝礼としてたっぷりふんだくるつもりである。

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