日蝕のアサルトレコード   作:その辺の残骸

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第二話完結です。


エピローグⅡ

 

 エリスは夜が好きだ。

 月が明るい。夏が近い。エリスは繁華街の雑踏を行く。

 

 聖オルベリア教導学園に通う、スペースコロニー育ちのお嬢様の偽装は解いている。

 エリスは桐嶋ミコ先輩曰く、ヤンキーギャルな本来の属性を強めた別種の偽装に切り替えていた。

 

 赤髪に際立った美貌、長身気味の魅力的な肢体という特徴の塊のエリス。

 だが、雰囲気が百八十度違う上に、鋭い目つきと剣呑な気配を全面に押し出しているので、クラスメイトと直接対面しても「神薙さんに似ている怖い人」と認識されるほどだ。

 

 エリスは胸にチューブトップ、腰回りにホットパンツを張り付けるように纏っている。素肌の七割以上が露出していた。引き締まった腹筋が活動的な印象を強めている。

 

 その上にイクリプスのエンブレム"日蝕の下を飛ぶ鴉"を描いた短いジャケットを羽織ってる。

 アナーキー気取りの物好きが当人に無許可で作ったものを購入したのだ。

 

 刺激的な服装に美貌と肢体が相まって好色な視線を向けられることが多いが、そうした連中は「あぁん?」と睨むと気圧されて逃げていく。

 

 そんなエリスに大股で接近してくる、人影が一つ。

 交差点で信号待ちしている赤髪の不良風美少女は極めて異例なことに不意を打たれた。

 

「会いたかったよ、イクリプス!」

「なっなぁっ……!」

 

 180cm近い、長身の美少女が背後からエリスを抱き締めた。明るく弾む声だ。

 

 心地良い高めの体温と巨乳の柔らかな感触。

 引き締まった体を拘束具のように力強く抱き締めてくる小麦色の両腕。太陽を連想させる、甘い香りがする。

 

 その声音をはっきりと覚えている。北米に本社を置く巨大企業クロムバウのトップリンクス、アンヘラ・アール・アルパだ。

 金髪に健康的な小麦色の肌、背丈も胸も尻も全部がデカい美少女だった。

 

「護衛はいない。盗聴なし。監視は衛星とボクの体に埋めてある追跡装置だけ。休暇貰うついでに我侭、たくさん言っちゃった」

「こっちが訊きたいこと全部先に教えてくれんのね、お前」

「そうしないとお話できないでしょ」

 

 抗わず抱き締められたまま、エリスはアンヘラとやり取りした。

 この娘が言ってる事は本当だよ、とREVが裏を取った。

 

「隣に来い。もっとのんびり話せるところがいい」

 

 振り解いて逃げるのは簡単だったが、エリスはそうしなかった。

 どうせ、顔を知られてしまったし。

 

「分かったよ、イク――――」

「その名前は言うな」

「ごめん」

 

 エリスは金髪小麦肌のド級ボディ美少女を連れて公園に向かった。

 ベンチに腰掛け、アンヘラは大人しく奢ったコーラを飲んでいる。

 

 ネコミミパーカーを羽織っているが、ボトムスの裾は覗いていない。綺麗に日焼けした肉感的な太股から続く美しい脚が見えるだけだ。

 まさかこいつパーカーの下に何も着ていないんじゃ?という疑念を同性のエリスでさえ抱いてしまった。

 

 エリスの素性がバレたのはこれで二度目だ。アークセイバーを駆るササラとリゼには自分からバラした。

 

「どうやって私の事を突き止めた?」

「偶然、だよ。君に負けてからウルティマ・ラティオと猛特訓していたら、少しは休め~って命令されちゃって。何気なくここを休暇先に選んで街を散策してただけ――――そしたら、綺麗な赤い髪を靡かせている君がいて、直感したんだ。あの深紅のネクストのリンクスだって」

「髪も機体も赤いから?」

「ううん。どこにも属さず、傭兵(レイヴン)として活動するネクストなんて普通じゃないよ。しかも自前で高性能なパーツや見た事のない武器も造るようなのは。普通じゃなくて綺麗なマシンに乗っているなら、リンクスも同じだって想っていたから。だから、君があの機体と一緒に戦っているって解った」

 

 その言葉を聞いてREVは大笑いしていた。エリスは渋い顔をしている。

 

(普通じゃなくて綺麗か。喜べよ、エリス。これ以上にないくらい褒められてるぞ)

(うるせーよ、クソ鮫)

 

 ヤンキーギャル全開モードのせいか、相棒に対して普段よりもさらに口調が刺々しくなるエリスであった。褒められて嬉しいがREVの言い草はムカツク。

 

「ところで君の事はなんて呼べばいい?」

 

 アンヘラに見つめられる。

 

「エリス。神薙エリスっていう」

 

 名乗った時、アンヘラは目を輝かせた。

 

「素敵だよその名前! 綴りはギリシャ神話のエリスと同じ?」

「ああ。付けてくれたのは義理の父」

 

 金髪小麦色肌のでっっかい娘はエリス、エリスと嬉しそうにその名を繰り返している。決して忘れる気はないようだ。

 

「ボクの事はアンヘラって気軽に呼んでね、エリス!」

「解ったよ、アンヘラ」

 

 エリスは返事してから自分のコーラを飲み干し、座ったまま缶のゴミ箱に投げ入れた。

 

「初めて名前呼んでもらっちゃった! 嬉しいな~」

 

 アンヘラも真似てゴミ箱に空き缶を投げ込むが失敗した。立ち上がり、入れ直す。

 

(企業所属のトップリンクスに素性がバレちゃうとはね。これから大変になるよエリス)

(企業のリンクスかどうかってよりこの娘にバレたのがヤバいだろ)

 

 などと脳内で電脳サメとやり取りをするエリスであった。

 

「ねえ、エリス。良かったらこれから一緒に遊ばない? お金は全部ボクが出すからさ」

 

 正面に立ち、アンヘラは可愛らしい仕草で前屈みになって誘ってきた。パーカーを押し上げ、存在を誇示する巨乳。

 

「なんでそこまで私と一緒になりたがる?」

「ライバルの事もっとよく知りたいから」

 

 金髪の巨乳娘は純真だった。

 

「――――構わねえけど、クロムバウが傾くくらい使い込むぜ私」

「ははっいいね。ボクもそのつもりだったし――――それじゃ、行こっか♪」

 

 こうして赤髪と金髪の雌山猫は夜の街に躍り込んだ。

 

(ホテルに連れ込まれないようにね)

(されるわけねぇだろ。舐めんな)

 

 隣を歩くご満悦なアンヘラの巨大な乳の揺れに圧倒されつつ、REVとも会話する。

 

 夜の街を二人気ままに散策する。

 基地と戦場を行き来する生活を送ってきたアンヘラは何事にも興味津々だった。

 

 そんな少女についついエリスは自分のお気に入りスポットを教えてしまった。

 認めたくはないが、アンヘラとは妙に気が合った。

 

 二人はゲームセンターに入っていた。

 アンヘラはどうしても取りたいぬいぐるみがあるクレーンゲームに苦戦していた。

 超常的なまでの戦闘センスとAMS適正を併せ持つトップリンクス様でも難易度の高いクレーンゲームで景品を取るのは容易ではなかった。

 

「このクレーンゲーム絶対おかしいよ」

「客から小銭巻き上げるようにできてるんだよこういうのは。貸してみろ、取ってやる」

 

 エリスは交替して、クレーンを操る。大雑把な性格に見合わぬ繊細な操作でぬいぐるみにアームを引っ掻けるが……

 

「なんでだよ!」

 

 見事に滑り落ちる。アンヘラの言う通り、このクレーンゲームの難易度設定は確かにおかしい。

 

(僕がやってやろうか? それほど時間を要さずそっちのゲーセンに向かえるよ)

 

 REVのサメアバターが視界で泳ぎ、意地悪そうに笑う。

 

 アンヘラの駆るウルティマ・ラティオとの戦闘の後。REVはイクリプスの追加処理装置を兼ね、ツクヨミに繋いであった人型躯体に自らをインストールして現実でも活動している。

 今は海上都市での自宅でお留守番中だ。

 

(手出し無用。これは私とこのゲームとの勝負だからな)

(はいはい。じゃあ僕はスリープモード入るから必要になったら起こして)

 

 勇ましく吼えるエリス。躯体に宿ったREVは就寝の支度を始める。

 

 それから十分。エリスとクレーンゲームの戦いは続いていた。

 

 筐体の前に立つ赤髪ヤンキーギャルのホットパンツは、豊かな臀部と肉感的な太股のために、いつ破れてもおかしくないほどパツパツだ。

 後ろから肉厚な造形美がはっきりと分かる。線が浮かばないよう、インナーは紐状の食い込むヤツを選んでいる。

 

 エリスは自らのホットパンツ尻に集まる、通りかかった客の視線を気にすることなく集中していた。

 

 自分のために真剣になってくれている赤髪ヤンキーギャルの横顔にアンヘラは目を奪われている。

 ゲームセンターの騒音さえ遠のく。金髪小麦肌の巨乳美少女を恍惚から引き戻したのは生理現象だった。

 

「ごめんエリス、ちょっと外すね!」

「いいぜ。戻ってくるまでに景品取ってやんよ!」

 

 ぬいぐるみを取ってもらっている手前、申し訳なさそうにアンヘラはその場を去った。

 

「へへーんどんなもんよ!」

 

 それからすぐのこと。勝ち誇るエリスの手にはぬいぐるみがあった。

 

(嫌な予感がする)

 

 しかし、アンヘラがトイレから戻ってこない。心配なので様子を見に行くことにした。

 

 アンヘラは二人組の男に絡まれていた。

 

「おい」

 

 ぬいぐるみを抱えたまま、赤髪のヤンキーギャルはドスの効いた声音を背後から叩きつけた。

 男達を睨みつけ、暴力の色濃い気配を発散しながら大股で近寄る。間をこじ開け、アンヘラの手を掴んで引き寄せた。

 

 助かったよと視線が告げる。

 

「行くぞ」

 

 そのまま、アンヘラの手を握ってその場から離れるエリス。

 ゲームセンターを後にすると、「ほれ」とアンヘラにぬいぐるみを渡す。

 

「ありがとエリス。増々惚れ直したよ。ぬいぐるみと助けたくれた事へのお礼は絶対するからね」

 

 アンヘラはこの上なく嬉しそうにぬいぐるみを抱き抱えている。

 

 

 それから一時間もしないうちにエリスはREVの警告した通りになった。

 アンヘラが滞在しているホテルの部屋に連れ込まれたのである。

 

 ベッドの上で赤髪ヤンキーギャルは初めて感じる心地良い刺激に甘やかな吐息を洩らしている。

 

「うっあぁぁ――――そこ、ダメ」

 

 鋭い快楽を苦悶とも恍惚とも取れる表情で拒もうとするエリス。

 エリスを見下ろして体温を感じさせながら、快楽を与えてくるアンヘラの表情は無邪気だ。

 

「止めてあげなーい。痺れちゃって、気持ち良くなって、頭がぽわわーってしちゃうでしょ? 気持ちいいことを拒むなんておかしいよね?」

 

 カリ。カリカリ。カリ、パキ……っ!

 

 エリスの奥にある敏感な部分に入り込んだモノに抉られる。背筋がゾクゾクした。

 

「ひぃ……うぅ……」

 

 生まれてから一度も出したことのない声が出てしまう。

 

「ほらほら、エリスの中にあった恥ずかしいモノがこんなに取れたよ」

 

 エリスはアンヘラのムチムチの太股に膝枕され、耳かきをされていた。

 長身の金髪巨乳娘は竹製の極細耳かきを巧みに操っていた。

 

 もはや今夜中の帰還は不可能であった。

 

 翌朝、目を覚ました時にはエリスはアンヘラと生まれたままの姿で抱き合っていた。

 耳かきで気持ち良くされて眠りに落ちてから、服を剥かれたのである。

 

 ただ、肌を触れ合わせていただけなのが救いだった。

 

 翌日、日曜日の昼過ぎまで二人は一緒だった。

 

「次は戦場で一緒になりたいなぁ」

「私を倒すんじゃなかったのかよ」

「勿論、エリスには勝ちたいよ。だけどお礼もしたいしエリスと共闘するのも楽しいかなって」

「まあ、その時は頼りにさせてもらうぜ」

 

 エリスとアンヘラは別れ際、そんな話をしていた。

 破壊天使を駆る戦乙女達が轡を並べる日はそれほど遠くはなかった。

 

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