日蝕のアサルトレコード   作:その辺の残骸

15 / 76
エア・コンバットⅡ

 

「ほっ本当に来た! ネクストが、あのイクリプスが来ちゃいましたよ先輩! それにメッセージまで!」

 

 イーハトーブ・エアサービス所属の大型輸送機、その副機長であるピンク色の髪の美少女は深紅の破壊天使の出現に声を上げていた。

 激しい身振り手振りや雰囲気がどこか兎を連想させる、可愛らしい少女だ。

 

 護衛を依頼した傭兵が駆るアーマードコア・ネクストが美しい旋回機動を描きながら、飛行MT部隊を叩き落している。

 

「そのようですね。ところでエンジンの様子は? それとECM、チャフフレアの準備を」

 

 粒子装甲を纏い、オーバードブーストによる噴射炎――――光翼を広げて空を征く破壊天使に見惚れる副機長に柔らかな口調で告げる機長は二十代前半の美女だ。

 灰みを帯びた金髪。背が高く、豊満な肢体をしている。

 

 その言葉に慌てて確認する副機長。その動きには淀みがない。

 

「すみません! エンジンは八基とも絶好調です! それにチャフフレアともにスタンバイOKです!」

 

 敬礼しながら報告する副機長であった。

 

「よろしい。主は勤勉な者を救います」

 

 副機長の報告に聖母の如く微笑む機長であった。彼女は敬虔な信仰者なのだ。

 

 彼女達の魅力的な肢体を包むのは、極薄のパワードスーツ兼パイロットスーツだ。

 不時着時のサバイバルや自衛用のACへの搭乗まで想定したものだ。

 

 望めばパイロットごとに好みのカラーを選べる。機長は修道服のような黒、副機長は標準カラーの青色だ。

 

 機長の豊かな胸と副機長の小ぶりな胸の形に沿って、薄いスーツが包んでいる。

 股間は鼠径部より幅の狭いハードシェルを張り付けてあるだけで、パンティラインは浮かんでいない。

 股間部ハードシェルはI字を描くように股下を潜って伸び、お尻の間に食い込んでいる。

 

 機長の魅惑的な巨尻と副機長の引き締まったお尻は色を塗った裸と変わらない。

 

 生命維持機能を備えた高性能スキンタイトスーツの宿命としてインナーを着用できないのだ。

 

 貨物庫から通信が入った。機長が応答する。

 

「こちら"アークセイバー"。発進許可を求む」

 

 網膜投影式HUDに表示された二つのバストアップ映像は金髪ツインテールの美少女と黒髪の美少女のもの。

 アークセイバーはエリスと同じく護衛任務を請け負ったササラ・レイフィールドと黒瀬リゼが駆る二人乗りのACだ。

 

「許可します。幸運を」

「ハッチ開きます!」

 

 やり取りを聞いた副機長が貨物庫のハッチを解放する。

 

「出たらすぐにジャミングをかけますね。輸送機のECMをこちらで制御させてもらえませんか?」

「許可します――――副機長!」

 

 リゼの蠱惑的な声音にも心を乱さず、機長が返答する。

 声にうっとりしそうになった副機長は慌てて役目を思い出し、ECMの制御をACに移した。

 

「ご協力感謝します」

 

 明るい笑顔で述べるリゼであった。

 

 アークセイバーは白と青で塗装された中量二脚のACだ。コアはオーバードブースト機能のある最新型"C03-HELIOS"。

 装甲を削ってまで機動性を高めたアセンブルだ。

 

 他のパーツも頭部の"H11-QUEEN"を筆頭に高性能なものを揃えてある。

 左肩に描かれたエンブレムは剣を模ったシンプルなデザイン。

 

 ササラとリゼのパイロットスーツは、ハードシェルのない極薄のスーツ。ノースリーブが軽やかな印象を与える。

 

 内腿部分が大きく開いており、股間部分は急角度のハイレグカット。おまけにクロッチまである。

 後ろ側もお尻が半分近く露出するまで切り込まれていた。

 

 少女達の魅力的な肢体を引き立てるためにあるような極薄生地は見た目よりも防御力が高い。

 白兵戦でも身軽に動き回れることからササラはこのスーツを好んでいた。

 

 スーツの色はササラが白色、リゼは黒色だ。

 

「アークセイバー、出撃する!」

 

 ドライバーシートに豊かな尻を押しつけて座するササラは愛機を蒼天に躍らせる。

 金髪ツインテールの美少女は大きく脚を広げているが、ハイレグカットが煽情的な股間は線が浮き出ない構造になっている。

 

 後部のサブシートでリゼが指を踊らせ、ECMを起動する。輸送機の分まで制御して効果的に電子戦を行う。

 

 平素は上品に腰掛けているリゼだが、ドライバーシートに座るときは大きく脚を広げていた。

 高速機動を主体とするACに乗っているので、重力加速度に耐えるべく踏ん張る必要がある。

 

 強力な妨害電波でレーダーは妨害され、欺瞞信号で輸送機の距離や位置さえ出鱈目になったことは、トルベリの傭兵たちをさらに狼狽えさせた。

 

「悪いが、一方的にやらせてもらう」

 

 ブーストで飛行しながら、ササラは右背部のミサイルで先制攻撃する。

 

 一瞬だけオーバードブーストをかけて輸送機を追い抜き、相対速度を合わせて輸送機の上にソフトランディング。

 イーハトーブが誇る超大型輸送機はACを一機乗せた程度では飛行に支障が出ない。

 

 アークセイバーは輸送機の上で両手のスナイパーライフルを構え、即座に発射。

 本来は近距離から中距離での機動戦を志向するが、今回は狙撃仕様にアセンブルしてある。

 

 右手に装備しているのは貫通力に優れたネクスト用のスナイパーライフルで、ササラの腕と相まって敵機を三機纏めて射抜くことさえあった。

 

 ミサイルで落としきれなかった敵機を狙撃で打ち落としていく。

 ササラはFCSに頼らずマニュアルで狙撃しているため、敵はレーダー照射を感知しての回避機動さえ取れない。

 

「五っ♪ 六っ♪ 七っ♪ うん、いい調子だよササラ、今日もカッコいい」

 

 真剣な面持ちで敵機を狙撃するササラの後ろで、リゼは撃墜数を楽しそうにカウント。

 一方で左背部レーダーで拡張された索敵範囲に目を凝らし、伏兵を警戒。コンソールを弄る仕草さえ妖艶な指先はECMの周波数と出力を細かに調整している。

 

 ササラは背中で感じるリゼの抜け目なさをいつも頼もしく思っていた。

 

「エリス、こちらはもうすぐ片付く」

 

 ササラはアーマードコア・ネクストで天空を駆ける、赤髪の戦友に通信を入れた。

 

「うわ~二機ともすっごい」

 

 副機長は感嘆していた。レーダー上の赤い光点があっという間に消滅した。

 

 

 大きく距離を取って輸送機と並行していたイクリプスの異変を優れた視力で捉えた副機長は「あっ!」と声を上げてしまう。

 

 雲の中から放たれたレーザーキャノンがイクリプスの粒子装甲に当たり、青緑色の光が散ったのだ。

 

 プライマルアーマーを貫通した青い閃光が深紅の装甲を傷つけることはなかった。

 

 イクリプスを攻撃した機体はこれまでの不格好な飛行型MTとは違う。

 左右の巨大なスラスターから噴射炎を迸らせる大型戦闘機だった。

 

 30m級の大型戦闘機はそのまま高速でイクリプスとすれ違い、高度を取る。旋回しながら人型に変形した。

 戦闘機と人型の二形態を持つ、新型の可変機なのだ。

 

「ひえ~なんだかヤバそうな敵が出てきましたよ。イクリプスさん、大丈夫でしょうか」

「心配する必要はないでしょう」

 

 輸送機を冷静に操縦する機長の言葉は断言するようだった。

 

「なっなんで分かるんですか!?」

 

 副機長は機長に説明を求める。

 機長はノーマルACの操縦ができるからACドライバーとしての知見で合理的に物を言っているのだと思った。

 

「本日の主は地獄の住人が増えることを望んでおられるからです」

「ひええ~~~っ!」

 

 にっこり微笑みながら言ってのけた機長の信仰のアレさに副機長は悲鳴を上げた。

 

 

「こいつぅっ! "ヴァルカン"ってやつか!?」

 

 雲の中から現れた可変MTの事をエリスは偶々読んだミリタリー雑誌で知っていた。

 

 近年、アームズフォートやkm級の宇宙戦艦などと共に模索されている、少数で戦場を制圧することを意図した大型機動兵器の一種だ。

 

 イクリプスに挑みかかっている敵機は、直線的なデザインの制空戦闘機で知られる大手航空機メーカーがトリニティと共同開発した"RVF-71 ヴァルカン"という。

 人型形態でのシールドを兼ねた大型ブースター二基による、高速飛行能力が長所だ。

 

 ACの背部武装に相当するレーザーキャノンが左右のブースターと一体化しており、コアには拡散プラズマキャノンを搭載。

 おまけにマイクロミサイルポッドまであり、近接戦用にブレード発振ユニットが両腕部に装備されている。

 

 エリスが敵機の情報を思い出している間にも、マイクロミサイルが殺到してくる。

 

(なんだよ、解説は不要か)

 

 ちぇっと不満そうにするREV。エリスはクイックブーストをかけてマイクロミサイルを回避。

 

 雲の中に伏兵がいるのは把握していたが、予想以上の大物だった。

 

 ヴァルカンにプライマルアーマーによる空気抵抗の軽減はなく、大推力を頼りに高速飛行している。

 その速度は戦闘機並みであり、輸送機を一直線に目指していればササラの仕事を増やす事になっただろう。

 

((親玉の機体かな?))

 

 エリスとREVは同じことを考えていた。だとすれば、手下のためにネクストの囮を買って出るとは殊勝なものだ。

 しかし二人の予想はすぐに外れだと分かった。

 

「勝負だ……!」

 

 オープン回線で呼びかけてきたヴァルカンのドライバーは若い男だった。高みを目指す野心と攻撃性を備えた若者だ。

 栄達への道として、ならず者集団トルベリを選び、腕前を認められてこの高性能MTを与えられた、というところだろう。

 

「単純なタイプで助かった」

(エリスに単純と言われるようじゃオシマイだね)

 

 エリスは油断を誘うためにあえてプライマルアーマーの厚い部分に被弾して見せたのだが、ヴァルカンのドライバーはそれに気付かなかった。

 

 プライマルアーマーに有効なレーザー兵器を積んでいることも勝機ありと判断する原因になっていた。

 

 イクリプスは護衛ミッションの最中なのだから、時間をかけてはいられない。

 通常ブーストに切り替えながら、カウンターで直ちに仕留める戦闘プランを練る。

 

 降り注いでくるマイクロミサイルとプラズマキャノンの雨を再点火したオーバード・ブーストで切り抜ける。

 相手からすれば確実に当たると確信しての攻撃だったが、エリスの反応速度に応えたイクリプスは幻のように消えた。

 

 イクリプスはクイックターンで可変MTヴァルカンに向き直る。

 急速反転によるGでシートから放り出されないよう、エリスは背中とお尻を力強く押し付けた。

 

「REV、ここはあんたに任せた!」

(いいよ。任された)

 

 REVに判断を任せて背部分裂ミサイルを時間差で発射してもらう。命中させるのが目的ではなく、必殺への布石だ。

 

 ヴァルカンは戦闘機形態になり、チャフフレアを巻きながらのバレルロールで追尾性能が極めて高い分裂ミサイルを避け切る。

 意識の海でREVがニヤリと笑う。

 

ヴァルカンが反撃に転じる動きは鈍い。回避機動のGのきつさとエリスの放つプレッシャーでドライバーが根を上げたのだ。

 さらに言えば、相手より高い高度を取ることに執着するのは、回避機動の選択肢を狭め、速度の優位を失う悪手だった。

 

「もらった!」

 

 エリスは獲物に食らいつく猛獣のように上体を前に傾ける。その動きで深紅にラッピングされた美乳が揺れていた。

 上空のヴァルカンに向けて、左腕のヘヴィ・ライフルが火を噴く。

 

 再度、人型への変形中だったヴァルカンのコクピットやや下、頭部、右ブースターに着弾。

 バランスを崩したところに分裂ミサイルと連動ミサイルを放ち、全弾命中させた。

 

 ミサイルによって推進剤が誘爆し、大型可変機は機体の大半を損ない、破片をバラまきながら海に墜ちていく。

 

 墜落していく大型可変MTには意識を向けず、オーバードブーストでエクリプスを南に駆けさせる。

 

 トルベリは諦めが悪く、巡航ミサイルを五発発射してきた。その後方にミサイルの母機も含めた飛行MTの編隊がいる。

 意地でも依頼を果たすつもりのようだ。

 

「ミサイルの処理を頼んでいい? ECMをかけてあるから、直撃する可能性はまずないと思うけど、弾頭次第では爆風に巻き込まれて危ないかも」

 

 アークセイバーのリゼが通信を入れた。

 嫌な予感がする。強力なECMで攪乱されているというのに、ミサイルを放ったということは、命中率を補う何かがあるということだ。

 

「それは同感。任せておいて――――たくっ! 小悪党らしく命が惜しくなって逃げ出せばいいものを!」

 

 エリスは毒づきながら、発射された巡航ミサイルをロックオン。

 マッハ6で直進するミサイル群の側面に回り込んでレールガンを発射する。砲弾の直撃だけでなく、ソニックブームに巻き込むことでミサイルを一気に撃墜した。燃料気化弾頭の爆風が巻き起こった。

 

「ふぅ」と額の汗を拭うエリス。嫌な予感の一つが当たった。

 

 もう一つの予感は衛星軌道上から急速に接近し、緑色の稲妻が頭上に瞬いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。