日蝕のアサルトレコード   作:その辺の残骸

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03:クロムバウ反乱AF部隊殲滅/戦乙女駆るドラゴンダイブ
船上にてⅠ


 

 ビルの影から白と青に塗られた閃光が躍り出る。

 オーバードブーストによる猛烈なプラズマ噴射の炎を吹かした中量二脚アーマードコア"アークセイバー"がイクリプスに襲い掛かる。

 

「やっぱそう来たか!」

 

 赤髪の戦乙女、神薙エリスはイクリプスを後方にクイックブーストさせ、ミサイルとレーザーライフルで応戦する。

 

 アークセイバーが右手のリニアライフルを連射。左右にクイックブーストをかけて高速回避するも、プライマルアーマーに命中。

 強力なリニア加速砲弾の連続被弾によってコジマ粒子の防護膜が破れ、装甲を直撃した。衝撃でイクリプスの動きが鈍る。

 

 弾を使い果たしたリニアライフルを放棄しながら白と青のノーマルACは突進。

 

 左腕にマウントされた超高出力レーザーブレードから蒼く輝く光刃を迸らせ、振りかぶる。

 オーバードブーストとエクステンションの追加ブーストを加えた、アークセイバーの突進速度は超音速に達している。

 

「このラウンドはもらうよ!」

「あのネクストとの戦いでさらに腕を上げたようだな。だが私達も負けてはいられない!」

 

 股間部がハイレグカットされたパイロットスーツを身に着けた黒髪シニヨンと金髪ツインテールの美少女が咆える。

 

「そうはいかないっての!」

 

 白と青のノーマルACから叩きつけられたプレッシャーを跳ね返すようにエリスは獰猛に笑う。

 

 イクリプスの反撃も命中しており、右腕部を中心にアークセイバーを損傷させている。

 だが、機体に被ったダメージさえ利用してしまうのが超一流のレイヴンというものだ。

 

 白と青のノーマルと深紅のネクストの距離が詰まる。接近戦は避けられない。

 

「REV! お前の大好きな接近戦をやるぞ!」

 

 AIの相棒に呼び掛けながらエリスも左腕部のレーザーブレードを抜刀。

 ネクスト用のレーザーブレードは標準仕様でもノーマル用ブレードより遥かに高出力だ。

 

 しかし、相手が月光の名を冠するイレギュラーナンバーでは比較にならない。

 互いの装甲が一切無意味な状況だった。

 

「突き込んで潰す!」

 

 エリスは左腕を真っ直ぐに突き出してコクピットを狙う。月光で薙ぎ払われる前に倒さなければならない。

 REVによる演算とアクチュエータの最適化を受けながら最後の一撃を繰り出すエリス。

 

 勝利の確信を互いに抱きながら、二機が光の刃を叩き込む。

 

 視界が暗転する。

 

「相討ちか」

 

 エリスは呟いた。双方の撃墜判定は同時に表示されていた。

 

 仮想現実の市街地から切り替わり、イクリプスが待機している船倉が視界に映っている。隣にはアークセイバーがある。

 ここは船倉を格納庫に改装した大型輸送船の中だ。エリス達はコクピット内でシミュレーターを用いて模擬戦を繰り広げていた。

 

「大したもんだよ。相討ちに持ち込まれたのは初めてだ」

 

 エリスはアークセイバーを駆る美少女達に賛辞を送りながら、シートに身を預けた。

 シミュレーションとはいえ、相討ちはノーマルACがネクストに対して上げた最大級の戦果だった。

 

「次は勝たせてもらうぞ、エリス」肩で息をしながらササラは勝気に微笑む。

「そう簡単に勝ちはくれてやれないよ、ササラ」エリスにも意地がある。

「惜しかったなぁ。ブースト出力を上げて、もう少し間合いを詰めていれば勝てたかも」

 

 電子戦と機体制御を担うリゼは判断ミスを悔いた。

 彼女が推力へのエネルギー割り当てを増やしていれば、アークセイバーはイクリプスの懐に飛び込み、突きを躱せていた。

 

 ササラの技量とリゼのアシストによって発揮されるアークセイバーの戦闘力は、極限までチューンされていることもあり、ノーマルでありながらネクストに匹敵するものだった。

 

 《再構築戦争》を含め、エリスがこれまで交戦してきた機動兵器のパイロットの戦闘技術では、クロムバウのリンクス、アンヘラ・アール・アルパが最強だ。

 

 だが、格上喰いにおいてはササラはアンヘラより上だ。絶望的な性能差を覆し、存在しないはずの勝機を創り出す、エリスと同じタイプの戦士だった。

 

 ウルティマ・ラティオとの激戦を経て、さらに腕を上げたエリスと遺失技術で強化されたイクリプスに対しても巧みに対応してみせた。

 先ほどの一戦では反応速度で圧倒しているイクリプスの動きを読んだ"後の先"の斬撃で相討ちに持ち込んでいた。

 

「いやぁ、いい試合だったなエリス。演算回路への負荷で躯体の温度が上がってしまったよ」

 

 少女の美しい声音はエリスの背後からのもの。イクリプスには新たにサブシートで設けられてた。

 ケーブルを首のジャックに差し込んで座しているのは白金髪の美少女。可憐で愛らしい顔立ちだが、どこかサメを連想させる狂暴さがある。

 

 REVが宿っている躯体だ。全身がナノマシンで構成された遺失技術の産物であり、イクリプスの追加演算装置を兼ねている。

 REVとしてはアンドロイドではなく、オートマタという呼称を好んでいる。

 

 極薄のナノスキンスーツを素肌に張り付けたエリスと対照的に、ゴシックドレスを纏った装いで、露出は殆どない。

 ドレスのスカート丈は長く、その下の白い脚は黒タイツで覆っている。REVの美意識によるものだった。

 

 この躯体に宿っている時は神薙レヴと名乗っている。エリスの従妹という設定だった。

 

「まったくその通りだな! さあもう一勝負!」

 

 この模擬戦は三本勝負なのだ。最終ラウンドに向けてエリスは気を引き締めた。

 

 シミュレーターを再起動しようとしたその時。

 

「そろそろお昼ですよ~」

 

 格納庫に声が響く。二機のACに向けて手を振っているのは背の高い、陽気な印象の金髪ロングヘアの美少女メイドだ。

 その隣には前髪で右目を隠した銀髪ポニテの美少女メイドが静かに立っている。

 

 彼女達はエリス達の先輩であり、聖オルベリア教導学園ACバトル同好会部長にして、傭兵に依頼を斡旋するフィクサー、桐嶋ミコに仕えるメイド達だ。

 

 この船はミコが所有しており、エリス達はミコのメイド達から奉仕を受けていた。

 

 

 

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