日蝕のアサルトレコード   作:その辺の残骸

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02:大型輸送機護衛/スカイハイ・ハイパー・デュエル
ハンドラーからの依頼


 

 エリスは四肢を躍動させ、水中をまっしぐらに進んでいる。

 

 幼い頃から水には親しんできた。

 物心ついた頃には有害物質で汚染された川で、変異した魚を素手で獲り、糧を得たものだ。

 

 清浄な水の中を初めて泳いだのは、重度汚染地帯の唯一の生存者として保護され、研究所に送られた時だった。

 身体能力を測定するためにプールで泳がされた。その時の心地良さを今でも覚えてる。

 

(エリス、あまりに熱中しないようにね)

(わかってる)

 

 学園生活を楽しむ間もインプラントを通して、AIであるREVと繋がっている。

 

 電脳サメに言われなくとも、ここが学園の屋内プールであり、クラスメイトの注目を浴びているということは意識している。

 

 力を抑えながら、クロールでゴールを目指す。

 タッチ。エリスは水飛沫を上げ、プールから出た。赤髪が水に濡れて張り付き、水滴が体から滴る。

 

 エリスは鋭角的なハイレグカットの競泳水着を身に着けている。

 色は紺色。水泳中でもAMSのジャックを隠すチョーカーを巻いてある。

 

 水泳の授業で五十メートルを泳いだのだ。エリスは二位だった。

 

 赤髪をかき上げて、軽く水滴を拭う。

 

 股間の紺色の鋭角からも水滴が滴ってる。激しく脚を動かしてキックしたため、布地が股間にきつく食い込んで際どい見た目になっている。

 

 前が際どいだけでなく、後ろもTバック寸前の食い込み具合だ。健康的なお尻が露出している。

 

(いけませんわ)

 

 水滴が滴る局部を素早く拭う。そのまま、嫋やかな仕草で食い込みを直すエリスお嬢様。

 

 エリスのハイレグ競泳姿を見る幸運に預かった女子達は食い入るようにその仕草を見つめていた。

 同じくハイレグカットの競泳水着に身を包んだ彼女達の容姿のレベルは高いが、エリスは次元が違う。

 

 プールサイドに裸足の足音を立て、エリスに歩み寄るクラスメイトが一人。

 

「良い勝負だった」

 

 エリスにタオルを差し出したのは、エリスと競い合い、一位でゴールした金髪ツインテールの美少女だ。

 涼やかな美貌。碧眼に強い意志が見て取れる。ササラ・レイフィールドという名だ。身長はエリスより少し高い。

 

 胸と尻が豊かで、引き締まった肢体に、学校指定のハイレグ競泳水着が食い込んでいる。

 綺麗な形の巨乳は勿論だが、腹筋が見事だ。

 

 ササラは学校指定の競泳水着の中で最も尻の布面積が少ない水着を選んでる。

 プールサイドでもフンドシ同然のTバックになっていた。

 

「ありがとう、ササラさん。お褒めに預かり光栄ですわ」

 

 令嬢として振舞いつつ、視線では「次は負けねえ」と語る。ササラはその意志を察して微笑んでいた。

 ササラもまた、本来の身体能力を発揮しないように泳いでいた。

 

 金髪と赤髪の美少女二人の語らう間に割って入る不届きものはこのクラスの女子にはいない。

 

「二人とも本当に泳ぐのが巧いんだ」

 

 新たにプールサイドに上がってきた美少女は違った。親しい間柄だからだ。

 黒識リゼという。艶やかな黒髪で、背は高く、顔立ちと肢体に蠱惑的な美しさがある。大学生に見えるくらい成熟した容姿だった。

 

 この少女には人の心の壁をすり抜ける妖艶さがある。

 水に濡れたリゼの艶やかな姿は人の心をざわつかせ、劣情を抱かせる。

 

 会話に加わりながらリゼはエリスを見つめていた。

 

「ねえ、エリス」

「――――? なんでしょうかリゼさん?」

「そのタオル、借りていいかな?」

 

 会話に加わったリゼはエリスが髪や体を拭いたタオルに視線を向けた。

 

「えーと、ササラさん?」

 

 少し困り顔を浮かべながら、持ち主に確かめるエリスであった。

 

「構わないぞ」

 

 この素っ気無さを持ったササラの事がリゼは好きなようだった。

 

「ありがとー!」

 

 エリスが差し出したタオルを受け取ったリゼは匂いを堪能しながら、妖艶な仕草で体を拭っていく。

 周囲の女子生徒達はエリスという聖乙女が黒い翼の淫魔に堕とされる様を幻視して硬直している。

 

 そんな周囲の様子には気付いていないエリス当人の関心はササラだ。 

 命のやり取り以外で競い合えるライバルというのは良いものだ。

 

 ササラ・レイフィールドはアーマードコアを駆るレイヴンであった。

 入学早々、二人は互いの素性を知る間柄になり、意気投合して協力関係を結んだ。

 

 アリーナには登録していない。主に賞金稼ぎと護衛、テロ鎮圧の仕事で報酬を得ている。

 リゼはササラと共にACに同乗する電子戦担当兼リサーチャーであった。

 

 二人がどのようにコンビを結成したのか、まだエリスは教えてもらっていない。

 

 とにかく、ササラには仕事を選り好みできる腕がある。

 優れたACドライバーというだけでなく、生身での戦闘にも長けているため、非常に頼りになる。

 

 REVの奴は「良い奴過ぎてムカツクから嫌いだな」とササラを毛嫌いしていた。

 リゼの事は「闇が深そうで好き」だそうだ。

 

 聖オルベリア教導学園には軍隊さながらのパイロット科があるが、ササラとエリスはもっと気楽な科を選んでいる。

 

 

 もう一人、学園でエリスが得た協力者がいる。

 二年生、先輩に当たる桐嶋ミコという。

 

 ミニスカートを翻しながら下校中のエリスの真横にリムジンが停まった。

 

「やあやあ、神薙君。良かったら乗っていかないかい?」

 

 贔屓目に見ても中学生にしか見えないミコは西洋人形に和のテイストを加えたような、可愛らしい容姿をしている。

 制服のスカート丈も学園のアクティブさを押し出した平均より慎ましい。

 

「まあ、よろしいのですか?」

「いいとも、いいとも。私と君の仲だからね」

 

 ではご厚意に甘えさせていただきます、と嫋やかにリムジンに乗り込むエリス。

 運転手やミコの傍に控えているのは彼女に仕えるメイド達だ。 

 

 資産家の娘であるということ以外さっぱり分からない、謎多き先輩であるミコはフィクサーあるいはハンドラーと呼ばれる部類の仕事を本業としている。

 

 入学して一週間も経たないうちにエリスがネクストを操る独立傭兵イクリプスだと見抜き、コンタクトしてきたのだ。

 ミコが回してくれる仕事は巨大企業連合体以外からのもので、エリス好みのものだった。

 

「今度はどんな依頼?」

 

 座り心地抜群のシートに腰掛けると、即座にエリスは本来の傭兵モードになる。

 ミコに言わせば、素のエリスの雰囲気はヤンキーギャルだそうだ。

 

「ササラと一緒に民間の輸送機を護衛してもらいたい。まあ、いつもの巨大企業の横暴というやつなんだが」

 

 ミコが資料を渡しながら説明する。

 

 イーハトーブ・エアサービスという民間の運送会社がある。

 

 超大型輸送機による大規模輸送という独自性の高いサービスを提供している中小企業なのだが、ある大企業から持ち掛けられた業務提携を利益にならず、企業倫理にも反すると蹴った。

 

 これに激怒した件の企業は日本に荷を運ぶ途中でイーハトーブの輸送機を公海上にて撃墜することを決めた。

 輸送機の維持費と会社の規模からイーハトーブが有する機材とパイロットは少なく、一機の損失は多大な損害になってしまう。 

 

「いつもながら酷い話」

 

 エリスは企業から傭兵としての仕事を貰っている身ではあるが、呆れていた。

 

「だろう。悪党には小悪党がついて回るのか、トルベリというPMCが実行役として雇われている」

「あーそこなら知ってる」

 

 エリスは不快な気分になりながらPMC「トルベリ」の事を思い出した。

 飛行型MTを主力としているPMCで人員は少ない。だが、多くの無人機を保有しており、実際の戦力は中々のもの。

 

 何より、報酬を出せば戦争犯罪に喜んで加担するため、汚れ仕事の実行役として重宝されている連中だ。

 仕事がなければ、得意先を怒らせない地域で空賊行為に勤しみ、略奪と身代金で稼いでいる、PMCという名のチンピラ集団であった。

 

 護衛作戦は来週日曜日の午前中に行う。

 ササラのノーマルACは輸送機の貨物庫で待機する形で同行し、必要に応じて輸送機上で敵を迎え撃つ。いわば砲台役だ。

 エリスのイクリプスはネクストの機体特性を活かし、護衛戦闘機の役目を担う。

 

「どうかな?」

 

 ミコはエリスの瞳を見つめた。

 

「護衛か、いいね。その仕事引き受けた」

 

 その返事にミコは満足そうにした。

 

「そう言ってくれると思っていた――――ところで来月うちの同好会が大会デビューを果たすんだけど応援に来てくれない? 皆、神薙君が来ると喜ぶし、歴戦のACドライバーとしてアドバイスの一つでもしてやって欲しい」

 

 ミコは進級と同時にACバトル同好会なるものを発足して部員を数人集めていた。

 

 その名の通り、ここ数年で盛り上がっている、アーマードコアを用いた模擬戦闘競技「ACバトル」への参加を主な目的とした集まりだ。

 同好会であるため、部費はない。機材はミコが自費で集めた。ACのパーツも当然中古だ。

 部室も学園の片隅にある廃ガレージで掃除から始める必要があった。

 

 メンバーはACの操縦経験がない娘達が大半だが、教官を頼まれたササラが感心するほど飲み込みが速かった。

 

 エリスはメンバーではないが、機体の調整や戦術指導など手伝い程度はしていた。

 父親の影響で小学生の頃からACの操縦を習ったという設定で通している。

 

「私などでよろしければ」

「いやー助かるよ本当に」

 

 お嬢様モードに切り替え、にこりと微笑んで承諾するエリスであった。

 

 車がちょうどエリスの自宅の近くに停まった。

 

「ありがとうございました、桐嶋先輩。それではご機嫌よう」

 

 くるりとターンして自宅に戻っていくエリス。赤髪が揺れる、後ろ姿をミコが見送っていると、不意に強い風が吹いた。

 自宅が近いことで気が緩んだのか、エリスはスカートを抑えていない。上流階級の令嬢としてあるまじき行為だ。

 

 一瞬の間、布面積の狭い白いパンツが丸見えになり、尻肉が柔らかく揺れ弾む様まで見て取れた。

 

「神薙君も結構迂闊だな」

 

 苦笑いするミコであった。 

 

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