日蝕のアサルトレコード   作:その辺の残骸

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Dragon DiveⅣ

 

 最後の守備隊を蹴散らし、イクリプスとウルティマ・ラティオは動力部に侵入した。

 

「ここはボクが」

 

 ウルティマ・ラティオはガンボックスを向け、リニアガンを数発打ち込み、動力炉を破壊した。

 

「間に合ったのか?」

「解らない。とにかく離脱しよう。爆発に巻き込まれるよ」

 

 レヴが促す。

 

 全高600m、全長2.4kmのスピリット・オブ・マザーウィル級を動かすための電力は天文学的でさえある。暴走したエネルギーの奔流に飲み込まれる前に、二機のネクストは高速で離脱していく。

 

 脱出を開始した直後、ミコから通信が入った。

 

「大変だ神薙君っ! 軌道上の特務艦隊が動き始めた! 奴ら砲撃を始めるぞ! どうにか通信を傍受したが反乱軍だけでなく、神薙君達も始末するつもりだ!」 

 

 ちょうどイクリプスの目の前で、砲撃が天井を抜けてきた。

 電磁加速されたそれは、レールキャノンによるものだ。連邦宇宙軍特務艦隊の強襲艦が底部に装備している武装だった。

 

「うお!?」

「大丈夫か神薙君!? それと特務艦隊司令部直属のネクスト部隊も火星の基地からそちらに急行している。こんな派手な動き、見た事がない」

「あー多分、火星人のせいだ」

「何の事だいそれ?」

「後で話す! 悪いけど通信を切るよ先輩!」

「待ってくれ。最後に一つだけ。アークセイバーの改修は予定より早く終わったから、ササラ君とリゼ君が救援に向かっている。三機で力を合わせて乗り切ってくれ!」

 

 元々、改修作業が早く済めば、アークセイバーは慣らしも兼ねて離脱するイクリプスを護衛する計画であった。

 

「ありがと! それじゃ!」

 

 通信を切る。流石のエリスも口を開いている余裕がなかった。後ろからは動力炉の爆発が迫ってくるし、天井を突き抜けてくる艦砲射撃も、咄嗟に避けなければならない。アンヘラも口を利く余裕がないようだったが、被弾はしていない。無事に二人で脱出できそうだ。

 

 軌道上から降り注ぐ砲撃は雨の如く。動力を失い、足を止めたハート・オブ・マルスを瞬く間を穴だらけにして、解体していく。

 

 脱出直前、レヴが難しい表情になった。

 

「まずいな、エリス。下で超高温の熱源が外に向かって高速移動してる」

「プレディカドールか。まっいつもの事だ、しゃーない! 聞いたなアンヘラ!? 外に出たら政府のネクスト複数その他と火星人を同時に相手取るぞ! ビビんなよ!」

「怖くなんかないよ。エリスとなら必ずやり遂げられるんだから! それに地球政府のネクストとは前々から戦ってみたかったんだ!」

 

 イクリプスの兵装コンテナを開き、右手パルスライフル"ブレイクショット"をオーバードハイレーザーライフル"インサニティ・フォース"に切り替える。"X000 KARASAWA"をイクリプスに合わせて大型化、小型コジマジェネレーターを搭載することで極限まで威力を高めた代物だ。

 

 これなら、地上からでも軌道の艦隊を狙撃できる。ツクヨミで製造した兵器の中でも特にショッキングな武装なので、できる限り使用を控えたかったが、この状況を切り抜けるのに必要だった。

 

「うわっすっごい! それが今回の切り札?」

 

 アンヘラは巨乳を揺らすほどの勢いで身を乗り出して巨大なハイレーザーライフルに興味を示した。

 

「の一つってとこ。まあ、見てなよ」

 

 インサニティ・フォースを通常モードで発射。隔壁を吹き飛ばし、オーバードブーストによる全速力でハート・オブ・マルスを脱出した。

 

 水平飛行に移行して距離を取っていく二機の背後で、火星最大のアームズフォートは最期を迎えた。動力炉からの爆発が、砲撃で著しく損傷した船体を飲み込んだ。

 船体を上回る直径の火球は、爆心地に真空を造り出し、吹き戻しは赤い大地に砂嵐を巻き起こした。

 

 エリス達と同じく、プラズマ噴射の光翼を背負いながら飛ぶ存在があった。垂直上昇で矢の如く天を目指す、朱と銀に彩られた異形のヒト。機械生命体ディソーダー、タイプ・プレディカドール。ディソーダーに向けても、レールキャノンの砲撃が行われていたが、一発も命中していなかった。

 

「あれがディソーダー」

 

 未だ降り注ぐ、軌道からの十重二十重の砲撃をクイックブーストで避けつつ、垣間見たプレディカドールの姿に、アンヘラは声を上げた。

 

「さあて、こっちもお出ましか」

 

 アークセイバーとの合流を目指しながら、エリスはレーダーに意識を向ける。

 

 高速で接近してくる三隻の強襲艦。前衛として"AA18:LIGHT CAVALRY"、略してLCと呼ばれる独自規格の機動兵器の編隊がいる。

 

 さらに三機分のコジマ反応が先鋒を司る。最強と名高い地球政府のネクスト部隊は特務艦隊中枢AIと常時リンクすることで、桁違いの戦闘処理能力を発揮することができる。

 

 別方向から飛来する機体もある。白と青。火星の空を切り裂くような、鋭い流線形のシルエットをしたノーマルAC。

 

 インナーフレームを置き換え、第六世代ACとして生まれ変わったアークセイバーは使い捨ての大型ブースターを背負い、極超音速で戦場に飛び込んできた。

 

 金髪ツインテールの美少女レイヴン、ササラ・レイフィールドと黒髪シニヨンのサブドライバー、黒識リゼはハイレグパイロットスーツに身を包み、急襲作戦用のブースターのGに耐えている。

 

 従来のノーマルより遥かに高速な戦闘を想定した機体の耐G性能は、以前と比べ物にならないほど高まっている。コクピット周りには、ネクスト規格の耐Gジェルが標準装備されてドライバーの負担を軽減していた。

 

「ササラ、リゼ!」

 

 エリスは嬉しくなって戦友の名を叫んだ。

 

「間に合ったようだな。援護に入る」

「パワーアップしたアークセイバーを試すにはもってこいの戦場だね!」

 

 挙動を見るだけでも常軌を逸した性能が窺える未知の人型兵器に加え、地球政府が誇る精鋭。さらにネクスト三機を前にしても、ササラとリゼは恐れを抱かない。

 

「アークセイバー、一緒に戦えて光栄だよ!」とアンヘラはササラ達に笑顔で挨拶。

 

 戦場のキャスティングはここに完了した。

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